トータルコーデ《ストーリートータルコーデ》２

渡り鳥のフレアはマーベル大陸一勇敢な冒険者でした。彼女は海や陸、山や川を飛び越え、人々の暮らしが国毎に異なる事や花畑の薔薇が夢見ている秘密など、様々な物語を心に刻み天を掛けてきました。

クリシア海に夏の終わりが訪れ、フレアはアリーシャに別れを告げ南へ旅立つことを決めました。そして、また来年の夏に新しい物語と共にアリーシャの元へ戻ってくる約束をしました。アリーシャは歌で友を見送ります。その歌声は哀しみと名残惜しさに満ちていました。

しかし、いくつもの日が過ぎ、星が移ろい、いつの間にかいくつもの夏を越しても、フレアは一向に戻ってきませんでした。

約束を信じていたアリーシャは、夏が来る度に期待せずにはいられませんでした。彼女はフレアとの友情と、長い間待ち続けている切ない気持ちを、歌で表しました。人魚たちは空と海の出会いを歌い継ぎ、鳥たちは世界のあちこちへこの物語を届けました。

ある日、一本の枯れた薔薇が一羽の鳥によってとうとうアリーシャの元へ届けられました。それがフレアからの新しい物語、人魚の髪を飾りたいと願う薔薇なのだと、アリーシャは直ぐに気が付きました。彼女の涙で生気を取り戻した薔薇は、海風に揺れながらフレアの心を唄います。フレアは海へ戻れなくなっても約束を忘れてなどいなかったのでした。

"空と海、鳥と人魚、南から届けられた物語、北へ帰った約束。クリシア海に永く永くこだましてきたものたち。古くから変わらぬ波の音と、空と海に響く歌声。

"深海に棲む真珠貝のグライディスは、千年も守ってきた深海の真珠で「空と海の出会いに」という2人の彫像を作りました。

海と空の出会いを忘れぬために――

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夏の日差し輝くクリシア海の波間に青い尾鰭が見え隠れしています。人魚のアリーシャが波間から顔を出すと、その豊かなプラチナブロンドの髪から、キラキラと雫がこぼれ落ちていきました。

波はいつもと同じさざめきで彼女を迎え、海は穏やかで行き交う船もありません。

小さな人魚は初めて空気に触れ、初めて日差しを浴び、空とはこんなにも眩しいものなのだと知り驚きました。彼女はこの広い外の世界を夢見ていました。船に乗った王子様はどこにいるのか。歌い継がれてきた物語はいつ始まるのか。海の果てにある大陸とはどんな所なのか。クリシア海で最も澄んだ歌声で彼女は空と大陸への憧れを高らかに歌い上げました。

「こんにちは、人魚さん。空の物語に興味はない？」

渡り鳥のフレアが翼を羽ばたかせながらアリーシャの前に舞い降ります。「空の物語？とても興味があるわ！」「そう、それはよかった。どれから話そうかしら」

フレアはアリーシャにとって、海の外で出来た初めての友人になりました。アリーシャはフレアのことが羨ましくて仕方がありませんでした。彼女みたいな羽があれば外の世界を見に行けるのに、と。フレアもアリーシャをしきりに羨みました。自分にも尾鰭があれば深海の世界がどうなっているのか見ることが出来るのに、と……。

2人はまるで古くからの知り合いのようにとても仲良くなりました。

毎晩、アリーシャは水面に上がってきてはフレアと話をしました。フレアが大陸での話を伝えるとアリーシャはそれを素晴らしい歌にしてクリシア海に響かせました。

夏が終わる頃、フレアは南の暖かい場所で冬を越す為、クリシア海を旅立つことに決めました。そして飛び立つ前に約束をしました。新しい物語を携えてアリーシャに会いに戻って来ることを。

また、来年の夏に――

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