トータルコーデ《ストーリートータルコーデ》4
白虎
完成報酬 | コーデギフトBOX (【背景】雪夜の激戦、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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シリーズ3 | シリーズ4 |
傍らの戦馬の背にも届かぬ幼い少女。
彼女は十歳だが、すでに鎧兜に身を包んでいた。
その夜、冷たい土砂降りに視界は奪われた。雨が頬を伝い落ちる。すると、突然温かくて柔らかいものが頭に触れた。まるで幼子を撫でるかのような手つき。その人物は幼い彼女を馬に抱え上げると、彼女に命じた。
「千霜……千霜!行きなさい!」
すると、その者は荒々しく彼女が跨る馬の腹を叩いた。馬は前脚の蹄で宙を掻き、激しく嘶く。
越千霜はそこで目を覚ました。明るい月光は、まるで窓の前にかかる薄衣のよう。あの夜のことを、もう八年間も夢に見ている。自分はもはや、あの十歳の幼子ではないというのに。
朝廷の欽定を受け、越家最年少の家長となった越千霜。そして歴代の家長と同じく、護国大将軍として白虎の幾千万の兵を勇ましく率い、雲上の山河を守っている。
だが、夢に出てくるあの優しい手の人はもういない。
その人物とは越千霜の伯父で、師でもあった。
九日間戦争が勃発した八年前、十歳の越千霜は霜虎七星陣の使い手として、弟子たちの中で抜きん出ていた。
そんな彼女が、伯父一行とノルタタンまで雲上の重宝を運ぶよう任務を受けることになった。
出発前、伯父が「越家は代々、霜虎七星陣を操ってきたが、その中でお前は最年少だよ」と誇らしげに何度も言っていたことを、越千霜は今でもよく覚えている。
だが、それは想像を絶する危険な任務であった。
八人で出発し、目的地まで生きて到達したのはたったの二人だけ……。
まだ夜も明けぬうちに、越千霜は身を起こして上着を肩にかけた。枕元には鎧兜が置かれている。
目覚めると、彼女は八年前の夢をすっかり忘れていた。悲しい思い出に浸っている暇などない。越家に生まれたからには、命を懸けて戦うしかないのだから。
越家の子弟は物心つくと同時に剣の稽古を始め、武具の扱いを覚させられる。任務を完遂させて正式に武職を賜るまで、直系の師匠が付き指導にあたるのだ。凍てつくような鋭い光が閃き、剣が鞘から躍り出る。突き、斬り、受け、薙ぎ、全ての動きに無駄がない。越千霜の剣術に華やかさはないが、攻撃は誰よりも真っ直ぐで強靭だった。
越千霜の師匠は伯父であったが、十歳で彼女は師を失った。一族の年配者たちは他の師をあてがおうとしたが、もはや彼女を教え導ける者などおらず、彼女自身もそれを必要としていなかった。
師はその死をもってして、自らの教えを締めくくったのだ。もはや彼女を縛るものは何もなかった。
「越家の千霜は白虎星の生まれ変わりだ! 彼女の向かう先に敵なし!」人々はそう呼んだ。
越千霜は身なりを整え、演武場で剣術の稽古を行った。長年続けている習慣だ。越家子弟を待つのはコーデバトルだけでなく実戦もあり、武技は何よりも重要なのだ。
血脈の呪いは、マーベル大陸をいつまでも平穏無事ではいさせてくれない。陰謀はすでに動き始めている。彼ら越家の使命は、そんな未曾有の事態を未然に阻止し、略奪者から雲上の民を守ることにある。
凍てつくような鋭い光が閃き、剣が鞘から躍り出る。突き、斬り、受け、薙ぎ、全ての動きに無駄がない。越千霜の剣術に華やかさはないが、攻撃は誰よりも真っ直ぐで強靭だった。
しかし、剣を鞘に収めると、彼女は十八歳の女の子に戻った。ウサギの刺繍がされたハンカチで汗を拭う。
振り向くと、そこには祝嘉南が自分を待っていた。
「嘉南、嘉南、来てくれたのね!」
「千霜、今夜の天灯の準備ができたよ、今年は百三十三個だ」
「ありがとう、お疲れ様」
越家の家長として、越千霜は自ら百三十三個の天灯を空に捧げる。それは死んでいった者たちの魂の数と同じ。毎年大晦日に、越家はこうして英霊を慰めているのだ。
八年前、まだ家長にもなっていなかった越千霜だが、自分で伯父の天灯を上げることに執心していた。
その時の天灯は空高く遠くへ飛んでいくと、海のように深い夜空に消えていったのを覚えている。
「千霜、パテール連邦がウェドフォールと同盟を結んだよ。彼らの第一攻撃目標は雲上だ、西北が危ない」
「明朝、帰還次第応戦するわ。白虎一族千百年、数千の英霊の庇護あれ!教えてやるのよ、雲上には西極白虎の力があるってことを!あいつらに好き勝手させないわ」
大晦日の夜、越家の兵士たちが演武場に恭しく並んでいた。越千霜の両手に抱えられた天灯は、身を切るような寒風に乗り、大空に浮かび上がっていく。燃える蝋燭の灯は、大地から、そして人の世からゆっくりと離れ、どこへともなく流れていくのだろう。
越千霜は鎧兜に身を包み、銀色の外套を風にはためかせた。
「兵士たちよ!パテール連邦がウェドフォールと同盟を結んだ。雲上に危機が迫っている。開戦とあらばコーデバトルだけでなく、実戦になることも予想される。だが越家は死をも恐れない。元帥として、我が軍を勝利に導く!その命を我に預けよ!」
百三十三個の天灯は影も形も見えなくなり、夜明けの薄明かりが越千霜の背後を照らし始めた。吹き荒れる寒風の中、越家の戦旗が掲げられる。
まだ少女らしさが残るが、覇気漲る声で越千霜は高らかに叫んだ。
「我らに越家歴代忠魂の加護があらんことを!雲上の千年山河を守りたまえ!」
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玄武
完成報酬 | コーデギフトBOX (【背景】広大な銀河、40ダイヤ) |
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シリーズ3 | シリーズ4 |
子亀は人の言葉を話すこともなく、ただ静かに浅い水の中を揺蕩うだけである。
冥水苑は誰とも話すことなくで、寝食も忘れて公営工房に籠もっていた。
子亀は冥水苑の最初の友達だった。いつも彼女に寄り添うように、公営工房で幾多の昼夜をともにした。
冥水苑は他人と話すのが好きではなかった。
彼女が好きなのは細かいからくり。わずかなきっかけから無限の変化を生み出すからくりの設計を始めると、彼女は周りのものを全て、傍にいる子亀のことでさえも、忘れてしまう。
ある時、部品を作り終えた冥水苑が振り向くと、傍で子亀が首を伸ばして待っていた。どれほど待っていたのだろう、彼女は申し訳なく思った。
それから半月以上もかけて、冥水苑は不眠不休でからくりで動く鉄メッキの亀を作製した。子亀の友達を作ってやろうと思ったのだ。
「水苑、そんな亀なんか作るために、ずっと公営工房に籠もっていたのか?」
冥水苑が亀のからくりを持って公営工房を出ようとすると、仲間たちにからかわれた。彼女は言い返すこともせず、腹が捩れるほど笑っている彼らをただ静かに見つめるばかり。
「見せろよ!アハハッ、この亀……わ??痛っ!」
仲間たちの指があと三寸で触れるというところで、からくり亀がガブリと噛み付こうとしたのだ。すると彼らは怯え、もう二度と冥水苑をからかうことはなかった。
冥家の家長は早くから冥水苑の才能に気が付いていた。彼女は幼い頃から複雑なからくりを作ることができたのである。
当時の冥水苑は髪を二つ分けた幼い姿で、小首を傾げなら大真面目にこう言い放った。
「世界にからくりほど単純なものはありません。複雑なのは人の心です」
この頃、南境に位置する朱雀の新家長が、腕利きの技術師を募っていた。祝家所有の宝物を収める『明月楼』建築のためである。
家長の指示で、技術師として冥水苑は雲上の南境の地へと向かうことになった。
南境は殺伐とした北国とは違い、山のあちこちに花々が咲き乱れ、くねくねと曲がる小川が鮮やかなベールと翡翠の玉のようだった。そして南境の民は陽気に話しかけてくる。
南境に来なければ、冥水苑はいつまでもあの公営工房に子亀と共に籠もっていただろう。だが、今や自分は見知らぬ土地にいる。新たに出会う人や物事に馴染まなければならない。
一番疲れるのは祝家の新任家長、祝羽弦の相手だ。彼は話し好きでよく笑い、出し抜けに人をからかってくるのだ。
だが時として、祝羽弦は静かになることもあった。それは琴を弾く時だ。彼が弾くのいつも同じ曲。上着を肩から羽織り、琴を奏でながら庭で一人酒を楽しんでいる。
冥水苑にはそんな彼が理解できなかった。「複雑なのは人の心」とはよく言ったものである。
だがわからないからこそ、彼のことが気になった。
明月楼の建築がいよいよ完成すると、冥家の先代家長が冥水苑の元を訪ねてやって来た。彼女を冥家の新家長にしようと、故郷である北境に連れ帰ろうとしたのだ。
祝家も冥水苑を留めておく理由はなく、彼女を見送ることにした。
出発前夜。祝羽弦はただ静かに、冥水苑のために何度も同じ曲を奏でた。祝羽弦が言葉を紡ぐこともなければ、冥水苑から話しかけることもない。
琴の音色と月明かりだけが、ふたりの最後の夜を彩るのだった。
南境での経験は冥水苑を変えた。
部屋に引き籠もるのはもう止めよう。
冥家へ戻ると、冥水苑は南境での経験とからくり術を融合させたデザインの服を考案した。相変わらず彼女は物静かではあったが、もはやからくりしか知らなかったかつての彼女ではなかった。
五年後、冥家の家長就任式典で、冥水苑は祝羽弦に再会することになる。笑顔の彼は以前より頼もしく、また祝家の家長として全てが順風であるように窺えた。
冥水苑も今や、一族を率いる家長としての貫禄を漂わせている。
彼らは家長として相応しい儀礼だけ済ませると、それ以上の言葉を交わすことはなかった。
祝羽弦が冥家から帰っていった後、侍女が恭しく錦の箱を持ってやって来た。
「祝家家長様から、これを水苑様に渡すようにと仰せつかりました」
冥水苑が箱を開けると、中には美しい細工の小型羅針盤が入っていた。
冥水苑はそっと大切に小型万象儀を箱から取り出すと、あのからくり亀を飾っている思い出の棚に並べるのだった。
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朱雀
完成報酬 | コーデギフトBOX (【背景】雲海の朝焼、40ダイヤ) |
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ページ名 | カテゴリ | 部位 | 入手方法 |
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亭畔柳 | ヘアスタイル | - | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
雲中鳳凰笛 | ドレス | - | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
踏歌 | コート | - | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
雲外 | 靴下 | +α | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
鳳凰涅槃 | アクセサリー | 前景 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
牡丹詩 | アクセサリー | 床 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
鈴玉石 | アクセサリー | 頭 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
宝玉傘 | アクセサリー | 両手 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
花露 | アクセサリー | 首 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
凰羽簪 | アクセサリー | 頭+2 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
神来筆 | アクセサリー | 左腕 | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
雲南少女 | メイク | - | イベント【雲上絶景 四神降臨】 |
シリーズ1 | シリーズ2 |
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シリーズ3 | シリーズ4 |
祝羽弦が一番嫌いな言葉は「運命」。
祝家滅亡かと囁かれたその時、絶対にそうさせてたまるかと決意したものだ。
当時の祝羽弦は十歳だった。両親を一晩にして失い、無邪気な少年時代は終わりを告げる。そんな彼は涙を流す暇もなく家長の座に据えられ、足元から虎視眈々とその身を狙われることになるのだった。
四神一族は雲上国の四方を治めているが、各々が牽制し合っている。
西極の白虎が雲上を守っている以外は、どこかの力が弱まろうものなら、すぐに他の四神一族がその隙に入り込もうとするだろう。
朝廷で大きな権力を握る青龍一族や、南方の辺境で力を蓄えている朱雀一族の祝家は、きっと窮地に必ずつけ入るに違いない。
そして朱雀一族内には、幼子い祝羽弦が家長になったことにより。良からぬことを企む者も少なくなかった。
そんな祝羽弦が信用できるのは、傍仕えの執事だけだった。
激動の渦中、祝家滅亡が囁かれる。人々は幼い家長である祝羽弦について「いずれ殺されるか、家長の座から引きずり下ろされるに決まっている」と噂したのだ。
だがこの十歳の少年はその予想を裏切った。
祝羽弦は一族のならず者を粛正し、家長の座を堅固なものにしたのである。そしてわずか数年で祝家の隆盛を取り戻すどころか、父親が家長であった頃の栄華を凌駕するほどに、一族を繁栄させたのだった。
「祝家の新家長は恐ろしい、へらへらと笑い優男を気取りながら、その本性は冷酷無比。一瞬で敵を斬り捨てる男だ」
人々はまた噂した。
時は流れ、祝羽弦が十六歳の頃。祝家は宝物庫である明月楼を建てることになった。
それに対し、四神一族の中では最も歴史の浅い玄武一族から、冥水苑という少女が遣わされてやって来た。建築を口実に、朱雀に対する牽制の意味合いも含んでいただろう。
「羽弦様」
執事が音もなく近づいてくると、祝羽弦に訊ねた。
「冥水苑ですが、身辺調査をいたしますか」
「いや、かまわないさ」
祝羽弦は興味なさげに答えた。
執事は立ち去ると、祝羽弦は遠くを見やった。
そこには水色の衣を纏った少女がただ一人、生い茂る草の中で真剣に建築のための測量を行っている。彼女の頭は未来の明月楼のことでいっぱいらしく、祝羽弦の方を見向きもしない。
さすが玄武一族、やることが違う。
祝羽弦はにやりとした。
玄武がそうくるなら、こちらもそれなりの対応をしなければ。冥水苑はまだ十五六歳の小娘だ、宝石の類をいくつかやれば機嫌も取れよう。だがそれは祝羽弦の見込み違いであった。冥水苑は心血の全てを明月楼の設計と建築に傾け、彼の方にはまったく振り向かなかったのである。
冥水苑は一心不乱に建築作業にあたった。一方の祝羽弦は浮ついている。彼はまだ何が本当に大切なのかわかっていないのである。
祝羽弦は冥水苑の心の中を覗いてみたいと思った。この世にここまで一途な人間がいるものかどうか、この目で確かめたい。
彼は手を変え品を変えて、冥水苑に美しい景色を見せたり、珍しい宝石を与えたりもした。だが彼女が笑顔を見せたのは時間と方位を示すことができる羅針盤だけだった。
その時から、祝羽弦は本気で願うようになった。
「彼女の心に寄り添いたい」と。
やがて明月楼が完成すると、冥家家長は冥水苑を次期家長の座に迎えることに決め、彼女は故郷に帰ることになった。
出発前夜、祝羽弦は母が好きだった曲を冥水苑のために奏でた。母は古琴が好きで、幼い日には子守歌代わりに奏でくれたことがあった。月明かりの下、祝羽弦は夢見心地で母親の琴を聴いたものだ。祝羽弦が奏でる琴の音には、何ともいえない哀愁が漂っていた。
冥水苑と過ごしたあの夜。話すことも笑うこともしなかった自分――もともと、話したり笑ったりするのが好きではなかった本当の自分を思い出す。
祝羽弦が考えるべきことは沢山ある。祝家の未来、四神一族の牽制、雲上天子の血脈の呪い……。
その中に冥水苑も含まれていた。
それから五年後。
冥水苑は正式に冥家家長となり、四神一族の家長は式典に招かれることになった。
古くから仕える執事が、祝羽弦からの贈り物として珍しい宝石を選ぼうとした時、祝羽弦は首を横に振った。彼の宝物は、すでに美しい錦の箱にあるのだから。
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青龍
完成報酬 | コーデギフトBOX (【背景】浮雲の滄海、40ダイヤ) |
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シリーズ1 | シリーズ2 |
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シリーズ3 | シリーズ4 |
白家の次期家長がついに選定された。
それは、ほとんどの者が予想した通りであった。
彼の者の名は白永義。人は彼を称えて義王と呼んだ。
その力は朝廷をも凌ぎ、雲上天子ですら彼のことは一目置いている。
しかしながら皆が不思議に思ったのは、千帙老師が長い間、どうして白永義を家長に据えなかったのかということだ。既に白家内部は白永義が取り仕切っており、千帙老師は長年木堂に籠もって出てこなかった。そんな老師がなぜ家長の座を早く白永義に譲らなかったのか、と。
その内情を白家の人々だけは知っていた。
千帙老師は待っていたのだ、白永義が本物の青龍となって青雲を駆け巡り、万里にその名を轟かすこの時を。
それは少し前のこと。正式に家長に就任する直前、白永義は三十日間も姿をくらましていた。
朝堂から影も形も消えてしまっても、白家の人たちは彼の行方について堅く口を閉ざしたまま。
遂には雲上天子が痺れを切らして彼の安否を尋ねる遣いの者を白家に寄越してきたが、千帙老師に追い帰されたのだった。
そして三十日後、行方知れずの白永義が幽閉院から姿を現した。久しぶりの太陽の光が目にしみる。彼は意識を澄まして目を閉じると、幽閉院の中の宝物を思い浮かべた。
白家に代々伝わる雲上の最高傑作品たち。まるでそれらが瞼に刻まれているかのように、目を閉じるといつでもそこに輝いて見えた。それは午後の日差しよりもさらに眩しい輝きを放っている。
白永義の目にはかつてない光が満ちていた。それはまるで飛び上がらんとする青龍のような輝きだ。
「遂に見つけた。過去と未来を繋ぐ方法を……」
白永義は十二歳で玉壺園を設計し、雲京中をあっと言わせたことがあった。その時から千帙老師だけでなく、雲上中の者たちが、この少年が青龍となり青雲の上に飛び上がるのを待ち望んでいた。
皆、彼を「雲上の気風を受け継ぐに相応しい者」と認めたのだ。
彼の行く道は十二歳の時に定められていた。数千年にも及ぶ雲上の歴史を受け継ぎ、その純然たる古典を後世に伝えることを、人々は彼に求めたのだ。
だが、他人の敷いた道に甘んじて終わる白永義ではなかった。
白家が彼の可能性を封じようとしたのは、彼ら自身が百年もの間、家の掟に囚われ、それ以外の生き方を知らなかったからである。このままでは白家は、身分制度に囚われ古いしきたりの中で自らを腐らせてしまうだろう。
白家は今や、因習と決別すべき時を迎えていた。
そこで白永義は、流行のデザインを学び始めた。それまで十数年間に及びデザインを学んだことはなかったが、持って生まれた抜群のセンスで、人々から賞賛を集める作品を生み出すに至る。
さら白永義は伝統を打ち破る革新的な天才デザイナーたちと交流を深め、彼らに自分の下で働くよう勧めた。雲上で最も古い家族だった白家は、新たなデザインや創造力、エネルギッシュな能力を必要としていたのだ。
白永義のその行動は千帙老師を大いに驚かせ、彼は永木堂に呼び付けられることになった。だが、白永義はそこで初めて千帙老師に一礼することを拒んだのである。
加えて白永義は「あなたを超える作品を生み出せた時こそ、白家家長の位を譲ってほしい」と千帙老師に宣言したのだ。
千帙老師はこれを良しとすると、遂に白家の未来は白永義の手に委ねられたのであった。
永きに渡り白家を取り仕切っている千帙老師を超えることは、並大抵のことではなかった。白永義は自分が満足できるまで、作品を作っては修正を加え続けた。
仕事に専念するため、彼は自ら幽閉院に閉じ籠った。そこは白家歴代の至宝が眠る場所でもある。
先祖たちの知恵の結晶である書物を並べた白永義は、今までにない体の震えを感じた。
書物の中に描かれている過去の遺物たちは、今まさに自分が目指そうとしている極地だったからだ。
「どんなデザインでも、どんな道でも、行きつく先は同じなのか」
白永義は黙り込んだ。
己は己、誰かと比べる必要などなかった。過去と未来を融合させ、古い伝統に新しい命を吹き込む――これは自分にしかできないことだ。
白永義は自身が新しく生まれ変わった気がした。
白永義が自らデザインした作品を千帙老師に渡すと、この百年の歴史の荒波をかいくぐってきた老師は、初めて己の衰えを感じさせられた。
機は熟した。白家は、世界は、もはや自分のものではないことを老師は悟ったのだった。
白永義は、天にも届かんとする古木に舞い上る青龍のごとし。嵐を巻き起こし、天の遥か彼方まで昇ってゆくだろう。
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