【黒ウィズ】訣別のクロニクル Story2
story 聖王崩御
<メティースの提案で歴史を『イイもの』に書き替える事になった君たち。>
<神界崩壊?>
<君は歴史書の内容を思い出す。
かつて存在していた、神々が統べる7つの異界を内包する大異界――神界。
それは、天界の聖王、イアデル・セラフィムの崩御から間もなく崩壊した。
メティースの話では、今ある正史の悲劇は神界の崩壊に端を発して始まったものだという。>
ワイの泡ん中にいれば他の人からは見えんからとりあえずそっから出んことな。
あとワイ、泡を作とる間は一切喋れんから。
<そう言うと、メティースはトートと額を合わせ、呪文を唱え始めた。>
<鳥のような声で一鳴きすると、トートは口から虹色に輝く膜をだし、それを膨らましていく。
それはシャボンの泡のように君たちを包みこんでいく。>
<君たちは〈時〉を超え、数年後の天界、聖王、イアデルの崩御する日へと渡っていく。>
<天界の宮殿では今まさにイアデルがその生涯を終えようとしている。
横たわるイアデルの傍らに、ミカエラとイザークの姿もある。>
<苦しそうな声で続けるイアデル。>
<と、イアデルはイザークを見て、>
<それを聞いたイアデルは静かに微笑む。>
<それがイアデルの最期の言葉となった。>
<イザークは何も言わずに窓から飛び去っていく。>
<と、ミカエラは翼を広げて飛び立つ。>
<と、メティースはトートの作った魔法の泡の中で走り始めるが、全く前に進まない。>
<天使の姉弟を追い、君たちは全力で走り始めた!>
***
<魔物を倒しながら先を急ぐ君たちの前方にミカエラの姿がある。>
<ミカエラの先にはイザークがいるが、彼は使い魔と話をしているようだ。>
<と、使い魔の方へ走り寄ろうとするトートを、>
<メティースが慌てて引き止める。
君たちは陰に隠れて様子を窺う。>
一緒に魔界へ行くんだから。
<トートがスクブスの前に飛び出す。>
<スクブスは君たちの存在にも気が付いて、>
<言われるまでもない。君はカードに魔力を込めた!>
BOSS スクブス
<君の放った攻撃を受け、スクブスは倒れる。>
<一方で、スクブスはその身を起こすと、>
<羽を広げて飛び去っていく。>
<イザークはそう言い残し飛び去っていく。>
<メティースがたまらず飛び出す。>
私は未来の事を知っています。このままだとイザーク様は本当に……。
<メティースは、歴史を変えに来たという自分の目的をミカエラに話していく。>
<なんだそんなことか。>
<トートはじっとミカエラを見つめる。>
<こうして君たちは、イザークを追って魔界へ行<事になった。>
story
<君たちはミカエラと共に、天界から魔界へと渡ってきた。>
<などと話をしながら魔王の宮殿を目指している途中――
君は自分の意識が遠のいていくのを感じる。
光に包まれていくこの感覚を、君はつい最近も味わっている。
それはこの神界へやってきた時の感覚と同じだった。>
イザークは史実通りの愚かな弟だと思う?
<王位を継げないからといって、姉を裏切り、魔界へ渡る様な
そんな身勝手な行動を理解出来る人などいるのだろうか?>
<君はその思いがけない問いかけに戸惑う。>
「ちょっと君?話聞いてる?」
<純白と漆黒、2色の翼を持った天使は、そう言って君の前から消えた。>
<君はメティースの声に我に返る。
君は意識を失う前と同じように、皆と魔界の宮殿に向かって進んでいる。>
<心配そうに尋ねるミカエラに君は心配いらないと答える。>
<イザークは歴史に書かれている様に愚かな弟なのだろうか?君はプリュムの言葉が気になる。>
<なんでもない。とにかく先を急ごう。君はそう言って歩みを速める。>
***
魔界の宮殿まで辿り着いた君たち。
しかし、元々魔界の王はこの神界から抜け出したいと考えており――
お父様の力が衰えてきた頃から、その勢力を拡大していったのです。
「ほう。許せないのならどうするんだ?」
<君たちの前に、一際巨悪な魔力を放つ魔族が現れる。>
<アモンは冷たく笑いながら顔を上げる。>
まあ、すぐに前聖王になりますがね……。
<仮面の下から狂気を宿したアモンの眼がギラリと光る。>
<君はカードに魔力を込めて、襲い掛かるアモンに立ち向かう!>
BOSS アモン
<君の放った渾身の攻撃を受け、アモンが膝をつく。
<その言葉にミカエラの顔つきが変わる。>
<アモンは彼方の宮殿を見上げる。>
<アモンは不気味な笑みを浮かべたまま、動かなくなった。>
<ミカエラの言葉に君たちは力強く頷いた。>
story
<魔王の間を目指し、宮殿の中を進んでいく君たち。
君はミカエラの顔を覗き見た。
イザークが自らの意思で魔界に降りた。アモンの言葉を聞いた後のミカエラはどこか沈んだ様子だった。
自分が聖王を継ぐことが許せなかったから弟は魔界に降りた。そんな考えを抱いているのだろうか。>
<ウィズは確かめるように、メティースに訊ねた。
ミカエラに遠慮しながら、メティースは答えた。>
魔界へと渡ったとされています……。
<ミカエラは、俯いて涙を落とす。>
何か大変な事情がおありなんですよ、きっと。
誰がアニマルじゃ!
今も神殿のアイドル、レメモちゃんにぞっこんでな……。
<収拾のつかなくなった雑談をメティースが断ち切る。>
<ミカエラは声を上げて笑っている。>
<ミカエラは、優しく微笑むと、頬の涙を拭った。>
***
<君たちはついに魔王の間へと辿り着いた。>
この中にイザークが……。
<目の前の大きな扉を開き、君たちは中へと入っていく。
しかし、その中にイザークの姿はない。
そこにいるのは、魔王の座についているブラフモ一人である。>
貴様の弟は、既にその翼を漆黒に染めたのだ。自らの意思で私に忠誠を誓ってな。
貴様の様な弱き者の統べる天界など恐れるに足らん。即座に滅ぼしてくれるわ!
我々は7つの異界全ての総意によってこの神界を作り、共存の道を選んだのです。
その調和を乱す暴挙を、他の異界の神々が許すはずありません!
それは一度乱れれば、たちどころに崩壊するはかなき鎖のような物にすぎん。
そしてその鎖は、私が貴様を葬る事によって今、断ち切られるのだ!
***
<そう言って、ブラフモは君を見下ろす。>
<まずい。既に魔力を使い果たした君にこれ以上ブラフモの攻撃を受ける事は出来ない。>
<ブラフモが再び強大な魔力を解き放とうとしたその時――>
<ブラフモは苦しそうな声を上げ、その場に崩れる。>
<倒れたブラフモの背中には、イザークの剣が深々と突き刺さっている。>
<イザークはそう言うとブラフモの背中から剣を引き抜いた。
ブラフモの血を浴びたイザークの翼は、みるみるうちに黒く染まっていく。>
<と、ミカエラはその場に泣き崩れる。
その時、辺りが光に包まれ、君にとって見覚えのある天使が姿を現した。>
<ミカエラはそう言ってプリュムの前にひざまづいた。>
<プリュムは自分の首飾りを外すと、それをふたつに分けてミカエラとイザークに授ける。>
<プリュムはそう言い残し、消えていく。>
<君はふと、以前見た先王イアデルの講義を思い出す。>
――よいか。万事においてもっとも重要なことは、均衡、バランスである。
この様に、双方の力が同じであれば、秤が傾くことはない。それは天下も同じ事……。――
<イザークがため息交じりにイアデルの言葉を話し出す。>
<イザークは少しだけ照れくさそうに呟いて、魔王の玉座に腰を下ろす。>
<突然呼びかけられたメティースが飛び上がる。>
この愚かな堕天使の名をしっかりと歴史に刻んでおけ!
<それを見ていたミカエラは君たちを振り返る。>
私は天界に戻り、聖王として私のすべき事をしようと思います。
魔界の王と戦う天界の聖王として……!
<そう言い放つ彼女の顔にもう迷いはない。強く清々しい聖王の顔がそこにあった。
宮殿を出て、天界へと帰る君たち。その間ミカエラが魔界を振り返る事はなかった。>
起こった事は起こるべくして起こった、ちゅーことやな。
<メティースはトートと額を合わせ、呪文を唱え始めた。>
<鳴き声と供に生み出された虹色の泡に包まれて、君とウィズは空高く昇っていく。>
<そして君たちは光に包まれた。>
story
気が付くと、君たちは自分の部屋にいた。
手元の歴史書は、バロンから手渡されたままの、ひどく古いものに戻っている。
「中身を確認してみるにゃ。」
君は頷き、歴史書を開いた。
「やっぱり何にも変わってないにゃ……結局、元通りの歴史に戻っただけにゃ。」
そこには、神界崩壊後、長い間姉弟で戦う事となったミカエラとイザークの
悲しい歴史が書き込まれているだけである。
そしてやはり、イザークは愚かな堕天使として記録されている。
「目の前の事実がそのまま真実だとは限らない、ってことだにゃ。」
どこかで聞いたそのセリフに、君はそうだね、と答えた。
感慨深げに歴史書を読み返していくウィズ。
「にゃにゃ!これって私たちの事にゃ?」
ウィズの言葉に君も歴史書をのぞき込む。
『天界の聖王ミカエラは勇敢な黒猫の魔法使いを従えて、魔界へ乗り込んでいきました……』
君はなんだか恥ずかしくなって、歴史書を閉じる。
永い時を超えてきた歴史書の埃が昼下がりの西日を浴びながら、キラキラと宙を舞った。
「クシュンッ。」