アモン・バッケン
アモン・バッケン CV:財満健太 |
2014/12/29 |
バックストーリー
魔界の貴族の家に生まれたアモンは、幼い頃より戦争というものを恨んでいた。
そして何より、ブラフモ・グロルの事を恨んでいた。
神代の大魔王として知られているブラフモ・グロルであるが、当時まだ賊軍を率いる荒くれ者に過ぎなかった。
アモンの住んでいた街は、このブラフモによって滅ぼされ、幼いアモンは両親を失ったのである。
時は流れ、没落貴族として身を隠すように、ひっそりと穏やかに暮らしていたアモンの元に、ブラフモの根城である砦から、手紙が届いた。
「この私にー体なんの用が?」
そんな疑念を抱きながら、封を切ると、中には『今すぐ砦に来るように』とだけ書かれている。
これは憎きブラフモを討ち、両親の仇を取るまたとないチャンスかもしれない。
彼の心に復讐の炎が灯った。
父親の形見のナイフを懐に忍ばせて、アモンは砦へとやってきた。
荒くれ者で溢れかえる内部へと通された彼は、椅子に深々と腰かける人物の前へと案内された。
「お前がアモンとやらか?」
アモンは男の見下した態度にムッとするも、凄まじい威圧感に圧倒され動くことができない。
「私の名は、ブラフモ・グロル……」
しかしその名を耳した瞬間、アモンは吹き上がる激情によって恐怖心が凌駕されていくのを感じた。
そして何とか怒りを抑えると、静かに口を開いた。
「私に何の用が……」
今、目の前に、両親の仇がいる。呼び出された理由なんてどうでもよかった。
アモンはただ、全神経を研ぎ澄まし、その男を討つ瞬間を探っていた。
ブラフモは椅子からゆっくりと立ち上がり、アモンの元へと歩み寄る。
そしてアモンの体を証め回すように見つめて言った。
「お前には今日から、私の影武者としての人生を送ってもらう」
突然の、そして一方的なブラフモの要求にアモンは声も出ず目が点になってしまう。
「報告通り、背格好は私と瓜二つ……だが一つ……顔だけが違うようだな」
ブラフモに見つめられたアモンの端麗な顔は小刻みに震えた。
「時はまさに戦乱の世。これから魔界の王となるために私の影となる者が必要になってな」
そう言ってブラフモは、ガタガタと歯の根が合わずにいるアモンの耳元で囁いた。
「だが、まさかその影となる者が、我が命を狙っているとは……」
ブラフモはアモンが懐に忍ばせていたナイフを抜いた。
「その度胸だけは認めてやるとしよう!」
その言葉を耳にした刹那、アモンは衝撃と共に頬が熱くなるのを感じた。
顎をつたい、滴り落ちる液体が床を赤く染めていく。
「心配はない。もうお前に綺麗な顔は必要がなくなるのだからな」
そう言ってブラフモは、アモンの前に仮面を差し出した。
「これで顔を覆い、敵を欺くのだ」
「もし……、断ったら?」
「どちらがいいかよく考えるんだな。顔以外も今ここで切り刻まれるのか、仮面を被って新たな人生を歩んでいくのかを……」
――今の自分ではこの男を倒せない。しかし側に身を置けばいつかは……。
そう復讐を誓い、アモンは屈辱に耐えながら自らの顔を覆った。
しかし、その仮面をつけた瞬間から、それまでのアモン・バッケンは消失した。
復讐の炎は仮面の持つ魔力によってかき消され、彼の心にはブラフモヘの忠誠心だけが残った。