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【黒ウィズ】女神のイタズラばとるっ!(大魔道杯)Story

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作成者: にゃん
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story1 海と山のばとる


「この島は海のものだ!山なんかに渡さないんだからな!

「この島は海底火山のてっぺん!定義上はお山!

「ふたりとも喧嘩はやめなさい!お願いだからやめて!やめろって言ってるでしょうがァ!!!


「ああ……どうしてこんなことに――

「――なっちゃったんだろうな……。




女神のイタズラばとるっ!




 ――数日前、このへんの海の女神ミーテは波を起こす魔法の箒に乗って日課の見回りをしていた。

リタウィンでは、あわや神々の大戦争が勃発しそうになったりと、いろいろあったが、この〝コスプレ〟という文化は良いものだ。


「わったしは海のメイドさん~♪海をきれーに掃除する~♪

 ミーテが鼻歌まじりに波に乗っていると恐ろしい轟音が辺りに響き、海が震え、波が泡立った。

「わわっ、なになに!?今度こそ神々の戦争が起きたの?世界の終わりが来ちゃったの!?

お……収まった。なんだ、ただの地震か。このへんじや珍しいね。――ん、あれは……?

 ミーテが遠くを見やると、白い煙をあげる小さな陸地が、水平線から突き出ていた。

「もしかして……島!!私の海に島ができたのー!?

そうか、さっきの地震は海底火山の噴火が原因だったのね。それで新しい島が生まれたんだ。

おお、よしよし、いい子いい子!私の海に生まれてくれてありがとう!早速、他んとこの海の女神に自慢しよ――ん?

 陸地の方から逆向きの波が起こる。一歩ごとに逆さまの滝を噴き上げながら、巨大な、それはもう巨大な女神がやってきた。

「やった、新しいお山だ。

 このへんのお山の女神リャーテは愛おしそうに、できたての小さな島を撫でた。できたてなので、ちょっぴり熱かった。

「ちょ、ちょっと待て!それは私の島だ!

「え……。でも、これ、お山。

「あー、そっか。これ、海底火山だもんね。

 ミーテはこのへんの海、リャーテはこのへんの山を司る女神だ。だが〝このへん〟の定義はふわっとしている。

「け、けどね。これって山というより岩だろ?たぶん満潮になると沈んじゃうし。そしたら海の下にあるわけだから、海のものだろ?

「でも、海の下は立派なお山だし、それに――

「あんたとは先代の頃からの付き合いだろ?子供の頃はよく遊んであげたよね?山から流れてくる板切れとかも私が片付けてるんだよ?

「……わかった。今回はゆずる。海の中にあるし、海のもの、だよね。

 ミーテの畳み掛けるような主張を仕方なく聞き入れて、リャーテは立ち去った。年長者を立てたのである。

一方、ミーテはそんなリャーテの配慮も知らず、島の周りではしゃぎまくっていた。

「これであんたは今日からうちの子だぞ。あんたも山なんかより海の子のほうがいいよな~?

リャーテはぴたっと足を止めた。

「山、なんか?

 リャーテは「このへんのお山の女神」の座を最近に――と言っても100年くらい前だが――母から継いだばかりである。

母は、いつもお山のようにどっしり構えて、めったに怒らない、とても優しい女神だった。――しかし引退する時にリャーテにこう伝えた。

「お山はね――なめられたらあかん。

 リャーテが小さかった頃は――いや、すでに大きかったが――近所のミーテによく可愛がってもらったものである。

(けど、私も今年で2000歳になった。もうお酒が飲める歳。私は……大人!

いつまでも近所の〝リャーテちゃん〟じゃない……!)

「やっぱり、この島は私のもの!!

「ええっ!?今さらダメだ!!この島は私のものってさっき決まっただろ!

「このへんのお山は私が司る。だから、この島も私のもの!

「新米女神のくせに生意気な!この島は私のものだ!


「いや~リタウィンの時は大変でしたが、なんやかんやでどうにかなりましたね。あの時は私もどうかしていました。

「……その節は大変ご迷惑をおかけしました。今日はごゆるりとお寛ぎください。

「仰々しいわね。そんなことより早くお祭りに行きましょうよ。

「リャーテさんの山祭りがあるんですよね。楽しみです。

「ミーテもこのへんに住んでるしな。あいつも誘って一緒に遊びに行こう。

「――あら?何ですか、この物音は?まるで大波と岩なだれがいっぺんに起きたような――……って、大変なことになってますわ!!


「この島は海のものだ!山なんかに渡さないんだからな!

「この島は海底火山のてっぺん!定義上はお山!

 そこでは、腰まで海につかった巨大な女神が大岩を操り、魔法の箒に乗った女神が大船もひっくり返る威力の大波をぶち撤けていた。

「海海海海海海海海海海海海海海海海海ィ!!!!

「山山山山山山山山山山山山山山山山山ァ!

「ふたりとも喧嘩はやめなさい!お願いだからやめて!やめろって言ってるでしょうがァ!!!


そして、こうなった。


「双祭の儀を申し込みます!

「受けて立つよ!勝ったほうがあの島を手に入れる。それでいいね!

「では、山祭り対海祭りということで。なんかもうそういう流れで。説明は以下省略で。

「サフィナがまた審査委員長ね。裁判官のコスプレをしてきてちょうどよかったじゃない

「ふざけている場合ではありませんよ。結果如何によっては、このへんどころか下界中の海と山の神々の大戦争に発展しかねません。

「大丈夫だ。今回は私たちが審査員だからな。

「厳正かつ完璧にジャッジしてさしあげます!

「……不安しかありませんね。不安を司る女神になりそうです。




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story



 山祭りは、その名の通り、山の幸を味わい、山の美を愛でる、ごくごく普通のお祭りである。

このへんの村人や、遠方から訪れた観光客たちが山の幸を料理したり、皆に振る舞ったりしていた。

「はい、山の幸をどうぞ。マッツたけ、っていうキノコだよ。

 あまりパッとしない見た目のキノコを炭火で焼いて、塩をぱらぱらとかけただけの、素朴な料理――しかし、何だ、この香りは!?

「じゅるり……おひとつ、いただきます。

 マッツたけを口に含んだ途端――高雅な香りが、未知の食感が、まろやかな食味がサフィナの舌と魂を無上の歓喜に包み込む!

「おーーーいーーーしーー-いーーー!!

このマッツたけ、おいしすぎでしょ!この勝負、お山の勝ち!

「まだ決めてはいけませんよ。海祭りの方も見て、公平に判断するべきです。

「そうだそうだ!マッツたけ1本で勝負を決めるな!!

「山の幸は秋が本番。栗もリンゴもある。

だから、海に、勝ち目は、ない。

「た、食べ物ばかりじゃない、いやしんぼう!胃袋を満足させるだけがお祭りじゃない!お祭りには華やかさも必要だ!

「……へえ?そんなこと、言っていいの?

「きょ、今日はいつになく強気ね。でも今に見てなさい。すぐに巻き返してやるんだからな!

「だったら、急いだほうがいいよ。――手遅れになる前に。

「えっ、それはどういう意味――まさか!し、しまった!この時季は!

「このへんは暖かい地方。だからまだ、お山は、本気を出してない。

 山の木々をよく見れば、葉がうっすらと金色や紅色に色づきはじめている。

「紅葉が――来る。あと2、3日で、お山はもっと綺麗になる。

「紅葉の中、マッツたけを食べるとか最高でしょ!私、昇天してしまいますよ!

「それは仕事場に帰るだけなのでは?

 豊富な山の幸に加え、紅葉のシーズンになれば、秋の海に勝ち目はない。

「海なんかに、負けない。

「うぅ……こうしちゃいられない!ほら、あんたたちも海祭りに来なさいちゃんと公平に審査しなさい!



審査員一同は、海祭りの会場に移動した。――マッツたけの香りに後ろ髪を引かれながら。

――会場は閑散としていた。無理もない。すでに海祭りは夏に終わっている。双祭の儀のために無理やり再開したのだ。


「――おや?海の幸はないのですか?魚とかエビとか力二とか。

「うちの子たちは誰にも食べさせないよ。そもそも、このへんの海は漁業じゃなくて観光で栄えてるんだから。

でも大丈夫よ。今年の海祭りで大好評だった海のお家の焼きソヴァーをあげるから。さあ、食べなさい。そして感動するんだ!

 濃厚ソースを絡めた麺、その名も焼きソヴァーをサフィナはすする。……すする。……すする。その目は、草を食む牛にどこか似ていた。

「これは……泳いだ後だからこそ美味しく感じる食べ物では?普通に食べるとしょっぱいです。あと油っこい。

「がーん。

ええい、こうなったら――いや、かくなる上は!

クックック!塩を買い占めたぞ!海がなければ塩は作れない!マッツたけを塩抜きで美味しく食べてみな!

「はい、岩塩。

「その手があったかぁぁぁあ!!

「買い占めなんて卑怯な真似には負けない!


「わ、私のあれは物価統制なので。合法なので。妨害の意図なんて、これっぽっちもないので。

「今言った言葉をもうー度、言ってみろ。面と向かって、直接、この私の目の前で。


 結局、山祭りの優勢は変わらない。応援が大勢駆けつけていたことも山側を有利にしていた。


「リャーテさんのお母さんから、栗を司る権利をいただいた恩義がありますので、こうして3上したのです。さあ、焼き栗をお食べなさい。

「リンゴもいっぱいありますよ。リタウィンに負けないくらい楽しいお祭りにしましょうね。リンゴもいっぱいありますよ。リタウィンに負けないくらい楽しいお祭りにしましょうね。

「こちらでマッツたけを焼いてまーす。おひとり様1本ずつどうぞ~。

「こら!イヴやトリエテリスはともかく、あんたは漁師の息子だろ!なんで山祭りを手伝ってるの!海祭りに来なさい!

「だってミーテ様、ご自分の海じゃ魚をとらせてくれないじゃないですか。けれどリャーテ様は船を作るための木を分けてくれるんですよ。

「モノなんかにつられて恥ずかしくないの!?海の男が山の女神に媚びを売るなんて恥を知れ!恥を!

――ペスカはぴたっと作業の手を止めた。乱暴にコスプレを脱ぎ捨てると、人の身でありながら、堂々と女神に対峙する。

「人間はねえ!食ってかなくちゃいけないんですよ!神様と違って!!

「ど正論だな。

「うぅ……、そんなの正論という名の暴力だぁ……!

「お山が有利なのは秋という季節だけではなく、日頃のご利益も関係していそうですね。あっ、そちらの焼き栗もください。


 ***


ミーテは、サフィナ以外の審査員たちをこっそり集めた。

「ねえ、双祭の儀で私に投票してくれない?真珠とかサンゴとかいっぱいあげるから。この大粒の〈海の願い〉も特別にあげちゃう!

「いけませんよ、審査員の買収なんて。仮にも女神とあろうものが――ほらそこっ!女神リタも受け取ろうとしない!

「ちぇーっ。

「そんなこといわないでお願いじまず!何でもする!何でもするから!この戦い、どうしても負けられないんだ!!

「どうして負けられないの?たかがちっぽけな島ひとつじゃない。

「初めてなんだ……私の海に、島ができたの!

島のない海の女神はな、すごく肩身が狭いんだ。

このへんの神々の集まりに出ると、「え、その歳でまだ島ができてないの?」とか親戚のおばさんたちに言われるし!!

海の女神の同窓会に出るとうちのカワイイ島自慢とかされたり、今年で何歳になった島の絵とか見せられるし!

そういうのはもう嫌なんだ!私だって!私だって幸せになりたい!!

「そこまで嘆かなくても……。べつに、島がなくても幸せになれるでしょう?世の中にはいろんな形の幸せがあるはずですわ。

「あんたにだけは言われたくない!

「なぜっ!?

「海の良いところは、海の幸だけじゃないでしょ。このへんは暖かい地方なんだからまだ泳げたりしないの?

「どれどれ、水の温度は……微妙に冷たいな。泳げないほど冷たいわけじゃないけど、じゃあ泳ぎたいかって聞かれると微妙な温度だ。

「今は秋だから……。夏は泳ぎに来る人間たちでごった返してたのになあ……。

「水の中で泳げないなら波の上を走るくらいしかないわね。

「あなたねえ……。そんなことをできるのは女神だけでしょう。

「波の上を……そ、それだ!もうそれしかない!あの遊びなら山祭りに勝てるかもしれない!




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 女神ミーテが考えついた新しい海の遊びとは……。

「海で泳げないなら波に乗ればいいじゃないというわけで……!

「「「YEAAAAAAAAAH ! ! !

 これは海の女神たちの間ではよく知られた伝統的な遊びだ。

海に流れ着いた板切れを使って同じことができるのでは?とミーテは考えたのである。

「――この遊び、面白いわね!なんて言う名前なの?

「特に名前はないけど、そうだな。さーっと来た波に、ふぃん!って乗るのがコツだから『さーふぃん』でいいんじゃないか。

「――けど、この「さーふぃん」って、夏にやったほうが楽しいんじゃないか?

「いえ、そうとは限りませんよ。夏は普通に泳いでいる人がたくさんいますから板にぶつかる危険性が高く、自由に遊べません。

それに、秋のほうが陸風が強いのでいい波ができやすい。海水温も夏よりは冷たいですが、まだ充分にあたたかく――

「なんで審査員みたいなこと言ってるの?

「いや審査員だからですよ!?

 こっそり――と言ってもバレバレだが――海祭りの様子を見に来たリャーテは『さーふぃん』を見て驚いた。

(あの遊びは昔いっしょにやった……!

で、でも大丈夫。あの遊びは確かに面白いけど、審査委員長のサフィナ様はマッツたけに夢中だから!)

「――YEAAAAAAAAAH ! ! !

「サフィナ様!?

 「さーふぃん」で盛り返す海祭りも紅葉や山の幸で食い下がる山祭りも大勢の人々や神々を楽しませた。

「リャーテも最近まで女神見習いだったんだよね。立派に跡を継いで頑張ってる。見習いたい。私もお山のような守護の女神になる。

「リタ様に「皆のコスプレを仕立ててあげて」と無茶振りされた時は殺す気かと思いましたが……このマッツたけで全部許せますね!!

「プリフィカ様……ちゃんに誘われて来ましたが、この「さーふぃん」という遊びはすごいですね。図書館の文献にもない、全く新しい遊びですよ。

「メルボンも今日は遊ぶの。『さーふぃん』のあとは海のお家の焼きソヴァーがおいしいの。


「いい波だったら、いくらでも作ってあげるよ。海よ、波打て~!

「「「「YEAAAAAAAAAH !!!

 ミーテが魔法の冪でー掃きすると綺麗な白波が巻き起こる。「さーふぃん」向きの良い波だ。

メイドは人に奉仕する。立派な仕事だ。神も人に奉仕する。――立派な仕事だ。だからメイドのコスプレを選んだのだ。

という後付け設定をキメ顔で語る予定だったのだが、楽しかったのでミーテは忘れていた。



双祭の儀が終わり、結果発表の時が訪れた。

「こたびの双祭の儀は……海祭りの勝利とします。

「――ぃぃぃいいいいやっったあああ!!私の勝ちだ!あの島は私のものだ!!


 勝敗は僅差であった。審査基準のひとつである〝みんなの笑顔〟は海祭りも山祭りもほぼ同数であった。

混沌の審査員リタとプリフィカは『さーふぃん』の海祭りに投票し――

「さーふぃん」のパーリィィィッ!な雰囲気が少し苦手な審査員ダリアとリンゼは、ゆっくりと美味と美景を楽しめる山祭りに投票し――

サフィナは山の幸で堪能した後で「さーふいん」にハマり、海祭りに投票したのだ。



「負けを認めます……。

 リャーテの声はいつになく小さかった。

「ですがリャーテ、あなたも実は「どちらかと言えば、島は海のものだ」と考えていたのではないですか?

「えっ?どうしてわかったの……?

「リャーテのお山では岩塩が採れます。つまり、このへんのお山はずっとずっと大昔は海だったのです。

そして悠久の歳月を経て、このへんのお山が生まれ、このへんの海とともに歴史を歩んできた……。――

そんな雄大な歴史に比べれば、あんな小さな島が喧嘩の原因になるはずがありません。他に理由があったのではありませんか?

 ミーテは、はっと気づいた。『さーふぃん』の波に心を洗われていなければ、その理由に気づけなかっただろう。

「もしかして……私が「山なんか」って言ったから?

「……うん。でも、私も「海なんか」って言っちゃったし。

「最初に言った私が悪いに決まってるよ。

あんたが小さい頃は……いや、あの頃も充分大きかったけど……よく「さーふぃん」をして遊んだよね。

その頃は「さーふぃん」て名前はなくて、波乗りごっこって呼んでたっけ。

私、あの頃のままだったよ。あんたはもう大人なのに、〝ご近所のリャーテちゃん〟扱いしてた。

「ううん、やっぱり私、まだまだ子どもだった。跡を継いだばかりだから変に意地を張っちゃって……。

昔みたいに私のことリャーテちゃんって呼んでいいよ。

「だから私も、ミーテお姉ちゃん……って、呼んでいい?

「もちろん!あっ、そうだ。さっき海のお家を探してたら、面白いものが見つかったんだ!ちょっと待ってて!



「コツは思い出した?さーっと来たら、ふぃん!って乗るの。

「う、うん、やってみる。

 ミーテが魔法の箒を大ぶりにー掃きすると、大きな波――いや、〝海のお山〟とでも言うべき巨大な海水の塊が盛り上がった。

「行くよ、リャーテちゃん!

「うん、ミーテお姉ちゃん!

「「YEAAAAAAAAAH ! !!

 ミーテが海のお家で見つけたのは寿命で倒れた巨木から切り出されたー枚板だった。

子供の頃のリャーテが波乗りごっこに使っていた板である。今のリャーテには小さいのでリタが拡大の魔法をかけてあげていた。

海と山の女神の波乗りは大勢の人に目撃され、「さーふぃん」が下界中に広まった現在でもその記録は塗り替えられていない。


「あれ?どうしたの、サフィナ?嵐の海みたいに顔色が青いけど。

「大丈夫ですか、サフィナ様?お顔が冬のお山みたいに白いですよ……。


「……えー、実は……その……おふたりに良いお知らせと悪いお知らせがあります。

 双祭の儀に対して、ちょっぴりトラウマを抱えている女神たちに嫌な緊張が走った。

「気をつけたほうがいいわよ。それって差し引きすると結局、合計が悪いお知らせになるやつだから。

「良いお知らせは……双祭の儀の勝者に新しい島を司る権利が与えられることです。敗者も結果に納得してますし、円満解決ですね。

「うん、今回は私の負け。あの島はミーテお姉ちゃんのものだよ。大切にしてあげてね。

「ありがとう、リャーテちゃん。私、頑張って育てる!いつの日かでっかい大陸にしてみせる!

「で……悪いお知らせ、というのはですね……。

 サフィナがお知らせ口にする前に土煙を上げて何者かが押し寄せてきた。


「我こそは、このへんの岩の女神!あの岩はどう見ても岩だ!ゆえに我のものである!

「妾こそ、このへんの丘の女神あの丘は誰がどう見ても丘ァ!つまり妾のものですわ!

「私はあっちの海の女神よ!あの島の位置する海域は、正確には私の管轄だからあの島は私のものよ!

「「「よって、双祭の儀を申し込む!!!


「……という具合に、他の神々も、あの島の権利を主張していましてね……。どうします?挑戦を受けますか?

 審査員一同は「争いは争いを呼ぶ」というこの世の真理を噛み締めていた。……あまり噛みごたえはよくなかった。

ミーテはしばらく陸揚げされた魚のように口をパクパクしていた。

「う、受けて立つに決まってるだろ!あの子は私のものなんだからあああ!

「が、がんばって……ね?


 神々のはてしなきばとるが、また、始まる!






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