【黒ウィズ】さらばガングリオン(大大大感謝魔道杯)Story
story さらばガングリオン
病院の外に出ると、生暖かい太陽の光が。ロディの頬に当たった。
ガングリオンの摘出手術を終えたロディにとって、その温もりは母のような安らぎを。与えてくれるものだった。
「お世話になりました。看護師さん。
「鈴木さんも体に気を付けてくださいね。
鈴木さん。
ロディ・ギャドの本名であった。
「あなた……どこかで会ったことあるかしら?
「え?いえ。そんなはずはないと思います。ふふ、私の顔なんてよくある顔ですから。
「おーい。ちょっと待ってくださーい。
あー、間に合った。鈴木さん、雅美ちゃんから届けてほしいって言われたものがあるんです。
入院期間中に仲良くなった少女の名であった。
渡されたのは、メッセージカード。そこには自分への激励の言葉が書いてあった。
「あの子、私なんかよりずっと重い病気なのに……。
「雅美ちゃん、今日手術なんですよ。
「また必ず会いに行くって伝えておいてください。
受け取ったメッセージカードを鞄にしまい、ロディは踵を返した。
そこにはガングリオンに悩まされていた鈴木からロディ・ギャドヘと変身する意思が込められていた。
かつてあの巨大ビジョンには自分のCMがエンドレスで映っていた。
だが、いまは違った。
「ぎゅっぎゅっぎゅー♪兄者のハートをぎゅっぎゅっぎゅー♪
「ぎゅっぎゅっぎゅー♪姉者のハートをぎゅっぎゅっぎゅー♪
「幸せぎゅっぎゅ♪童子の握力あなどるなか~れ♪
「幸せぎゅっぎゅ♪従者の握力あなどるなか~れ♪
「応援してくれないと。
「眼球握り潰しちゃうぞ。
「「眼球ぎゅっぎゅ♪童子の握力あなどるなか~れ♪
「あたしが休んでいる間に、あんな邪道が横行している。
いまはアイドル戦国時代。童女ですら生き馬の目を抜こうとする。時代であった。
ほんのわずかな隙を見せれば、女王も王座から転げ落ちるのだ。
「ゼロからのスタート?
むしろマイナスからじゃないのが残念なくらいよ。
徐々に会場に近づいていくたびに、鈴木からロディ・ギャドヘと変身していく。
心から変わっていく。心は女王の覇気を生み出し、最強のアイドルを生み出す。
「さあ、女王の帰還よ。
***
「いきなり新曲から行くわよ。
オーディエンスが静まりかえる。
「グッバイ、ガングリオン。
オーディエンスが割らんばかりの歓声を上げて総立ちになった。
舞台袖でその様子を見るきゃっつたちも、その光景に痺れ、憧れた。
「うわー、すごい盛り上がり。
「お客さんの血圧が心配になるくらいですね。
その夜のライブは伝説として長く語り継がれることなった。
ロディのパフォーマンスやオーディエンスの熱狂。もちろんそれは語り継がれるべきものだった。
だが、それ以上の事が起こった。
奇跡と呼べる出来事が。
ライブが終わる頃、参加したオーディエンスたちの腕にまるで聖なる瑕のごとく、ガングリオンが出来たのだ。
奇跡という他なかった。
「というライブがこの前あったニャ。きゃっつもオープニングアクトで出たニャよ。
そうなんですか、と君はやきめしを食べながら答えた。
「またチミの分のDVDを買っておいたニャ。定価で譲るから買ってほしいニャ。
その話題については一言会った。
以前DVDを購入した時に、再生することが出来なかったのだ。
なのでDVDを買ってもお金の無駄遣いになってしまう。
君は猫(?)の提案を断った。
「それは申し訳ないことをしたニャ。でもそういうこともあると思って、チミの分の再生機を用意したニャ。
これと合わせて、買うといいニャ。前回買ったDVDも再生できるようになるニャよ。
そう言われると、君も考えを変えざるを得なかった。
何より前回のDVDが見れるようになるという部分が良かった。
前回払った分のお金が無駄にならない。
「チミ、なかなかいい買い物をしたニャよ~。よっ、買い物上手。
変な猫(?)に解放された君は、さっそく持ち帰った再生機とやらの説明書を読んだ。
なになに……端子を機器側につける。
君は指定されている紐のようなものを機器につなげた。
その端子のもう一方を……。
モニター側に接続する。
……。
モニターッ!?
君は思わず天を仰いだ。
ちっくしょう……と。