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【黒ウィズ】聖サタニック女学院3 Story1

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聖サタニック女学院3

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 ――数日前。

君は檻の中にいた。教室の隅っこに置かれた、鋼鉄製の檻である。

異界の歪みに飲み込まれ、「あ、魔界か、久しぶりだな」と思った次の瞬間、とっ捕まったのだ。


m用意しておいてよかったね、檻!

 なんで閉じ込めるの?と君はミィアに訊ねた。なんで?なんで?

mだってニンゲンもクラスの仲間だから!

 仲間って便利な言葉だな、と君は思った。

仲間を檻に入れるの?と、ミィアに反論しようとしたが、目の前に交換留学生(捕虜)のウリシラがいた。

Uクラスのみんなでー生懸命つくったんですよ。今度こそ逃げられないようにって。

s夏休みにまたニンゲンがいなくなってミィアったら、すごい落ち込んでたのよ。

mMoooo !シルビーってば、それは言わないでって言ったじゃーん!

……キミ、逆に考えるにゃ。これも魔界なりのおもてなしにゃ。

 逆に考えすぎだな、と君は思った。かなり師匠も魔界に毒されている。……そこで、ふと君は、いつもいる面子が欠けていることに気づいた。

君はみんなに訊ねた――ルルベルはどこ?


 ***


その頃、生徒会長アリーサのもとにカナメとイーディスが訪れていた。

Aルルベルが行方不明だと?

Iそうよ。アルトーパークで謎の大爆発が起きる直前にね。

当時集まっていたイニス家のー族は全員消息不明よ。我が校の生徒、エレイン・イニスもね。

K聖女イェネフの血筋を引くイニス家の事件とルルベルの失踪がほぼ同時なんて。……偶然とは思えないわ。

 生徒会室の扉が勢いよく開いた。

C話は聞かせてもらったよ!

Kではドラク卿、今までの話を要約してください。

Cもうー回聞かせてくれないかな?


Aアルトーパークのー件なら知ってるぞ。ギブン便のギブンから聞いた。

Iそのギブンを呼んでもらえないかしら?

Aこの中のどれかだろ。おい、心当たりのあるやつ。前に出て報告しろ。

Gあっ、それたぶん俺っすわ。

俺が速達を届けに行った時は、屋敷は静まり返ってましたね。受取人は、エレインっていう魔人でした。ほら、最近うちに転入してきた。

A報告は以上か?

G以上っす。それと、このメッセージはメッセンジャーごと自動的に消滅します。え?俺そんな話聞いてねえんだけど――

チチチー!

Aあ、自爆機能を切るの忘れてた。メッセージを伝えたら、消去されるんだった。プライバシーとか、大事だからな。

I合理的ね。

「「「チチチー!」」」

C今度はなんだい?

Aああ、ギブンを群知能っぽく改造した。他の個体が死ぬと、自動的に記憶が共有されるようにな。

K(……ん?機密保持のためにギブン1羽を消しても他のギブンに記憶が拡散しちゃうんじや自爆させてもあまり意味ないんじゃ……?)

…………。

(まあ、いっか)

G死ぬたびに、同じ苦痛を味わうのかよ!俺たちだって生きてるんだぞ!

Gてめえらは……!てめえらは悪魔だ!

IAK………………。

Gいや何か言ってくださいよ……。


 ***


Uそういうわけで、ルルベルさんは行方不明なんです。

 ルルベルとは、魔界の瘴気の淀みから生まれた邪神だ。その瘴気は魔族たちが争い、憎悪することで生まれるという。

しかし、君が出会った時のルルベルは今の魔界に憎悪が足りないせいか、お子様サイズで復活してしまったようだった。

たまに力を取り戻す時もあったが、あれでさえ全盛期の完全体ではない……のかもしれない。

mエレちゃんも学校に来てないんだよ。せっかくの登校日なのに!

 自分も探すのを手伝うよ、と君は言った。……だから、この檻を開けてくれない?

mいいよ!ニンゲンもー緒にルルちゃんとエレちゃんを探しに行こう!

あ、お昼の時間だ!

U早く行かないと、フェニックスブラットが売り切れちゃう!

mきっとルルちゃんもお腹減ってるよね!

s案外ひょっこり出てくるかもね。

 クラス全員が大移動を始め……そして誰もいなくなった。

お腹が、ぐう、となる。そういえば、異界の歪みに飲み込まれたのは朝食前だった。

……これ、もしかしたら、生き物を途中で飼うのに飽きてほったらかしにするヤツにゃ?

 滅びればいいのに、と君は思った。具体的に何がとは言わないが、滅びればいいのに。

君が虚ろな目で虚ろなお腹を抱えていると、檻の前に黒い人影があらわれた。

普通の見た目の少年だった。ここは魔界で、しかも女学院なのに。

zやあ、はじめまして。俺の名前はザラジュラム。見ての通り、平凡な男子高校生さ。


 ***


 少年は、鉄格子の隙間から金属缶に入った飲み物を君に差し入れた。

z缶コーヒーだ。遠慮するな。俺の奢りさ。腹の足しにはならんだろうがな。

どう見ても怪しいヤツにゃ。飲まないぽうがいいにゃ。

 大丈夫じゃないかな、と君は言った。檻の中にいる自分たちを傷つけたいならとっくに石でも槍でも投げているだろう。

君は特に警戒せず、缶コーヒーを口に含んだ。

うっ……!

どうしたにゃ?毒にゃ!?やっぱり毒にゃ!?

 このコーヒー……死ぬほど……。

死ぬほど!?

 死ぬほど甘い……!

z何事も甘いほうがいいだろう?

 ものには限度があるよ、と君は抗議した。

z――青春って、何だろうな?

 急角度で話をそらしたな、と君は思った。かなり無理のある角度なので、話が脱線している。

z楽しければ、あの頃に戻りたいと後悔する。苦しければ、もうー度やり直したいと後悔する。だったら、本物の青春なんてないほうがいい。

お前もそう思わないか?昼休みの間、教室の隅っこで寝たふりをして過ごすような青春は必要か?

 別に寝たふりはしていないが、ここでムキになって否定すると面倒くさそうな気がした。

zこんな真っ黒な青春は嫌だろう?お前がどうしてもと願うなら俺が薔薇色の青春に塗り替えてやろう。

 いえ結構です、と君は言った。

z結構です(・・・・)、ということはご契約内容に承諾いただいたということですね。

 あ。

キミ!ああいう勧誘はちゃんとはっきり断らないとダメにゃ!

 教室中になぜか花びらが舞い始める。

zきれいな桜だろう?薔薇もいいが、世界を染め上げるにはこの桜吹雪がちょうど良い。

 桜吹雪が止むと、全てが手遅れだった。

聖サタニック女学院の誰も彼も、正反対の性格に捻じ曲げられていたのだ。

「「「ゆるふわ爽やか!聖サタニック女学院!」」」

 戻して……、と君はすすり泣いた。

みんなを元に戻して!



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story



sはい、それでは「卒業生を送る会」の出し物を決めます。なにか意見のある人は?

wはい、演劇がいいと思います!

wあたしは合唱がいいと思いまーす!

 死ぬほどまともな会話だ。邪神像に生肉を吊るしたりしないのか。

君が腰掛けているのもまともな椅子である。もちろん、檻の中でもない。

幻覚なのか、それとも時空が歪んでいるのか、すっかり教室も様変わりして、毒々しい色彩やデザインは影も形もなかった。

君も新しい生活に慣れてきたにゃ?

 全然慣れてないよ、慣れたら負けだよ、と君はウィズに答えた。

全くその通りにゃ……。何とか打開策を見つけないといけないにゃ。

 あの桜が散って数日ほど経つが、君はみんなを元に戻す方法を見つけられずにいた。

sちょっとニンゲン!飼い猫と話をしないでって、何度言ったらわかるのそれも超器用な腹話術で!

Uつか学校にまで黒いマント着てくるとかマジキモいんだけど。マジで魔法使いでも目指してるわけ?

pこらァ!シルビー!ウリシラ!ちょっとこっち来いやァ!

Uなんスかセンセー。もしかして、イジメはいけませーんとか言うつもりじゃ――痛あっ!耳!耳引っ張らないでよ暴力教師!

 反転してすっかり魔族らしくなったパブロ先生はウリシラとシルビーを呼び寄せ、ふたりに小声でささやいた。

p――あのな、あの子、今少し問題を抱えててな。実は……ってことがあって、それ以来……でな。ご家族からも……って頼まれてるんだよ。

Uマジすか?すみません、知らなくて……。

クソ!わたし、サイテーじゃん……!

sごめんなさい、私も何も知らなくて……。本当に無神経な発言でした。

 シルビーは、なぜか涙をぬぐいながらおそるおそる君に近づくと、壊れやすい何かに触れるように言った。

s――えっと、その、「魔界」……だっけ?そういうね、夢を見ていたのよね。あっ、いや、馬鹿にしてるわけじゃないのよ!

……きっと疲れてるのよ。ニンゲンくんは転校生だから、まだ新しい環境に慣れてないのよね。

新しい環境って、ストレスたまるし、誰にだって、心がつらい時はあるもの。

私、委員長だから!いつでも相談に乗るから!

 シルビーは膝を床に付き、わざわざ君と同じ目線に立つと、心の底から哀れみをこめたように言った。

sー緒に乗り越えていこう。ね?

 君はここ数日の間、みんなを正気に戻そうと、何度も説得を試みていた。

――ここは魔界で、自分は魔法使いだと。

だが、なぜかそう説明すると、みんな死ぬほど優しくなるのだった。

隣の席から、すっと1冊の本が差し出された。きれいな青空の色をした表紙で、何やらポジティブなタイトルがついている。

mこれ、つらい時に読むと元気が出る本だから。もし、よかったら……読んで。

ほら、あたし、文学少女だから。

 自分で言うんだ……。

Uさっきはごめん。人のセンスからかうとか最低だよね。その黒尽くめコーデ、超似合ってるよ。わたし、生まれつき口が悪くてさ。

ほら、わたし、小悪魔系ギャルだから。

 自分で言うんだ……。

pそうだ、ニンゲン。保健室にいるルルベルにプリントを届けてくれないか?

 パプロ先生は君に1枚の書類を手渡した。「卒業生を送る会について」と書かれている。

……あ、これ、さりげなく「おまえも保健室に行ったほうがいいよ」って言われてるな、と君は察した。

ルルベルは保健室にいるらしいにゃ。どうなっているか不安だけど、急いで会いに行くにゃ。


 ***


 廊下はいつもの聖サタニック女学院のままだ。だが桜吹雪が舞っている。徐々に薔薇色の青春とやらに塗り替えられているようだ。桜なのに。

wあたし、福祉の道に進みたいの!

それで、海外の恵まれない子たちを助けるお仕事をしたいんだ。

wあたい、応援するよ!スラ子の夢をバカにするやつはあたいがぶん殴ってやる!

wもー、優しいオオカ美にそんなことできないよー。

 他の生徒に桜吹雪は見えていないらしい。他にもいろんなものが見えていないようだが。

保健室を探すうちに、君はいつの間にか校舎の屋上に出ていた。ルルベルの邪神像があるおかげだろうか、ここも元のままだった。

保健室を探すうちに、君はいつの間にか校舎の屋上に出ていた。ルルベルの邪神像があるおかげだろうか、ここも元のままだった。

Gチチチ~♪

「あはは!捕まえちゃうぜ~!待て待て~!

「お待ちなさい、おシャバさ~ん!捕まえてモフモフしちゃいますわよ~!

Kあらあら、みんな仲良くしなきゃダメよ~。

 君は何も見なかった。そういうことにした。でないとやってられなかった。

ルルベルにプリントを届けに行かなくていいにゃ?

 君は邪神像を見上げ、今のルルベルに会うのが怖い、と正直に打ち明けた。

気持ちはわかるにゃ。今のみんなはひどいものにゃ。

 昔のみんなは素敵な女の子たちだった。そう、瞳を閉じれば蘇る。素晴らしい思い出の数々が――

Aもうふたりには猛毒を盛っておいた。

m足かせだよ。今度は逃げないように。

mニンゲン狩り面白そー!

s合宿の成果見せちゃうわよ。

rニンゲン……覚悟しろよぉ……。

 いや、そうでもないな、と君は思い直した。彼女たちを元に戻さないほうがいいのかもしれない。……人を檻に入れたりしないし。

何を言ってるにゃ!今のキミは弱気になってるにゃ全部、心(メンタル)のせいにゃ!

魔族とか、人間とか、そんなの関係ないにゃ!助ける相手を生まれで区別するなんてー番やっちゃいけないことにゃ!

 ……ごめん、間違っていたよ、と君はウィズに謝った。

この薔薇色?桜色?ピンク色?あもう何でもいいや、この学校を元の聖サタニック女学院に戻そう!

それでこそキミにゃ。魔法使いは人々の奉仕者たれ、にゃ。

 今回は人じゃないけどね、と君は笑った。

wあ、福祉の話してる?

 してません。



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 ルルベルに会うため、君は保健室を探し回った。

空間がねじ曲がっているので迷ったが、通りすがりのドボスという職員が懇切丁寧に案内してくれた。

保健室に入ろうとすると、先に引き戸が開いて、見知った巨体があらわれた。

v……ニンゲンか。よかった。おまえたちも、まだ正気のようだな。

ズローヴァも無事にゃ?

v曲がりなりにも邪神の従者だ。多少の呪いなら耐性はある。

 じゃあルルベルも無事?と君は訊ねた。

vルルベル様は…………比較的マシなほうだ。

 これはだめなやつだな、と君は思った。


rもう、ズローパパったら心配性なんだから。わざわざ学校にまで見舞いに来なくていいのに。

 ……ズローパパ。

ズローヴァはお父さんということになっているみたいにゃ……。

 君はルルベルに声をかけた。

rああ、ニンゲンくん……だよね。転校生の。

はじめまして、優等生のルルベルです。よろしくね、ニンゲンくん。

 今自分で優等生って言ったよね?

久しぶりにゃ、ルルベル。今日は最初から大きいにゃ?

r噂には聞いてたけど……うまいね、腹話術。もはやプロだね。

 壁は分厚かった。この世界の歪んだ常識は半端な現実では微動だにしないようだ。

ずっと姿が見えなかったけど、今までどこにいたの?と君はルルベルに訊ねた。

rえっと、病気で……風邪で休んでいたの。

治ったと思ったんだけど、ちょっと立ちくらみがしちゃって保健室でお世話になってたんだ。

 つらいなら休めばよかったのに、と君は言った。

rでも、あたし、優等生だから。

 何度も言うんだ……。

r高嶺の花だから。

 そこまで言うんだ……。

rふふっ、ニンゲンくんったら、おもしろい。

 全く話が通じているように思えないが、顔をほころばせて笑うルルベルは本当に人間の少女らしかった。

rいけない。そろそろ帰らないと。また明日ね、ニンゲンくん!

 ルルベルが爽やかな笑みをひとひら置いて立ち去ると入れ違いでスローヴァが入ってきた。

ズローヴァは主君のルルベルについてはあえて触れず、ガラス窓の向こうを指差した。

聖サタニック女学院全体にあの桜の花が舞い降りていた。

vこのピンク色の結界……。さっき俺が見た時よりも拡大している。

にゃ!?ってことは、そのうち魔界全部がこの甘ったるい世界になっちゃうにゃ?他の魔族たちは何をしているにゃ!?

v王侯会議もうかつに手出しできんのだろう。あの呪いのせいでな……。

 これはいったい誰の仕業なの?と君はズローヴァに訊ねた。

v――ザラジュラム。ルルベル様と契約した聖女イェネフをさらった、強大な魔神だ。

 やっぱり、あの少年が黒幕か。何が平凡な男子高校生だ。

魔神ザラジュラムはルルベル様に匹敵する力の持ち主だ。元は天使だが、天界から堕ちて魔神に成った。

 いわゆる堕天使というやつだろう。だが、いきなり魔神になれるのだろうか?……魔王になるのも大変そうなのに。

vヤツの正体は、ただの堕天使ではない。

ルルベル様が魔界の瘴気の淀み……魔族達の憎悪から生まれたように、ヤツも、ある感情の淀みから生まれた存在だ。

それは生きとし生けるもの全ての――

z邪神の従者はお喋りが仕事か?

ザラジュラム!

 みんなを元に戻せ、と君は言った。

z断ると言ったら?

 みんなを元に戻せ!と君は叫んだ。

z――断る。契約は履行された。今さら破棄はできんぞ。

 みんなを元に戻して!と君は涙ながらに叫ぶ。

zいやだから……。

 戻せ!戻せよ!

zや、やめろ!襟を掴むな、ぐ、苦しい!ええい、離せというに!

はあはあ……しつこいヤツめ。全く、ー体どうしたんだ、ニンゲン。お前はそんなヤツじゃなかっただろう?

あの魔神、キミのことを知ってるにゃ?

 確かに普段の君ならあんな行動は取らないだろう。サタ女のみんながあまりにもアレなので動転しただけだ。だが、なぜそれ知っているのか?

zお前のことも知っているぞ、四聖賢のウィズ。

にゃ!?どうしてにゃ!?

v魔神の言葉に耳を傾けるな。――来るぞ。

 保健室の扉が開いて、人型の波がなだれ込む。――その全員がザラジュラムだった。

zこの学院も共学になった。男子の定員は、ほとんど俺が埋めている。

v数頼みか。魔神も堕ちたものだ。

キミ!あいつを倒して必ずみんなを元に戻すにゃ!

 言われなくとも!と君はカードを構えた。


 ***


これじゃキリがないにゃ!

 男子生徒は倒しても倒しても次から次へと湧いてくる。

zこの程度か。戯れどころか児戯に等しい。――つまらん。飽きた。お前たちも、逆しまに捻じ曲がれ。

 ザラジュラムが手をかざすと、強烈な桜吹雪が保健室に吹き荒れ始めた。

まずいにゃ。みんなが変になったときより花びらが圧倒的に多いにゃ!

 君もウィズも今は正気だ。だが、これだけの花びらを浴びれば、どうなるかわからない。

vニンゲン!

 ズローヴァは君を壁に押し付けると、たくましい巨体を傘にして、桜吹雪を受け止める。

vぐぅ……!

 ズローヴァの背中に、呪われた花びらが降り注ぐ。どいて、ズローヴァ!と君は叫ぶが――

vルルベル様と……子孫を頼む。

 桜吹雪が止むのとほぼ同時に、ズローヴァは瞳を閉じ、力尽き――

やにわに壁をドンと突き、君の耳元にささやいた。

v――ニンゲン、オレの女になれ。

女なんて、壁ドン頭ポンポンのルーティンでイチコロだろ?マジちょろいわ。

 ……君は、怒りと哀しみとともに、間髪入れず、ズローヴァの下腹部を蹴り上げた。

vふぎぃ!

 ズローヴァは君の蹴りー発であっけなく倒れた。強い魔族が反転したので弱くなったのだろう。

硬派な武人のズローヴァはもういない。魔界の雄牛は家畜に落ちぶれ、ただの軟派なクズと化した。

z己ひとりを犠牲にして、ふたりを庇ったか。どいつもこいつも自己犠牲がお好きだな。

 ザラジュラムはコキコキと首を鳴らしながら君とウィズを前髪の下から横目で見やる。

z月並みな台詞で恐縮だが、降参するなら今のうちだぞ。

俺はまだ本気が出せん。このような急ごしらえの器ではな。桜吹雪も当分の間は使えん。

――だが、桜は散り続ける。受け入れろ、ニンゲン。諦めて心を委ねれば、薔薇色の青春が待っているぞ。

 魔神が、嘲笑う。それは悍ましく、どす黒く、厭わしく、見るだけで目が潰れ、胸が張り裂ける――邪悪。

きっと彼にとっては何もかもが戯れで、遊び半分どころか、少しも本気じゃないのだろう。

君は……小指で弄くられる虫だ。

mだってニンゲンもクラスの仲間だから!

 仲間って便利な言葉だよな、と君は思った。こういう時に勇気が湧いてくるのだから。

今度はちゃんと断ってやるにゃ。

 わかってるよ、と君はカードに魔力をこめて――

――舞い散る桜の花びらを焼き尽くした。

z……それがおまえの答えか。

面白い。戯れにつきあってやろう。せいぜい無様に足掻くがいい。

 ザラジュラムは花びらの灰と火の粉を浴びながら、保健室から立ち去っていった。

敵は強大で、勝算もない。それでも、君の闘志は燃え上がっていた。決して燃え尽きることはない。

……ー方、保健室の火の手も燃え上がっていた。決して燃え尽きることはなさそうだ。

君が放った火の魔法はベッドのシーツやカーテンに燃え移り、すでに手遅れなほど延焼していた。

 sきゃー!火事よー!

 Uうわマジでヤバいヤツじゃん!消火器!誰か消火器持ってきて!

キミ……ここはー旦引くにゃ。

 でも……。

逃げることは恥じゃないにゃ!勝ち目のない戦いだってあるにゃ!

 mだ、ダメだよ、ルルちゃん、危ないよ……!

 rお願い離して!まだ中にお父さんが!ズローパパが!

 ……君は、気絶したズローヴァを苦労して担ぐと窓ガラスを割って、魔法で保健室から飛び降りた。

それもまた、青春の1ページだった。




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