【黒ウィズ】竜たちの飛翔 Story
story
大規模な捜索により、ディルクーザの居場所はすぐに判明した。
谷の奥深くにある、もう誰も使わなくなった古城が竜の住処となっていたのだ。
気付かれぬように、君たちは谷の裏側に沿って進み、ようやく近くまでたどり着いた。
道中の疲労を抜くために、まずは朝まで休むことにし、各々自由な時間を過ごしていた。
たき火の炎が、最初に入れた薪を半分以上炭にしていた。
アマイヤがかき混ぜる鍋の中身を覗き、ウィズが言った。
とアマイヤは君に味見のー匙を差し出す。
香辛料が少しきついかもしれないが、味は中々のものだった。
なにより、何の肉かわからないが、噛み応えがあり、旨みの強い肉が良いアクセントになっている。
ー体何の肉?と君はアマイヤに尋ねた。
君はギョッとなって、咀嚼を止める。
この師匠は自分の弟子に毒見させたのだろうか。
gギュッ!!
君もウィズのことを師匠だ、と懇切丁寧に説明した。
アデレードは剣に当てている砥石の動きを止めずに答える。
手に入れた竜力は?
剣を研ぐ手を止めて、アデレードはイケルを見る。
お前はどうなんだ?
言葉が余計な意味を帯びていた。そんな不安にかられ、アデレードは言葉を補おうとする。
だがイケルはその言葉を待たず、言った。
それと、ディルクーザを倒す責任もだ。
漏らすように少し笑ってから、アデレードはまた剣を研ぎ始める。
心配するまでもなく、イケルは自分が得た力について、充分理解している。
それがわかったからだ。
丸い体でコロコロと寝返りを打つアニマ。
もうしばらくすると眠ってしまうだろう。
優しい眼差しの奥に、戦いの気配に高ぶる炎が見える。ごつあるいはただのたき火の炎が瞳に映っただけだったのか。
ミネバはじっと揺らぐ炎を見つめていた。
その償いは何生分の死を積み重ねても償いきれない!
殺して、殺して、殺し尽くしてやる。
「人」によって裁かれろッ!
魔竜に対し、君も戦いの構えを取った。
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猛烈な雷撃の雨がディルクーザの四肢を串刺しにする。
アデレードが炎を纏い突き進む。
そのまま……。
全身を刃として、魔竜の横腹を貫く。
最後に魔竜と対するのはイケルである。
ディルクーザ。俺は誰だ。言ってみろ。
もはや魔竜に言葉を紡ぐ余裕もない。ただ足掻くように目前に牙を剥いた。
その首を、イケルははね飛ばした。
安心して、地獄に堕ちろ。
アデレードは遠くに広がるセトの谷を眺めた。
リティカはしょげたように喉を鳴らすグリフを撫でてやる。
君はミネバの言葉に同意する。
話によると、以前起こった事件の際に、どこかの世界と繋がってしまった穴があるらしい。
君とウィズはそこからならクエス=アリアスに帰れるかもしれないと、考えた。
しばらくミネバに同行し、その場所に案内してもらうことにしたのだ。
もうひとり、いやもうふたり、ここで別れを告げる者がいた。
イケルたちはセトの谷の王の座を固辞し、ー度故郷へ帰ることに決めた。
竜の力を得たいま、何かを見つめ直す時だと判断したのだ。
色々あった場所だが終わってみると悪くない経験だったと君は思う。
君は左右に揺れるウィズの尻尾を追いかけるように、セトの谷を後にした。
ちなみに。
セトの新王には……。
これはこれで、シビれるほど退屈だねえ。
アマイヤが即位した。
だが、しばらくするとまた別の王に変わったという。