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【黒ウィズ】シューラ編(サマコレ2020)Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
開催日:2020年6月30日

目次


Story1 驚きの出会い

Story2 今の牙

Story3 〈號食み〉の使命



rslf

KFFM


story


sどうもー!〈號食み〉でーす!

wおお!よくぞおいでくださいました!みなの者、宴じゃ、宴じゃ!!

 世界各地の氏族を巡り、その地の名産物を喰らうことで、トーテムの力を吸収――それを体内で混合させて、祝福の力となす。

そして、訪れた地に祝福を分け与え、運気の向上や、作物の豊穣を約束する。

それが、〈號食み〉の使命である。

各氏族にとって、〈號食み〉は最高の賓客だ。そのため〈號食み〉が来ると宴が開かれ、豪勢な食事が用意される。


wささ、我が氏族の名産、焼きソヴァーです!うまいですぞ!

sおいしー!

w我が〈海神族〉の誇る、トライデントロブスターのグリルですわ。どうぞご賞味くださいませ。

sほくほく~!

w俺たち〈ゾクゾク族〉の名産、超スパイシーカレーを召し上がれ!ひとつだけ超激辛味が混ざっているぜ!

sからうま~!


 氏族を巡る旅の途上、シューラたちは久々に、〈アレフワ族〉の街に足を踏み入れた。

sん~~~っ。船旅もいいけど、揺れない地面ってやっぱり安心するね。

lあれ?なんかここ見覚えある。

f〈奪魂杖〉を追うときにー度来たでしょう。宴にも参加していますよ。

s〈アレフワ族〉の街ね。ここ、港町だから寄りやすいんだ。

rああ。ジャビーのおっさんが言ってたな。人と物が集まるとかなんとか。

sそうそう。だから、こないだみたいに変な禁具が持ち込まれることも多くて――

wあぎゃーっ!!?

 突如。

 空から、何か巨大なものが降ってきて、地響きを立てて広場に落ちた。

Fあいたたた……。

 剣のような翼を生やした、大きなドラゴンだ。頭を振り、ふらつきながら起き上がる。

r……ああいうのもよく来るのか?

sあれは違うんじゃないかなあ……あ、ほら。防衛用の使い魔たちが出動してる。

「ウェーイ!ウェーイ!ウェーイ!

「ウェイ!ウェイウェイ!ウェイ!

Fうわっ!なんだこいつら!たかるな!こら、やめろ!やめろってこら、ちょ、この――

やめんかあ――――っ!!

「「ウエ――――イ!

Fおのれ、小癩な連中め!ん?なんかどっかで見た形してるな……。

ていうか、ここどこだ?えーいわからん!あいつはどこへ行った!?

「ウェイ!ウェイウェイ!

Fだからたかるな!つつくなこら!あーもーいー加減にしろ!フェルムがまとめて吹き飛ばしてやる!

 鋼の竜が暴れ出す。剣状の翼が空を裂き、集まってくる機械鳥たちを次々と弾き飛ばした。

l何あいつ!いきなり暴れ出すなんて!高貴なるドラゴンの風上にも置けーぬ!ぶっとばしてやるぅぅぅうらっっしゃあ!

sあ、レイル!あ―、行っちゃった……。

fすみません、ウチのレイルが。

r今回はいいんじゃねえか?ぶん殴ってでも止めねえと、被害が拡大しそうだしな。

sラディウスさん、戦いたいだけでしょ。

rまあな。行くぜ!

sもー。

F切り刻んでくれる!

lライズ――〈鉄槌の巻髪姫〉!

Fぐうっ!な、なんだ!?

sとりあえず、大人しくしてね!〝イリアステル・フリーズ〟!

Fぬわ!魔法か!?

rライズ――〈紅き黄昏〉!

〝ダークサンブラッド〟!

Fやばくない?

 ラディウスの放つ紅蓮の刃が、巨竜を真っ向から直撃した。

Fぎゃあああああああー!

r安心しな。峰打ちだ。

sどのへんが!?

r焼いて、治す。〈紅き黄昏〉の力だ。最終的にダメージが残ってねえんだから、気持ち的には峰打ちみてえなもんだろ。

sどーかなー……。

Fちょこざいな~……。

sあれ?女の子になった。

r竜に化けてたわけか。変わった氏族だな。どういうトーテムだ?

F氏族?トーテム?なんのこっちゃ!わけのわからんことを言いおって!!

sねえラディウスさん、このパターンって……。

rああ。氏族やトーテムを知らねえってことは、こいつ、まさか異界から――

wちょいちょい、ちょいちょい。おにーさん、おにーさん。

rあ?なんだ、嬢ちゃん。何か用か?

Kえとね。それね。ウチの剣。

r…………。は?

Sすいませんすいません!ウチのフェルムがすいません!


 ***


 フェルムと名乗る、竜変化の少女。ケイトリンと名乗る、ふわっとした少女。スバルと名乗る、しっかり者の少年。

話を聞いてみると、やはり彼らは、異界から来てしまったようだった。

Fフェルムたちは、厄介な魔剣を追っていたのだ。フェルムと同じく自我を持つ魔剣でな。他の魔剣を取り込み、悪さを働いていた。

Sどうにかそいつを見つけて、追い詰めたところだったんだけど……。

Kしたら、局所的かつ突発的な魔力の歪みが発生して。みんな、しぽーん!って呑み込まれちゃって。で、ここ。ナウここ。

r異界の歪みか……。

l何、最近流行ってんの?そういうの。異界から来るヤツ、やたら見るけど。

sとりあえず、この世界のこと、ちゃんと説明してあげなきゃね。


S卜ーテム……氏族……すごい、本当に異界なんだ、ここ……。

Fど、どうするんだ、帰れるのか?ー生こっちにいるなんて嫌だぞフェルムは!ケイトリンなんとかしろ~!……ケイトリン?

「ウェイ!ウェイウェイ、ウェーイ!ウェイ?

Kウェーイ。ウェイウェイウェーイ。ウェイ!

r順応早えな、この子。

 〈アレフワ族〉の機械鳥と会話(?)を交わしていたケイトリンは、こくりと小さく首をかしげた。

K我が家感。勝手知ったる我が家感。ほわい?

Sというか、この鳥……ケイトリンの使い魔にそっくりだ。もしかして――

sうん、たぶん、ケイトリンちゃんって、〈アレフワ族〉のトーテム……〈フワツとしたアレ〉ご本人なんじゃないかな?

lマジで!?トーテムの元になった人ってことー!?

F〈フワッとしたアレ〉ってなんじゃい。なんの説明にもなっとらんぞ。

Sつまり、ケイトリンの力がこの異界に流れて、卜ーテムになって……そこから、〈アレフワ族〉の人たちが生まれたってこと?

Kおお。おおお。なんか感動。わたし、ここの子になる!

sいや、この街の人たちが、ケイトリンちゃんの子供みたいなものなんだけどね。

 それを聞いて、ケイトリンはポンと手を打った。

Kそだ。んじゃ、ちょっとネゴっていい?これこれこーゆー感じのおブツ、あったら集めてほしいんだけど――

 ケイトリンの頼みに応じて、〈アレフワ族〉の使い魔たちが、続々と街中から魔道具を持ってくる。

Kほうほう。ほうほうほう。これはこれは。いやはやいやはや。なかなかどうして。

 ケイトリンは、ふわっとしたことを言いつつ、それらをガチャガチャいじり始めた。

 そして。

Kでけり!

rなんだそりゃ。いつもの鳥じゃねえか。

K見た目はね。中身はノンノン。

超即席の魔力波検出分析機。特定の魔力波だけを検知できるから、これで歪みを探せば――

 ケイトリンが魔道具を操作すると、鳥がクルリと西を向いた。

Kビンゴ!あっちにおんなじよーな歪みがあるぽげ~。

r……なんか、この前、似たようなもん見たな……。

s西に、歪みかあ……みんな、何か知ってる?

「ウェイ!ウェイウェイ、ウェーイ!

sへ~、そうなんだ。

rどうだって?

s昨日、密売人が、船に危険な禁具や呪装符を積んで、こっそり街から出て行こうとしたんだけど――

警備隊に見つかって、戦いになって。犯人は捕まったけど、船と物資は、港の西に沈んじゃったんだって。

rなるほどな。んじゃ、その拍子に禁具が発動して、異界の歪みを作っちまった、てのがありそうなところか。

sうん。〈アレフワ族〉の近くだったから、その繋がりで、ケイトリンちゃんの近くに歪みができちゃったのかもね。

Fん?じゃあ、フェルムとスバルまでこっちに来たのは?

K巻き添エーイ。

Fなんちゅうはた迷惑な話だ!

Sまあまあ、それで、えっと……もうー度、その歪みを通ったら、元の世界に帰れるんでしょうか。

sたぶんね。

禁具をほっとくわけもいかないし。サクッと取りに行っちゃおっか!



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story



sライズ――〈双子の人魚姫〉!

 シューラは水着姿になって、水中活動の力をもたらす呪装符をライズした。

S俺とケイトリンも、〈潜水〉の魔法をかけ終わりました。いつでも行けます。

rガキでもそんな魔法が使えるのか、クロム・マグナ魔道学園ってのは、相当な名門なんだな。

l負けてんぞー、魔道士。

r仕方ねえだろ。クエス=アリアスの魔法の効果は、契約できた精霊次第なんだから。

sじゃ、ちょっと潜ってくるね!

 ラディウスたちに手を振って、シューラは海にダイブした。


s禁具の気配は……うん、こっちだね。

Kシューラさん、そゆのわかるの?

sうん。〈號食み〉だから。

Kごーはみ?

sそう。普段は、いろんな氏族の集落を巡って、祝福を授けてるんだけど……。

強力な呪具や禁具を見つけて封印するのも、私たちの使命なんだ。

Sそれ……すごく危険なんじゃないですか?

sまあね。だいたいいつも命がけかな。

 禁具絡みの事件は、往々にして、命に関わる危険な事態に発展する。

それに、禁具の封印は〈號食み〉の力を――肉体に宿る祝福の力を用いて行うため、術者に凄まじい負荷がかかる。

シューラの父も、危険な禁具を封印するため身を削り、結果として命を落としている。

それは、〈號食み〉という氏族にとって、決して珍しいことではない。

Fー族郎党、よその連中のために命を懸けているわけか?わからん話だ。

sフェルムちゃんだって、他の魔剣が酷い目に遭わないように、悪い魔剣を追いかけてきたんでしょ?

F魔剣はフェルムの同胞だからな。だがおまえたちは、同胞以外のために命を懸けている。そこがわからん。

s〈號食み〉にとっては、この世界の氏族みんなが同胞なんだよ。おいしいごはんを食べさせてくれるからね。

Fそんな理由か?

s〝同じ釜の飯を喰う〟って言うでしょ?ごはんは、命の源だから。それを分かち合うってことは、命を分かち合うってことだよ。

私は、旅先で出会った人たちに――おいしいごはんを笑顔で分かち合った人たちに、誰ひとり悲しんでほしくない。

だから、禁具を封じるの。みんなに貰った命の力でね。

 フェルムは、「むう」と考えるように唸った。ー方、ケイトリンは、ふわふわと微笑む。

Kシューラさん、えらーい。

Fふん。おまえも見習ったらどうだ。そんなふわふわしてるから、あんなふわっついた氏族が生まれるんだろ。

Kわたしはほら。ゆったりふわふわ、つつがなーく暮らしたい派だから。しゃーないない。

sふふ。その影響かな。〈アレフワ族〉はみんな、のんびりしてて気のいい人たちばかりだよ。

名産品も、煮込み料理が多いんだ。放っといたら完成、みたいな。

Sひょっとして、めちゃめちゃもやし入れてきません?

sめちゃめちゃ入れてくる。めちゃめちゃしゃきしゃきしてる。

K食べたら心がしゃきしゃきーん!

Fいやなんもわからん。

 そんな会話を交わしているうちに、海底が近づいてきた。

s禁具はあのへん……なんだけど……何かいる!あれは……。

ドラゴン!?

Sあいつ――俺たちが追ってた奴です!

sえ?えっと、なんだっけ、魔剣を取り込む魔剣、だっけ?見た目すんごくドラゴンだけど。

Fフェルムと同じで魔法が使える。魔法で竜になっておるのだ!


Mほう――?貴様らも、この地に来ていたのか。

この地はいいな。実にいい。面白い力にあふれている!ここでなら、俺はもっと強くなれそうだ!

Fいい加減にしろ!強くなりたいからって、無関係な魔剣まで取り込みおって!ちょうどいい、貴様も持ち帰ってやる!

Mできるかな?

 魔剣竜はニヤリと笑い、キラッと輝く何かを口へ放り込んだ。

Mライズ――〈竜宮の舞姫〉!

 すると、海中に凄まじい渦が巻き起こり、シューラたちを呑み込みにかかった。

Sうわっ!

Kプリミティプグレート――ほにゃらら!

 ケイトリンが雑な呪文を唱えると、シューラたちを魔法の光が包み込み、荒れ狂う渦から守ってくれる。

Mふはははは!防いだか!ならばどんどん行くぞ!

 魔剣竜はさらに光るものを――呪装符を取り出し、大口に放り込む。

sどうしてライズを――まさか!

 思い出す。ここには、禁具と一緒に、密輸された大量の呪装符も沈んでいることを。

呪装符を使うには〝顔あり〟の武器が要る。もし、密輸された品のなかに、〝顔あり〟の剣もあったとしたら――

Mライズ!!

 魔剣を取り込む魔剣は、高らかに呪装符の〝銘〟を呼ばわり、その力を解放した。


 ***


Mライズ――〈青春マリンダイブ先生〉!

Sどう考えてもサルーム先生だソレ――――!

 もう何度目になるだろうか――さらなる大渦が発生し、シューラたちを襲う。

魔剣竜へと近づくまで、次々に放たれるライズを、ケイトリンが魔法で防ぎ続けていたが――

Kギガファンタスティック――

つかれた。

Sちょっとお――――!?

Kだってぇ~~~~。

 ー同はなすすべもなく大渦に呑まれ、巨人にぶん回されるがごとく翻弄された。

sくうっ……!

 身体に強い圧がかかり、上下左右の感覚が消える。脳が激しく揺さぶられ、意識が飛びそうになる。

s(これは……やばいかも!みんなは――)

 歯を喰い縛って耐えながら周囲に目をやると――

Kがぼぼぼぼぼ。

 渦のなか、ケイトリンが木っ端のようにもみくちゃにされ、目を回していた。

sいけない!

 助けなければ――と思うが、手持ちの呪装符に、この大渦をなんとかできそうなものはない。

s(海や水を操るトーテムの力なら……)

 たとえば、そう。先日訪れた〈青龍族〉。

彼らのトーテム、〈青龍轟神将〉なら、水を自在に操ることができるのに……!

そう思った瞬間、目の前に、強い光が弾けた。

魔力の光。強い力を秘めた、呪装符の光が。



sこれって……!?

 突然目の前に現れた呪装符を、シューラは渦にさらわれる前にどうにかつかみ、とっさに封呪槍へと放り込んだ。

頭に、呪装符の〝銘〟が伝わってくる。

まさか、と思いながらも、シューラはその〝銘〟を口にした。

sライズ――〈青龍轟神将〉!

 槍から、龍の形をした蒼い閃光がほとばしる。

その光は、たちまち渦へと喰らいつき、喉首を噛みちぎるようにして、渦をばらばらにしてしまった。

Mなんだとぉ!?

 渦が消え、自由を取り戻したシューラは、槍の口から呪装符を取り出す。

間違いない。その〝銘〟は〈青龍轟神将〉――〈青龍族〉の里にあるはずの、伝説級の呪装符。つまり、トーテムそのものだ。

sどうして――、……あれ!?

 まじまじと眺めているうちに、呪装符は、パッと細かい光になって散ってしまった。

当惑していると、すーっとケイトリンが泳いできて、ちょいちょいと肩をつついてくる。

K今の、シューラさんから出てきたよ。

sへっ?私がら?

Kうん。シューラさんのパワーが、今のになって、ポンッて出てた。待ってね、ちょい魔法で調べるから。

Mおのれ、次は別のやつで――うおっ!

S何度もやらせるかっ!

 スバルとフェルムが時間を稼いでくれている間に、ケイトリンが何やら指で魔法陣を描き、ふむふむとうなずいた。

Kシューラさんの力のー部だけが活性化してる。祝福の力がトーテムの力の混合なら、ー部だけ恣意的に選定して現出させる事も可っちゃあ可?

sごめん、よくわかんない。

Kちょっとね、そのまま欲しいの考えてみて。わたしがそこだけ魔法で押し出してみるから。

sわかった!

 うなずき、シューラは目を閉じて集中した。

思い出す。宴を開き、饗応してくれた人々を。あたたかな笑顔と、おいしいごはん。確かに心の通じ合った、幸せなひと時を。

s(この世界には、いろんなトーテムがあって、いろんな氏族がいる。みんないろんな使命を持っていて、いろんな暮らしをしてる)

(その暮らしのひとつひとつが、世界を作ってる。私はそれを知っている……見て触れて昧わって、笑い合って旅してきたから)

(だから――わかる!今、力を借りるべきトーテムは――)

K活性化確認!行くよ、シューラさん!

sうん!ケイトリンちゃん、お願い!

Kアブソリュートエクストラ――なにがし!

 ケイトリンの魔法で押し出された力が、呪装符となる。

シューラはそれを即座につかみ、ライズした。

sライズ――〈このへんの海の女神〉!

Mいやそれどういうヤツ!?――のわぁああぁああー!?

 今度は、魔剣竜が大渦に呑まれた。スパルたちを巻き込むことのない、きわめて局所的な大渦だ。

さらにシューラは、別のトーテムを思い浮かべ、その知識と記憶を呪装符に変えてライズする。

sライズ――〈仮初め・大海神〉!!

〝デウカリオン・プリミラ〟!

Mどわあぁああああ!?

 渦に巻かれた魔剣竜の下から、三叉柘のごとき水柱が立ち昇り、天を衝く洪水となってほとばしった。

 水柱は魔剣竜をー気に押し上げ、水面はおろか、その上の空に向けて、高々と跳ね飛ばす。

r待ってましただ!飛べ、フレーグ!

fあまり長くは飛べませんからね!

 ラディウスとレイルを乗せ、フレークが飛翔する。向かうはもちろん、天に打ち上げられた魔剣竜。

Mく、来るなあっ!

rロード――〈白霊竜の金色の翼〉!

 魔剣竜は宙で身をひねり、巨大な尾を叩きつけてくるが、これはレイルとフレークが障壁で弾いた。

Kぷはっ。アークセレスティアル――なんちゃら!

 さらに、水上へ浮上してきたケイトリンが魔法を放ち、魔剣竜の身体を空中で拘束する。

sケイトリンちゃん、ナイス!ライズ――

〈ln The Fast Lane〉!

 シューラは両足に風のブーツをまとい、空へ舞い上がる。

r決めるぜ、シューラ!

sりょーかい!

Mちょ、ちょ、ちょ――

 空中に縫い止められたままもがく魔剣竜へ、ふたりは同時に、最大のー撃を繰り出した。

r〝ダークサンブラッド〟!

s〝Derive:MultipleDisaster〟!

Mんぎゃあああああああああ――っ!!

 炎の刃と、無数の風の砲弾が、魔剣竜を直撃し、大爆発の華を咲かせた。



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story



 かくして。

 自我ある魔剣は破れ、海底に眠っていた禁具の回収も完了した。

異界の歪みを作り出すというその禁具は、かなり危険な代物であり、まともに扱うのは至難の業だったが――

Kウェウェイのウェイ!

 ケイトリンは〈アレフワ族〉やスバルとともにあれやこれやと禁具をいじくり倒した挙句、その制御に成功したのだった。

Kここ!って異界を選んで跳ぶのは無理だけど、発勤しっ放しになってたから、前回繋がったのと同じ場所に跳ぶことは可。

S放っておくと危ないから、俺たちがいなくなったら封印しちゃってください。

sうん、わかった!回収に協力してくれて、ありがとねー!

Sいえ、こちらこそ。元の世界に帰れるのはみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。

Kありゃーす。

 そしてケイトリンたちは歪みを発生させ、それを通って元の異界へ戻っていった。

 その直前。

Kあ、そうそう。シューラさん。

sなーに?

K面白くて、いい世界だね。びっくり箱みたい。

 そう言って、ケイトリンはふんわり笑った。

K今後とも、ウチの氏族にどぞよろ~。

 ひょい、と歪みに消えていく彼女を見て、ラディウスが苦笑する。

rびっくり箱か。確かにな。この異界、どこに行っても、どんな氏族と会っても、たいがい驚かされるからな。

sいいとこでしょ?

rああ。まるで退屈しねえ。こういう事件がちょくちょく起こるってことも含めてな。

sそういうの、ほんとはあんまり起こらないで欲しいんだけどね。

まあでも……起きちゃうからには、しゃーないない、っと。

 シューラは禁具を拾い上げ、歪みを閉じる。

あまりにいろんな人がいて。あまりにいろんな文化があって。危険な禁具が生まれもする。

だから、この世界には〈號食み〉が必要なのだ。あらゆる氏族、あらゆる文化の肯定者として。あらゆる呪具や禁具の鮮印者として

この、つぎはぎだらけのびっくり箱のような世界を、ばらばらにならないよう繋ぎ止めておくために。

(でも、あんなことできるなんて、聞いたことないんだけどなあ)

呪装符を生み出した己の手を見つめ、シューラは首をかしげる。

呪装符は、異界の力が結晶化した存在だ。

今回は、シューラがトーテムから受け取った力がー時的に結晶化して呪装符になった、ということなのだろう。

あらゆるトーテムの力に触れてきた、〈號食み〉ならではの能力――かもしれないが、そんなことができるなど初耳だった。

fシューラさま、宴の準備ができておるようです。事件解決のお礼にと。

rお、いいな。ここじゃあ前に負けてるからな。きっちりリベンジさせてもらうぜ。

sハハハハハハハハハ。

r顔!


 この世界は、私にとって、びっくり箱で、宝箱。

だからこうして、見て触れて昧わって……笑い合って、守っていきたい。私も世界も、みんなの暮らしでできているから。

sというわけで――いただきまーす!!


 ちなみにシューラの圧勝だった。

rちくしょう……。

sハハハハハハハハハ。




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