ヴィルフリート・テニスの思い出
思い出1
――突然、冷たく鋭利な空気がコート上を包む。
漂う黒い威圧感。
何者かが、今まさに近づいてくる――!
……! この気配は……!?
この感じだけでもう、だれが来たかわかるわね。
……ククク。貴様らもここにいたか。熱心なことだな。
あっ、ヴィルフリートさんだったんですね。
いかにも。我は永遠を生きる〈吸血鬼〉。
亡者どもを統べる不死者の王。ヴィルフリートである。
ヴィルフリートだー。おいっすー。
……で、ヴィルフリート。その手のラケット。アンタもテニスを始めたの?
その通りだ、キャトラよ。かねてより考えていたのだ。
生涯スポーツとして何か嗜んでみようとな。
いや待って。吸血鬼で不死のアンタが生涯スポーツって……
永遠にテニスするつもりー!?
思い出2 (LV20)
うーん……
やっぱりなんとも不思議な光景だわー。
炎天下にスポーツで汗を流す帝王というのもまた一興であろう?
ヴィルフリートさん、〈吸血鬼〉なのに、お日様が平気なのよね。
そうそう。ひとの血も、どうしても必要ってわけじゃないっていうし。
いちいち吸血鬼のイメージを壊してくれるわよねー。
キャトラよ。我を誰だと思っている。
我は永遠の刻を生きる吸血鬼。
未練抱く魂を裁可する不死者の王、ヴィルフリートである。
ちょっと爽やかな感じ出てるのが、微妙に腹立つわ。
未練抱き彷徨う亡者どもも、スポーツで健全な汗を流せば浮かばれるであろうにな。
アンタがそれ言うか!
(ヴィルフリートさん、スポーツしてちょっと気分がいいのかしら……?)
思い出3 (LV40)
テニスにおいて重要なのはまず、己の特性を知ることにある。
球威で押し切るのか?スタミナ勝負に持ち込むのか?技術で相手を振り回すのか?
おっ?
基本はやはり相手を動かして意図的にコートに空間を作り、そこを狙うことだが……
粘りの戦いを企図するならば、安全につなぐことを優先せねばならぬ。
おっ?おっ?
ヴィルフリートさんがテニスを語っている……!
テニス歴みんなと変わらないくせにね。
無念のまま命を失ったテニスプレイヤーの魂が、我の元へ来たのだ。
ヴィルフリートさんの元には、話を聞いてほしい死者の魂が訪ねて来るんですよね。
そうだ。未練抱く魂が列をなし、我に陳情をする。『蘇らせてくれ』とな。
その陳情に耳を傾け、厳正に裁可する。それが我の務め。
それにしても、テニスプレイヤーの魂って……いろんなのが来るのね。
その引見の折、最近テニスを始めたと言ったら、ことのほか話が盛り上がってな。
盛り上がった結果、いろいろ教わってテニスにも詳しくなったわけね。
趣味が仕事に活きた出来事であった。
うれしいんだ。
思い出4 (LV60)
ヴィルフリートさん、すごく力の入った練習をしてる……!
何かあったのかしらね。……ねぇねぇヴィルフリート!
貴様らか。
気合入れてどうしたのー?
我が務めのためだ。
どーゆーこと?
以前話したであろう。未練抱いたテニスプレイヤーの魂が、我の元に来たことを。
はい、テニスの話で盛り上がったって。
我に謁見を求める魂は皆、不死者となり蘇ることを望む。己が未練を晴らすために。
その訴え一つ一つに我は耳を傾けよくよく吟味し、裁可する。
件のテニスプレイヤーの魂も同じ。だが執着の強さのみで力を貸しはせぬ。
裁きは厳正でなければならぬ。
では、どうするんですか?
ならば、せめてその嘆きを聞く……と、本来ならばなるところだが。
あ、もしかして……話を聞くだけじゃなくて試合の相手をしてあげるとか?
なるほど……!そのための練習、だったんですね!
あれ、でも……試合って、どうやって!?
思い出5 (LV80)
ククク……刻は、満ちた……!
ヴィルフリートさん……!
いよいよ、準備が整ったのね!
あのテニスプレイヤーの魂と試合する準備が!
さあ、未練を抱いた魂よ、今こそコートに降り立て!
?なにも起こらないけど……?
魂だから見えない、ということかしら……?
……来たか。
待たせたな、亡者よ。
あ、やっぱりいるんだ!
アタシたちには見えないのね?
我との真剣勝負をもって、その悔根を晴らすがいい!
とにかくいけいけー!ヴィルフリートー!!
えっと……どっちもがんばって!
全身全霊をもって、相手をしてくれる!
思い出6 (覚醒進化) (LV100)
ふう……壮絶な試合であった……
…………えっと……どうなったの……?
……魂は無事、地に還ったようだ。
全力で試合して、満足できたんですね!見えなかったけど!
……うむ。帝王たる我の挑戦にも怯まぬ、気高く強い相手であった。
そーぜつな試合だったのね。よくやりきったわね、ヴィルフリート!
無論だ。これも帝王の責務ゆえな。
ふふふ。
前にアンタも言ってたし、未練抱く魂がやってきたら、次からテニスを勧めてみれば?
…………それでうまくいけばな。
亡者どもの未練にはそれぞれの事情がある。ひとまとめに出来るような解決策はない。
一人一人、陳情に耳を傾け、真撃に向き合わなければならないのだ。
今回は、それがたまたまテニスだっただけ……
……そっか。そうだよね。ごめん……
テニスばかりを”あテニスる”わけにはいかぬ、ということだな。
へ!?
コート上の裁定者