境界のRINNEと黒猫の魔法使い Story2
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黒猫のウィズ×高橋留美子作品 企画 |
開催期間 2015年6月22日(月)16:00~7月22日(水)15:59 |
目次
story2
「……センベイって意外と固いにゃ。」
バリッという音が響く。
食べ過ぎはよくないよ、と君は言うが、ウィズの意識はセンベイに向いているらしく返答がない。
りんねの説明によると、ここがあの世というところらしい。
彼らとはぐれなかったことに安堵しながら、君は霊道のことを思い返す。
〝現世〟と〝あの世〟を結ぶ霊道は、それが開いていれば生きている者でも通れるのだという。
中には生きた人が霊道を通り、あの世に迷い込んでくることもあるらしい。
ウィズの目線の先に、巨大な赤い輪のようなものが浮かんでいる。
ゴトン、と重たい音を響かせながら、ゆっくりと回っていた。
生きている人でも、乗ってしまうと転生させられるから危険だにゃ。
桜は、そのせいで霊やりんねなどの死神と関わりを持つようになったらしい。
君は首を傾げる。どうやらりんねや桜の世界では、普通死神などは見えないようだ。
そんなことを考えていると、何かに気づいた桜が口を開く。
ふと桜が指さしたところには、先ほどクエス=アリアスで遭遇したようなきぐるみが複数……。
嘆息混じりにりんねがそう言った瞬間、背後から怒声のようなものが響いた。
りんねが不快そうに顔を歪めた。
それだけ言い残して、りんねはだまし神に向かって走りだした。
君はわかった、と言って頷く。そしてりんねに背を向けて、だまし神へと向かっていった。
***
君はりんねが走っていたほうへと目を向けた。
するとそこには――。
「見ていたぞ。おまえ、何やら怪しい術を使っていたな!」
見知らぬ男性がいた。
君とウィズを睨みつけながら、何やら物騒な武器を持っている。
「喋る黒猫がいるのを見るに、六道の関係者かと思ったが、怪しすぎる術を使っていたからな。
「問答無用だ!
ボンッと音を立て、男が持っていた武器からカプセルのようなものが撃ち放たれる。
君は咄嵯にウィズを庇った。
君に当たったカプセルが割れ、そこから灰が溢れ広がった。
けほ、と咳き込むぐらいで、痛みもなにも感じない。
「怪しい術を使うヤツなら聖灰を受ければ、痺れるぐらいのダメージはあるはずだが……。
「得体のしれないやつ……しょうがない。
男が分厚い本を構えた。あの角で叩かれると、とてつもなく痛そうだ。
「これは使いたくなかったが……。
「可愛らしい猫の姿をしていようと、俺は油断せん! 正体をあらわせ、化け猫め!
***
「待ってください、魔法使いさん!
とどめの魔法を放とうとした瞬間、駆け寄ってきた桜が君を制止する。
「ま、真宮さん……?
「ふっ、この程度でこてんぱんなんて甘いな。
男性も何事もなかったかのように立ち上がるが、服は君の魔法でぼろぼろだ。
jもちろんだよ、真宮さん! それと俺たちは、ただの同級生なんて間柄じゃ――。
桜が彼の言葉を遮るように、君のほうを向き問いかけてきた。
君は、大丈夫だということを伝える。桜は、君たちのことを十文字に説明してくれた。
j悪かったな、おまえたち。勘違いとはいえ、バイブルコーナークラッシュをくらわせてしまって。
気にしないで、と君は伝える。突然襲われたとはいえ、こちらも攻撃してしまったのは事実だ。
話し終えた君たちのもとへ、りんねが鎌を携え戻ってきてそう言った。
jおい、六道。俺を置いて真宮さんとどこに行っていたんだ。
jぬっ……真宮さんを守るのは、この俺だ。関係ないなどとは言わせんぞ。
はた、とりんねが言葉を止めた瞬間、視界が真っ黒になる。
“うふふ、だ~れだ”すぐ後ろから、そんな女性の声が聞こえてきた。
しかし、君にはあの世の知り合いはいない。黙って答えられずにいると……。
「あら、あなた誰?」
誰だか知らない人に誰だと聞かれた君は、困惑を隠し切れない。
tふふ、お・ね・え・さ・ん・でしょ!?
女性はウィズのこめかみを拳の間に挟み、グリグリと締めつけている。
それを見た君は、おば――お姉さん、もうそこらへんで、と声をかけた。
tそう、おねえさんよ~。ほほほ、あなたいい子ね。
t可愛らしい猫ちゃんと、かわったお客様――は!? あなたたち私が見えるのかっ!
魔力のおかげだろう。そのことを六文が説明してくれた。
そして彼女がりんねの祖母で、同じ死神だということと……。
名前は魂子(たまこ)であるということを教えてくれた。
tそうそう。悪霊がうようよしているところを見つけたのよ~。
tその呼び方やめろって言ってるでしょ~!?
t浄霊するごとに、お金がもらえるのよ? りんねのために持ってきた話なんだけど?
その話を聞いたりんねが、鎌を大きく振るい、背筋を伸ばした。
jそういうことなら俺も行こう。真宮さんのことが心配だ。
りんねの言葉に頷いた君は、まだこめかみを押さえているウィズを抱きかかえ、走りだした。
story
魂子と別れてあの世を歩いていると、クエス=アリアス行きの霊道――元の場所についた。
大量の悪霊がいて、道を塞いでいる。
この数を相手にするのは、かなり骨が折れそうだ。
悪事を働く死神もいれば、りんねのように使命を果たす正しい死神もいるということだ。
だからほかの死神より多くの道具に頼るしかないんです。それはつまり通常よりも経費が……。
君は、そういうことは言っちゃダメだよ、とウィズを諌める。
りんねの鎌は、今にも折れてしまいそうなほど傷ついているように見えた。
君とウィズのやりとりを聞いていたりんねが、両手両膝をついて沈んでいた。
君は、さあ、と答える。
ウィズが食べている魚ぐらいだろうか? と君は付け加えた。
j……まあ、値段の話は置いておいて、これからどうするんだ? 六道。
j悪霊を増やしているのって、もしかして――。
彼らは、悪霊というものを相手に恐れる様子がない。
どことなく呑気な空気に不安はあるけど、心強さが大きく勝った。
よし行こう――君は気を引き締めた。
この世界の新しく出会った仲間たちがいれば大丈夫だ。
***
悪霊を倒そうとしているのに、だまし神に邪魔をされると時間がかかる。
桜が立ち止まり、紙のようなものを拾い上げた。
表面には「果たし伏」と書かれている。
jなんだこれは。馬鹿にしているのか。
撲はりんねくんに欧られたあの日のことを、志れない……。
そう書かれているようだ。
「そう、僕だよ! りんねくん!
ごつん、と鈍い音を立てて、りんねの鎌が男の頭にめり込んだ。
刃がついていないところとはいえ、あれは痛そうだ、と君は思った。
mとてつもなく痛いじゃないか、りんねくん。それはそうと僕の手紙は読んでくれたかい?
激痛に涙を浮かべながら、平然を装おうとする男。
mそう! 僕は魔狭人! 悪魔の魔に、狭い人と書いて、魔狭人!
積年の恨みを晴らすため、果たし状を送ったのさ! 悪魔らしからぬ真っ当さだろう?
mふ、馬鹿にするのは構わないが、僕は自分より弱いものには容赦しないぞ、黒猫。
君は警戒を強め、魔狭人と呼ばれる悪魔に対峙する。
***
mぐっ――!? まだまだ。この程度じゃ、僕は諦めな――。
mやめ――ま、まだ話してる途中――。
mうぐッ!?
ようやく倒し終えた魔狭人を、さらに殴るりんね。
mわ、わかった……ぼ、僕が悪かった!
mふ、はははっ! それは教えられないな!
――
mすみません。悪霊をスカウトしてりんねくんの邪魔をしようと思いました。
今回の騒動には、裏がある気がする。
桜の言葉を無視したりんねが、君に向かってそう言った。
裏とは? 君はそう訊き返す。
君は、いったいどういうことなのかをりんねに訊いた。
見知らぬ男性に『金貨ザックザクの仕事がある』と声をかけられたのが昨日。
向かった先――金貨取り放題会場には、本当に大量の金貨があった。
それを見た瞬間、今まで背化わされてきた借金をチャラにできると考え舞い上がったのだとか。
だまし神が現れ、魔法使いである君たちと戻ってきてみると、騒動になっていた。
そして今に至る。
しかし、考えてみると――。
魔法使い、ついてきてくれるか?
君は首を縦に振る。ここまで来たのだから、最後までりんねに手を貸そうと思った。
jなっ――真宮さんまで!?
ま、待て六道! 俺も行くぞ! 真宮さんが心配だからな!
jうん! 俺に任せて!
君は気にしないで、と言う。大変だとは思うが、迷惑だなんて考えもしていない。
もちろん力になれるよう頑張るよ、と続けた。
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