【黒ウィズ】境界のRINNEと黒猫の魔法使い Story1
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黒猫のウィズ×高橋留美子作品 企画 |
開催期間 2015年6月22日(月)16:00~7月22日(水)15:59 |
目次
story0 プロローグ
「これだけ集めれば十分だにゃ! 見るにゃ! こんなにたくさん!」
ウィズは顔をほころばせ、倒したばかりの金貨のポットをぽんぽんと叩いている。
君も嬉しさを抑えることができない。
これだけあれば、〝依頼人〟も満足してくれるはずだ。
「お金は何をするにも必要になってくるにゃ。」
確かにそうだ。お金の有無によって、心理的状況が左右される。今がまさにそう。
「この金貨で買い物ができたら楽なのににゃ~。」
君はそうだね、と口にする。
君たちが私生活で使うお金と、精霊の強化などに使うゴールドは別物だ。
お金がない――ということに気づいたのは、のことだ。
食料のストックがなく、絶望した。このままでは、一日を乗り切ることすらできない。
だが幸いなことに、偶然、仕事の依頼が舞い込んできた。
だから走った! 極貧生活から脱け出すために――!
依頼を達成すれば、君たちは生き延びることができる!
金貨のポットはほかの魔物と違い、遭遇することは稀だ。だから走った!
駆け出さなければならなかった。金貨のポットを可能な限り多く倒すために!
受けなければならなかった。今日の夕食のために。
『金貨のポットを倒してきてくれれば、その数だけ報酬を渡す』という仕事だ。
そしてこれだけ大量の金貨のポットがあれば、報酬の額はかなりのものになるだろう。
「そういえば最近、魔道士が行方不明になる事件があるらしいにゃ。君も気を引き締めるにゃ。
その言葉に頷いた途端、
集め終えた金貨を落としてしまった。
「……何をしてるにゃ。言ったそばから油断しすぎにゃ。」
君はごめん、と伝えて腰をかがめ、金貨に手を伸ばした。
すると――。
――ごん、と頭に衝撃が走った。
「――ぐッ!?」
君は驚き、金貨から目を離して前を見る。
そこにいたのは――。
story1
「――ぐッ!?」
君の前にいたのは、見慣れない羽織を着た男性だった。
額を押さえているところを見るに、どうやらお互い頭をぶつけあったようだ。
「……おまえ何者だ? おれが見えているのか?」
君が落とした金貨をポケットに入れた男性が、訝しげにこちらを見ている。
「りんね様~! あっちにもこんなに金貨がありました~!」
ウィズより少し小さな黒猫が、大きな声を上げながらこちらに向かってきた。
その後ろに変わった服を着た少女もいる。
「これで借金を帳消しにできますよ、りんね様!」
「にゃ!? 猫が喋ったにゃ!」
「……あなたも喋ってるじゃありませんか。」
ウィズがハッとして少女を見たが、
だが、特に彼女は驚いたふうでもなく、平然とした顔をしている。
ウィズに驚かないなんて……それにこの小さな黒猫の存在。君は不思議に思った。
とはいえ、彼が同じく金貨のポットを倒していた魔道士なら、挨拶をしておくべきだと君は思う。
君は自分の名前を告げ、ウィズのことも紹介した。
***
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真宮桜 | 六道りんね | 六文 |
あとはせいぜい、この金貨を換金すればお金になるかも、と。
おかしい。君とウィズは互いに顔を見合わせた。
そもそも換金なんてシステムを、君たちは聞いたことがない。
揃って冗談を言っているのかとも思ったが、どうやらそうではないらしい。
君は違う、首を横に振る。
それにしても死神とは、聞きなれない――。
……死神。そうだ死神! 君はウィズの言葉で我に返り、息を呑んだ。
剣呑な雰囲気になる君たち。
だが、その間に真宮桜が入り、こう提案する。
そこまで言うならついていかないわけにも……と君は返答する。
異界と繋がっているのだとしたら、それは無視できないことだ。
怪しまれたままじゃ金貨も集められないからな。
よし、行くぞ。
***
君とウィズは、りんねたちに連れられ、〝霊道〟の近くまでやってきた。
そこで、君は違和感のようなものを覚える。
ウィズは六文の問いかけに、曖昧な返答をした。
異界を繋げられるりんねたちのことを、警戒しているのかもしれない。
桜は幽霊なのだろうか、と君は聞いてみた。
怪しく思うのは、君も同じだった。
魔法使い様は特別な力を持っているようですし。
りんねが君とウィズを交互に見やる。何か思案しているようだ。
私たちを連れて行ってくれたら、あとで美味しいものをご馳走するにゃ。
『美味しいもの』という言葉を聞いた途端、りんねの表情が一変した。
別の異界に行けることを思い、君はワクワクし始めていた。
そうして霊道への一歩を踏み出した瞬間――
君は何かに激突し、視界を塞がれてしまった。
そこには、風船を持ったきぐるみが立っていた。
おまえたちは下がれ――!
ここはクエス=アリアス。自分たちの住む世界を守るのは、当然のことにゃ。
君はウィズの言葉に、大きく頷く。
りんねの言葉を信じるのなら、だまし神というのはこの世界に害をなすかもしれない。
***
だまし神を退け、君はりんねに視線を向けた。
魔法使いだから、と君は返す。
ところでだまし神というのは、どうしてここに? 君は疑問を投げかける。
……それにまだ美味いものをご馳走してもらってないからな。
君は苦笑して、わかった、と返事をする。
りんねに促され、君とウィズはまだ知らない世界への道を踏み出した――。
境界のRINNEと黒猫の魔法使い Story1