【黒ウィズ】喰牙RIZE2 Story0
2017/00/00 |
目次
主な登場人物
セドリック
ヒルデ
エルロウ
story0 プロローグ
異界の精霊の力が流れ込み、結晶化して、人々に力と使命をもたらす”トーテム”となる。
そんな地に、このクエス=アリアスから流れ着いた、ひとりの戦士がいた。
彼は、故郷を失い、仲間を失い、よるべなき風来の獣となりながら、異郷の地で生きていく道を選んだ。
許せないものを許さない――そんな”牙”とともに。
「……彼らしい。」
セドリックは、穏やかに微笑んだ。
『異界の歪み』を通して現れる魔物たちから、クエス=アリアスを守るために戦う、境界騎士団――その長たる、彼の私室。
向かい合って話をしながら、君は、鞘のような人だ、と思う。
やわらかな態度の奥に、強い芯が通っている。普段は見せることのない心の剣一一研ぎ澄まされてきた覚悟と誓い、そのものが。
「彼のことは、よく覚えているよ。ヒルデという戦士とー緒に、よくエルロウに挑んでいた。
エルロウ隊は、いつもにぎやかだった。それでいて勇敢であり、精強であり、何よりみな、強い意志の持ち主だった。
そのひとりが、今も生きていてくれる。同志として、これほど喜ばしいことはない。知らせてくれてありがとう、魔法使い殿。」
細められた瞳に、あたたかな喜びが映える。冬枯れの野原に、小さな花を見つけたように。
セドリックの来歴を、聞いたことがある。
こことは違う異界で、『異界の歪み』から現れる魔物に対し、多くの騎士を率いて戦った。やがて『歪み』に呑まれ、なおも戦い続けた。
ただひとり生き残り、この世界に漂着した。
そして、今度はこの世界を守るため、同じ境遇の漂着者たちとともに戦っている。
何もかもを失いながら、同じように何もかもを失った者たちの長として、数多の死を背負い続ける男。
曲者ぞろいの境界騎士団も、セドリックの命令には従う。
彼らには、わかっているのだ。
戦いの果て、この異郷の地で命を落とすとしても。セドリックなら、無言でその死を背負ってくれるだろうと。
「それにしても、君は不思議な存在だ。異界を超えて、無事に戻ってこられるとは。
ひょっとすると、君にも、オルハさんのような特異な素質が――」
言いかけたところで、セドリックの顔色が変わった。
何事か、と厨しむ暇はなかった。
君とウィズの周囲に、謎めいた光が満ちあふれ、竜巻のように渦巻き始めたのだ。
「にゃにゃ!?」
まさか、と思いながらも、君はあわてて、ウィズを抱き寄せた。
直後。
脳を隅から隅まで洗われるような、強烈な魔力の波濤に呑み込まれー―
君は、なすすべもなく意識を失った。
story1
光が止むと、見知らぬふたりが目の前にいた。
「え。」
「え。」
え。
「「ひいいいいいいいいいい!?」」
年端もいかぬ少女と、痩せた中年の男。
ふたりは、君を見るなり、悲鳴を上げて後ずさった。
「いきなりなんにゃ!叫びたいのはこっちの方にゃ!」
「「猫がしゃべったああああー!!」」
師匠が事態を悪化させているのを横目に、君は周囲の光景を確認する。
色鮮やかな葉をつけた、風雅な木々。見上げれば、彩り豊かな峻峰が立ち並んでいる。
どうやら、どこかの山のなからしい。と言っても、こうも鮮麗な化粧を見せる山など、トルリッカの周囲にあろうはずもない。
やはり、また異界に飛ばされてしまったのか。
「か、勘弁してくれえ!」
君が考え込んでいる間に、中年の男が、情けない声を上げて逃げ出した。
「あっ!待って!」
少女の方は、涙目で縮こまりながらも、逃げる男の背に、何かを投げ放つ。
奇妙な目と口を備えた器具が、見覚えのある符をゴクリと呑み込むのを、君は確かに目の当たりにした。
「ライズー―”天空の炎翼”!」
器具が、ぼっ、と激しい炎をまとった。それを翼のように広げ、逃げる男の背に向かって飛んでいく。
「ライズ!?ここはラディウスたちのいる異界にゃ!?」
君は咄嵯に、男と少女の間に割り込み、懐から力―ドを取り出して、呪文を詠唱した。
紅蓮の翼を生やし謎の器具を、防御の魔法で打ち弾く。そうしてから気づく――
今の火弾は、男への直撃を狙うものではなかった。威嚇のつもりだったのだろう。
ただ、君が火弾を防いだのを見て、少女の顔色が、明らかに変わった。
あどけない相貌に、恐怖と戦慄の色が浮かぶ。小さな手が小刻みに震え、つぷらな瞳に大粒の涙が盛り上がった。
「あの子、怯えてるにゃ。」
弱ったな、と思いながら、君は両手を広げ、敵意のないことを示そうとした。
すると少女は、もごもごと口を動かす。
「む……。」
む?
「無理ぃーーーー!!」
少女がやけくそのような叫びを放つや否や、その全身から膨大な魔力の渦が吹き上がった。
すると、謎の器具が3つ、宙に浮かんで、魔法陣のようなものを形成し――
そこから、何かが姿を現した。
「〈紅の焔鬼〉、〈焼き尽くす禍い〉――〈怪炎の魔神〉!」
すがるような少女の声に応え、それは、ゆっくりと吐息する。
烈火を散らしたような赤銅の肌が、隆々と脈打つ。牙持つ口元に凄絶な笑みを浮かべ、黄玉のごとき瞳を爛々と光らせる。
君は思わず、息を呑む。
ただの怪物とは思えぬほどの、圧倒的な存在感。
目の当たりにしているだけで心が震え、湧きあがる畏怖の念に膝を折りたくさえなる。
「精霊――じゃないにゃ!この力は……。」
さしものウィズが、明確な緊迫と戦慄の声で、君に警告を発した。
「おそらくは――神の力!その発現にゃ!」
赤銅の魔神は、然りと肯定するかのごとく咆嘩し、巨大な火柱を噴き上げた。
story2
怪炎の魔神が腕を振るうや、君の足元にカッと激しい熱気が宿る。
危機を感じて、君は真横に駆けた。その足跡を追いかけるように、焦熱の火柱が、次々と地を割って噴き上がる。
先はどから魔神に魔法を放ち続けているが、いまだ有効打には至らない。
あの少女が魔神を呼び出し、操っているのなら、彼女を無力化するのが一番かもしれない。
君は、無力化に遊した魔法のカードを取り出し、一気に少女へ向かって疾走した。
「こ、来ないでえっ!
魔神がサッと君の行く先に割って入り、腕を振るう。
君は一瞬、足を止め、無下に強力な氷の魔法を解き放った。
足元から立ち昇る火柱が、君を焼き焦がす前に凍りつきー―巨大な氷柱と化して、君をグンと持ち上げる。
君は、そそり立つ氷柱の頂上から跳躍し、怪炎の魔神を飛び越え、空中で少女に狙いを定めた。
「ひいっー―
凝然と固まる少女に、眠りをもたらすカードを構えたとき。
「ライズー―〈蒼の彗星〉!
烈声とともに、天から刃が降り落ちた。
流星のごとく地を穿った刃が、爆発的な土砂を噴き上げ、魔法を放とうとした君の視線をさえぎる。
着地した君は、見た。
晴れゆく噴煙の奥一一震える少女を守るように立つ、剣士の姿を。
見忘れようもない、その刃の双眸を。
「化身を退かせろ、アスピナ。」
じっと君に視線を注いだまま、ミハネが言った。
「あの魔法使いは、敵ではない。
「……そうなの?
男の長身に隠れるようにしながら、アスピナと呼ばれた少女が、何やらもごもごとつぶやいた。
怪炎の魔神が、不満そうに唸りながら、その巨体を薄れさせていく。
「呼ぶなら、別の神にすべきだったな。
脇の木立から、別の声が上がった。
いかにも魔道士らしい風体の青年が、苦笑しながら歩み出てくる。
「一歩間違えれば、景観が台無しになるところだ。
「ご、ごめんなさい。いきなりだったからー―選ぶとか、ぜんぜん無理で……。
「なんにしても、大事なくてよかったよ。お互いにな。
ユウェルは、ちらりと笑みを向けてくる。
「また会うとは思わなかったな、魔法使い。ウィズ師もご健勝そうでなによりだ。
「知り合い……なの?
アスピナは、まだミハネの陰に半身を隠したまま、びくびくと君を見つめる。
「エネリーと、同じ魔法を使ってた、けど………。
「出身が同じなんだそうだ。まちがっても、あの女の仲間じゃない。
「いったいどういうことにゃ?
「杖を持った男がいたはずだ。俺たちは、そいつを追っている。
君は、逃げていった中年の男を思い出す。言われてみると、確かに、長い棒のようなものを持っていた気がする。
その杖に何か問題が? と尋ねると、ミハネはうなずいた。
「エネリーが作った禁具だ。
「あの女、しぶとくも生きていたそうでな。何に使うつもりにしても、ろくなものじやないはずだ。
「再会早々なんだが、よかったら、杖の回収を手伝ってくれないか、魔法使い。
そう聞いて、見て見ぬふりができるわけもない。君は、こくりとうなずいた。
「協力するのはいいけど、先に、その子のことを聞いておきたいにゃ。」
ウィズの視線を受けたアスピナが、びくりと震える。
「神のようなものを呼び出していたにゃ。この子は、いったい何者にゃ?」
「神”のようなもの”か。さすがはウィズ師、言い得て妙だな。
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story
「んっと……こっち、かな……。
あの謎の器具は、振り子(ペンデュラム)であったらしい。
アスピナが意識を凝らすと、吊り下げられたペンデュラムが、くるくると振れ始めた。
「それで杖のありかがわかるのかにゃ?
「うん。神様が、教えてくれるの。
しゃべる猫からの問いかけに、まだどこかおっかなびっくりという感じながら、アスピナは答えた。
「神様って、さっきのでかいのにゃ?
「あれは、化身。異界の神にお願いして、力のー部を借りてるの。
「そんなことができるのは、〈奪魂族〉でも―握りの人間だけらしい。群を抜いた素質の持ち主ということだ。
だからこそ、あの杖の存在を感知することもできた。」
いったいどういう流れで、あの杖を追うことになったの?と、君は尋ねた。
「君たちが異界に帰ったあと、〈マガシシムラ〉を封印するために、〈號食み〉の聖地に向かっていたんだがー―
途中で、ラディウスがエネリーと遭遇した。
俺とユウェルは、エネリーの足取りを追うことにした。そして、妙な杖の噂を聞いた。
〈奪魂杖〉――神と交信する力を持つ禁具。その買い手を、エネリーが探していた。
「その杖について調べている途中で、アスピナと出会ったんだ。な?」
ダウジングを続けながら、アスピナが、こくりとうなずく。
「私たち〈奪魂族〉は、交神能力を使って、いろんなものを探す仕事をしていて……。
そしたら、あんな杖があるってわかって。なんとかしなきゃって思って……。」
―度、エネリーと交戦したが、逃げられた。そのとき、杖はすでに人の手に渡っていた。
そして、杖の追跡を優先したところで、この世界に現れた君と遭遇した――ということだったらしい。
「〈奪魂杖〉ってことは、〈奪魂族〉と関係があるのかにゃ?」
「ああ。もしかすると、”化転融合”(けてんゆうごう)を行ったのかもしれない。」
「なんにゃ、それは?」
「この世界における禁術の一種だ。人を禁具に変えて、その氏族の能力や特性を再現する。」
つまりエネリーが、〈奪魂族〉の誰かを犠牲に、”神と交信する能力を与える杖”を作った……ということだろうか。
「〈奪魂族〉は、流浪の民だから……どこかで誰かがいなくなっても、簡単には気づかれない。
それに……みんな私たちを嫌ってるから。いなくなっても、せいせいしたとしか思わない――」
うつむいた少女の唇から、やるせない言の葉がこぼれ落ちる。
冬風に吹かれ、木々が葉を落とすようなー―冷たく沁みる悲しみを、仕方がないという諦めのなかに閉じ込めたような声だった。
「見せつけてやればいい。」
だしぬけに、ミハネが言った。アスピナは、驚いたように顔を上げる。
「行方知れずになった幼子を探す。盗まれた物のありかを突き止める。〈奪魂族〉なら、そういうことができる。
いれば、助かる。いなくなれば、困る。そういうものだと、見せつけてやればいい。おまえには、それだけの力がある。」
当たり前のことを言うような口調だった。
その飾り気のなさこそ、彼なりの真摯さのあらわれなのだろう。
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story 初級凰姫山
「見つけた……あっち!」
君たちは、アスピナのペンデュラムが示す方角へ移動を始めた。
「〈奪魂杖〉を買い取るなんて、あの男は何者にゃ?」
「わからん。とにかく、捕まえて吐かせるしかない。」
ミハネは迷いなく、ずんずんと足を進める。
君は、彼と行動をともにした時間は少ない。それでも、並みならぬ精神力と決断力の持ち主であることは、わかっている。
その、研ぎ澄まされた刃のような鋭さは、まるで鈍っていないようだった。
「アスピナは、ミハネが怖くないにゃ?」
「うん。最初は、おっかなかったけど………。
今は、いい人だって知ってるから。」
「不愛想で不器用で直情径行な馬鹿野郎だが、裏表はないからな。」
前をゆくミハネの背を見て、ユウェルが、からかうように言う。
一見アスピナのペースを無視した早足のようだが、実は一定の距離を保っている。先行し、周囲を警戒しつつ、楯となるつもりだ。
そういうことを、黙々とやる人だということが、アスピナにもわかっているのだろう。
「キミも、しっかりいい人アピールをするにゃ。クエス=アリアスの魔道士が、みんなエネリーみたいだと思われちゃ問題にゃ。」
『おばかキラーイ!
あたしよければすべてよし!
死んだと思った? ねえ思ったでしょ?でーすーよーねー死んでないけどー!』
大問題だ、と君は思った。
「クエス=アリアスの人って、みんな猫さんに魔法を習うの?」
「そうにゃ。見習い魔道士はまず猫耳をつけて、猫になりきるところから始めるにゃ。」
イメージ向上を狙ってか、ウィズがファンシーなデタラメを吹き込んでいると。
「いたぞ。」
ミハネが足を止め、前方を指差した。
山道の先-―杖を持ったあの男が、周囲を見回しながら歩いている。
「先に行く。」言って、ミハネは駆け出した。
すばやく距離を詰め、短刀を投げ放つ。
「止まれ!」
白刃が、男の足元に突き刺さった。男は、ぎょっとして振り向く。
「ひ、ひいいつ!
「その杖を渡せ!
「来んな、来んなよう!
男はわめき、むちゃくちゃに杖を振り回す。
すると、杖から赤黒い煙が噴き出した。
煙は、そのまま広がるのではなく、むしろ寄り集まるようにして形をなす。
そうして現れたのは、存在することが何かの間違いと思えるような、何体もの異様な怪物だった。
「あれは……!」
「ひぃいいぃいいっ!なんだこれ! なんだこれぇ!」
「魔物……? いや、なんだ、あれは?
「なんでもかまわん。
鋭く構え、ミハネは言う。
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story
「ライズー―〈暁の雪月花〉!」
ミハネは左手に氷の刀を形成し、怪物の群れに飛び込んだ。
「゛真・風華旋風剣、、!」
二刀の生み出す刃の旋風が、怪物たちを鮮やかに斬り散らす。
ミハネは激流さながらの勢いで敵陣を駆逐し、逃げる男の背中へ肉薄した。
「ま、待て!待ってくれえ!
男は泣きそうな顔で杖を放り捨てる。
「お、俺は雇われただけだ! 運び屋だよ!この杖がどんな杖かなんて、知らなかったんだ!」
「雇ったのは、魔道士の女か。」
「そうだ、若ぇ魔道士の姉ちゃんよ!」
「運び先はどこだ。」
「それは――」
男が答えようとした瞬間、ミハネの相貌にハッと緊迫がよぎった。
「ライズ――〈暴火麗炎の竜姫〉!」
「ライズ――〈美しく降る剱の雨〉!」
右からは剣の雨、左からは火の雨が、忽然と現れ、ミハネヘと降り注ぐ。
ミハネは双刀を駆使し、火と剣の雨を弾きながら後退した。
その間に、道の左右から数人の戦士が飛び出し、ミハネの前に立ちふさがる。
「運び先は、今、ここになった。」
屈強な体格の戦士が、落ちている杖を拾い上げて言った。
「運び屋よ。ご苦労だったなー―と言いたいが、依頼品を途中で放り出したとあっては、報酬を払うわけにはいかんな
そして、君たちの方に視線を向ける。
「〈奪魂杖〉を探し当てたか。才能を伸ばしているな、アスピナ。」
気さく、と言っていい口調で声をかけられたアスピナは、信じられないものを見る目で、戦士を見つめている。
「おまえたちは何者だ!その杖を何に使おうとしている!」
「おっと、1度に2個も質問するとは欲張りさんめ。おまえアレだぞ、将来浮気とかするタイプだぞ。つーか訊かれてあっさり答えるわきゃねーだろ。」
「神を降ろす。」
「あっさりさん!!」
槍使いが大仰に驚くのも構わず、戦士は、手にした杖を掲げてみせた。
「大言壮語でないことは、これを見ればわかるだろう。
骨の杖が、ぼうっと朧(おぼろ)な光を放った。
杖から激しい魔力の波動が放たれ、おうおうと唸るような風が吹き荒れる。
ただの魔力ではない、と君は感じた。悲しみに打ち震え、怒りと嘆きに荒れ狂う、その魔力の正体は――
「死者の魂か……!」
「なんで――なんで、そんなことっ!」
絞り出すようなアスピナの叫びにも答えず、戦士は無造作に杖を振るった。
唸る魔力が赤黒い霧を生み出し、それが、あの怪物たちへと変化する。
「仕留めろ。」
居並ぶ戦士と怪物たちが、その命令に従った。雄叫びと咆啼を上げながら、君たちの方へ突っ込んでくる。
「ヘイ、おまえさんはこっちだ、〈呪具盗り〉ミハネェッ!」
「俺の名を!」
「ウチの業界じゃ有名人だぜ!サインをくれよ! その血でなァ!」
戦士と槍使いが、ミハネに襲いかかる。
ライズ使い2人の猛攻に、さしものミハネも防戦を余儀なくされた。
他の戦士たちは、怪物とともに、こちらへ向かってくる。
「〈あたたかき守護者〉〈恵みなす祝福〉――〈陽なる麗猫神〉!
アスピナのペンデュラムが陣を形成。そこから猫頭の女神が現れ、艶やかに結界を構築した。
「果てなき渇きに焼かれしは、心の枯れたる証なり!」
君とユウェルも呪文を唱え、近づいてくる敵の動きを封じ、あるいは一撃を加えて吹き飛ばすがー―
「まずいにゃ! 包み込まれるにゃ!
敵は数の利を活かし、こちらを包囲し始めた。
集団戦になっては魔法は不利だ。逃げ道を探すべきか、と思いながら、君はなんとなく、既視感を覚えていた。
前もこんなことかあった。そのときは、そう、確か――
「ライズ――〈百華一閃〉!」
荒ぶる鋼の刃風が、すべてを散らしていったのだ。
1「面白え祭やってると思ったら、ずいぶんとまあ、見た顔が並んでんじゃねえか。
豪胆きわまる一振りが、数人を薙ぎ払う。
かと思えば機敏に身をひるがえし、新手の剣をかわしざま位置取りを変えている。
「”イリアステル・フリーズ”!」
ラディウスに殺到しようとした怪物たちが、清らかな冷気を受けて、瞬時に凍りつく。
直後、紅蓮の刃が一閃し、氷もろとも怪物たちを斬り潰した。
3「よくわかんないけど、助太刀するよ!
1「ひとつ噛ませな、魔法使い!」
〈魂食み〉の少女と、風来の獣。
それぞれ趣の異なる笑みを浮かべたふたりが、脅威の包囲を捧猛に喰い散らかしていた。
研ぎ澄ませ、声を
「君」は再び、精霊の力がトーテムとなる異界に降り立った。
そこで出会ったのは、異界の神と交信する力を持つ少女、アスピナ。
彼女は、神の力を引き出す禁具の使い手を追っていた――