【白猫】エマ・思い出
エマ・イングラム CV:加隈亜衣 森で独り暮らす巫覡の末裔の少女。 魔獣と心を通わせられる。 |
蒼き炎のテンペスト
思い出1
<リンツ島での出来事からしばらく経ったある日――>
……お邪魔します。
やっほー、エマ! いらっしゃーい。
ようこそ、エマさん♪ リンツではお世話になりました。
いいえ、こちらこそ……ふぅ……
……大丈夫ですか?
す、すみません……リンツから出るのは初めてで、まだ落ち着かなくて。
本当に島が浮いてるんですね……空かすごく近いです。
そんなきんちょーしなくても、落ちたりしないわよ?
だ、大丈夫。もう慣れたから。
――改めて、エマです。エマ・イングラム。よろしくお願いしますね。
ねーねーエマ、さっそく遊びましょーよ!
遊ぶ……私と?
はやくはやくー! エマはどんな遊びがイケるクチ? 鬼ごっこ? 影踏み?
えぇと、リンツでは読書をしたり、縫い物をして過ごしてたかな。
ふむふむ?
あとはポプリを作ったり、お茶を楽しんだり……
ほーほー。
森を散歩したり、釣りをしたり、庭のお手入れをしたり……
ぜんぶひとりでできるやつね!
森の奥で、一人で暮らすようになって、もう長いから。
周りにいたのは森の獣たちくらいで、一緒に遊ぶような人間の友達もいなかったし……
だからきっと、私と遊んでも楽しくはないと思うよ。
アタシにまっかせなさーい!
そんなことありませんよ♪
まずは飛行島を案内したげるわ。
そしたら思いっきり遊びましょ! 覚悟なさい!
ふふ、楽しんでいってくださいね、エマさん♪
……ありがとうございます。
ご迷惑をかけないよう、気をつけますね。
もー、堅苦しいったら!
思い出2
それ!
ふぅ……これでちょうど十匹めです。
主人公とエマの魚釣り対決は、エマの勝ちー!
惜しかったね、主人公。
釣りは慣れていますから。
にしても、エマったらけっこー負けず嫌いなのねえ?
え? そ、そんなことないと思うけど……
夢中だったクセにー!
そうかなぁ……
ふふ、楽しんでくれていますか?
はい、すごく……
飛行島のみんなは親切だし、優しくて……温かい所だなって思います。
あれから、村のひとたちとはどう?
……それなりにうまく……やっていると……思う。
ホントは?
…………あまり。
心配しないでください。嫌がらせなんかはもうありませんから。
そうはいってもさ……
ありがとう、キャトラちゃん。
でも、仕方がない部分もあると思う。
二十年前に幻獣様が暴れて、島の人がたくさん亡くなって……
その傷も癒えきらないうちに、この間の騒ぎがあって……
島のみんなの不安や怒りが、巫親の私に向かうのは、当然ですから。
でも、エマさんはなにも悪くないのに……
……別に気にしていません。
森の動物たちや、グラハムさんだっています。あの人は留守が多いですけど。
それに……めったに会えないけど、……大切な友達もいます。
でも、さびしそうな顔してるわ。
私が……ですか?
悩んでいるなら、お話を聞かせてくれませんか……?
アタシたちだって友達でしょ?
…………
エマ?
……ごめん、キャトラちゃん。なんでもない……
ただ、その……すごく、嬉しくて。
友達って、言ってもらえたことが……
だけど、本当に大丈夫です。これからもあの島で、一人でやっていけます。
それが、私の決めた生き方ですから。
思い出3
わざわざリンツまで送ってくれて、助かりました。
うん……
…………
…………あのっ!
……せ、せっかくですので、うちでくつろいでいきませんか?
珍しいお茶を……この間、グラハムさんにいただいたので……
いいんですか?
ゼッタイ行くー!
あ、来てくれるんですね……
そりゃ誘われたんだから。なんでキンチョーしてるの?
こんなにたくさんの人を家に招くなんて初めてで。戸惑いが……
もー、気にしすぎよ。
***
1よ、ようエマ。戻ってきたんだな。
はい。
***
2エマ、娘のお下がりがあるんだけど着てみないかい? ほとんど新品だよ。
ありがとうございます。服は足りているので、他の子にあげてください。
***
3おぉ、エマ。もしよかったら、家屋の修繕を手伝ってくれないか? 人手が――
ごめんなさい、今日は来客があって。
***
みなさん、そろそろ着きますから。
……バルハラ! 出迎えてくれたんだね。――うん、ただいま。
vグルルル♪
とても仲がいいんですね。
バルバラは、私が初めて仲良くなった子なんですよ。
昔、森の中で怪我をしたときに、助けてくれたんです。
今でも、森の奥まで出かける時は私についてきてくれて、とても心強いんです。
v
うん、またね。その時は、美味しいお魚を用意しておくから。
すみません、みなさん。それじゃあ上がって――
たーーーっ!!
せっかくいろんなひとに声かけてもらってたのに。そっけなさすぎるわ! 動物にはあんな優しいのに!
……正直、戸惑っているんです。島の人たちと、今さらどう接すればいいのか……
アンタ自身はどうしたいの?
このままじゃよくないって、少しも思ってない?
それは……その、少しは。
リンツの人たちもきっと同じだと思うんです。
エマさんの方からも、歩み寄ってみませんか……?
私から歩み寄る……
……今さらできるんでしょうか、私に。
思い出4
……こっちの木材は、この線に沿って切ればいいですか?
3ああ、合ってるよ。すまんなあ、助かるよエマ。
この間の大雨で、島中の建物にガタがきてる。ウチの弟子どもだけじゃ手が足りなくてなあ。
いえ、平気です。
……他になにか、手伝えることはありますか?
3ああ、それじゃあ次は――
エマさん、がんばってるね。
ちょっとぎこちないけど、イイ感じじゃない!
3客人がた、ありがとうな。エマを説得してくれたんだろう?
いいえ。エマさん自身の意思ですよ。
3……そうか。
でもやっぱり感謝するよ。きっかけをくれたのは、あのおっかないウルドの公女様と、たぶん、あんたらだ。
今さらあの子に歩み寄ろうなんて、ムシのいい話かもしれん。
だが、この間の騒ぎを経た今だからこそ変わっていかなくちゃならん。俺たちも、リンツも……
……あの、終わりましたよ。他にできること、ありますか……?
3さすが手際がいいな。でも無理は――
4私の家に、勝手に触れないでくれませんか?
3おお、エッダさん。屋根がだいぶ傷んでいただろ?
4頼んでいませんよ。研究資料になにかあったらどうするつもりですか?
3ああ、悪かったよ……
4何度も言ったはずですよ。私のことは構わないでほしいと。
私は研究のために、この島に来ているんです。
いずれ出ていくんですから、余計な交流は必要ありません。
3だがなあ……
4人間関係なんて、面倒なだけですから。
3おい、どこへ?
4森へ採取に。必要な道具を取りに戻っただけなので。
3もう夕方だ、危ないぞ!
あの人は?
外から来た、植物学者のかたです。何度か森で会いました。
3リンツは手付かずの自然が多いからな。
来てもう半年になるってのに、いつまでもあの調子だ……
あらら……
3最初はどうかとも思ったが、彼女のおかけで、役に立つ薬草も見つかった。
別にその礼じゃないが、せめてリンツにいる間は力になってやりたいんだがな……
…………
思い出5
今日は一日付き合わせてしまって、ごめんなさい。
んーん、楽しかったわよ。
島の人たちと触れ合って、どうでしたか?
……やっぱり、まだ戸惑っています。
でもそれ以上に新鮮で、……少しだけ楽しかったです。
今までずっと、思ってました。
たとえ島中から嫌われても、別に構わないって。
誰も恨んではいけない――亡くなった母さんとの約束を、守り続けられればそれでいい……
他の人の助けなんて、なくても生きていけるって。
だけど、あの出来事があって、新しい友達ができて、主人公さんたちとも友達になれて……
それで思い出したんです。やっぱり一人は寂しい……
このまま意地を張っていたら、ずっと寂しいままだって。
エマさん……
……さっきのエッダさんのこと、覚えていますか?
あのそっけない植物学者さんね?
なんとなくですけど、似ていると思いました。
かたくなになって……誰の声も響かなくなった私と。
ただの勘違いかもしれないし、迷惑かもしれないですけど……今度、話しかけてみようと思います。
もしかしたら、何か力になれるかもしれないから……
良いと思います! 友達になれるといいですね♪
<コン、コン>
誰だろう? こんな時間に……
3夜遅くすまんなエマ。エッダさん、見なかったか?
……どうしたんですか?
3さっき森に行ったきり戻ってくる様子がない。男衆総出で探してるんだが……
なにかあったのかもしれない。
えぇ……!?
思い出6 (友情覚醒)
――バルハラ、みんな。
お願い、みんな。エッダさんを探すのを手伝って。
巫親の力で魔獣を集めたのね!
森の奥は私たちに任せてください。
村のみんなに、あまり深い場所には立ち入らないように伝えてください。危険です。
3ああ、わかった!
本当にごめんなさい、みなさん。せっかくきてくれたのに、こんなことになって……
力を貸してくれますか……?
あったりまえよ!
……! ありがとうございます!
***
4……足が……動けない……
4あ…………誰か……!
「……バルハラ、そっちね!」
4……あなた。
バルバラのおかげよ、ありがとう。――みんなに伝えてくれる?
エッダさん、もう大丈夫です。こんな深い所まで進んでいたんですね。
4はい……木の根につまずいて、足をひねってしまって……
応急処置します。少しじっとしていてください。
私も手伝います!
4……ありがとうございます。でも、どうして私を助けに?
特別な理由なんていらないと思います。
アンタを心配して、大勢のひとが探し回ってたのよ。
4……そうですか。
エッダさんは……どうしてリンツの人たちと距離を置くんですか?
4…………
昔、研究で滞在していた、ある島の住民たちと親しくなったんです。
彼らは私を歓迎して、家族のように親切にしてくれた……
――彼らの目的は、私の研究内容でした。
数年分の成果をすべて奪われ、私は島を追われたんです。
……ひどい。
4それからはもう、他人を信じられなくなりました。
巫親のあなたも、この島で嫌な思いをしてきたんでしょう?
孤独を選ぶ私の気持ちが、理解できませんか。
……確かに、一人でいることはある意味で楽だと思います。
でも色々な人たちのおかけで。やっと気付いたんです。
過去にとらわれて、不満を押し通すだけじゃずっと寂しいままだって……
私はこれから少しずつ、周りと手を取り合っていきたい。だから……
……一緒に踏み出してみませんか?
4……そうですね。勇気のいる決断ですけど……
信じてみます。あなたのような、優しい人間が生まれ育った島ですものね。
……はい。
***
ハッハッハ! エマは相変わらず、感情表現が回りくどいな!
……アンジェラがわかりやすすぎるだけだと思います。
それで、どうだ? 島の連中との折り合いは?
まだ少し、時間はかかると思います。
巫親の血筋を疎んでいる人は、大勢いますから。
あせることないと思うわ。アンタならもうだいじょぶよ!
困ったときには、いつでも力になりますから。
お前は独りじゃない。胸を張って、ゆっくりと歩んで、辛い時には友を頼れ。
……ありがとうございます。私、がんばります。
いつか、自分の運命を笑い飛ばせるように。
深き森の守り手
その他