【黒ウィズ】ファム・リリー
ファム・リリー 花澤香菜
第2回 黒ウィズ精霊グランプリ 人気投票【第1位】
地上の楽園〝天上岬〟にて――
「フェルチお姉さまぁ、今日もいっぱい採れましたよ!」
赤いレンガ屋根の工房では、姉のフェルチが紅茶の用意をしながら妹の帰りを待っていた。
「お帰りー。だいぶ山の奥まで入ったみたいねぇ。疲れたでしょ?」
「いえいえ、ファムは丈夫で強い子ですから! それに……」
言いながら、彼女は集めた花弁のうち一枚をフェルチの滝れた紅茶に浮かべる。
それはミルクコスモスの花びら。ゆっくりと溶ける花弁は紅茶をミルク色に染め、すっかりそれをミルクティーヘと変化させる。
「フェルチお姉さまのお菓子が、楽しみで楽しみで!」
「ふふん、今日のカップケーキは自信作よ♪」
「わーい! お姉さま大好き!」
少し早いお茶の時間。二人はケーキと紅茶の雨りに包まれながら、優しい時間を過ごしていた。
「そうだファム、さっき手紙が届いたの。誰からだと思う?」
答えを聞くのさえ待ちきれないのか、ファムは姉から手紙を奪い読み始める。
するとその顔には、花が咲いたような笑みがこぼれだした。
「そんなにいいことが書いてあったの?」
「ふぁい! とっても!」
それは以前作った「魔初に振り向いてもらえる香水」への感謝の手紙たった。
「私、調香師になってほんとに良かったですぅ!」
「じゃあこれからも豆目張って、もっともっとお客様に喜んでもらわなきゃね」
大きく頷いたファムは、澗んだ目を輝かせ言った。
「私、いつかはあの〝とこしえの樹〟を香料に作ってみたいの」
フアムの見裾える先――天上岬の果てには大きな〝とこしえの樹〟がそびえ立っていた。
そして、今年はその〝とこしえの樹〟に花が咲くという。
彼女は雄大な〝とこしえの樹〟を見上げ、雲の果てに隠れた花を想った。
「――伝説の花かぁ。いったいどんな香りがするんだろう」
香料にするには葉花? 根? 果実?
ファムの空想は果てしなく膨らんでいく。
「それはいいアイディアね! でも、一番大事なこと、わすれてなーい?」
いたずらに笑うフェルチに、ファムは首をかしげた。
「えーと……なんでしたっけ?」
「もー、ファムったら! 『誰のために作るか』ってこと!」
「「誰のために作るか」……」
フェルチの言葉を繰り返しながら、ファムの頬はニンマリとゆるむ。
「……どうしたの? また変なこと思いついたんでしょう?」
「なんでもないですよー♪」
「ひょっとして、その手紙の「魔物に恋する女の子」に送ろうと考えてたとか?」
首を横に振るファムは徹笑みながら答えをはぐらかす。
「えー、気になる! 教えてよー」
「内緒でーす♪ ふふふっ」
ファムは心の中で思っていた――
〝とこしえの樹〟の香水をもし作れたなら、それはまず大好きな姉に捧げようと。
画像 | 説明 | 登場日 |
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カルテロ・レナド cv.東内マリ子 | ||
エリーク・ハネス cv.坪井智浩 | ||
ソリッサ・ミマ cv.渡谷美帆 | ||
ファラフォリア cv.朝日奈丸佳 | ||
アネーロ・フェサ cv.朝日奈丸佳 | ||
ビッグフモーフ cv.和氣あず未 | ||
ナルナ・カスタ cv.芹亜希子 | ||
リグス・ナハル cv.木村良平 | ||
ヤネット・フリール cv.佐土原かおり | ||
ロニール・クム cv.高城元気 | ||
ファム・リリー 花澤香菜 | ||
ブレド・クラフツ cv.酒井広大 | ||
ヴェレッド cv.佐藤美由希 | ||
ロゼッタ・ラッシュ cv.佐藤美由希 | ||
エテルネ・ポム cv.和氣あず未 | ||
シーラ・フリール | ||
フェルチ・リリー cv.山下七海 | ||
ベアード・フェサ cv.斉藤次郎 | ||
フロリア・リリー cv.山下七海 |
天上岬 | |
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