【白猫】アシャクァトル・思い出
アシャクァトル cv.佐藤 拓也 <太陽と蛇の民の里>の大戦士。 人と生まれ蛇となり、そして神になった者。 | ||
2017/06/23 |
メインストーリー
思い出1
<――それは遥か昔のこと――>
貧しい出の俺に、これ以上の誉れはない。
……俺は、<蛇>の大戦士になりたい。
大戦士は、次の長だぞ!?誰よりも多く駆け、誰よりも多く殺さねばならない!
数多の戦士を押しのけ、屍の山の頂に登らねばならないんだぞ!?
それが戦士だと思うだけだ。
俺は里で生まれ、里のために戦い、里で死ぬ。
それで十分だ。
思い出2
――太古の森。
<蛇>の戦士アシャクァトルは、己の肉体を鍛え続けていた。
<男は考えることが好きではなかった。その必要性を、あまり感じていなかった。
生きるとは、戦いに勝つこと。
彼の肉体は芯から実感していた。>
しかし智恵がないわけではなかった。むしろ、里の者たちの中でも飛び抜けて明晰だった。
肉体の構造を細部まで把握していた。星の瞬きから吉凶も読めた。
世界がどう成り立っており、どのような<均衡>を保っているのかも。
その気になれば書物にも出来た。>
<その上で、彼は自分自身に言葉を削ぐことを課した。思考を止めることを課した。
素養と願望は別なのだから。
彼は里を愛し、そこに生さる民を愛していた。
愛するものを守るため、自分のなすべきことは戦うことだけ。
ゆえにそれ以外を削いでいた。>
<それではいけないことを、彼はまだ知らなかった――>
思い出3
――里の民は、戦いの部族。
遠征から凱旋した戦士たちは、熱狂をもって迎えられた。
だが、俺はそうは思わない。
…………
……
<アシャクァトルは無心となり、鍛錬を続ける。
そのうちに、いくつかの矛盾にも答えを出していた。
それは思考というよりも、肉体が導いた予知のようでもあった。
彼が岐路で迷うことはないだろう。
答えは己の血肉が導く。彼はそれに従う。
そこに意思は介在しない。
<ふと、鍛錬中のアシャクァトルは視界の端に白蛇を見た。
白蛇はすぐに藪に隠れた。>
<去った方角へ、しばし祈りを捧げた。
ここは<太陽と蛇の民の里>。蛇は時を経て、守り神になるかもしれないのだから。
思い出4
<蛇>の戦士アシャクァトルは、ある日、長に呼ばれた。
アシャクァトルは地位を望んではいなかったが、大戦士として長を尊敬していた。
長は既に、戦場に立つことの叶わぬ老齢に達していたが、目の光は若い頃のままたった。
アシャクァトルは生まれて初めて畏怖に近い感情を覚えた。>
<彼は沈黙して言葉を待った。如何なる場においても戦士であるべしと決めていたから。>
<長はしばらく彼を見つめていたが、厳然として告げた。>
<それを聞き、さしものアシャクァトルも思わず口を開いた。>
<アシャクァトルは言葉に詰まった。質問の意味がわからなかった。>
<続けられた言葉の意味など尚更わからなかったが、アシャクァトルは先の質問にようやく返答する。>
里を脅かす外敵に、慈悲などありません!
それが戦士ではないのですか!?
<長は、最後には質問へと変じたアシャクァトルの叫びには応じなかった。
ただ黙って目をつぶった……>
…………
……
<アシャクァトルは決して驕ってなどいなかったが、それでも長の言葉は衝撃だった。
事実、彼以上の戦士はいなかった。だから周囲の者も、自然、彼を次の大戦士とみなしていた。
その自分が、長にあのような言葉をもらうとは。
曇っているのか……?
<アシャクァトルにはわからなかった。
自分は矛盾や迷いを排してさた。それは曇りを晴らすための行為たったのではないのか?
それが誤りであるなら、これまで積み上げてきたもの全てが……>
<アシャクァトルは、己の肉体が答えを導くのを待とうとしたが……
その答えに疑念を抱いた今、ただ待つことが正しいだろうか?
<随分長い間、思考を削いできた。>
<戦士は大地を踏みしめ、夜に向かって眩いた。
――彼の結論に反し、それは存在する。
時間が問題なのではない。そのー晩に何が起こるかなのだ――
思い出5
――突然だった。
太陽と蛇の民の里が、炎に包まれたのだ!
それは捕虜たちがー斉蜂起したからだと思われた――
命がいらぬか!
<戦士アシャクァトルは、その務めを果たすべく、目についた全ての他の部族の捕虜を斬る。>
<戦鬼と見まごう奮迅に、アシャクァトルの視界から動く敵はすぐに消えていく。
長の元へ。
里の中心へと駆けていく彼は、その男を目にした。>
<男は里の同朋だった。アシャクァトルとも、幾度も言葉を交わしたことがある。>
俺もそれに含まれるだろう?
<アシャクァトルが状況をー瞬で理解出来ぬはずはなかった。
ただ戦士は、時間稼ぎのために問いを投げたに過ぎない。
男も、それがわかり、うすら笑いだけで答えない。>
<男は辺りに倒れ伏す蛮族の亡骸を眺めた。>
刃に意思があったのは俺ー人だ。
お前は無皐の民を斬ったのたよ。
……脱走は、罪だ。
お前は違うんだろうな!?囚われのまま贄になる日を待っというわけだ!
攻めたのはどちらだ?
<――黒の王国の民は、野蛮な蛮族ではない。
アシャクァトルも知ることだった。だが――いずれこの里を脅かすかもしれない。
ゆえに、先手を。それが命令だったのだ……>
<男はふっと声を落とした。怜俐な表情が張り付いていた。>
逃げ惑う蛮族を斬り、英雄の名を高めるか。それとも――
――俺とともに長を斬り、黒の王国へ降るか。
……あるいは俺を斬るか、だが……里の民を斬れば、お前も死罪だ。
俺の亡骸の前で、公正な裁きでも受けるんだな。
<男はー転、激しくなじるように声を荒らげた。>
<アシャクァトルは携えていた剣を捨てた。>
<男は下卑た笑みを浮かべながら、ー歩後ずさり――
――そして素早く地を蹴ると、転がっている黒曜石の剣へと飛びついた――!!!>
思い出6
――俺を斬らない……?
<黒曜石の剣はそのまま、飛びついた男の手にあった。>
情けか!?俺も戦士の端くれだ……!侮辱には堪えられんっ!
理由を言え!アシャクァトル!
戦士の死は、誇りの死。
誇りがなくなったのならば、既に死んたも同然。手を下すまでもない。
まだ、誇りが死んでいないのならば……
<アシャクァトルは静かな瞳で男を見つめた。>
<男は黒曜石の剣を目の高さに構え……
ヒタと喉に当てると、音も静かに刃を滑らせた。>
……大戦士…………お前なら、きっと……!
<男の崩れる姿を、アシャクァトルは唇を噛み、じっと見守り続けた――>
…………
……
<――後日。>
アシャクァトルが容疑をかけられることはなかった。
そして戦士は、里に残っていた捕虜たちと、語り合った。
捕虜たちも戦士を咎めなかった。里が燃えていたのだ。事実、逃げずに反撃を企てた者もいたという……
蛮族という認識を改め……戦士は、捕虜からあるーつの話を聞いていた。>
里の近くへ移り住んだのも、そこから逃れてとのこと。
天に住まう<白の巫女>ごと、白の王国すら滅ぼそうとしているのだとか。
なればこそ、敵とすべきは<闇の王>です。
なぜ肩入れをする?
<アシャクァトルは、長の鋭い眼光を弾き返した。>
この里の民か?
――里の中を守るだけでは、平穏は訪れません。
黒の王国を正すことが、里にも平穏をもたらすのなら――
俺は戦います。
<長は立ち上がると、アシャクァトルヘと歩みより、佩いていた短剣を差し長は立ち上がると、アシャクァトルヘと歩みより、佩いていた短剣を差し出した。>
意味するは<信頼>。ふさわしい持ち主となれるか?
<――アシャクァトルは、大戦士と認められた。
彼の持つ黒曜石の刃は、必ずや<闇の王>を討つと信じられた。
なぜなら、<蛇>の戦士には――
――<太陽>の加護があるのだから――!
「我は中天に座する、<黒き太陽>――
黒き陽の照るは――間の大地――」
<それは、ずっとずっと昔のこと……!>
天舞う四対の翼持つ大蛇 アシャクァトル
その他