【白猫】アシャクァトル・思い出
アシャクァトル cv.佐藤 拓也 <太陽と蛇の民の里>の大戦士。 人と生まれ蛇となり、そして神になった者。 | ||
2017/06/23 |
メインストーリー
思い出1
<――それは遥か昔のこと――>
アシャクァトル!
ん?
選ばれたそうだな!<蛇>の戦士に!
ああ……選ばれた。
どうした?名誉なことだぞ?もっと嬉しそうにしろよ?
嬉しいとも。これで、太陽のために戦い、死ねる。
貧しい出の俺に、これ以上の誉れはない。
本心か?そうは見えないな。
そうか。
……俺は、<蛇>の大戦士になりたい。
大戦士だと!?
ああ。
望みすぎだ!正気かアシャクァトル!?
大戦士は、次の長だぞ!?誰よりも多く駆け、誰よりも多く殺さねばならない!
数多の戦士を押しのけ、屍の山の頂に登らねばならないんだぞ!?
そうだな。
驕ったか!いくらお前が強かろうとも、上には上がいる!
そうではない。上があるのなら目指す。
それが戦士だと思うだけだ。
……お前は単純だな。
ふん。
天との戦が近いというのに。
なんだそれは?
風の噂だ。
噂になど興味はない。
俺は里で生まれ、里のために戦い、里で死ぬ。
それで十分だ。
……つまらない男だ……
思い出2
――太古の森。
<蛇>の戦士アシャクァトルは、己の肉体を鍛え続けていた。
…………
<男は考えることが好きではなかった。その必要性を、あまり感じていなかった。
生きるとは、戦いに勝つこと。
彼の肉体は芯から実感していた。>
…………
しかし智恵がないわけではなかった。むしろ、里の者たちの中でも飛び抜けて明晰だった。
肉体の構造を細部まで把握していた。星の瞬きから吉凶も読めた。
世界がどう成り立っており、どのような<均衡>を保っているのかも。
その気になれば書物にも出来た。>
…………
<その上で、彼は自分自身に言葉を削ぐことを課した。思考を止めることを課した。
素養と願望は別なのだから。
彼は里を愛し、そこに生さる民を愛していた。
愛するものを守るため、自分のなすべきことは戦うことだけ。
ゆえにそれ以外を削いでいた。>
…………
<それではいけないことを、彼はまだ知らなかった――>
思い出3
――里の民は、戦いの部族。
遠征から凱旋した戦士たちは、熱狂をもって迎えられた。
…………
おい、アシャクァトル、どうした?
なにがだ?
民たちが戦勝を讃えている、胸を張るだけでなく、笑顔も作れ。
戦士に必要か?
嬉しくはないのか?
嬉しいとも。だが、顔に出す必要はない。
あるさ。民たちが喜ぶ。
民は勝利を喜んでいるのだ。
それと英雄の帰還をな。
俺は誰よりも殺しただけだ。
里のためにな。
それで、英雄か。
何か不服か?
…………
……ほら、民がお前を見ているぞ。笑顔で手を振り返してやれよ。
…………
無愛想な奴だな、お前は。
愛想が戦士に必要ならば身に着けもしよう。
だが、俺はそうは思わない。
……ま、勝手にするさ。
…………
…………
……
…………
<アシャクァトルは無心となり、鍛錬を続ける。
そのうちに、いくつかの矛盾にも答えを出していた。
それは思考というよりも、肉体が導いた予知のようでもあった。
彼が岐路で迷うことはないだろう。
答えは己の血肉が導く。彼はそれに従う。
そこに意思は介在しない。
……?
<ふと、鍛錬中のアシャクァトルは視界の端に白蛇を見た。
白蛇はすぐに藪に隠れた。>
…………
<去った方角へ、しばし祈りを捧げた。
ここは<太陽と蛇の民の里>。蛇は時を経て、守り神になるかもしれないのだから。
思い出4
<蛇>の戦士アシャクァトルは、ある日、長に呼ばれた。
アシャクァトルは地位を望んではいなかったが、大戦士として長を尊敬していた。
長は既に、戦場に立つことの叶わぬ老齢に達していたが、目の光は若い頃のままたった。
アシャクァトルは生まれて初めて畏怖に近い感情を覚えた。>
…………
<彼は沈黙して言葉を待った。如何なる場においても戦士であるべしと決めていたから。>
…………
<長はしばらく彼を見つめていたが、厳然として告げた。>
大戦士にはなれぬな。
!!
<それを聞き、さしものアシャクァトルも思わず口を開いた。>
なぜ!?
敵を討つのに迷いはないか。
ありませぬ!
なぜない?
<アシャクァトルは言葉に詰まった。質問の意味がわからなかった。>
曇った眼は里に害を為す。
<続けられた言葉の意味など尚更わからなかったが、アシャクァトルは先の質問にようやく返答する。>
敵を前に逡巡すれば、それこそ里に害を為します!
里を脅かす外敵に、慈悲などありません!
それが戦士ではないのですか!?
<長は、最後には質問へと変じたアシャクァトルの叫びには応じなかった。
ただ黙って目をつぶった……>
…………
……
…………
<アシャクァトルは決して驕ってなどいなかったが、それでも長の言葉は衝撃だった。
事実、彼以上の戦士はいなかった。だから周囲の者も、自然、彼を次の大戦士とみなしていた。
その自分が、長にあのような言葉をもらうとは。
……俺の眼は……
曇っているのか……?
<アシャクァトルにはわからなかった。
自分は矛盾や迷いを排してさた。それは曇りを晴らすための行為たったのではないのか?
それが誤りであるなら、これまで積み上げてきたもの全てが……>
…………
<アシャクァトルは、己の肉体が答えを導くのを待とうとしたが……
その答えに疑念を抱いた今、ただ待つことが正しいだろうか?
…………
<随分長い間、思考を削いできた。>
……ー晩で答えが出るなど、都合の良いことはないか……
<戦士は大地を踏みしめ、夜に向かって眩いた。
――彼の結論に反し、それは存在する。
時間が問題なのではない。そのー晩に何が起こるかなのだ――
思い出5
――突然だった。
太陽と蛇の民の里が、炎に包まれたのだ!
それは捕虜たちがー斉蜂起したからだと思われた――
――敗北者どもめ……!なぜ潔く膝を屈さぬ!
命がいらぬか!
<戦士アシャクァトルは、その務めを果たすべく、目についた全ての他の部族の捕虜を斬る。>
里に害為す蛮族どもがッ!
<戦鬼と見まごう奮迅に、アシャクァトルの視界から動く敵はすぐに消えていく。
長の元へ。
里の中心へと駆けていく彼は、その男を目にした。>
お前は……?
……さすがだな、アシャクァトル。お前が来る前に終わらせたかったが。
<男は里の同朋だった。アシャクァトルとも、幾度も言葉を交わしたことがある。>
いや、構わないか。お前は里の民のため戦う。
俺もそれに含まれるだろう?
何を言っている……?
<アシャクァトルが状況をー瞬で理解出来ぬはずはなかった。
ただ戦士は、時間稼ぎのために問いを投げたに過ぎない。
男も、それがわかり、うすら笑いだけで答えない。>
裏切ったのか……!
なあ、<蛇>の戦士よ。おかしいと思わないか?
何がだ?
なぜ争い、血を流す。同じ人間が?
里に害を為さぬなら、命までは奪わん。
それがお前の言うことか?誰よりも多く殺した、お前の?
俺は敵しか殺さぬ。
敵、か……
<男は辺りに倒れ伏す蛮族の亡骸を眺めた。>
捕虜どもは、解き放たれて逃げ惑っていたに過ぎぬ。
刃に意思があったのは俺ー人だ。
お前は無皐の民を斬ったのたよ。
…………
……脱走は、罪だ。
ハッ!そうかい?誰でも逃げるだろう!
お前は違うんだろうな!?囚われのまま贄になる日を待っというわけだ!
…………
……アシャクァトルよ。遠征先の民たちは、本当に敵だったのか?
激しい抵抗を受けた。
みろ、わかっていたではないか。『抵抗』、だろうが?
攻めたのはどちらだ?
…………
<――黒の王国の民は、野蛮な蛮族ではない。
アシャクァトルも知ることだった。だが――いずれこの里を脅かすかもしれない。
ゆえに、先手を。それが命令だったのだ……>
さて……未来の大戦士よ。
<男はふっと声を落とした。怜俐な表情が張り付いていた。>
お前には選択肢がある。
逃げ惑う蛮族を斬り、英雄の名を高めるか。それとも――
――俺とともに長を斬り、黒の王国へ降るか。
……あるいは俺を斬るか、だが……里の民を斬れば、お前も死罪だ。
!!
証言させようなどとは思うな。そのときはすぐにこの場で死体になってやる。
俺の亡骸の前で、公正な裁きでも受けるんだな。
…………
<男はー転、激しくなじるように声を荒らげた。>
さあ、どうする<蛇>の戦士よ!?お前とて、命が惜しいだろう!?
そうだな。
<アシャクァトルは携えていた剣を捨てた。>
そうそう、それでいい……!
<男は下卑た笑みを浮かべながら、ー歩後ずさり――
――そして素早く地を蹴ると、転がっている黒曜石の剣へと飛びついた――!!!>
!!
思い出6
…………
――なぜ――
――俺を斬らない……?
<黒曜石の剣はそのまま、飛びついた男の手にあった。>
……お前のことは知っている。俺より先に剣を取り、斬るのは容易かったはずだ。
情けか!?俺も戦士の端くれだ……!侮辱には堪えられんっ!
理由を言え!アシャクァトル!
理由ならば、お前が自分で言った。
なに……?
お前は里の民。それ以前に、戦士だ。
戦士の死は、誇りの死。
誇りがなくなったのならば、既に死んたも同然。手を下すまでもない。
まだ、誇りが死んでいないのならば……
<アシャクァトルは静かな瞳で男を見つめた。>
……お前は、まだ俺を戦士として扱ってくれるのだな?
お前次第だ。
……ふっ……
<男は黒曜石の剣を目の高さに構え……
ヒタと喉に当てると、音も静かに刃を滑らせた。>
…………
礼を言う、アシャクァトルよ。
友を見届けるのは当然のこと。
……ふふふふ……
……大戦士…………お前なら、きっと……!
…………
<男の崩れる姿を、アシャクァトルは唇を噛み、じっと見守り続けた――>
…………
……
――共闘?黒の民と、だと?
はい。
<――後日。>
アシャクァトルが容疑をかけられることはなかった。
そして戦士は、里に残っていた捕虜たちと、語り合った。
捕虜たちも戦士を咎めなかった。里が燃えていたのだ。事実、逃げずに反撃を企てた者もいたという……
蛮族という認識を改め……戦士は、捕虜からあるーつの話を聞いていた。>
黒の王国では、<闇の王>の増長が著しいのだと言います。
里の近くへ移り住んだのも、そこから逃れてとのこと。
<闇の王>か……強大だぞ。
天に住まう<白の巫女>ごと、白の王国すら滅ぼそうとしているのだとか。
黒の民も、そう言っておりました。
なればこそ、敵とすべきは<闇の王>です。
……かの戦、我らの里とは無関係だ。
なぜ肩入れをする?
<アシャクァトルは、長の鋭い眼光を弾き返した。>
民に、平穏を。
……ほう。
この里の民か?
はい。しかし――
――里の中を守るだけでは、平穏は訪れません。
黒の王国を正すことが、里にも平穏をもたらすのなら――
俺は戦います。
…………
<長は立ち上がると、アシャクァトルヘと歩みより、佩いていた短剣を差し長は立ち上がると、アシャクァトルヘと歩みより、佩いていた短剣を差し出した。>
これは……!
大戦士の証、<睡蓮の葉>。
意味するは<信頼>。ふさわしい持ち主となれるか?
絶えず身に着け、戒めとします。
更なる功を立てるがよい。<蛇>の大戦士、アシャクァトルよ……
……はっ……!
<――アシャクァトルは、大戦士と認められた。
彼の持つ黒曜石の刃は、必ずや<闇の王>を討つと信じられた。
なぜなら、<蛇>の戦士には――
――<太陽>の加護があるのだから――!
「我は中天に座する、<黒き太陽>――
黒き陽の照るは――間の大地――」
<それは、ずっとずっと昔のこと……!>
天舞う四対の翼持つ大蛇 アシャクァトル
その他