アナザーエデン Story12
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「こ、これは……!?」
「クロノス博士……。」
「ねえエデン。ちょっとセシルの様子を見てくれない?よく眠ってるあの子?」
「うんいいよ。」
「ママーだいじょーぶ。すやすや眠ってるよーセシル。ヨダレたらして。」
「そう……ありがとう。おいしい夢でも見てるのねきっと。」
「眠りというのは少しの間だけ死ぬのといっしょだ。大切な人に別れも告げずに……。
さあではそろそろおまえ達も……おやすみを言う時間ではないかな?
クロノス時の暗闇の中で……永遠に!」
「うッ!な、なんだ……!?」
「こ、これが……!?」
「クロノス・メナスでござるか……!」
「ソシテ……真実のエデン……デス!」
「……。」
「フィーネ!?どうしてここに……!?」
「わたし……わからない……!でも誰かに呼ばれたような気がして……。
ごめんなさいアルドお兄ちゃん!でも……どうしても来なくちゃいけないって感じがして……。
お兄ちゃん……わかる?わたし……セシル……妹のセシルよ。
お兄ちゃんこの世界に帰って来たかったんだよね……?生きたかったんだよね人として?」
「ぉおおーん……!!!!!」
「くッ!?」
「もうやめて!目を覚まして!お願いエデンお兄ちゃん!?」
わたしとアルドお兄ちゃん……キロスが今の時代にたどり着けたのはお兄ちゃんのおかげなんでしょう?
きっとエデンお兄ちゃんが守ってくれたからわたし達は次元の渦に落ちなくてすんだんだと思うの。
「フィーネ、ムダだ……。もう何を言ってもエデンの心には届きはしない!
ここにいるのはフィーネの……セシルの兄さんじゃない!
アルドオレ達が知ってるエデンという存在じゃないんだ!」
「でも……!?
エデンお兄ちゃん!?」
「さがってろフィーネ!!来るぞッ!?」
「おおおーーーんんッ!!」
***
「ぉおおーんん!!」
「くッ……こいつは!」
「まさか……飲み込む気!?」
「異常重力波検出!異次元フィールドの顕在化が推定サレマス!」
「ちょっと!私達はそんなにおいしくないわよ。たぶん。」
「おとなしく食われると思ったら大きな間違いでござ……おわッ!?」
***
「ここは……?」
あれは……エデンか!?
エデン……もういい……。もういいんだエデン!
目を覚ませエデン。クロノス博士やマドカさんもそう願ってるはずだ。フィーネも……セシルも待ってる。
さあエデン……行くぞ。オレ達がおまえを解放してやる。
この永遠の孤独と絶望の暗闇から……!
ダレモイナイ……ボクハヒトリ……
ボクモイナイ……タダヒトリ……
ココニハナニモナイ……
「エデンお兄ちゃん!目を覚まして!
「声が届かなくても……それでも……呼びかけ続けるんだ!!
ワラッテイルノハダレ……?
ナイテイルノハダレ……?
ワラッテイルナイテイルワラッテ……
「私たちの声が聞こえる……?ひとりで心細かったんだよね……。だけど……。
「絶望の子守唄は終わり目を覚ますときよ。あなたを呼ぶ声が聞こえるでしょう?
「どんな苦境でも乗り越えられる……信じる道があれば進むのでござる!
クサッテシマエ……コワレテシマエ……
オワレ……ホロビロ……シンデシマエ……
ミンナミンナ シンデシマエ……
「エデンお兄ちゃん!お願い!私たちの言葉を聞いて!
「……自分の拳で切り拓くしかないのよ。未来は……いつだって。
「諦めナイというノハ難しいモノデス。ソレデモ……。
コノヒカリ……
「エデン……!」
「エデン!聞こえるか!?」
「エデンお兄ちゃん!?もうこれ以上苦しまないで!お願いだから……!!」
「目を覚ませエデン!自分を取り戻すんだ!
思い出すんだ本当の自分を……自分の家族のことを!
クロノス博士やマドカさん……セシル……それに………
なあエデン……。思い出してくれ「僕」のことも……。」
「アルドお兄ちゃん……!」
キロス!?
「………。」
「キロス……?アルドお兄ちゃん?なにをするつもり?」
「………。」
「キロス!?ア……アルドお兄ちゃん!!」
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セシル……
サア トキハナトウ……ボクラノ チカラヲ………
「………!?エデン……お兄ちゃん……?
はッ!?ジオ・プリズマが……!?」
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オオキクナッタネ……セシル………
「エデンお兄ちゃん!」
アリガトウ……セシル……
ダイスキダヨ………
シアワセニ……ナッテ………
「お兄ちゃん……。」
サヨウ……ナ……
セシ………
「エデンお兄ちゃん!?
エデンお兄ちゃん………」
***
「行ってしまったのねエデンお兄ちゃんも……アルドお兄ちゃんも……。
でも………」
「この世界が救われたのはみなさんのおかげです。ありがとうございますみなさん。
「フィーネの言うとおりじゃ。みなさんにはいくら感謝してもし足りないくらいじゃろうて。
本当によくやってくださった。心よりお礼申し上げる。
「気にしないでくだされでござるよご老人。
「ええ……わたし達はやらなきゃいけないことをやっただけだから。
「アルドさんはコウおっしゃってイマシタ。
ダレカがヤラなくてはナラナイノナラ自分達がヤルマデだと。
「結局アルドはどこに消えてしまったのでござろうか
「エデンを闇から開放するにはきっとアルドにはああするしかなかったんだわ……。
エデンは思い出したんじゃないかしら。在りし日の家族……本来の自分を。
キロスが胸の中に飛び込んできてようやくね……。
「アルドお兄ちゃん……。
「さあ……それじゃそろそろ行きましょうか?
「もう帰られるかみなさん。それぞれ自分達の時代に……?
「ええ……。わたしには未来でハンターとしての闘いが待ってるし……。
「拙者は古代で王国の行末を見守らねばならぬでござるよ。
「ソーシャル・ヘルパーとして困ってイル方のお手伝いをシナクてはナリマセンノデ!
「私は人間と合成人間の和平を画策する第三勢力でも結集しようかしら。
「どうかみなさん。くれぐれもご油断なく。
「ご老人もいつまでもお達者で。
「データ収集完了。コレヨリ帰還シマス。
「アデューアミ。
「それじゃまたねフィーネちゃん。
「本当にありがとうございました。みなさんもお元気で!
ありがとうみなさん!さようなら!いつでもまた遊びに来てくださいね!
ありがとう!さようなら!
「さて……それではわしらも帰るとしようかのフィーネ?
「うんお爺ちゃん!」
***
「あなたもありがとう。
いつまでも大好きよ………キロス……。」
こうしてアルドの……いや僕……
超時空猫キロスの冒険の物語は幕を閉じる
世界は救われた……
けれどそのために失われてしまった生命もある
クロノス・メナスも残念ながら
僕達の手で倒すしかなかった……
僕達自身がエデンの……
一つの未来を殺してしまったのだと言えなくもない
やっぱりこれはちょっと後味悪いというか……
このまま放っておくわけにもいかないだろう?
なにしろエデンは僕の大好きなご主人様だったのだ
さあそれでは……
今一度時空を超えて冒険の旅に出よう
殺された未来を救けに行こう
時の闇の降る前に……
アナザーエデン 第一章 ―完―