【アナデン】劇が紡ぐ理想?の世界 Story
劇が紡ぐ理想?の世界
コニウムで子供たちが劇をしている。
魔獣王とアルドの戦いを描いたものなのだが何か違っていて……。
「……ん?あれは……。
くっ!えいゆうアルドめ!ひきょうだぞ!
いやたすけて!お兄様―!
はっはっは!妹のいのちがほしければおれに倒されろ魔獣王!
まだていこうするなら妹がどうなってもしらないぞ!
アルテナ!どうすれば……!おれはアルドに負けてしまうのか!
ヘヘヘ魔獣王をたおしたらつぎはアルテナのばんだからな!
きゃー!
……なんだか前にも似たような光景を見たような。
……というかあの劇でのオレの性格色々違わないか!?
……魔獣の子供たちの間だとオレってあんな感じなのかな……?
ちょっと声をかけてみよう。
かんとく!やっぱり私負けたくない!
キミの言い分はわかる。しかしだね……。
だってほんとうはアルドが勝つんでしょ?負けるのいやだよ!
??????????
うう……それもいやだけど……。
なあちょっといいか?
あっ!アルドだ!
本物のアルドだー!
えっと……なんか相談してたみたいだけどどうしたんだ?
じつはね私たちアルドと魔獣王さまの戦いの劇をやってるんだけど……。
さいごにどっちか勝っておわるか決まらないんだ。
オレとギルドナの戦いか……。
役はね私がアルド役をやってるの!
俺が魔獣王さまをやってるんだ!
わたしがアルテナ役だよー。それでむこうにいる子がかんとくなんだー。
なるほどな。それで……えっとその劇について聞きたいことがあるんだ。
もしかして劇の感想かい!?
ああ……劇でのオレの性格についてなんだけど。
その……な?少しだけ性格が違うんじゃないかなって思ってさ……。
どう違うと言うんだい?
あんな嫌な性格じゃないというか……。
……たしかにボクの劇と本当の性格は異なるかもしれない。
しかし!素晴らしい芸術にリアリティは不要だと思わないかい?
そ、そうなのか……?
……まあその素晴らしさを求めすぎて行き詰まっているのだけどね。
……もしかして私たちの劇つまらなかった?
そうなの……?
いやっ!そんなことはないぞ!ただオレの性格が違うだけで……。
……何やら大人げないことをしているなアルド。
ギルドナ!?いやこれは……。
あ!魔獣王さまだー!こんにちはー!
きゃーお兄様―!
ぽかっ!魔獣王さまはおまえのお兄ちゃんじゃないだろ!
……これは劇でのオレの性格が少し違っていて……。
ふむ……だとしても子供の劇に口を出すのはどうかと思うがな。
………………。
……むむむ!魔獣王さまとアルドが並んでいる姿!
いい……!これはいい……!
いきなりどうしたんだ……?
二人とも!ボクに協力してくれないか!?
協力……?
ほう……?
ばっか!魔獣王さまになんてこと言うんだよ!
しつれいだよ!
気にするな。どれ言ってみろ。
実はいま作っている劇の結末が決まらなくて困っているんだ。
英雄アルドが勝つのかそれとも魔獣王が勝つのか……。
リアリティを抜きにしてもこの問題はとても難しい!
それでオレたちにどうしてほしいんだ?
ぜひとも二人の戦っている姿を見せてほしい!
生で魔獣王さまとアルドの戦う姿を見られれば最高の刺激になるはずだ!
オレは構わないけどギルドナはどうだ?
せっかくの子供の頼みだ。無下にするつもりはない。
ではさっそくガバラギに行こうではないか!
うおー!魔獣王さまのかっこいい姿がみれるぞー!
アルドもがんばってー!
ではボクたちは先に行っているよ。
……ギルドナがこういうことに協力するのって意外だな。
さっきも言っただろう。子供たちの頼みを無下にする気はないと。
そうだったな!よしオレたちも行こう!
***
それで戦ってる姿って普通にこの辺の魔物と戦えばいいのか?
うむどこかによさげな魔物がいれば……お、いたいた。
あそこにいる魔物をどっちかかっこよく倒せるか勝負してほしいんだ!
え、これって勝負になるのか?
フッ自信がないか?
……!そんなことない!
魔獣王さまがんばれー!
アルドー!かっこいいところをみせてねー!
ではいくぞアルド。
ああ!
***
どうだった?
どっちもかっこよかったー!
でもそれじゃあ勝負にならないよ。
かんとくはどうだった?
ああ見事だった。しかし……。
なにか物足りないようだな?
……かっこよさ的には互角。だからこそ良い画を見ることができた。
しかし何かが足りない……!こうカチリとはまらないんだ!
難いな……。これ以上となるとより強力な敵と戦うことになるが。
より強力な敵……それだ!
もっと白熱したギリギリの戦いが必要だったんだ!
いやでもこれ以上ってなるとさすがに危なくないか?
素晴らしい芸術のために多少の危険はつきものさ!
さあさっそくさっきのやつよりも強力な魔物を見つけにいこう!
あ、おい!……ギルドナ後を追おう!
言われなくてもそのつもりだ。
おまえたちは村に戻れ。これ以上は危険だ。
魔獣王さまが言うなら……。
はーい。
よし後を追うぞ。
***
見つけた!
う、うむむ……強い魔物を探すとは言ったけど……これはマズイぞ。
……しかし!より素晴らしい芸術のためにここで怖気づくわけにはいかない!
おまえなんて怖くない!さあどんとこい……!
いい心がけだが無茶をするものではない。
まさか本当に強そうな魔物を見つけるなんてな。
こいつは本来ここには生息していない魔物だ。
腹をすかせてこんなところまできてしまったようだな。
……ならきっちり追い払わないといけないな。
俺が引きつける。合わせろアルド!
ああ!
***
***
もう大丈夫だぞ。
……こ。
ああ怖かったよな。一緒に村に帰ろう。みんなも心配して……。
こ……これだあ!!!
……え?
………………。
ボクはなんて勘違いをしていたんだ!
アルドと魔獣王さま……!何も二人が争う必要はないじゃないか!
ええっと……?
きたきたきたあー!展開が降りてきたよー!アルドと魔獣王が手を取り合う!これだったんだ!
……どうやら答えには辿り着けたようだな。
ああ……それも良い感じの答えみたいだ。
二人とも助けてくれてありがとう!
……それとごめんなさい。ボクがひとりで突っ走ったせいで迷惑をかけてしまった。
悪いことをしたという自覚があるならそれでいい。
そうだな。今度からは気をつけろよ?
うん……!
それじゃあ戻るか。
***
魔獣王さま、かんとくを助けてくれてありがとう!
アルドもありがとね!
ほんと大事にならなくてよかったよ。
……ところで監督の子供はどこにいったんだ?
なんかねー戻ってきてすぐにおうちにかえっちゃった。
もうっかんとくがいちばん魔獣王さまたちにめいわくかけたのに。
まあまああいつもちゃんと謝ったから。
またせたね!ついに脚本ができあがったよ!
お、そうなのか!やったな!
魔獣王さまとアルドのおかげさ。二人の協力して戦う姿がボクにアイデアをくれたんだ。
協力……か。そのようなつもりはなかったのだがな。
だから二人にはお礼としてボクたちの劇の最初の観客になってほしい!
最初の観客か。なんか得した気分だな。
でも私たち新しいお話は知らないよ?
練習したほうがいいんじゃないか?
いや多少の変更はあるがキミたちならやれるはずだ!
そう言われたらやるしかないな!
やってやるー!
では準備をするから楽しみにしていてくれ。
ああわかったよ。
***
……さてどうなっているかな?
魔獣王!おまえの野望もこれまでだ!
やるなアルド!だがまだ終わらんよ!
(……よかった。オレの性格ちゃんと直ってる……)
お兄様!アルド!もうたたかうのはやめて!
ダメなんだアルテナ!魔獣と人間は仲良くはなれないんだ!
(お兄様……おしとやかなアルテナというのはなかなか新鮮だな。)
魔獣王!これで終わりだ!
勝つのは俺だ!
ダメーーー!
うおおおお!
ど、どうなるんだ……!?
………………。
………………。
………………。
お兄様……?
……いやおれはもうお兄様ではない。
え……?
おれは魔獣王でもアルドでもない。
アルテナの願いが生み出したきせきの存在……。
魔獣!
人王!
「「アルギナだ!」」
なんだとっ!?
どうしてそうなる!?
ア、アルギナ……?どういうこと……?
アルテナの願いがアルドと魔獣王の体を合体させたんだ!
この新しいちからで世界を平和にしてみせる!
わあ!アルギナさまー!
ようしまずは人間と魔獣の王様になって魔獣の国をつくるぞ!
えっちがうよ!もう王様はやめるんでしょ!
魔獣と人間のみんなでどうするか考えるって台本に書いてあったよ!
やっぱり王様は必要だから俺が付け足したんだ!
おまえは俺に合わせればいいんだよ!
それなら私がいまからアルギナをやる!
なにおう!アルギナは俺だ!
うぐぐ……!
むむむ……!
け、喧嘩しちゃダメだよー!
キ、キミたち何をしているんだ!脚本通りに動いてくれないと!
……ああもう!二人は無視してここから最後の語りを入れてくれ!
ええっと……それから魔獣人王アルギナは……
人間と魔獣みんなをたくさん幸せにできましたとさ。
めでたしめでたし。
………………。
………………。
あ、あの……。
……最後はすこしバタバタしたけどけっこういい劇だったよ。オレは好きだぞ。
子供だけで作ったものにしては良い出来だったんじゃないか?
あっ……やったあ!かんとく褒めてもらえたよ!
それはよかった!でもその前に二人の喧嘩を止めてくれー!
わわっそうだった!
……いろんな意味で大物になりそうだなあの子達。
あの監督の子供の熱意が本物ならばいずれすごい劇を作り上げるだろうな。
それにしてもアルギナか……。
形はどうあれいつか劇みたいに人間と魔獣が仲良く暮らせる日が来るといいな。
……いずれ訪れるだろう。その心を持つものが途絶えない限りはな。
しかし……。
どうしたんだ?
魔獣人王アルギナという名……どうにも好かん。
大人げないことはしちゃダメだぞ。
………………。