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【アナデン】ダルニス Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
アルドと同じ警備隊に所属するアーチャー。
代々猟師の家計に生まれ弓の扱いや森林を利用した戦いを得意とする。面倒見のいい性格だが無益な殺生や過ぎた狩猟に対して強い嫌悪を見せることも。



優しさの爪跡

近ごろ商隊が魔獣におそわれるという被害が相次いだらしくダルニスたち警備隊も忙しい日々を送ることになるのだが……。



人と魔獣を別つもの

バルオキーの子供たちの間で魔獣に関するウワサが広まっているらしい。それを聞いたダルニスは……。




story1 優しさの爪跡


「要請を受けてまいりました。バルオキー警備隊所属ダルニスです。」

「おお来てくれたか!すまない我々だけでは手が回らなくてな。」

「いえこういう時こそ助け合いです。それで状況は?」

「助かる。近ごろこの街に続く街道で魔獣による強盗が増えているんだ。」

「魔獣の強盗?」

「ああ。襲って荷物を奪う。まさに強盗という表現がぴったりなんだ。

こちらでも街道の警備に人手を割いてはいるんだが街の警備もしなければならん。」

「つまりオレたちに街道の警備を任せたいってことか?」

「そうなるな。要所の警備はこちらで行うのでキミたちには見回りをお願いしたい。

場所はカレク湿原だ。頼めるか?」

「ええお安い御用です。」

「ありがとう。なにか問題が出たらこちらに報告してくれ。」

「わかりました。では。」


「……つまりいつも通りの仕事だな。」

「そういうことだな。ひとまずカレク湿原に行こう。魔獣たちの痕跡が残っているかもしれない。」


 ***


「ギギャアア!!」


「魔物たちが道を塞いでる……!」

「最近凶暴化した魔物による被害が増えているが……あいつらもその一つか。」

「ダルニス!」

「ああ。言われずともわかっている。

まったく無鉄砲な奴だ。昔から命知らずのは変わらずか。

いつも通りオレが弓で隙を作る。お前は気にせず前に出ろ。」

準備はいいな?あいつらを狩るぞアルド!」


 ***



 ***


「……これくらい狩れば十分だろう。」

「商隊の安全を考えるならもう少し討伐を続けたほうがいいんじゃないか?」

「いや自然の動物をヘタに刺激するとかえって危険だ。

オレたちがどうがんばったところで魔物を狩りつくすことはできない。

だからこうしてこちらのテリトリーをわからせるんだ。」

「お前たちはオレたちの棲み家を荒らしたんだぞ……だろ。」

「フ……よく覚えていたな。狩り過ぎれば今度はこちらがテリトリーを犯した侵略者となる。

そうなれば魔物たちはより強く抵抗してきて……被害が増えることになる。」

「……戦士の知恵……だったか?」

「狩人の知恵だ。戦うだけじゃない共存のための知恵だ。

まだあるぞ。心して聞け。つまりはなにごともやり過ぎは良くないってことだ。」

「始まった……。」

「何かを誰かを守るという行為はただ力があればいいというわけじゃない。

気にしなきゃいけないことやっておくべきことさまざまな努力が必要なんだ。」

「わかったよ。ダルニス。すべてお前が正しいよ。昔から何をやっても優秀だったもんなお前は。」

「アルド。お前も本気になればオレ以上の成績を残せるはずなんだ。」

「頭を使うのはちょっとな……。」

「まったく……体を使うことしか興味を持てないなんて。」

「だからダルニスが必要なんだよ!」

「調子に乗るな!」

「はっはっはっはっ!」

「フ…………」


「ぐぎっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」


「いまの声……近いぞ!」

「例の魔獣の強盗が出たのかもしれない!行こう!ダルニス!」


 ***


「たっ助けて……!命だけはっ!」


「へ、この程度で命乞いとは人間ってのはだらしねえヤツばっかりだ。」

「ちげえねえ!」


「い、命だけは……お願いします……。」


「こんなこと言ってるがどうしやす?」

「かまうことはないさ。どうせすぐになにも言えなくなる。」


「待て!それ以上の悪行は許さんぞ!」


「ちっ警備隊ってやつか。野郎どもやっちまえ!」

「アルド商隊の救助が優先だ!深追いはするなよ!」

「わかってる!行くぞダルニス!」


 ***


「ぎゃああああ!顔が!オレ様の顔がぁ!?

ま、待ってくれ!ほんの出来心だったんだ!もうしないもうしないから……。」


「…………。」

「ダルニス?」

「……もう二度とひとを襲わないと約束できるか?なら命まで取るのは……

……いやしかし。それが本当だとしても罪は償わなければ。」


「へっ隙を見せたな!」


「ぐ……っ!」

「ダルニス!」


「はっ甘えたこと考えるからそうなるんだ!

敵ってのはなぁ!仕留めなきゃ意味がねえんだよ!」


 ***


「ダルニス!大丈夫か?」

「ああ……。すまない情けないところを見せた。

だがおそわれていた彼は無事だ。ユニガンヘ報告に戻ろう。」


 ***


「そうか例の強盗は逃がしたか。」

「すみません。これはオレの失態です。」

「いや気にすることはない。キミたちのおかげで救われた命がある。

キミたちは警備の仕事をしっかりと果たしたんだ。

それに今回のことで連中もおいそれとはおそってこれなくなっただろう。十分な働きだよ。」

「……はい。」

「今回の報酬だ。受け取ってくれ。」


 ***


「……オレの甘さが原因で魔獣に逃げるスキを与えてしまった。

オレは間違っているのか……?」

「ダルニス……。」



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story2 人と魔獣を別つもの


「おおアルドにダルニスか。いつも村の警備ご苦労じゃの。」

「ええこれも警備隊の仕事ですから。ところでオレたちになにか?」

「おおそうじゃった!そうじゃった!

実はな月影の森に薬草を取りに行った孫がそこで魔獣を見たと言うんじゃよ。

見間違いじゃとは思うのじゃがちと心配になっての。少し森を見回ってはくれんか?」

「魔獣か……。」

「…………。」

「どうした?ダルニス?」

「……わかりました。一度月影の森を調べてみましょう。」

「おおそうか!では頼むぞ!」


 ***


「おいこの森には魔獣が出るらしい。入るのはやめておいた方がいいぞ。」

「うおっ!?……なんだダルニスか。アルドもいるってことは警備隊の仕事か?」

「あんたはバルオキーの……。何をしていたんだ?」

「ああ薬草を少しな……なんだじゃあやっぱり魔獣はいるのか?」

「わからない。それを確かめに来たんだ。」

「なにかの間違いじゃないのか?いたって静かなもんだぜ。」

「だといいんだが……。とにかくオレたちが調査してみる。それまであまり森の奥には……。」

「はいよ。他の連中にも声をかけておくさ。

にしても魔獣か……いつになったら平和になるのかね。」


「よし調査を開始しよう。ひとまず森の奥まで行ってみるか?」


 ***


「……異常なし。魔獣の姿は影もかたちもないな。

ここまで痕跡がないとなると集団で森に入ったわけではなさそうだ。

ヤツらも追われる立場だ。単独行動をするとは考えにくい。」

「となるとやっぱり見間違えかな?」

「その可能性は高い……。


懐かしいな……。」

「どうしたんだ?」

「何年か前よくここで特訓をしたな……。」

「……ああ。思い出すよ……。死を覚悟したこともあるからな。」

「ははは!ああ!魔物に襲われたときだ!」

「お前がいなかったらオレは死んでたかもしれないんだ。」

「違うなアルド。あの魔物はもう息絶える寸前だった。オレはとどめを刺したに過ぎない。」

「そうだったのか?」

「ああ。それ以来オレは剣を捨て弓を極めようと決めたんだ。

まったくオレはお前に影響されっぱなしだ。今じゃオレもお前の正義感に影響されてか魔獣との和解の道はないもんかと考え始めている。」

「魔獣との和解……か。確かにそんな道があればいいな。」

「ああ……!」

「そう言えば剣を捨てて弓を極めようと決めたって言ってたけどどうしてなんだ?」

「ああそれはな……。」


「だっだれか助けてーっ!」


「この声は……行こうアルド!」


 ***


「……なにどういうことだ!?」


「や、やだ……死にたくないっ!」


「魔獣が魔物に襲われているのか!?」

『グォォォォ!』

「ひゃあっ!?」


「ど……どうするアルド?」

「助けるに決まってるだろ!行くぞダルニス!」

「まったくアルド……お前って奴は!」


 ***



「ひ、ひと……!?そんな……まさか助けてくれるの?」

「おいアルド!俺が剣を捨てた理由はな……。

こうして……お前の背中を護るためだ!」


 ***


「あ、ありがとうございます……。」

「怪我はないか?ほかに仲間は?」

「だ、だ大丈夫です!……あ痛っ!」

「その足……怪我しているな。

オレが診よう。応急手当なら多少の心得はある。」


 ***


「これで動けるはずだ。」

「あ、ありがとうございます!優しいんですね人間なのに……。」

「…………。」

「ダルニス?どうかしたのか?」

「あ、いや……なんでもない。

お前仲間はどうした?どうしてこんな人里の近くに?」

「その楽しそうな声が聞こえてきてつい……。」

「声?もしかしてオレ達か?」

「人間は怖い生き物だって聞いてたけど……アタシにはそうは思えなくて。」

「そうか……。」

「しばらく森には村の人間が出入りする。こちらの方には近づかないほうがいい。」

「は、はい……。あの本当にありがとうございました!」


「ダルニス?どうかしたのか?」

「魔獣とはいえ助けを求めていたんだ。なのにオレは……。

すぐ助けに入れなかった。助けるかどうかを迷ってしまった。

なにが和解の道があればいい、だ……。」

「ダルニス……。」

「すまない。これで見周りは終了だ。……バルオキーに戻ろう。」


 ***


「おおふたりとも帰って来たか!それでどうじゃった?」

「おそらくお孫さんは魔物と見間違えたのでしょう。

そちらの対処はすみました。もう森には大きな危険はないかと。」

「そうであったか……。

やはり各地で魔物が凶暴化しているというのは本当なのじゃな。

孫たちにも気をつけるように言っておくかの。

しかし魔獣騒ぎが単なる見間違いで良かった!これでわしらも安心して眠れるわい!」


 ***


「よかったのか?あの魔獣のことを報告しなくて。」

「単独だったということは魔獣王の軍勢とは関わりのない魔獣だろう。おそらく近くに隠れ家があるはずだ。

だがそれを話せば街の人々は不安になる。……過激な意見が出てくる可能性もある。

オレは……あの魔獣がだれかに危害を加えるようには見えなかった。」

「そうだな。オレも無駄な争いはしたくない。」

「オレたちも彼らも森の恵みを受ける命だ。本来ならば争う必要なんてない。

互いのテリトリーを守ってさえいれば……そのはずなんだ。」




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