【黒ウィズ】エリオット・シクス
エリオット・シクス
2015/06/16 |
ウィズセレ
「森が……鳴いている。」
「おっさん。それ、もう4回目だぞ。」
「ドゥンバ、おっさん違う。勇敢な戦士。お前失礼だ。」
「エリオット、お前違う。勇敢な戦士……って、さてはそっちも俺の名前覚えてないだろ。」
「森が……鳴いている。」
「誤魔化すな。次同じこと言ったらガイド料減らすぞ。」
「嫁が……泣く。」
「知らん。」
エリオット・シクスだ。俺はいま、世界を巡り、各地の民族が崇める神々を調べている。
今回はンモス族が大昔に信仰していた神の遺跡を目指している。
「で、もうすぐ着きそうか?」
「もう着く。」
ちなみに現在のンモス族はその神を信仰していない。
「予定より早い。割増だ。」
金にならんからだそうだ。なんとも世知辛い話だが……俺にとっては好都合だ。
「鳴いている……。」
森じゃない。俺の剣が、だ。神が近い……。
story2
神といっても色々いる。戦いの神、商売の神、恋愛の神、パンの神、酒の神、鍛冶の神……。
台所の神、椅子の神、机の神、栓抜きの神……はいるか知らないが、共通して言えるのは……。
「お前の剣に反応しているのか?」
「そうだ。この神様は”当たり”だな。」
真に受けない方が良いってことだ。
「さあ、その祠から出てこいよ。神様なんて名乗ってないでさ。
俺の剣。ひょんなことから手に入れたこいつが激しく哭く時……。
「おっさん……いやドゥンバ。下がっていろ。怪我するぞ。」
「無用な心配いらない。戦える。自分の身は自分で守る。」
「……違うよ。俺から離れろって言ってんだよ。まだこいつを上手く使えないんだ。」
俺の剣が哭く時、神は素顔を晒す。権威も威光もない、凶暴な素顔を。
story3
「これが神か……。」
「ああ。どういうわけだか俺たちはこいつらを有難がって拝んでいるのさ。」
おっさんもさすがにショックだったかな? 神の正体がこれじゃあ仕方ないかもな。
この世界にいるどんな生き物とも似ていない姿で、知能すらあるかも分からない。
「こんな、こっちを見たら見境なく襲いかかってくるような奴をな。」
「神が……死んだ。」
「ああ、そうだ。面白いこと言うな、おっ……ドゥンバ。」
俺だって初めてこいつらをぶちのめした時はそう思ったもんさ。神は死んだ、ってな。
それは同時に、この剣を手に入れた時だった。そして、俺の運命を決めた日だ。
「旅を続けるのか?」
「こいつらには借りがある。でっかいのが……。」
何やったって返せないようなのがな。
「前に、お前と同じような者が村に来た、らしい。同じような武器を持って……。」
「へえ……。」
「仲間か?」
「いや、知らん。でも、いずれどこかで会うだろうな。」
それこそ……。
「神様が導いて下さるだろうさ。」