【黒ウィズ】続 超魔道外伝 Story
続 超魔道外伝 |
アリエッタ編
「アリエッタがいるにゃ。」
ウィズの言葉に振り返ると、そこには確かにアリエッタがいた。
彼女は、荷車みたいなものを引いていて、どこかへ行く途中のようだった。
アリエッタ――せっかくなので、君はそう声をかけた。
「……はい?」
「……別人にゃ。」
顔はそっくりだけど、アリエッタよりも身長が高く、髪色も少し違うような……。
間違えました、と謝罪して、君は歩き出す。
「キミ、人間違いなんて恥ずかしいにゃ。」
恥ずかしいことは間違いないけど、でもアリエッタだと最初に言ったのはウィズだ。
だけど世の中には似た人がいるつて聞くし、別段おかしなことではない。
「……というようなことがあったにや。」
「へえ……ああ、でも最近、私も似たようなことがあったわね。
アリエッタに似てる人がいて、野菜をのせた荷車を引いていたの。」
もしかしたら同じ人かも、と君は呟く。
「珍しいこともあるものね。」
「ごめんください。」
「……にゃ!?」
ついさっき町中で見かけた女性が、君たちの前に現れた。
「……アリエッタ、じゃないわね。」
「うちの妹をご存知のようだったので、今、どこにいるか聞こうと思って……。」
「……い、妹?」
「失礼しました。私、ミリエッタ・トワと申します。妹のアリエッタがいるような気がしたので、この町に来てみたのです。」
「そ、そういえばアリエッタが、お姉ちゃんがいる! って言ってたわ。」
君とエリスは慌てて挨拶をする。
「エリスさん。存じあげております。よく妹が手紙であなたのことを盲いているので。」
「そ、そうでしたか……。」
エリスもどう接すればいいのかわからない、そんな表情を浮かべていた。
いや、警戒しているのだろうか?
だってアリエッタの姉である。
アリエッタの、姉である!
「地方で両親と農業を営んでおりまして、お野菜がとれたのでアリエッタのために持ってきたのです。」
「……なるほど。
あの子、たまに大量の生野菜を一気に食べるから、あれ?頭がおかしくなったのかな?と思っていたけれど、理由があったのね……。
「お近づきの印に、はい、どうぞ。トワ農業のお野菜は、甘くて美味しいですよ。
トワ農業……。
「アリエッタとは全く違うにゃ。
「トワ農業の販路拡大のためにハーネット商会と提携しまして、最近では全世界に展開しているんです。
ソフィ・ハーネットさんはご存じですか?
「アリエッタもソフィも、今はいないにゃ。」
「……うーん、そうですか。残念ですね。」
アリエッタの姉――失礼ながら、話をしてみるとそうは思えなかった。
物腰は柔らかく、落ち着いている。
「アリエッタは、皆さんに迷惑をおかけしておりませんか?」
「あ、ええっと……まあ、うーん……そんなことは、な、ない、ないですよ……。」
目が泳いでいるどころか、今まで味わわされたことを思い出して、顔が青ざめている。
エリスは絶望的に、嘘をつくのが下手だった。
「仕方ありませんね。妹が戻るまで少し待つことにします。
私が来るというのに、待つこともできないなんて、あの子はまだまだ子どもですね。」
「あらかじめ行くって言ってたのかにゃ?」
「姉妹なら言わずともわかるでしょう? 私はアリエッタのいる場所が感覚でわかりますよ。」
「……ん、何かおかしな展開になってきたわね。」
君も全く同じことを思った。
「……失礼ですが、魔法でこちらまで?
「生活に必要な魔力はありますが、トワ家は、なにぶん魔法がからっきしで。
魔法をあんなに使いこなせるのは、アリエッタだけですね。
「……アリエッタの田舎って、海を2つ越えて、山を10も越えた、そのさらに奥って聞いてたわ。
「じゃあ、どうやってここまで来たにゃ?
あの子にお野菜を届けるのが、私の趣味なのです。そのためなら、海も山も一一歩いて越えますよ。
「超人……。」
魔法を使えなくとも、アリエッタに似た、スケールの大きさを感じさせる部分があった。
もしかしてアリエッタのご両親も……。
いや、考えるのはよそう。
何もかもを超越した人のことを理解するのは、きっと無理だろうから……。
「魔道士さんには、とても憧れますね。あの子の話、聞かせていただいてもいいですか?」
「……ええ。アリエッタならお昼すぎには戻るでしょうから。」
そう言って、アリエッタの姉とともに、エリスが歩き出した。
アリエッタの持つ謎が、また増えてしまったようだった……。
エリス編
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