【黒ウィズ】新時代★大魔道杯ストーリーズ
<開催期間>5月23日16:00 ~ 5月27日15:59
目次
<ストーリー登場精霊>
ネイハ(CV:寺潭百花)
ワルツ(CV:楼井海亜)
マドロック(CV:仲村宗悟)
story1
「ハッ――殺気!」
とっさに飛び退くと、次の瞬間、ネイハが元いた場所に無数の剣が突き刺さった。
「貴様ら、何奴!?」
我らは魔刃四天王!
貴様を打ち倒し、名を上げさせてもらうぞ――峰影流のネイハ!
是非も無し。かかってくるがよい!
一流の剣客たるもの、夜討ち・不意打ち・突然のお宅訪問は当たり前。多勢に無勢も言い訳にはならぬ。
直影流のミサギ・ヤノ、参る!
我が直影流は、その者の性質を具現化する剣!
だから”跳ねっ返り”のウチはめっちゃ飛べる!
ミサギの槍剣が、猛禽類の鈎爪のごとく、ネイハの頭上から襲いかかる。
くっ……!
ネイハは両刃の大剣を構え、かろうじてミサギの槍剣を受け切るが――
ウチの刃を受けたな! さあ、己が本性に囚われるがよい! ……あれ?
ミサギの槍剣は、ほんのわずかな間に刃こぼれだらけになっていた。まるで”硬いもの”に叩きつけたように。
まさか、あんた、めっちゃ”硬派”? それもえげつないほど”硬派”なの?!
武の道を歩み続けて幾星霜。剣術の修行を欠かした日は1日たりともない!
今どき珍しいほど硬派!
今度はこちらの番だな。とくと味わえ、峰影流(みねかげ)――!
ネイハは素早くミサギの背後に回り、腰を抱え、「えっ、ちょ待っ、剣術は?」という抗議の声を完全に無視して反り投げる。その技の名は――
――”峰打ちバックドロップ”!!!
がぎぇっ……!
何かが砕け、何かが折れる音とともに、美少女にあるまじき断末魔が響く。
脳天から叩きつけられたミサギの頭は顎まで地面にめりこんでいた。
安心しろ、峰打ちだ。
どこが!?
つか、峰どころか、剣も使ってないじゃん!
峰影流は殺人剣にあらず。不殺の活人剣なり。剣技であるうとなかろうと、すべての技は峰打ちに変わるのだ。
何が不殺の活人剣か! まるで説得力がない! 貴様の剣術も所詮は殺人剣! その偽善、我が剣技で暴いてくれる!
我が虚影流は、いかなる真実をも見通す剣。誰もが心の中に隠している真の姿を、貴様もさらけ出すがいい――!
峰影流――”峰打ち・目潰し”!
ぎゃあああっ! 目がっ! 目がああっ!
どうだ、真実どころか何も見えまい。
次の相手は貴様か?
ふ、ふたり倒したくらいでいい気にならないでよね! あんたが倒したふたりは我が四天王の中でも所詮、中の上くらいよ!
我が逆影流こそ四天王最強! 人の心を逆転せしめる我が剣技で、あんたの性格を正反対にしてしまえば――あ。
四天王の中で三番目に賢い彼女は気づく。「不殺の反対って惨殺とか虐殺とか? めっちゃ逆効果じゃない?」――と。
戦いの最中に考え事とは余裕だな。ならばこちらから行くぞ、峰影流――!
――”峰打ち内臓破裂”!!
ごぶおっ!?
……えっ、ウソでしょ。我ら魔刃四天王があっという間に3人も……!?
貴様が四天王の首魁か?
は、はい! そうです! 我こそが馬影流のセリカっす! 四天王最強なんで降参するなら今っすよ!
セリカの声は震えていた。「今日はこの辺にしといてやらあ!」とかなんとか言って、今すぐ帰りたい気分だった。
だが、そういう雰囲気ではなかった。
動物さんが喋る系の絵本を読んでいたら、いきなり次のぺージでクマさんがウサギさんを食い千切り始めたような、どシリアスな状況だ。
問答は無用。剣士ならば、拳で語れ。
いや剣で語れよ、剣士だろという初歩的なツッコミすら、口にできぬ緊迫感。
峰影流奥義――
セリカの脳裏にママの笑顔が浮かぶ。パパが「この子の名前はセリカにしよう」と笑った。………走馬灯、早くね?
”蜂打ち阿修羅”!!
………峰影流の奥義書は門外不出だが、それは別に秘密というわけではなく、国の法律に抵触するからである。
「この奥義書には暴力的・残酷な表現があります」「あなたの精神的な健康を損なう恐れがあります」上記の但し書きがない場合、出版は許可されない。
ぎゃああああああっ!!!
こうして、魔刃四天王は全滅した。
***
くっ、殺せ!
いや、ほんと、マジで殺して! これめっちゃ痛いんですぅぅっ!
剣士の情けをかけて……せめて介錯をぉぉ……!
死ぬのが怖くないのか?
あたしらだって、こう見えても武人の端くれ! 死ぬ覚悟くらいとっくにできてます!
やれやれ……。言ったはずだぞ、峰打ちだと。じきに元に戻る。
そんなバカなことが――ああっ! 目が! 目が見える!
他の四天王たちも五体無事であった。怪我も後遺症もなく、まったくの無傷。――きっついトラウマは残ったが。
死ぬ覚悟はある――貴様はそう言ったな。
そりゃまあ……。人を殺す技を磨いてるんすから、こつちも死ぬ覚悟がなきゃズルっしょ。
ふっ……”死ぬ覚悟”など、臆病者の戯言よ。
なんだと!?
真の剣客とは……死ぬ覚悟がある者ではない。
”生きる覚悟”が、ある者だ。この過酷な世界で、理不尽な現実と戦い続ける覚悟がある者だ。
生きる方が、死ぬよりも、その何倍もつらく苦しいのだからな。
魔刃四天王たちは自然と顔を見合わせた。口にするまでもなく、自分たちの完敗だった。心技体すべてにおいて、格が違った。
説得力あるぅ……。
わかりみぃ……。
姉貴のような人をずっと探していました!
どうか我ら魔刃四天王の長になってください!
それは構わんが、五人になるぞ、四天王なのに。
じゃあ、五天王で!
語呂が悪いな……うむ。
奇しくも、我ら五名の流派にはいずれも”影”の文字が含まれている。これも何かの宿緑であろう。
ゆえに”魔刃五影将”という名でどうだ?
おお! なんか四天王より凝ってますね!
さすが姉貴! それで行きましょう!
五名の剣客たちは、それぞれの愛剣を天高く掲げ、重ね合う。
今日この日より我らは家族! 世のため人のため、剣を振るうと誓おう!
応!
こうして、稀代の剣客集団”魔刃五影将”は結成された。
その後の魔刃五影将は、涅槃入滅斎との苦闘、魔轟三鉄傑との共闘、そして闇黒宇宙大邪神と銀河の命運を賭けた死闘を繰り広げることになる。
ちなみに、闇黒宇宙大邪神は峰影流”峰打ちビッグバン”で、宇宙ごと滅ぼして倒した。
宇宙はー度滅びたが、峰打ちだからセーフだった。
story2
緑したたる丘の上を、黒々とした影が舞う。怪鳥めいた魔物が、街へ真っ直ぐ向かって飛んでいた。
「あれが今回のターゲットかぁ。眠いけど……気合を入れて、頑張るゾっと!
機体番号AG-120XW、個体名ワルツ。作戦行動に移る……ゾっ!
標的――飛行型魔獣。危険度Sランク! ニュートラリゼーション……ファイアアアア!!」
機械人形の少女から、まばゆい光芒が放たれ、黒い影を貫く。魔物はー撃で絶命したが――
「わわわ、こっちに落ちてくる! 逃げなくちゃ……!」
しかしワルツは、先程の攻撃でエネルギーの多くを消費しており、機動性が低下していた。トゲやツノだらけの魔物の巨体が頭上に迫る。
ワルツが「3ヶ月は修理工場行きかな……」と後ろ向きな覚悟を決めた時――金と銀の疾風が颯爽と駆け抜けてワルツの体をかっさらった。
「あなたたちは……!」
「お久しぶりでスね、ワルツ。」
「私たちのこと、覚えてる?」
「もちろん! 記憶メモリーにしっかり刻まれてるゾ! 同じ機械人形のお姉さまたち!」
アイたちは再会を祝してからワルツの近況を尋ねた。
「今日モ魔道研究所のお手伝イをしていルの?」
「うん、そうなんだ。街の近くで人とか食べちゃうタイプの危ない魔物が出たから、やっつけてこいって言われて。」
「……命令されたの?」
「ううん、違うゾ。ワルツのご主人様の名誉を返上するために、率先して依頼を請け負ったんだ。
ご主人様は『自分は変態だから、少女の形の機械人形を作った』と言ってはぱからないんだ。ちょっと正直すぎる人なんだ……。」
「そうイえば、そうデしたね。機械人形を作れルのだから優秀な魔道工学者だ卜思うけレど……。」
「ご主人様のことはさておき、お姉さまたちのおかげで助かったゾ!
そうだ! お礼に私のお部屋にお招きするゾ! 3人で――ん? 3機? 3体? 細かいことは別にいっか――とにかく、みんなでお茶会しよう!」
「まあ、お茶会ダなんテ、素敵ね。」
「もしお邪魔じゃなければ、ぜひお呼ばれしたいわ。」
ワルツの自室――正確にはメンテナンスラボ――は魔道研究所の施設内にあるという。
「うわぁ、変態の娘だ。」
「ねぇ見て、変態の娘が来たわよ。」
ふたりのアイはワルツに案内されて研究所に入る時、出勤途中の魔道士たちの噂話を聞いてしまう。
ふたりのアイは不快感を覚える。友達をバカにされては黙っていられない。………しかし、噂話をよく聞くと――
「小さな女の子のサイズに、万単位の稼働部品と高出力の魔道炉を全部詰め込むとか変態だろ……。大人の男性サイズでも難しいのに……。」
「人工声帯とか人工皮膚も自作らしいぜ……。見ろよ、あの完成度……。もう人間業じゃねえよ……。」
「しかも最高出力は十万馬力で、自己調節機能まで完備って話でしょ……?」
「「「変態だ……。」」」
「……いったいどんな方なのかしら、ワルツのご主人様は……?」
「お会いシてみタいワね。ワルツのご主人様だモの、悪い人でハなイと思ウわ。」
***
アイたちは無事ワルツの部屋に到着した。
「お、お邪魔します……。」
「なんダか、どきドきするワね……。」
「どうぞどうぞだゾ! 機械人形どうし水入らず、ガールズトークとドールズトークで盛り上がろう!」
その時、部屋のドアが開き始めた。
「ワルツちゃーん。お茶とケーキを持ってきたんだけど――」
ワルツは猛烈な速度で突進し、ドアを押さえた。
「主人様! 部屋に入るときはノックしてって、いつも言ってるゾっ!」
「あら、ごめんなさい。つい忘れちゃうのよねえ。それより、お友だちが来てるんでしょう? ご主人様にもあいさつをさせて――」
「いいから! お茶とお菓子は私か持ってくからご主人様は部屋に入らないでほしいゾ!」
ワルツはドアを閉めようとするが、ご主人様はしぶとく、ドアの隙間からアイたちに声をかける。
「あら、どうもぉ~。わたくし、ワルツのご主人様ですぅ~。いつもワルツがお世話になっておりますぅ~。」
「い、いえいえ……。」
「こちラこそ……。」
姿の見えぬ主におずおずと会釈する機械人形たち。未知の魔物と遭遇した時より、なぜか緊張した。ふたりのメモリーにはない初めての経験である。
「はいはい、もういいでしょ! ご主人様は出てって出てって!」
「あら、お邪魔したかしらぁ~? それじゃ、おふたりともごゆっくり~。」
ワルツはご主人様の背中をぐいぐいと押して追い出し、勢いよくドアを閉めた。
「……女の人だったのね、ワルツのご主人様は。」
「優しイご主人様なノね。」
「優しいのは確かだけど、過保護すぎるんだ。私の製造年度はもう16年も前なのにいつまでも作りたての新型機みたいに扱うんだ!
とにかく、改めてようこそだソ、金と銀のお姉さま! ご主人様のケーキは美味しいから、ぜんぶ食べちゃっていいからね。」
「ワルツはあまり食べないの?」
「うん、ちょっとでいいゾ。私は食べ物を食べてもエネルギーに変えられないんだ。味覚機能はあるんだけどね。」
「そレじゃあ、ワルツはドうヤって動いていルの?」
「定期的に体の中の魔道炉に魔力燃料を入れてもらっているんだ。燃料が尽きると動けなくなっちゃうから。
その点、お姉さまたちはすごいゾっ! 自分でエネルギーを生成できて自律行動も可能! 私と違って、ひとりで生きていけるんだから!」
”ひとりで生きていける”――か。その言葉に、ふたりのアイは顔を見合わせ苦笑した。
ひとりで生きられるから、ひとりなのではない。生まれた時からひとりだったから、ひとりで生きるしかなかったのだ。 ――今は違うけど。
「……ワルツは、ご主人様ノこト好き?」
「えっ、それは、えっと、ね……。」
ワルツはちらりとドアを振り返り、ご主人様が部屋の外で聞き耳を立てていないか警戒してから、アイたちに近寄って、とても小さな声で答えた。
「――大好きだぞ。」
ふたりのアイは、この上なく優しい眼差しでワルツを見つめた。ふたりにとって彼女は、ありとあらゆる”かもしれなかった”未来だった。
けれど嫉妬はなく、羨望もなく、ただただ、尊さと、愛おしさだけを感じていた。
「ワルツ、あナたはトても幸せナ機械人形よ。世界でー番幸せナ機械人形かもシれないわ。」
「その幸せを大切にしてね。」
「ふフ……お年寄りが若者にお説教しているよウに聞こエるかモしれなイけどネ。」
事実、ふたりの製造年度は遥か昔……数世紀も前のこと。それはもう年を経た骨董品と言えよう。まだまだ新型に負けるつもりはないが。
「うん、ありがとう、お姉さまたち。その言葉、忘れないゾっ!」
そうして、三人の機械少女たちは、時計じかけの奇跡の中で打ち解けあい、時を忘れて、お茶会を楽しんだのだった……。
story3
君は目を覚ますと、パリナイな空間にいた。
パチンという音と共に、ステージ中央にスポットライトが差し込む。
そこには神がいた。
「目覚めよ、Brave! 世界のSaviorはマジでお前! 異界へDrive!世界滅亡のtimeoverを防げ!
すみません、なんのご用でしょうか、と君は丁寧な口調で話しかけた。
「お前は新たな時代の勇者に選ばれた!俺はお前導くため遣わされた! 耳かっぽじって聞け、俺の文字なきletter!」
もう少しわかりやすく説明してください、と君は神に頼んだ。
「いやお前、アレだよ、見りゃわかるじゃん。ほらなんか神様が、勇者的な感じのヤツにお告げチックなアレするヤツだ、アレ。
神が夢枕に立つ! 勇者は冒険に旅立つ! 世界を救い悪の根を断つ! ……な、定番だろ?」
定番の光景には見えないなぁ………と君は思った。
自分は勇者とかには向かないと思うのでお帰りいただけませんか、と君は丁重に頼む。
「おいおい自分をdisるんじゃねーよ!そんなんじゃ渡っていけねーって、この世! もっと自分をrespectしろ、メーン!」
中途半端にありがたいお説教をする神だった。
「聞けよ聞け聞け、神々のprophecy! これから始まる、勇者のstory!」
マドロックの”予言”が始まった。
最初はうんざりとしていた君だが、ライムとフロウを駆使した彼の歌は君をたちまち虜にしていく……。
血湧き肉躍る冒険、繰り返される悲劇と人の業、大切な仲間たちとの出会いと別れが歌となり、夢の中のステージに響き渡る。
気づけば、頬を熱い涙が伝っていた。悔しいが、たとえアレでも神は神なのだろう。その詩は文字通り神の域に違していた……。
世界を救わなければならない、と君は固く決心する。人々の笑顔を守り、夢を取り戻し、正義を示すのだ!
「どうYO?」
歌い終えたマドロックは、自慢げな表情である。普通なら、うざいとしか思えないドヤ顔も今この時だけはまさに神々しい。
予言を聞いた君は意気込んで尋ねた。
それで、どこの世界を救えばいいんですか、と。
「はン?」
いや、世界ってたくさんありますよね……? と、不安げに君は神に確認する。
「ああ、そーゆー歌詞に邪魔な細部はガン無視したぜ? それが俺の主義だぜ?」
神は細部に宿るのでは? と君は疑問に思った。
「そういうのは細部を司る神に言え。俺はリリカルゴッド、マドロックだ。」
どう考えても人選ミスだった。この場合は、神選ミスとでも言うべきか………
「んじゃま、つーわけで、あとはなんかテキトーに流す感じでよろな!」
この上なく感動的だが、どうしようもなく役立たずな予言を伝え終えると、マドロックはさっさと帰っていった。
すっかり熱の冷めた君は、もう来ないでほしいな……と思ったが、所詮は神ならざる人の身。運命には逆らえない。
――次の日の夜。
君は目を覚ますと、パリナイな空間にいた。
パチンという音と共に、ステージ中央にスポットライトが差し込む。
そこには神々がいた。
「「レッツパーティー!」」
夢なら覚めてと君は思ったが、もともと夢だった。
「ほらなんだ、昨日はあれな感じで悪かったな、Brave! かわりに今夜はバッチシ決めてやるからYO!」
「私が来たからにはもう安心よ、Brave……。パーフェクトウでミステリアア……スな大予言をしてあげるわ……。」
「今や世界は危機に瀕している! 刻めお前だけのheroic tale !」
またもや勝手に予言が始まった。しかも今夜はデュエットである。
君は、この二柱の神々をどうやって自分の夢から追い出そうか考え始める。だが、またもやいつの間にか、頬を熱い涙が伝っていたのだ……。
「さあ、旅立つのよ、Brave……。涙をふけなんて言わないわ。その悲しみをpowerに変えて進みなさい……。」
「いざ開かれる異界へのroad! これぞ天駆ける勇者たちの王道! 予言に従い、つかめよ未来!」
それで、いつごろ冒険の旅に旅立てばいいんでしょうか、と君は尋ねた。
「え、いつごろ? おいおい時間に縛られんなYO! もっと自由に生きろYO!」
そう言われましても、と君は抗議する。せめて、いつ何か起きるかくらいは教えてほしい。
「そりゃお前アレだよアレ。新時代なんだから新しい時代だろ。ざっくり言えば未来ってやつよ。」
ざっくりし過ぎだった。日時どころか年月すら不明である。
「仕方ないわ、人と神は違う時間を生きているもの。神々のカレンダーは2種類、だ、け……。それは、一夜……エエンド……永遠……。」
「やれやれ注文の多いBraveだぜ。しゃーねー、明日の夜には、もっとイカしたリリックを引っさげてくるから楽しみに待つてろYO!」
もうこないで、と君は頼んだが所詮、人の儚い祈りは神々に届かないのだった。
――3日目の夜。
「目覚めなさい、人の子よ。冒険に旅立つ時が――」
君は腫を返して、夢の世界の出口を探し始めた。
「ま、待ちなさっ、待ちなさい人の子! いえ、選ばれし勇者よ! 今回は! 今回はちゃんとした登場の理由があるのです!
私は3周年を司る女神トリエテリス! 百年単位で時間にルーズな神々の中では、かなり時間に正確な方なのです!
しかもそこそこヒマ――いえ、余裕がある神。そんな私だからこそ、新時代の予言係に選ばれた。実に自然で合理的な神選でしょう?
というわけで、この3日目の夜に、3柱の神々がまずは3年分の予言をあなたに伝えましょう!」
君は心身ともに疲れ果てている……。もう2日も寝ていないのだ。たとえ体は眠っていても、夢の中ではパリナイなのだから。
お願いだから帰ってください、と君は3柱の神々に頼み込んだ。
「おいおい、なんて無礼なBraveだ! 神の助けをキョヒるとか相当だ!」
「いいえ、違うわ……。この子は本物のBraveなのよ……。Soulの底までBraveだわ……。」
「なるほどなアレか、ほらアレだろ。自分の運命は自分で切り開く――ってヤツか。
「それでこそ真のBraveだぜ……! 命短き旅せよ勇者! 生きとし生けるお前に感謝!」
「そうだったのですね、勇者3! その生き様、大3成です! 人の未来は人に託して、我々は退3しましょう。」
「「「Goodbye brave……!」」」
***
翌朝、君は無事に目覚める。
「やっと起きたにゃ。最近、寝起きが悪いんじゃないかにゃ。特にここ3日あたり。」
師匠がいる。つまり、ここは夢の世界ではない。
君はふと考える。あのまま3神を追い返さず大人しく”予言”を聞き続けていれば、本当に未来の出来事も分かったのでは、と。
だが、そういうやり方は君の主義ではないし、何より毎晩あの神々に押しかけられたら世界を救う前に寝不足で死んでしまう。
あのリリカルゴッドが言ったように自分の運命は自分で切り開くしかないのだろう。
だから君はそのために――
「にゃ!? こらっ! 起きたばっかりなのに、寝るんじゃないにゃ!」
二度寝した。