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【白猫】オーバードライブ紅蓮3 Story0

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
開催期間:2018/09/28 16:00 ~ 10/31 15:59





学術都市スキエンティアには<花園>と呼ばれる組織がある。



<禁忌>と呼ばれる危険な魔術や技術を封印、統制し、世界の混乱を防ぐことを信条にしている集団。



そして、花園は<レヴナント>と呼ばれる秘密結社と禁忌をめぐった戦いを繰り広げていた。


智の探求と技術の革新。古い理を覆し、新たな世界を作ろうとするレヴナントは、花園の理念と真っ向からぶつかる。


その戦いに僕も巻き込まれてしまった。


<インゲニウム・コード>と呼ばれる特殊な禁忌は、僕に大きな変化を与えた。

イングニウム・コードは全て集めることでどんなことでも可能になる。僕の願いだって叶うかもしれない。


僕の願い――それは――


――この変身能力を捨て、普通の人間に戻ることだ。


 ***


(……いろいろ調べても、イングニウム・コードに関する情報がどこにもない。

花園の隠してることが、一般人にわかるわけないよな……

一般人か……一般人じゃなければ、わかるのかな?)


 ***


「やっほー、レクト。先に来てたのね。」

「わざわざ呼び出して、ごめん。リネアも忙しいのに……」

「はいはい、出だしからネガティブなのは禁止。それで話ってなに?」

「その、前にも言ったけど、今、イングニウム・コードに関することを調べてるんだ。でも、まったく情報がなくて……」

「…………

ロアノク島での一件でわかってると思うけど、禁忌は危険よ。

特にイングニウム・コードはトップシークレット中のトップシークレット。私も率先して関わりたくない。」

「……そうだよね。なら、ウェルナ一さんの連絡先、教えてもらえないかな?」

「ウェルナーは悪い人じゃないけど、彼にも近寄らないほうがいい。私やレクトとは違う世界で生きてるから。」

「……危険なのは理解してるんだ。たくさん怖い思いもしたし、リネアに迷惑もかけた。

それでも、誰かを傷つけてしまうかもしれないって怯えながら生きていくのは嫌なんだ。」

「…………

……レクト、少し変わった?」

「え? そうかな? ……うん、そうかもしれない。ロアノク島でいろいろ経験したから……」


 ***


「つかんで! レクト!!」

「僕のことはいいから! リネアだけでも逃げて!!」

「絶対に嫌! あたしはあんたをあきらめない!!

四の五の言わず! あたしの手をつかめ!!」


 ***


「あの時はリネアに助けられただろ? それは感謝してるけど、それじゃあダメだって思うんだ。僕も強くなりたい。変わりたいんだ。」

「はあ……しかたがないか……

……実は私もイングニウム・コードについて調べてたの。

イングニウム・コードの製作者はコーニッシュ・イングニウム。古代ネクロニア文明の伝承に出てくる魔術士にして学者よ。

伝承によってコニスリウムだったり、イングニスタスだったり、名称は違うけど。」

「ネクロニア文明って、数万年前にあったとか言われてる文明だよね?」

「ええ、そうよ。だから、ほとんど資料が残ってない。研究論文も異端として学会に無視されるレベル。

だからイングニウム博士も実在してたかわからない人物なんだけど……

花園の上層部は、イングニウム博士の存在を本気で信じてる。

花園だけじゃなくレヴナントも……

だから、本当は踏み込んでほしくはない。」

「ロアノク島の時みたいに、リネアには迷惑かけないよ。」

「…………

……元花園の職員にイングニウム博士の研究をしていた人物がいるわ。私の知識は彼の論文から拝借したの。

問題の多い人だったみたいで、花園から放逐されたけど、今も監視下に置かれてる。

レクトが会いに行けば、花園はあなたの動きを把握するわ。」

「覚悟の上だよ。」

「……わかった。住所は教える。今は超古代文明に関するオカルト本の執筆をしてるみたい。名前はベルナルド・デルネーニ。」

「ありがとう、リネア。」

「……この情報を教えたこと、後悔はしたくない。絶対、無事に戻ってきてね。」

「うん、約束する。」

「それにしても、いいなあ、レクト……」

「?」

「その島、観光名所があるの。ヴィエスタの花畑って言うんだけど私も行きたかった。」

「代わりに写真、撮ってくるよ。」

「ありがとう。期待して待ってるわね。」





story0-2 望まぬ任務



忘れようとしても忘れらない記憶がある――



「な……バケ……モノ……

ファビ……オラ! ファビ……オラ……」


「ああ……

ああああああああああああああああ

ああああああああああああああああ

あああああああああああああああ!」



愛するファビオラを殺した赤いヴァリアント。奴に復讐するため、俺は花園に所属している。

自分の体を検体として差し出し、複数の禁忌を施術された俺は花園の猟犬となった。

この牙を、あの化け物に突き立てるために生きている――


――ファビオラ、いつか、君に会いにいくよ。


必ず――



 ***



「おーい、起きろ! ウェルナー、朝だぞー! 起きろ一!」

「ああ……」

「ああ、とか言って起きないだろ! 朝飯、作ったんだから、食え、こんにゃろー!」

「わかった。」

「……顔色悪いな。怖い夢でも見たか?」

「……いや。たぶん見てない。」

「その割には元気ないぞ! よし、朝飯食べて、今日も元気に――」

「おい、どうした?

セーラ! しっかりしろ、セーラ!!」


…………

……


「……セーラは?」

「廃棄処分が決まったよ。」

「……本気か?」

「人工精霊に関するデータは充分にとれた。

担当研究者である私が、不要だと判断した。生かしておく理由もないだろ。」

「戦闘の補佐として必要だ。」

「なら、勝手に連れてけ。処分する手間がはぶける。」

「ソウル増加薬は?」

「どうして不要なゴミに高価な薬を使わねばならないんだ?」

「……金なら払う。貴様らのコネなら安価に手に入るはずだ。」

「どうして、そのコネを使わなければならない? 私になんの得がある?」

「…………

……得があればいいんだな?」

「なんだ? 私に恩を売りたいのか?」

「……そうだ。」

「だったら、しっぽの振り方くらい教えてやろう。

仕事を手伝え。」

「……内容は?」

「新たなイングニウム・コードの回収だよ。単語くらいは知ってるだろ?」

「…………」

「元職員がコアを手にいれた。だが、その後、連絡を絶った。

厄介なことに、レヴナントの施設のある島でな。ベルナルド・デルネーニの確保とコアの回収がお前の任務だ。」

「正規の命令か?」

「……イングニウム・コードにかかわる任務は秘密裏に行われる。

ロアノク島の一件も、貴様らに事前の情報共有はなかっただろ?」

「……了解した。だが、俺は戦闘専門だ。調査は不得手だぞ。

「安心しろ、私が同行する。

せいぜい主人の機嫌を損なうなよ、パッチワークマン。」




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任務の準備

「セーラ……」


story


「化け物め……」

『…………』

赤いヴァリアントが<左手>を振り上げる。

衝撃にサリムの体が宙に放り出される。一瞬の浮遊感のあと――

(落ち……)

――落下した。


…………

……


「助けて……」

「ああ、必ず助かるよ。安心しなさい。」


 ***


「子供の患者だ! すぐに治療を!」

「次から次へと患者が増える。なかなか有意義な経験だ。

! ……サリム、あきらめろ。」

「なにを……」

「彼女は病の苦しみから解放された。すでに死んでいる。」

「そんな……どうして……

……アゾート、教えてくれ。俺たちのやっていることになんの意味がある?」

「――意味などない。

目の前の病理を、どう理解するか。そこに医術の快楽がある。結果、患者が勝手に生きながらえるだけだ。」

「あの薬さえあれば! この子だって助かったはずだ!」

「ないものをねだってもしかたがない。生と死の混沌のなか医術のみが、秩序を示せる。

サリム、その少女を丁重にとむらってやれ。」


…………

……


「……行くのかね?」

「<アスクレピオス>の活動には賛同するし、尊敬している。医師として行き場を失った俺を拾ってくれたことも感謝している。

だからこそ、俺は納得できない。君が発表した薬があれば、もっと多くの人を救えたはずだ。

どうしてスキエンティアは、可能性を潰す!?どうして人の命をないがしろにするんだ!?」

「期待すべき他者は選んだほうがいい。救いようのない人間はいる。」

「それでも君は救うんだろ?」

「病に貴賎(きせん)はないからな。」

「……俺は別の病巣を消すことにするよ。」

「……そうか。無意味かもしれないが、応援はするよ。」

「ありがとう。いつか、また、どこかで……」


「だが、君はそれでいいのか?

なぜ、君の征く道は、そんなにも血が流れる?

君は気づいていないかもしれないが――

――君こそ大きな病巣だ。」

「違う、俺は……」

「君の病に名前をつけるとしたら。そうだな――

――使命感。」


 ***



「くご…げほっ!

生きてる……か……」

(傷は治っている……? 切断の概念が反転したか……勝手に?)

「いよいよもって人間離れしてきたな……」


「大丈夫ですか!? どうしたんですか!?」

「君はこの島の子かい?」

「そうですけど……」

「恥ずかしいことに海に落ちてしまってね。思わぬ幸運だったよ。」

「幸運?」

「君のような美人と知り合えたのは幸運なできごとだろ?

ところで、―つ相談なんだが、この島に仕立屋はあるかな? 服が破れてしまってね。」

「大丈夫ですか? 血が……」

「なに、たいした傷じゃないさ。ただ、少し疲れていてね……手を貸してくれると助かるよ。」

「はい……」

「ありがとう。まさか、こんな美人に肩を貸してもらえるなんて。たまには溺れてみるものだな。」

(さて、どうしたものか。失敗したままレヴナントに帰れば、検体扱いに逆戻り)

「お世辞のうまい人ですね。」

「お世辞なんかじゃない。嘘いつわりのない本心だよ。」

(赤いヴァリアントからコアを奪い返すのは……―人じゃ無理だな。そもそも居場所もわからない)

「あの……大丈夫ですか? どこか痛みますか?」

「そうだね、君を見てると胸が痛む。ああ、そういえば、君の名前を聞いてなかったな。おっと、その前に自己紹介が先か。」

(他のコアを探すにも情報が足りないな。あまり気乗りしないが、ベルナルド・デルネーニを頼るか)

「俺の名前はサリム・クーパー。少しの間、力を貸してくれると助かるよ。」





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story 残されたモノ


「キアラ、キアラ、キアラー!」

「……痛い。どいて。」

「すごいんだよ! ほら、見て、見て!」

「わかったから、どいて。」

「嫌だ! 全身全霊でどかない!!」

「……そう、どかないの。だったら、殴る。全身全霊で。」

「とにかく見てよ、この写真! この写真! 綺麗だよね!!」

「……そうだね、綺麗だね。でも、殴っていい?」

「花畑! すごいの、この花畑。綺麗くない!? ヴィエスタの花畑って言うの!」

(人の話を聞きやしない。まだどいてくれないし……)

「はあ……その写真、どうしたの?」

「なんかどっかの博士が持ってた。趣味なんだって。」

「ふ~ん……」

「全然興味もってないでしょ!? この花畑、近くにあるんだってさ! 観光名所なんだって!!」

「あ、そう。」

「興味持てよ!」

「……叫ぶなよ。」

「行ってみたいなー。この花畑、見てみたい! だって超綺麗じゃん!」

「…………

やめておきなよ。また抜け出したら、今度こそ、セロに殺されるよ。」

「だいじょぶ! 次こそ私が勝つ! だって私はスーパーヒーローだから!」

「その割には、いつもボコボコ。」

「ねえ、キアラ、今度の満月の夜にさ、二人で抜け出して花畑、見に行こう!」

「話、聞かないし……」

「キアラが一緒なら、セロだって怖くないよ!」

「スーパーヒーローが二対一でいいの?」

「あの本だとヒーローのほうが多かったじゃん。悪者は常に一人! ね一、いこーぜ! キアラ~!」

「考えとく。」

「考えとくって言葉ほど信用ならんもんはない! あのね、キアラ、これ、行かなきゃ、絶対後悔するから!」

「……前向きに、考えとく。」

「考えとくとか言うなー!!」



でも、その約束は果たされなかった――

それでも、果たしたかった。だから私は――

私はー人で施設を抜け出した。ソレラが持っていた写真を握りしめて――



「…………」


生まれてはじめて施設を出た私は世界の広さを知った。

ソレラだけが知っていたキラキラしたものに触れることができた。


「時間がない……急がなきゃ……」




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