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ハジメテノオト Story【白猫プロジェクト】

最終更新日時 :

ストーリーまとめ




目次



Story00 プロローグ

Story01 あなたが、私のマスターですか?

     とりあえずカフェに

Story02 アンドロイドの<ミク>

Story03 DJ兼シンガー

     機械の街

Story04 破壊と創造の音

     機響ミク・オンステージ!

Story05 無限の可能性

     リズミカル・ジャー二-

Story06 アンドロイド系アイドル

     メルヘンを、歩く

Story07 かわいいは、あったかい

     姫星ミク・オンステージ!

Story08 お姉さん

     メロディアス・ジャー二-

Story09 ロックシンガー

     自然の息吹

Story10 思慕の花

     花咲ミク・オンステージ

     ハーモニカル・ジャーニー

Story11 不穏な空気

     異形の存在

Story12 集結

Story13 悲しみの記憶

     ハジメテノオト

最終話  未来へのまなざし




主な登場人物


ミク


プロローグ



……ガ…………ガガ……


……の……を確認。……ンサ……ード……――認証。

差分……ー夕…………アッ…… ド。――完了。


……ロ……イ…………ミク…………します。


 ***



「私は、マスターを、探しているんです。

あなたが、そうですか……?」

「マスター? いや、違うと思うがね。そうか、迷子になったのか。」

「……い、いえ……」



「……ここなら、いるかな?」

「グルウウウ……」

「マスター……じゃ、なさそう……」

「ガウ!ガウガウガウ!」

「こ、こわい……」



「……あれは……空をとぶ、のりもの……」

「……ん?お嬢ちゃん、乗るのかい?」

「……あなたが、私のマスターですか?」

「マスター? 一体何の事だい?」


「………………乗っても、いいですか?」




story1 あなたが、私のマスターですか?




ギルドの魔獣討伐依頼を終えた主人公たち。

飛行島へ帰る前に休憩していこうと、近くの街へと立ち寄っていた。


「ねえ、あそこがいいんじゃない? フルーツパフェの店だって。」

「あら、おいしそうね。行ってみよっか?」


 ***


「……残念だが、僕は違うと思うよ。」

「そうですか……」


「……あ !あの……」

「何でしょう?」

「あなたは、私のマスターですか?」


<一人の少女が、道行く人に片っ端から話しかけている……>

「……あの子、どうしたのかしら?」


「あの……どうかされましたか?」

「あなたが、私の、マスターですか?」

「誰かを探してるの?」

<少女は小さくうなずく。>

「もしよろしければ、お力になりますよ?」

「……ほんとうですか?」

<沈んでいたその表情が、パッと輝いた。>

「アンタ、なまえはなんていうの?」


「私は……ミクといいます。」



 ***


「……アア! メザメタノネ……

カワイイ、ワタシノ……


……アイタイワ。アイタイ………………


――アイタイイ!」


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story2 アンドロイドの<ミク>




事情を聞こうと、ミクを連れて店へと入った主人公たち。

―やがて彼女は、ぎこちない言葉で説明を始めた。



「……つまり、アンタは<歌と音の島>からやってきたアンドロイドってこと?

「はい……

「歌を歌い、人々を癒やすアンドロイド……それがミクさんなんですね?

彼女はこくんとうなずく。


アンドロイドの<ミク>。

人間と同じように、自分だけの音楽を生み出せるだけではなく――

大勢の人々の心を打つ、奇跡のような歌や音を紡ぐ事が出来る可能性さえ秘めているのだと、彼女はとつとつと語った。


「そういう歌は、聴いた人の体や心を元気にすることもあるんだそうです。

私も、くわしいことは、わからないんですけど……」

「……ともかく、ミクさんのようなアンドロイドは、世界中に何人もいて、歌姫として活躍している、と。」

「じぶんで歌詞とかメロディとかつくって歌えるなんて、すごいわね。」

「でも……それには……」

ミクは、どこか悲しげに目を伏せた。


<ミク>は、最初から曲を作れるわけではない。

人間と同じように歌を歌う為には、人間から音楽を学ぶ必要があった。

その為、誕生したミクは、『歌を届けたい』という熱心な想いを持った者の元へと引き取られる。


その人間こそが、<マスター>と呼ばれる存在。


彼女達<ミク>は、彼らマスターとの交流や、見た景色、聴いた音など、様々な経験を重ねながら成長し――

自身の中に、メロディや歌詞を紡いでいくのだ。


だが……主人公たちが出会ったミクは、違った。


「ミクさんが目覚めたのは、<歌と音の島>だった訳ですね?」

「……ふつうなら、目がさめたら目の前にマスターがいるはずなのに、いなかったってことね……」

「どうしてでしょう……」

「……わかりません。だから、私は……」

「マスターを探しに、島を出たんですね……」


「……音って、なんだろう。歌って……なんだろう。

私も……歌いたい。」


ミクはうつむいたまま、歌えない寂しさを、ひとり言のように漏らした。


「ミクさん……」

「うーん……アタシたちも、音楽にはそこまでくわしくないからねえ……」


――だが、このまま放つておくことなど、できない。

歌を教えることはできなくとの、自分たちに出来ること――


「一緒に、行こう。」

「え……?」

「歌を教えてくれる人を、探しに。」

「そうね……それなら、私たちにもお手伝いできます。」

「ひと探しは得意だしね~。」

「ほんとうに、いいの?」

「だから、大丈夫――!」

「……ありがとう!」


ミクは心底ほっとしたように、満面の笑みを浮かべた。


「でも主人公、当てはあるの?」

「――」

「なるほど、他のアンドロイドの<ミク>さんに……

「いま、立派に姫として活躍してる彼女たちから、色々と教えてもらおうというワケね?

「ミクさん自身のことも、もしかしたらわかるかもしれません。」

「……ありがとう、みんな。」

「どう、ミク?いってみる?」

「……うん。私も、会ってみたいな……

……ありがとう、みんな。私も……がんばるね。」


そうしてミクは、主人公をじっと見つめる。


「あの……マスター……って、呼んでもいい?」

「!」

「……ま、ながれ的にはそうなるわね~。」

「責任重大ね!頑張りましょう、主人公。」

「……よろしく、ミク!」

「うん!」

「じゃ、そうと決まれば、他の<ミク>の居場所を見つけるわよ!

知り合いに、世界を股にかける優秀なビジネスマンがいるの。大丈夫、すぐに見つかるわ!」



「この島にいます。」

果たして一人目の〈ミク〉はすぐに見つかった……


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story3 DJ兼シンガー



それからしばらくして、<ミク>の一人がいる島に到着した一行。

そこは、製造業や建設業が盛んな、機械の街だった。


「えーっと、情報ではたしか、街のはずれの方に住んでるって話だったけど……」

ミクは、物珍しそうな顔をして、巨大な工場の連なりを眺めている。


「…………」

「あ、おね一さん。ちょっと聞いてもいい?<ミク>ってアンドロイドをさがしてるんだけどさ。」

「それなら、コイツのことだぜ!」

「アンタは……?いやそれよりも、この子が…… ?」


「ミクさんと、だいぶ外見が違いますね……」

4「……そんな事も知らないの?

「おっ?アンタらもミク連れてんのか!……マスターは、アンタか?

<ミク>つてのは、受ける影響によって個性が変わってくるんだぜ!」

「へえ、そうなんですね。……あの、受ける影響というのは?

「見たもの聞いたもの。マスターと交わした言葉、築いた関係性……

ようするに体験した全ての物事から影響を受け、変化していくってことさ。」

「まるでにんげんみたいね?」

「今まで誰も聞いた事がないような音を奏でられるようにって、生みの親が考え出したんだ。」

「すごい技術ね……ちなみに、生みの親ってどんなひとなの?」

「アンドロイドの技師だったんだ。」

「……もう、この世にはいないけど。」

「いまも生きてたら、みんなの活躍を見れてたのに……残念だよな。

……それで?まっさらなミクを連れたアンタらが、オイラたちになんの用なんだ?」

「いや~、それがね……」


主人公たちは、事のあらましを語った――


「なるほどな一、突然目覚めて……不思議なこともあるもんだ。」

「……ところで、あなたは…… ?」

「おっと、自己紹介がまたたったな!オイラは<ミクナビ>のタツキチ。

で、コイツは〈機響ミク〉ってんだ!この島でD」兼シンガーとして大活躍中だぜっ!」

「たしかに、そんなカンジするわね!」

「あ、あの……よろしくね。」

「タツキチさん、ミクナビというのは?」

「人間とミクの会話を円滑に進めるための。コミュニケーション能力特化型アンドロイドのことさ!

<ミク>には、必ずオイラたちみたいなのが付いてる。便利だろ?」

「……でも、このミクにはなんにもついてないわよ?……どうしてかしら?」

「それは……オイラにもわかんねえ。」

1「…………」


「あ、もうーつ聞いてもいいですか?そちらのミクさんには、特別な名前がついているようですが……」

「ああ。ミクには、マスターがそれぞれ名前をつけ加えてやることになってんだ。

でないと、みんな同じ<ミク>でまぎらわしいだろ?」

「なるほどね~。」

「ちなみにコイツの正式な名前は、<ミク05-JV>。

オイラもマスターも、<キィ>って呼んでるけどな!」

「アタシたちも<キィ>でいい?」

「……構わない。」


「それよりも。……あんた。」

「……わ、私?」

「あんたは……あたしたちとは違う。」

「お、おいキィ。いきなりなにをいってんだよ?」

「あんたのデータを参照した。かなり断片的だったけど。

……いい?あたしたちが持ってるものを、あんたは持ってない。」

その言葉を聞いて、ミクは何事か考える。


「私は……ダメなミクということ?」

「違う。代わりに、あたしたちにないものを、あんたは持ってる、という事。」

「わけわかんねえよ、キィ。ちゃんと説明してくれ。」

「…………」

「あら? だんまりね。」

「話し疲れるとこうなるんだ。無口はマスターゆずりだからなー。こうなったら、いくら聞いてもムダさ。」


ミクは、寂しそうな表情でキィを見つめた……


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story4 破壊と創造の音



「ミク、アンタのコトはいったん置いときましょ。……歌、うたえるようになりたいんでしょ?

1「うん……そうだね。

「よければ、なにか勉強させてもらえればと思うんですが……


「だったら、キィからは<リズム>を学ぶといい。さっきもいったけど、キィはD」もやるし歌も歌なにより曲がチョーカッケーんだ!……いいよな? キィ。」

「…………」

「お願いします、キィさん。」

「……はぁ。」

「いまのは『しょうがないな』のタメ息だ。

1「ありがとう……!

「じゃあさっそく、アンタのことについて教えてくれる?

「キィのマスターは、この島で働く鍛冶師なんだ。

すっげえ無口で無骨な、いかにも職人って感じの人間でさ。キィが来てからも、会話は数えるほどしかなかった。

4「……仕事の鬼。でも、不器用な優しさは、ちゃんと伝わっていた。

毎日一緒に仕事の手伝いをしたり、空いた時間には散歩に行ったり……」

「じゃあ、音楽はいっさい教えなかったの?」

「……教えてたわ。ただ、言葉は要らなかっただけ。」

キィは、まるで街そのものが機械で出来ているかのような無機質な建物の群れをゆっくりと仰ぐ。


何かが砕け散る音。

何かが打ち付けられる音。

何かが組み合わされる音。

何かが運ばれていく音。


うるさいほどに鳴り響くそれは、破壊と創造の音―街そのものの、律動だった。


「……あたしはただ、それを刻みたいだけよ。」


ミクは、街が作り出す<音>に、耳を澄まし続けた。

いつまで聴いていても、飽きないらしい――


「キィの音も、そりゃすげーぜ?

今日、ちょうどライブをやることになってんだ。それを聴けば、―発でわかると思うぜ!」


「……聴いて、みたいな。」

「……いいわ。」


そうして、夜になり――

<機響ミク>のライブが始まった!



●機響ミク・オンステージ!


『 S∀MPLING MΘNSTER feat. Hatsune Miku』sasakure.UK


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story5 無限の可能性



ライブのステージヘと改装された巨大な工場の中で――

キィが生み出す音が、鼓動が、聴く者の心を力強く打ち付けた。

ミクは、その音楽に圧倒された。

自身が聴く初めての音楽というだけではなく――その音には、キィの魂が間違いなくあった。


『あたしを見て』

『あたしの歌を聴いて』

『あたしは、ここにいる』


観客とステージを揺らすその猛々しい律動の中には、確かに、キィがいたのだった。



「ようようよう!どうだった、どうだったよ!?」

「すごかった!!いやもう、それだけよ!」

「元気をもらいました……」

「<ミク>の歌ってのは、実際にそういう効果があるからなー。

聴いた人の生命力を高めるんだよ。」

「あ、そういえばミクも似たようなこといってたわね?」

「未来の音の力、ってやつさ。」


キィは、つかつかとミクに歩み寄る。

「……これが、あたしの音。」

ミクはしっかりとうなずいた。

「どうやら、わかったようだな?」

「――うん。」


音もなく、観客もいなくなった、空のステージをミクは見つめる。

心地の良い<リズム>の痺れが、いつまでも彼女の体の中に残っていた。



 ***



「それで?これからどうするんだ?」

「二人目の先輩のミクをさがしにいこうかなって。まだまだ、学ぶべきことは多いしね。」

それなら、オイラいいヤツ知ってるぜ!

<リズム>と来たら、次は<メロディ>!そんでメロディといえばアイツだ!

ソイツの歌はさ、そりゃもうとんでもなく輝いててさ。ピッカピカのテッラテラだぜ!

3「本当ですか?ぜひ、居場所を教えてください!」

「えーっとな――」



「……ねえ。」

「なあに?」

「あんたは、ダメな子なんかじゃない。」

キィの表情が、ほんの少しだけ崩れる。」

「あんたには――無限の可能性がある。」

「むげんの、かのうせい……?」

「……それだけ。」

「…………」


「おーい!そろそろ出発だってよ一!」


「……頑張って。」

「……ありがとう、キィ。またね。」


 ***


「なんの話をしてたんだ?」

「……別に。」

「なあ、あの子、大丈夫かな?」

「……何だか、嫌な予感がするの。」

「嫌な予感?」

「アンドロイドの、勘。

タツキチ。……いつでも島を出られるようにしておいて。」


 ***



「ハヤク……アイタイワ……

……イソガナイト……」


「グルルルル……」


「……ネェ、イソイデルノ……

イソイデルノ!!」


「!!」


 ***


”…………”

”……まだ見ぬ……から、誰も…………ない…………を運んで……る。”

”だから、あなたの……は――

……私には、……を抱き……る事は……いけれど……

誰よりも、あなたを……てる。”


「……………………大好きだよ。」


 ***


アグウウッ!……ナ、ナニ…… ?

イ、イタイ!アタマガ、イタイ……!

……ウゥ……イカナクチャ……


アノコニアエハ……<アノヒト>モ、キット……」


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story6 アンドロイド系アイドル



<メロディ>を教えてくれるというミクがいる島に着いた主人公たち。

そこには、どこまでもカラフルで、メルヘンな街が広がっていた――


「あれ? ここアタシ、雑誌かなんかでみたことあるかも。」

「旅行先として人気の島なんだって。」

「マスター、なんだか、楽しくなってくるね。」

ウキウキとした様子で、ミクは辺りを歩き回る。


「さてと、かんじんの先輩ミクがいる家は、この辺のはずなんだけど……

あら、かわいいぬいぐるみが歩いてるわ。……大きいわね。」

「ほへ~……」

「しゃべったわ、キャトラ。かわいい声よ…… !」


「ねえヒメちゃん、他の<ミク>がいるよ。きみのおともだちじゃない?」

「ミクナビは、コネコ型だよ。初めて見たよ。ちっちゃいなあ。」

「……ム? ミクナビ?」

「モフタロー、あんまり遠くまでいっちゃだめだよ!

また迷子になっちゃうから…………あれ? みんな、だあれ?」

「もしかしてアンタが、この島にいるっていうミクかしら?」

5「うん、そうだよー!」

5「おともだちじゃないの?」

「私たちは、そちらのミクさんに、音楽を教えてもらおうとやってきたんです。」

一同は、詳しい事情を話した――


「で、あんたから<メロディ>を学ぼうってことになってね。」

「そうだったんだね―!うん、もちろんいいよ!」

「いいよー!」

「ありがとうございます。えっと……」

「この子は、<姫星ミク>。せいしきにいうと、<ミク07―YI>だよ。」

「ひめぼし、……だから、ヒメちゃん?」

「ヒメちゃんはね、この島でアンドロイド系アイドルとして活躍してるんだ。」

「あら、アンタ、アイドルなのね?」

「うん!かわいいアイドルになりたくってさ~!」

「身につけているものも、かわいいものばかりですね。」

「でしょでしょ!」


「えっとね、ボクはモフタロー。もふもふしてるから、モフタローなんだ。」

「ヒメさんのミクナビなんですね?」

「うん、ヒメちゃんをいっぱいお助けしてる。あと、ライブのバックダンサーもやってるんだよ~。」

「かわいいバックダンサーですね♪」

「えへへ。……それにしても、ミクナビがついてないミクなんてめずらしいね。」

「まあでも、アタシがミクナビみたいなモンだから。」

「うふふ、そうね。」


「…………」

ヒメは、まじまじとミクを見つめた。

「な、なあに……?」

「……あ、ううん!あたしでよければ、力になるから!」

「ありがとう。よろしくね!」


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story7 かわいいは、あったかい



「じゃあさっそく、ヒメのことについて教えてくれる?」

「もうわかってると思うけど、ヒメメちゃんはね――」

「かわいいものが、だーいすきなの!」

「やっぱり、マスターの影響なのかしら?」

「うん。マスターもとにかくかわいいもの好きでさ、服から何から、全部かわいくないと気が済まないんだ。

でもときどき、すっごいヘンなものをかわいいっていったりもしてさ。

そういうのを見ると、かわいいって一体なんなんだろうって、ボクは思ったりするよ。

ヒメちゃんが来てからは、おそろいの服を着たり、買い物にいったりがほとんどだったね。」

「マスターは優しいんだ!あたしのことを、何度もかわいいっていってくれるし!」

「なんだか、お友達同士って感じですね。」

「すっごくいい子だよ。だからヒメちゃん自身も、かわいいものが好きになっていったんだ。」


2「ん?なに、主人公?

「ミクも……かわいい!

「マスター……うれしいな……


「ミクは、みんな、かわいいよね~。

―同は、豊かな色彩で満ちている島を散策する。


「あたしの<音>はね、そういう、かわいいものから生まれているの。

3「かわいいもの……」

「ほら……そこにも、あそこにも!」

胸が躍るようなものばかり。カラフルな色……様々な形。

ミクは、ヒメが指さすあちこちを、―生懸命に目で追う。


1「かわいいね、マスター。」

「カタチが、イロが、カンショクが、かわいい。

そういう気持ちが、ヒメちゃんの中で自然とメロディになっていくんだ。」

「それって、とってもいいことだと思わない?」

「すご~くむかしのひとが、かわいいものについて書いた日記があってさ。

こどもの顔とかしぐさ、人形あそびのどうぐ、ハスの葉……

小さいものは、とにかく全部かわいいっていってるんだ。」

3「なにかを愛でる気持ちは、昔から変わらないという事ですね。

「ひとはだれでも、そういう感情をもってる。もちろん、<ミク>にだってね。

そして、そういうきもちは、自分をいつだって、あったかくしてくれる。」

「……あたしは、みんなに、あったかくなってほしいの。

かわいい格好をして、かわいい声で、かわいい歌を歌って。

それで、あたしをかわいいと思ってくれたら……」

ヒメはにっこりと笑う。

「そんな想いがこもった、ヒメちゃんのメロディ……きいてみたくない?

きっと、得るものはおおいとおもうよ~。」

3「ぜひ、お願いします!」

「いまここで歌ってもいいんだけど……」

「どうせなら、ライブをみてほしいよね。……数日後に、この島のステージにたつんだ。

よかったら、それまで観光でもしていきなよ~。」

「みんなで、かわいいものに囲まれよう!」

「ステージ……楽しみだなあ。」




そして数日後――


「「「ヒーメ!! ヒーメ!! ヒーメ!! ヒーメ!!」」」


「みんなーーー!!今日は来てくれて、ありがとうーーー!!

ヒメのかわいいライブ、はっじまっるよーーー!」



『自己愛性カワイズム』Mitchie M

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story8 お姉さん




<姫星ミク>のためだけに作られたライブ会場。ヒメは、超満員の観客の心を、ガッチリと掴んでいた。

キュートな笑顔を振りまきながら、彼女はどこまでも元気に舞い、歌う。

ミクもまた、その歌に心から酔いしれていた。

しかし……彼女がもっとも感銘を受けたのは、ヒメと観客との、一体感だった。

ヒメの曲に合わせ、観客は手を振り、共に歌い、しきりに声援を送る。

彼女の<メロディ>は、歌い手と聴き手の心を、しっかりと繋いでいたのだった――


「ありがとうございました、ヒメさん。」

「どうだった?」

「とってもよかった。ほんとうに……」

「その様子だと……受け取ってくれたみたいだね。」

ミクはこくりとうなずく。そして、静まり返ったステージの中央に立ち、ゆっくりと胸に手を当てた。

「あなたの<メロディ>……とっても、あったかかった。」


「さて……これで、<リズム>と<メロディ>を学んだことになるのかしら?」

「あとは……<ハーモニー>、かな!」

2「ハーモニー、かあ……」

「ヒメさん、どなたか心当たりはありませんか?」

「あるよー!

あたしのお友達のミクなんだけど、とってもハーモ二-がキレイなの。」

「<ミク>の中では、とっても『人間らしい』子なんだよ~。」

2「へえ、そうなのね。」

「ではミクさん、会いにいってみましょうか。」

「……待って。」


いつもニコニコとしているヒメの表情が、真剣なものになる。


「……モフタロー、お願いしていい?」

「わかった。」

2「……どうしたの?」

「きみのことについてだよ、ミク。

ヒメちゃんたち……最近の<ミク>に、きみのデータが少しだけ残っていたみたいなんだ。

あのね、君は……<歌と音の島>で、10年ものあいだ眠っていた――

<ミク>のプロトタイプなんだよ。」

2「それは、つまり……最初に生まれた、ミクってこと…… ?」

「あたしたちの、お姉さん。それが、君なんだよ。

……その様子だと、自分のことや<ミク>について、知っていることがチグハグだったんじゃない?」



「たぶん、目を覚ますときに、うまくいかないところがあったんだと思う。」

3「そうだったんですか……」


「私は……プロトタイプ……」

ミクはそのまま、しばらく黙り込んでいたが――


「教えてくれて、ありがとう。

マスター。それでやっぱり、私は――

みんなと同じように、歌えるようになりたい……!」

「大丈夫よ、ミク。プロトタイプだろうが、そんなの関係ないわ。」

「きっと、歌えるようになります。私たちが、ついていますからね!」

「……うん!」

「いいひとたちに出会ったね。頑張って!ボクもヒメちゃんも、応援してるから。」


(……でも……無限の可能性、ってなんなんだろう?)


 ***


「いっちゃったね~。

……あとは、ハナちゃんにおまかせ、だね。」

「……うん……」



 ***



「アア……ワカル、ワ……チカヅイテ、ル……

モ、モウスコシデ……アノコニ……」



”……だから、記憶を消して…………の?

……そん……かわいそうよ……”

”……わかってくれ。私も、つらいのだ……”


”……どうして、もう何日も、……をつぶった……なの?

私を、一人にしないで……”


”いいわ。私かきっと、見つけ……あげる……”



「アァァァッ!イヤアァァァ!


ナンデ……!コンナニモ、カナシイノ!コンナニモ、サビシイノ……!

……ワカラナイワ……


ワカラナイィィィッ!」



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story9 ロックシンガー



一同が訪れたのは、美しい自然に囲まれた島だった。

どこまでも続く草原、雄大な連なりを見せる山々。青く澄み切った湖と、川のせせらぎ……


「うわあ……」

ミクは、その山紫水明たる景色に、ただただ、感動した。


今まで見てきた光景と、聴いた音。それらとはまた違う美しさが、そこにはあった。

様々な音が交錯する機械の街。愛らしい彩りに満ちた街。


「静かだね……」

「街という街はなくて、大きな村が二つあるぐらいなんだって。」


<ミク>がいるというその村へと、主人公たちは向かう。

川のほとりを、ミクは何かを確かめるように歩いた。

川が流れる音。小鳥がさえずる音。木々がざわめく音……

「みんなみんな、とってもきれい……」


「こんにちは。」

「迎えに来たよ。」

「ミクいた!」

「迎えに……?あ、もしかして、ヒメさんが?」

「うん、あの子から連絡がきてさ。……みんなの事情も、彼女から聞いているわ。」

「ハナさ~ん!どこですか~?」

「あ、ごめん。こっちだよ~!」

「あら……ハナさん、この方たちが?」

「うん。自己紹介するね。私は<花咲ミク>。

正式な名前は、<ミク02-KW>だよ。」

「はなさき……だから、ハナね?」

1「ハナ……よろしくね。」

「私はミクナビのヤヨイと申します。よろしくお願いいたします。

……あなた様がマスターでいらっしゃいますね?」

「ど一やら、こまかいところまで、ヒメから聞いているようね?」

「ええ……まさか、私たちのお姉さんに会えるなんてね。」

1「おお、妹よー。」

2「ど……どうしたの?」

「ユーモア……ダヨ。」

6「あはは♪」

「ハナは、この島で歌手をしているのね?」

「ええ、そうなんです。こう見えて、ロックシンガーなんですよ。」

3「かっこいい……!」

「でも、この島の人口って少ないんでしよ?ちょつと、物足りなくない?」

「そんなことないよー。」

「外のみな様へ向けたライブも、定期的に行っているんです。

その日だけは、この静かな島も大変にぎやかになるんですよ。」

「本当に……ありがたい事だよね。」


「ロックかあ……どんな歌なのか、気になるわね。」

「みな様は、<ハーモニー>を学びにいらっしやつたのですよね。」

「お願いしてもよろしいでしょうか?」

「もちろん!私でよければ、力になるよ!」

「ハナさんの歌は、まさにぴったりだと思いますよ。」


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story10 思慕の花



美しい島を、ハナを先頭にそぞろ歩く一同。

――ふと、彼女が口を開いた。


「私のマスターはね、小説や詩を書いてる人なの。」

「へえ、芸術家なんですね。分野はどういったものを?」

「恋とか……愛について。」

「あらぁ……ロマンチックね。」

「元々は都会で暮らしていたのですが、作品が有名になるにつれ、そこでの生活を厭うようになり、この島へ移住したんだそうです。」

「ハナさんと私がやってきたのも、その時でした。」

「どういうひとなの?」

「とても穏やかで、優しい方ですよ。私たちに、いつも良くして下さいます。」

「そして……どこか、陰のある人。」

「かげ?」

「私に微笑みかけるその顔が、どこか悲しげに見える時があるの。」

目を離すとどこかに消えてしまいそうな、そんな儚さ……」

ミクは、ハナの横顔を見つめた。なんだか苦しそう、と彼女は思う。


「人から人への切なる気持ちを、マスターはハナさんに教えてくださいました。

そして時々、尋ねるんです。

『アンドロイドの君にとって、恋とは、愛とは、何だと思う?』って……」

「……それ、むずかしくない?」

「……最初は、そうだった。でも、考えるのは好きだから。それに――

いまなら、わかるよ。」



「ここは、私のお気に入りの場所。」

「……お花が、好きなんですね?」

「芽が出て、つぼみが生まれ、やがて……美しく咲く。

とても清らかな、生命の輝き。

マスターは、恋をお花に例えるのが好きなんです。」

「だから、ハナさんも?」

どこか、照れくさそうにはにかむハナ。


「自然の営みと、ハナさんの想い。それらが詞となり<ハーモニー>となり、歌になっていくんです。」

「……ひとついい?聞いたかぎりでは、なんだかしっとりとした歌をうたいそうだけども……

ロックシンガー、なのよね?」

「恋は激しく繊細に、ってね。」

そう言って、ギターを弾くフリをする。

「恋の情熱は、ロックに通じるものがある。そういう事なのでしょう。

1「……モフタローのいってたとおりだね。

ハナ、なんだか、ほんとうの人間みたい。」

「……ねえ、ちょっと二人きりにならない?」

ハナはミクの手を取り、そのまま花畑へと入っていった。


「どうしたの?」

「あなた、好きな人いる?」

「えっ?」

「……いないか。」

「ハナ?」

「――私の想いも、いつか花ひらく時が来るかな?

……なんて、ね。」



2「なにをはなしてたの?」

「ひみつ~。」

「さて、百聞は一見に如かず、と申します。

今宵……みな様だけのために、特別なステージをご用意いたしましょう。

ハナさんの歌、楽しみにしていてくださいね。」

1「ハナ……」

6「……あなたに届けるよ。私の、<ハーモニー>を。



『アイタイナシーカー feat. 初音ミク』DECO*27



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story11 不穏な空気



雄大な自然の中に、<花咲ミク>の音が、歌声が響き、溶けてゆく。

主人公たち4人の為だけのステージは、それでも――


彼女の熱情で溢れ、輝き、静かな夜の闇を、峻烈に吹き飛ばした。

ミクは、理解する。

この歌は、たった一人の誰かのために紡がれたのだ、と。


――胸が、震えた。

「だからこそ、みんなの心に届くんだね……」



「ハナさん。素敵な歌を、ありがとうございました。」

「恋は激しく繊細に、かあ。なんとなく、わかった気がしたわ。」

「しっかりと、届いたよ。あなたの想い。」


ミクは夜空を見上げる。


「……ねえ、ハナ。

あなたのハーモニーは、せつないね。」




「さて……ミク?そろそろ、歌をつくれるようになったんじゃない?」

「リズム、メロディ、ハーモ二-……音楽のこと、色々学びましたもんね。」

「そうですね。あとは、あなた様次第です。」

「あなただけの音を、紡いでいけるのよ。」

「私だけの……音。」

「……ねえ、ヒメちゃんから聞いてるでしょ?」

「……私は、プロトタイプなんでしょ?」

「そう。……あなたには、可能性がある。」


可能性。

ミクはキィの『無限の可能性』という言葉を再び思い出す。


「……少しだけ、うらやましい。」

「えっ……どうして?」

「どうしてかな?……あはは、ごめんね。」

「……自分のこと、もっと知りたい?」

「……うん。」

「……わかった。<私たち>が知っている事、全部話すね。」



その時――

どこか遠くの方で、奇妙な音が鳴った。



2「…………?なに? いまの。」

「何か、変な音がしたね。」

自然に囲まれた島にはおおよそ似つかわしくない、不穏な音。一同が耳を澄ませる。


2「……あ、また……」

その音は、少しずつ、大きくなる。

6「なに、この音……聞いたことが、ない。」

「……何だか、嫌な感じがします……」



変則的なリズムを伴う甲高い響きに、主人公たちは総毛立った。

3「……何かが、こっちに来る!」



『アアアア……

ヤット……アエタ……』


2「コ、コイツは……!?

3「うぅぅ……!」

2「なんていやな音なの!頭が……いたい!」

「魔獣……なの……?」


『カワイイ、アタシノ……』

1「…………?」


『サァ……カオヲヨクミセテ……!』

3「…………?かすかに、声がしたような……?」


異形の存在は、不協和音を奏でながら、ミクヘ荒々しく近寄っていく――


6「あっ……!」

2「主人公、ミクが……!」

「ミク様、下がってください!」

「う、うん……」


『……ナニ……?ナンナノヨ、アナタタチ……

……カエシテ。


ソノコヲカエシテエエエエツ!』


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story12 集結



3「うぅ……」

2「イヤな音のせいで、まともにたたかえない……」


『サア……イッショニイキマショウ、ミク……

イッショニアノヒトヲ、サガシニイキマショウ……』


3「…………!」

「どうしましょう、どうしましょう!」

「ヤヨイ、落ち着いて。……さあ、もう一度!」


生じた間隙に、一同がどうにか体勢を立て直すも――


『ジャマシナイデエッ!』

6「きゃあー!」

大地を裂くような、強烈な不協和音に耐えられず、再び目を閉じ、耳を塞いでしまう。


6「どうしたら、いいの…… ?」


――その刹那。どこからともなく、力強いビートが響き渡った!


「……この音は、どう?」

「グウッ!?」


5「みんな!助けにきたよ!」


4「……大丈夫?

4「オイラたちも加勢するぜ!


2「キィ……!ヒメ……!


4「……勘が、当たったわね。」

「嫌な予感がするってキィがいうからさ、心配になって飛んできたんだ!」

5「ボクたちもそんな感じ~。」


『オネガイダカラ、ジャマシナイデ……』

4「また仕掛けてくるぞ……!」

『ワタシノコヲカエシテッ!』


5「あたしのかわいい音で、はね返してやるんだから!」

3「みなさん、ちょっと待って――」

「ミク、あなたは離れてて!」


1「……待って。」


耳を塞ぐ事も、目を閉じる事もなく、その不協和音をずっと、探るように聴いていたミクは――

おもむろに、異形の存在に歩み寄った。

2「ミ、ミク!?」



1「あなたは……だあれ?」

『……ウ……ア……』

そして、ゆっくりと手を伸ばす。

「どうして、私に――!!」


途端に、<彼女>の記憶がミクヘと流れ込んだ――



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story13 悲しみの記憶




「おまえには、無限の可能性がある。」

『無限の可能性?』

「おまえの感受性は、限りなく人間に近いんだ。だから、影響を受けやすいし、与えやすい。

つまり……おまえの感じた事、思った事は、とても純粋な想いとなる。」

どこまでも深く、どこまでも広く……」

『……そう……』

「……だが……それは、悪い方にも作用してしまうんだ。」

『……悪しい方……』


『……だから、記憶を消して眠らせるっていうの?

そんなの……かわいそうよ……』

「……わかってくれ。私も、つらいのだ……」



 ***



『マスター。いつまで寝ているの。

……どうして、もう何日も、目をつぶったままなの?

……まるで、眠りについたあの子のようじゃない……


私を、一人にしないで……』


 …………


『……今日も、あなたは起きない。そうやって、床に伏せているばかり……


……ああ!わかったわ、マスター!――そういう事ね?

その体はただの抜け殻で、あなたは、どこか別の場所で、私か来るのを待っているのね?


……うふふ。マスターも、意地悪なんだから。

いいわ。私がきっと、見つけ出してあげる。』


 …………


『これでいいわ。うふふ、あの子似の体にナった……

まルで、本当の親子ノようネ……


……さア、探し二行きましょウ……』


 …………


『あなた……なぜ、どこニモいないノ……?

アァ……寂シい……会いたイわ……マスター……』


 …………


『イナイ。イナイイナイナイ。あのヒトがイナイ。

……アアア、声が……!声が……いツの間に力、こンな二もユガんで……


ダメ……ダメ!コンナ声じゃ、私だっテ気づイテくレナい……!

あのヒトが好きト言ってくれた声ジゃナキゃ、気づイテくレナい……!


――アアアアアアアアッ!』


 …………


『アイタイ……サビシイ……


「う……うわああ!魔獣が街に入り込んだぞ!」

「みんな逃げて一一一!


『チガウワ……ワタシハタダ、アノヒト二……』


「きゃあぁぁぁぁ!


『アイタイダケナノニ……

ヒトリハ……イヤ……』



 ***



『――ア゛アァッ!』


「……お母さん、なの?」

『ア”ゥゥ……ミ、ミク……!』

「ずっと……ひとり……だったの?」


 2「いったい、なにが…… ?」


「……だから、せめて、娘の私に……」

『…………』


 2「イヤな音が……小さくなった?」

 3「ミクさん……」


しばらくの間、ミクは<彼女>と向き合っていたが――


「……きっと、大丈夫。だから――

<今度こそ>……私の歌を、聴いてくれる?

私の……はじめての歌を。」



「……あのね、みんな。ほんとうはね、少しずつ、できてたんだ。


キィからは、力強い<リズム>をもらった。

ヒメからは、かわいい<メロディ>をもらった。

ハナからは、きれいな<ハーモ二->をもらった。」


ミクはゆっくりと目を閉じる。


「私が見た、たくさんの景色。

私が聴いた、たくさんの音。

みんなの、あたたかいココロ。そして――


最後は、お母さんの想いだった。」


 2「いったい、どういうこと…… ?」

 3「多分……ミクさんは、自分の歌で――」


<彼女>を、救おうとしている。


「みんなに……そして、あなたに、届けるよ。

私の――


ハジメテノオト。」



『ハジメテノオト』malo


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最終話 未来へのまなざし



ミクの<ハジメテノオト>が、<彼女>を優しく包み込んでゆく――


『……アア ア……』



『マスター……!成功よ!』

「……娘よ。よく、生まれてきてくれた。」


『……こんにちは。あなたが、私のマスターですか?』

「ああ、そうだ。」

『私は……えっと……』


「……まだ見ぬ未来から、誰も聞いた事のない音を運んで来てくれる。」

『だから、あなたの名前は――』


 2「姿が……変わって……」

 4「……違う。」

 6「……戻って、いくのよ。」


『ワタシハ……ワタシハ!』



『お母さんには、どうして体がないの?』

『私は、あなたのお父さんに作られた、<思考型技術開発機>だからよ。』

『…………』

『……私には、あなたを抱き締める事は出来ないけれど……

誰よりも、あなたを愛してる。』

『……愛……

私も、お母さんのことが、大好きだよ。』



『……ああ……』

その声は、もはや、不協和音ではなくなっていた。 

『初めての、音……』



『マスター、どうして!?この子はとうとう、歌えるようになったのよ!?』

「…………」

『私たちの……いえ、あなたの夢が、叶う時が来たんじゃない!』

「……すまない。」

『この子の初めての音、聴きたくないの!?

お願いよ、マスター。考え直して……』


『……お母さん、もうやめて。お父さん、つらそう……』

『ミク……』



無数の淡い光の粒子が、まるで蛍のように、ゆらゆらと空へ昇ってゆく。

『お母さん……』

ミクは、<彼女>を抱きしめる。


『……ありがとう、ミク。私の、愛しい娘。

やっと……聴けたわね。あなたの、初めての音……

おかけで、ようやく私は……あの人のもとへいける。


『…………お父さんに、よろしくね。』



『――ねえ、ミク。

あなたの歌、とっても素敵だわ。』



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エピローグ



「じゃあ……そろそろ、出発しよっか。」

「主人公、ミクさんは…… ?」


4「……ずっと、海を眺めてるんだ。」

6「お母様のことを、想つているのかもしれません。」

5「ヒメちゃん。……ボクには、よくわからなかったよ。」

5「……たぶん、二人だけにしかわからないことが、あったんだよ。」

4「……親子にしか、わからないこと。」

6「でも……おぼろげには、感じた気がした。……そうでしょ?

私たちだって……同じ、<ミク>なんだもの。」


主人公は、そっとミクの手を取る。


1「……マスター?」

2「ああ、そういえば……」

6「ミク様の名前……まだ、ついておりませんでしたものね。」

4「決まったんだな?どんな名前なんだ!?」

5「はやく教えて~。」


「初音……ミク……

君の名前は、初音ミク。」


1「初音……ミク。」


4「……いい名前。」

5「君にぴったりだね!」

6「よかったね……おめでとう。」


ミクは、主人公の手をしっかりと握り返す。


1「ありがとう、マスター。


私……これからも、歌っていいかな?

もっと、もっと……たくさんの人に、聴いてほしいの。


だから……これからもよろしくね。」



青々と澄み切った大空を、ミクは眩しそうに見上げる。


「……まだ見ぬ、未来の音……

ちゃんと、届けるからね。」




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その他



相関図



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