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【白猫】ハジメテノオト Story1

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
ハジメテノオト

ハジメテノオト Story0

ハジメテノオト Story1

ハジメテノオト Story2

ハジメテノオト Story3



目次


Story02 アンドロイドの<ミク>

Story03 DJ兼シンガー

     機械の街

Story04 破壊と創造の音

     機響ミク・オンステージ!

Story05 無限の可能性

     リズミカル・ジャー二ー

Story06 アンドロイド系アイドル

     メルヘンを、歩く

Story07 かわいいは、あったかい

     姫星ミク・オンステージ!

Story08 お姉さん

     メロディアス・ジャー二ー




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story2 アンドロイドの<ミク>



<事情を聞こうと、ミクを連れて店へと入った主人公たち。

――やがて彼女は、ぎこちない言葉で説明を始めた。>


……つまり、アンタは<歌と音の島>からやってきたアンドロイドってこと?

はい……

歌を歌い、人々を癒やすアンドロイド……それがミクさんなんですね?

<彼女はこくんとうなずく。>


アンドロイドの<ミク>。

人間と同じように、自分だけの音楽を生み出せるだけではなく――

大勢の人々の心を打つ、奇跡のような歌や音を紡ぐ事が出来る可能性さえ秘めているのだと、彼女はとつとつと語った。


そういう歌は、聴いた人の体や心を元気にすることもあるんだそうです。

私も、くわしいことは、わからないんですけど……

……ともかく、ミクさんのようなアンドロイドは、世界中に何人もいて、歌姫として活躍している、と。

じぶんで歌詞とかメロディとかつくって歌えるなんて、すごいわね。

でも……それには……

<ミクは、どこか悲しげに目を伏せた。>


<ミク>は、最初から曲を作れるわけではない。

人間と同じように歌を歌う為には、人間から音楽を学ぶ必要があった。

その為、誕生したミクは、『歌を届けたい』という熱心な想いを持った者の元へと引き取られる。

その人間こそが、<マスター>と呼ばれる存在。

彼女達<ミク>は、彼らマスターとの交流や、見た景色、聴いた音など、様々な経験を重ねながら成長し――

自身の中に、メロディや歌詞を紡いでいくのだ。

だが……主人公たちが出会ったミクは、違った。


ミクさんが目覚めたのは、<歌と音の島>だった訳ですね?

……ふつうなら、目がさめたら目の前にマスターがいるはずなのに、いなかったってことね……

どうしてでしょう……

……わかりません。だから、私は……

マスターを探しに、島を出たんですね……

……音って、なんだろう。歌って……なんだろう。

私も……歌いたい。

<ミクはうつむいたまま、歌えない寂しさを、ひとり言のように漏らした。>

ミクさん……

うーん……アタシたちも、音楽にはそこまでくわしくないからねえ……

<――だが、このまま放っておくことなど、できない。

歌を教えることはできなくとの、自分たちに出来ること――>

<一緒に、行こう。>

え……?

<歌を教えてくれる人を、探しに。>

そうね……それなら、私たちにもお手伝いできます。

ひと探しは得意だしね~。

ほんとうに、いいの?

<だから、大丈夫――!>

……ありがとう!

<ミクは心底ほっとしたように、満面の笑みを浮かべた。>

でも主人公、当てはあるの?

<♪>

なるほど、他のアンドロイドの<ミク>さんに……

いま、立派に姫として活躍してる彼女たちから、色々と教えてもらおうというワケね?

ミクさん自身のことも、もしかしたらわかるかもしれません。

……ありがとう、みんな。

どう、ミク?いってみる?

……うん。私も、会ってみたいな……

……ありがとう、みんな。私も……がんばるね。

<そうしてミクは、主人公をじっと見つめる。>

あの……マスター……って、呼んでもいい?

!?

……ま、ながれ的にはそうなるわね~。

責任重大ね!頑張りましょう、主人公。

……よろしく、ミク!

うん!

じゃ、そうと決まれば、他の<ミク>の居場所を見つけるわよ!

知り合いに、世界を股にかける優秀なビジネスマンがいるの。大丈夫、すぐに見つかるわ!



zこの島にいます。

果たして一人目の<ミク>はすぐに見つかった……




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story3 DJ兼シンガー



<それからしばらくして、<ミク>の一人がいる島に到着した一行。

そこは、製造業や建設業が盛んな、機械の街だった。>

えーっと、情報ではたしか、街のはずれの方に住んでるって話だったけど……

<ミクは、物珍しそうな顔をして、巨大な工場の連なりを眺めている。>


…………

あ、おね一さん。ちょっと聞いてもいい?<ミク>ってアンドロイドをさがしてるんだけどさ。

それなら、コイツのことだぜ!

アンタは……?いやそれよりも、この子が…… ?

ミクさんと、だいぶ外見が違いますね……

……そんな事も知らないの?

おっ?アンタらもミク連れてんのか!……マスターは、アンタか?

<ミク>ってのは、受ける影響によって個性が変わってくるんだぜ!

へえ、そうなんですね。……あの、受ける影響というのは?

見たもの聞いたもの。マスターと交わした言葉、築いた関係性……

ようするに体験した全ての物事から影響を受け、変化していくってことさ。

まるでにんげんみたいね?

今まで誰も聞いた事がないような音を奏でられるようにって、生みの親が考え出したんだ。

すごい技術ね……ちなみに、生みの親ってどんなひとなの?

アンドロイドの技師だったんだ。

……もう、この世にはいないけど。

いまも生きてたら、みんなの活躍を見れてたのに……残念だよな。

……それで?まっさらなミクを連れたアンタらが、オイラたちになんの用なんだ?

いや~、それがね……

<主人公たちは、事のあらましを語った――>

なるほどな一、突然目覚めて……不思議なこともあるもんだ。

……ところで、あなたは…… ?

おっと、自己紹介がまただったな!オイラは<ミクナビ>のタツキチ。

で、コイツは〈機響ミク〉ってんだ!この島でDJ兼シンガーとして大活躍中だぜっ!

たしかに、そんなカンジするわね!

あ、あの……よろしくね。

……よろしく。

タツキチさん、ミクナビというのは?

人間とミクの会話を円滑に進めるための。コミュニケーション能力特化型アンドロイドのことさ!

<ミク>には、必ずオイラたちみたいなのが付いてる。便利だろ?

……でも、このミクにはなんにもついてないわよ?……どうしてかしら?

それは……オイラにもわかんねえ。

…………

あ、もうーつ聞いてもいいですか?そちらのミクさんには、特別な名前がついているようですが……

ああ。ミクには、マスターがそれぞれ名前をつけ加えてやることになってんだ。

でないと、みんな同じ<ミク>でまぎらわしいだろ?

なるほどね~。

ちなみにコイツの正式な名前は、<ミク01-JV>。

オイラもマスターも、<キィ>って呼んでるけどな!

アタシたちも<キィ>でいい?

……構わない。

それよりも。……あんた。

……わ、私?

あんたは……あたしたちとは違う。

お、おいキィ。いきなりなにをいってんだよ?

あんたのデータを参照した。かなり断片的だったけど。

……いい?あたしたちが持ってるものを、あんたは持ってない。

<その言葉を聞いて、ミクは何事か考える。>

私は……ダメなミクということ?

違う。代わりに、あたしたちにないものを、あんたは持ってる、という事。

わけわかんねえよ、キィ。ちゃんと説明してくれ。

…………

あら?だんまりね。

話し疲れるとこうなるんだ。無口はマスターゆずりだからなー。こうなったら、いくら聞いてもムダさ。

<ミクは、寂しそうな表情でキィを見つめた……>


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story4 破壊と創造の音



ミク、アンタのコトはいったん置いときましょ。……歌、うたえるようになりたいんでしょ?

うん……そうだね。

よければ、なにか勉強させてもらえればと思うんですが……

だったら、キィからは<リズム>を学ぶといい。さっきもいったけど、キィはDJもやるし歌も歌なにより曲がチョーカッケーんだ!……いいよな? キィ。

…………

お願いします、キィさん。

……はぁ。

いまのは『しょうがないな』のタメ息だ。

ありがとう……!

じゃあさっそく、アンタのことについて教えてくれる?

キィのマスターは、この島で働く鍛冶師なんだ。

すっげえ無口で無骨な、いかにも職人って感じの人間でさ。キィが来てからも、会話は数えるほどしかなかった。

……仕事の鬼。でも、不器用な優しさは、ちゃんと伝わっていた。

毎日一緒に仕事の手伝いをしたり、空いた時間には散歩に行ったり……

じゃあ、音楽はいっさい教えなかったの?

……教えてたわ。ただ、言葉は要らなかっただけ。

<キィは、まるで街そのものが機械で出来ているかのような無機質な建物の群れをゆっくりと仰ぐ。

何かが砕け散る音。何かが打ち付けられる音。何かが組み合わされる音。何かが運ばれていく音。

うるさいほどに鳴り響くそれは、破壊と創造の音―街そのものの、律動だった。>

……あたしはただ、それを刻みたいだけよ。

<ミクは、街が作り出す<音>に、耳を澄まし続けた。

いつまで聴いていても、飽きないらしい――>

キィの音も、そりゃすげーぜ?

今日、ちょうどライブをやることになってんだ。それを聴けば、一発でわかると思うぜ!

……聴いて、みたいな。

……いいわ。


<そうして、夜になり――

<機響ミク>のライブが始まった!>



●機響ミク・オンステージ!


『 S∀MPLING MΘNSTER feat. Hatsune Miku』sasakure.UK


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story5 無限の可能性



ライブのステージヘと改装された巨大な工場の中で――

キィが生み出す音が、鼓動が、聴く者の心を力強く打ち付けた。

ミクは、その音楽に圧倒された。

自身が聴く初めての音楽というだけではなく――その音には、キィの魂が間違いなくあった。


『あたしを見て』

『あたしの歌を聴いて』

『あたしは、ここにいる』――


観客とステージを揺らすその猛々しい律動の中には、確かに、キィがいたのだった。


ようようよう!どうだった、どうだったよ!?

すごかった!!いやもう、それだけよ!

元気をもらいました……

<ミク>の歌ってのは、実際にそういう効果があるからなー。

聴いた人の生命力を高めるんだよ。

あ、そういえばミクも似たようなこといってたわね?

未来の音の力、ってやつさ。

<キィは、つかつかとミクに歩み寄る。>

……これが、あたしの音。

<ミクはしっかりとうなずいた。>

どうやら、わかったようだな?

――うん。

<音もなく、観客もいなくなった、空のステージをミクは見つめる。

心地の良い<リズム>の痺れが、いつまでも彼女の体の中に残っていた。>


 ***


それで?これからどうするんだ?

二人目の先輩のミクをさがしにいこうかなって。まだまだ、学ぶべきことは多いしね。

それなら、オイラいいヤツ知ってるぜ!

<リズム>と来たら、次は<メロディ>!そんでメロディといえばアイツだ!

ソイツの歌はさ、そりゃもうとんでもなく輝いててさ。ピッカピカのテッラテラだぜ!

本当ですか?ぜひ、居場所を教えてください!

えーっとな――


……ねえ。

なあに?

あんたは、ダメな子なんかじゃない。

<キィの表情が、ほんの少しだけ崩れる。>

あんたには――無限の可能性がある。

むげんの、かのうせい……?

……それだけ。

…………

 おーい!そろそろ出発だってよ一!

……頑張って。

……ありがとう、キィ。またね。



「なんの話をしてたんだ?」

「……別に。」

「なあ、あの子、大丈夫かな?」

「……何だか、嫌な予感がするの。」

「嫌な予感?」

「アンドロイドの、勘。

タツキチ。……いつでも島を出られるようにしておいて。」


…………

……


ハヤク……アイタイワ……

……イソガナイト……

wグルルルル……

……ネェ、イソイデルノ……

イソイデルノ!!

w!!

…………


”……まだ見ぬ……から、誰も…………ない…………を運んで……る。”

”だから、あなたの……は――

……私には、……を抱き……る事は……いけれど……

誰よりも、あなたを……てる。”

『……………………大好きだよ。』


アグウウッ!……ナ、ナニ…… ?

イ、イタイ!アタマガ、イタイ……!

……ウゥ……イカナクチャ……

アノコニ アエバ……<アノヒト>モ、キット……




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story6 アンドロイド系アイドル



<メロディ>を教えてくれるというミクがいる島に着いた主人公たち。

そこには、どこまでもカラフルで、メルヘンな街が広がっていた――


あれ?ここアタシ、雑誌かなんかでみたことあるかも。

旅行先として人気の島なんだって。

マスター、なんだか、楽しくなってくるね。

<ウキウキとした様子で、ミクは辺りを歩き回る。>

さてと、かんじんの先輩ミクがいる家は、この辺のはずなんだけど……

あら、かわいいぬいぐるみが歩いてるわ。……大きいわね。

ほへ~……

しゃべったわ、キャトラ。かわいい声よ…… !

ねえヒメちゃん、他の<ミク>がいるよ。きみのおともだちじゃない?

ミクナビは、コネコ型だよ。初めて見たよ。ちっちゃいなあ。

……ム?ミクナビ?

モフタロー、あんまり遠くまでいっちゃだめだよ!

また迷子になっちゃうから…………あれ?みんな、だあれ?

もしかしてアンタが、この島にいるっていうミクかしら?

うん、そうだよー!

おともだちじゃないの?

私たちは、そちらのミクさんに、音楽を教えてもらおうとやってきたんです。

<一同は、詳しい事情を話した――>

で、あんたから<メロディ>を学ぼうってことになってね。

そうだったんだね―!うん、もちろんいいよ!

いいよー!

ありがとうございます。えっと……

この子は、<姫星ミク>。せいしきにいうと、<ミク07―YI>だよ。

ひめぼし、……だから、ヒメちゃん?

ヒメちゃんはね、この島でアンドロイド系アイドルとして活躍してるんだ。

あら、アンタ、アイドルなのね?

うん!かわいいアイドルになりたくってさ~!

身につけているものも、かわいいものばかりですね。

でしょでしょ!

えっとね、ボクはモフタロー。もふもふしてるから、モフタローなんだ。

ヒメさんのミクナビなんですね?

うん、ヒメちゃんをいっぱいお助けしてる。あと、ライブのバックダンサーもやってるんだよ~。

かわいいバックダンサーですね♪

えへへ。……それにしても、ミクナビがついてないミクなんてめずらしいね。

まぁでも、アタシがミクナビみたいなモンだから。

うふふ、そうね。

…………

<ヒメは、まじまじとミクを見つめた。>

な、なあに……?

……あ、ううん!あたしでよければ、力になるから!

ありがとう。よろしくね!


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story7 かわいいは、あったかい



じゃあさっそく、ヒメのことについて教えてくれる?

もうわかってると思うけど、ヒメちゃんはね――

かわいいものが、だーいすきなの!

やっぱり、マスターの影響なのかしら?

うん。マスターもとにかくかわいいもの好きでさ、服から何から、全部かわいくないと気が済まないんだ。

でもときどき、すっごいヘンなものをかわいいっていったりもしてさ。

そういうのを見ると、かわいいって一体なんなんだろうって、ボクは思ったりするよ。

ヒメちゃんが来てからは、おそろいの服を着たり、買い物にいったりがほとんどだったね。

マスターは優しいんだ!あたしのことを、何度もかわいいっていってくれるし!

なんだか、お友達同士って感じですね。

すっごくいい子だよ。だからヒメちゃん自身も、かわいいものが好きになっていったんだ。

ん?なに、主人公?

<ミクも……かわいい!>

マスター……うれしいな……

ミクは、みんな、かわいいよね~。

<一同は、豊かな色彩で満ちている島を散策する。>

あたしの<音>はね、そういう、かわいいものから生まれているの。

かわいいもの……

ほら……そこにも、あそこにも!

<胸が躍るようなものばかり。カラフルな色……様々な形。

ミクは、ヒメが指さすあちこちを、一生懸命に目で追う。>

かわいいね、マスター。

カタチが、イロが、カンショクが、かわいい。

そういう気持ちが、ヒメちゃんの中で自然とメロディになっていくんだ。

それって、とってもいいことだと思わない?

すご~くむかしのひとが、かわいいものについて書いた日記があってさ。

こどもの顔とかしぐさ、人形あそびのどうぐ、ハスの葉……

小さいものは、とにかく全部かわいいっていってるんだ。

なにかを愛でる気持ちは、昔から変わらないという事ですね。

ひとはだれでも、そういう感情をもってる。もちろん、<ミク>にだってね。

そして、そういうきもちは、自分をいつだって、あったかくしてくれる。

……あたしは、みんなに、あったかくなってほしいの。

かわいい格好をして、かわいい声で、かわいい歌を歌って。

それで、あたしをかわいいと思ってくれたら……

<ヒメはにっこりと笑う。>

そんな想いがこもった、ヒメちゃんのメロディ……きいてみたくない?

きっと、得るものはおおいとおもうよ~。

ぜひ、お願いします!

いまここで歌ってもいいんだけど……

どうせなら、ライブをみてほしいよね。……数日後に、この島のステージにたつんだ。

よかったら、それまで観光でもしていきなよ~。

みんなで、かわいいものに囲まれよう!

ステージ……楽しみだなあ。


…………

……


そして数日後――


ヒーメ!! ヒーメ!! ヒーメ!! ヒーメ!!

みんなーーー!!今日は来てくれて、ありがとうーーー!!

ヒメのかわいいライブ、はっじまっるよーーー!



姫星ミク・オンステージ!


『自己愛性カワイズム』Mitchie M

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story8 お姉さん



<姫星ミク>のためだけに作られたライブ会場。ヒメは、超満員の観客の心を、ガッチリと掴んでいた。

キュートな笑顔を振りまきながら、彼女はどこまでも元気に舞い、歌う。

ミクもまた、その歌に心から酔いしれていた。

しかし……彼女がもっとも感銘を受けたのは、ヒメと観客との、一体感だった。

ヒメの曲に合わせ、観客は手を振り、共に歌い、しきりに声援を送る。

彼女の<メロディ>は、歌い手と聴き手の心を、しっかりと繋いでいたのだった――


ありがとうございました、ヒメさん。

どうだった?

とってもよかった。ほんとうに……

その様子だと……受け取ってくれたみたいだね。

<ミクはこくりとうなずく。そして、静まり返ったステージの中央に立ち、ゆっくりと胸に手を当てた。>

あなたの<メロディ>……とっても、あったかかった。


…………

……


さて……これで、<リズム>と<メロディ>を学んだことになるのかしら?

あとは……<ハーモニー>、かな!

ハーモニー、かあ……

ヒメさん、どなたか心当たりはありませんか?

あるよー!

あたしのお友達のミクなんだけど、とってもハーモ二-がキレイなの。

<ミク>の中では、とっても『人間らしい』子なんだよ~。

へぇ、そうなのね。

ではミクさん、会いにいってみましょうか。

……待って。

<いつもニコニコとしているヒメの表情が、真剣なものになる。>

……モフタロー、お願いしていい?

わかった。

……どうしたの?

きみのことについてだよ、ミク。

ヒメちゃんたち……最近の<ミク>に、きみのデータが少しだけ残っていたみたいなんだ。

あのね、君は……<歌と音の島>で、10年ものあいだ眠っていた――

<ミク>のプロトタイプなんだよ。

それは、つまり……最初に生まれた、ミクってこと…… ?

あたしたちの、お姉さん。それが、君なんだよ。

……その様子だと、自分のことや<ミク>について、知っていることがチグハグだったんじゃない?

たぶん、目を覚ますときに、うまくいかないところがあったんだと思う。

そうだったんですか……

私は……プロトタイプ……

<ミクはそのまま、しばらく黙り込んでいたが――>

教えてくれて、ありがとう。

マスター。それでやっぱり、私は――

みんなと同じように、歌えるようになりたい……!

大丈夫よ、ミク。プロトタイプだろうが、そんなの関係ないわ。

きっと、歌えるようになります。私たちが、ついていますからね!

……うん!

いいひとたちに出会ったね。頑張って!ボクもヒメちゃんも、応援してるから。


(……でも……無限の可能性、ってなんなんだろう?)



いっちゃったね~。

……あとは、ハナちゃんにおまかせ、だね。

……うん……


…………

……


アア……ワカル、ワ……チカヅイテ、ル……

モ、モウスコシデ……アノコニ……



”……だから、記憶を消して…………の?

……そん……かわいそうよ……”

”……わかってくれ。私も、つらいのだ……”


”……どうして、もう何日も、……をつぶった……なの?

私を、一人にしないで……”


”いいわ。私がきっと、見つけ……あげる……”



アァァァッ!イヤアァァァ!

ナンデ……!コンナニモ、カナシイノ!コンナニモ、サビシイノ……!

……ワカラナイワ……

ワカラナイィィィッ!




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