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【白猫】パイレーツシンフォニア Story

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最終更新者:にゃん
開催日:2019/03/15


目次


Story1

Story2

Story3

Story4

Story5

最終話




story1



――かつて、世界の全てを捨ててきた男がいた。


男の名前は<ン・ソウ>。世界の海を股にかけ、この世の財宝全てを集め尽くした大海賊。


人々は彼の蛮行と業績に畏敬を込めこう呼んだ。


<海賊大王>と――




「――だから、俺は海賊大王を超えたい!」

「船長の言いてーことはよくわかる。俺たちも、あんたのバカな夢に乗っかりはした。

だがよ、ものには限度ってもんがあんだろ?」

「限界を自分で決めるな!できると思えば、なんだってできるんだよ!諦めんじゃねー!!」

「うるせえ!船には積載量ってもんがあんだよ!いい加減、あのガラクタ、捨てやがれ!」

「海賊大王は手にいれた財宝の全てをかたっぱしから捨てたそうだ。

だから、俺は逆に拾う。かたっぱしから全部!海賊大王の捨てた宝もなにもかも全て拾い上げる!」

「だからってゴミまで拾うんじゃねーよ!」

「はあ!?今ゴミつつったか?これのどこがゴミなんだよ!」

「ただのクソ重い岩じゃね一か!」

「ただのってなんだよ!海底にあったクソ重い岩だよ!引き上げるの、めちゃくちゃ苦労したじゃねーか!俺たちの汗と涙の結晶みたいなもんだろ!」

「いい思い出みたいに言ってんじゃねーぞ!これ、引き上げた時のクルー全体の『マジかよ?』感、忘れたとは言わせねーからな!

おめ一が宝だとか金塊だとか言うからみんな期待してたんだぞ!見る度、腹がたつゴミなんだよ!捨てろ!」

「ふざけんな!お前らにとったらゴミでも俺にとったら、なんだ?俺にとってなんだ、これ?わかんねーけど大切なもんなんだよ!」

「一瞬、冷静になったじゃね一か!ゴミだろーが、これ!あと、ワカメとか無駄に拾うな!なんで、甲板の一角にワカメの山があんだよ!ゴミじゃねーか!」

「ワカメをゴミって、てめえ、何様のつもりだ!大自然に謝れ、この野郎!」

「てめ一が謝れ!バーカ!お前が、このゴミ捨てないってんならこっちにも考えがあんぞ!」

「おお、言ってみやがれ!聞いてやらー!俺はおめーらの意見だって拾いあげてやっからよ!」

「船長を捨てる。」

「おもしれーこと言うじゃねーか!おいおい、みんな、こいつ、こんなこと言ってんぞ!」

 「「「…………」」」

「でも、安心しな。俺は仲問だって捨てねー。今の言葉は聞かなかったことに――

見ろよ!こうして俺の腕をつかむほど、こいつらは俺に忠誠誓ってなんか力入れすぎじゃね!?」

 「船長、すんません。」

 「さすがに岩積んでる意味わかんねっすよ。ワカメもくせーし。」

「おい、ちょっと待て!本気か!?お前ら、マジか!?」

「俺たちは、あんたがー発当てるっつーから、ついてきたんだ。

もうー度言うぜ。岩とワカメを捨てろ。」

「絶対嫌だっ!」

「船長捨てちまえ!!!」

「ぎゃー!」


「よし、岩とワカメを捨てろ。

それと、あれでも船長だったんだ。小舟くらいはくれてやれ。」

「「「イエッサー!」」」


「こら!やめろぉぉ!勝手に捨てんな一!!

俺のワカメと岩ぁぁぁぁぁぁぁっ!」



こうして――

海賊大王を超える男になるため全てを拾い上げると心に決めた俺は――


大海原に投げ捨てられた。



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story2


「これが軍人のやることか?レパルト海軍として恥ずかしいと思わないのかね?」

「ごちゃごちゃ言ってねぇで、ほれ、もっと先に行きな。」

「板歩きの刑など、まるで海賊の私刑(リンチ)ではないか!私を罰するなら、軍法会議にかけるべきだ!」

「坊ちゃん、悪いことは言わねえ。詫びを入れれば許してやる。」

「軍属として敵国と戦うのはいい。敵国所属の商船を襲い、経済に打撃を与えるという作戦も理解しよう。

だが、貴様らは無関係な船まで標的にしている!貴様のやっていることこそ軍令違反ではないか!」

「誰にだって間違いはある。戦場じゃあ、よくあることだぜ、坊ちゃん。」

「民の剣たる軍人が、その民に剣を向けるなど言語道断!グラナドスの家名にかけ、看過できん!」

「はあ~……困ったことになったな。グラナドス提督には恩義がある。」

「貴様のような下劣な人間が父の名を口にするな!!」

「あのな、坊ちゃん。俺たちは、その親父さんの許可を得ている。

まあいいわ。お前、死ね。

 ――ドンッ!!

なんだ、こりゃあ!」

 「き、き、奇襲です!あの旗は海賊です!!」


「――ケハハハハハハハハハハッ!!」

 けたたましい笑声を上げながら――

 空から大柄な男が降ってきた。


「このエドガルドさまのシマで随分とハネ回ってるみてェだな!」

 「ひっ!反撃しろ!!撃ちかえせー!!」

「ぞろぞろ雁首そろえやがって情けねェ……時代かねェ……昔の軍には、も少し骨があったぜェ?

少なくとも、オレたち海賊の真似するバカはいなかったな。」

「かかれー!」

「ケハハ!」


 (なんだ、これは……)

「オラオラ、どうしたァ!こっちは一人だぞ!ケハハハハハ!」

 (海賊?たったー人で……)

「オラオラ、どうしたァ!」


「に、逃げろー!」

「おいおい、まさか海の男が船置いて逃げンのかよ?」


「……貴様は海賊か?」

「おう!大海賊エドガルドさまたァ、オレのことだ!」

「エドガルド……死んだと聞いているが?」

「いろいろあって生きてンだな、これが。いや、生きてンのか?どっちでもいいわな!ケハハハハハ!」

「なぜ、軍に手を出す。貴様ら海賊は己より弱い者にしか手を出さないはずでは?」

「強かろうが弱かろうが、気に入らねェ奴はぶん殴る。だいたい軍人が略奪なンておかしいだろ?

ま、こまけェこたァどうでもいい。てめェ、少しは骨があるみてェだな。

――闘るか?」

「い、いいだろう!き、貴殿が正しかろうと海賊であるならば、軍人として見過ごすわけにはいかないからなっ!

いや、やっぱりダメだ!この感覚!?俺の<壊れルーン>が――

のわーーーーっ!」


「ケハハ!落ちちまったか。つくづく運のねェ兄ちゃンだ。

おーい、兄ちゃン!次があったら、この続き、しようじゃねェか!

――ケハハハハハハハハハハッ!」


…………

……



「ぐっ……ここは……?小舟の上?

誰……だ?」


「俺はレオン・イグナシオ。海賊大王を超える男たぁ、俺のことよ!」

「レオン・イグナシオだと!?まさか、海賊の海賊か!?」

「海賊っつ一か、サルベージャーだったんたけどな。海賊相手に喧嘩してんのも、あいつらが喧嘩ふっかけてくっから……まーこまけーこたーどーでもいい。」

「……私の名前はテオドール・グラナドス。海端の島レパルト海軍所属の航海士だ。

助けてくれたことには感謝はする。だが、君に恩義はあれども私は立場上、君を逮捕しなけれぱならない。

私が邪魔なら、海に捨てろ。それが君のためだ。」

「あいにく一度拾ったもんを捨てることはできねー性分でな。

つーか、こまけ一こたーどーでもいい。あと、頼むぜ、副長。俺は寝る。」

「いや、副長ってなんだ?ちょっと待て!って本気で寝てるだと!?

…………


いったい、なんなんだ、この状祝……」




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story3


「はあ、はあ、はあ……」

「待ちやがれ!」


(このままじゃあ、追いつかれちゃう……どうしよう?

身につけてるもの、捨てれば、軽くなって速くなるかもしれない……

腕輪は走るのに不要。捨てちゃえ)


「痛っ!なんだ、こりゃ!

「金目のもんじゃね一か!寄越せ!


(ほかに不要なものって言っても、残ってるのは服くらいだし……

いくらなんでも、さすがに、それはね一……)


「待てや、こらー!」

「どうして追いかけてくるの一!!」



追われる理由がわからない。

いつものように酒場で給仕の仕事をしながらステージの上で歌っていただけだ。

私は歌が好きだ。ママから教えてもらった歌を今夜もお客さんに聞かせていた。


そしたらあの人たちが現れた。



『カルメンの娘か?』と尋ねられたので、『そうです』と答えたら、いきなり私を連れ去ろうとしてきた。

どうにかその場から逃げることはできたのだが、こうして追いかけられている。



「もう追いかけてこないでー!!いくらファンでもやりすぎですよ!歌手とファンの間にだってルールというものがあると思います!」

「ファンじゃねー!!」

「え?ファンじゃない……?

ハッ!なるほど!つまりこういうことですね!

あなたたち、やばい人ってこと……えー!それって大変じゃないですかー!!」



…………

……



 「待て!海賊め!!」


「だから私は海賊じゃない!」

「もう諦めろって相棒。俺も海賊、お前も海賊。それで全て問題解決ってもんよ。」

「私は海賊の手引きなどしていない!あの少佐だ!私の元上司がデタラメ言ったに決まってる!!

どうして、こんなことに……私がいったいなにをしたと言うのだ?正義はどこだ!?」

「正義がどこにあるのか知らないが、とりあえずあの世にはねーわな。ほら、撃ち返すぞ。

副長、なに銃、ぶっ壊してんだよ!」

「しかたがないだろ!この<壊れルーン>のせいで!

もう嫌だぁぁぁぁぁぁっ!」


 「持て、こら一!」

 「待て、海賊ども一!!」

 「ありゃあ、海軍の……」

 「まさか、仲間か……?」


「助けてください!」


「野郎ども!軍に気づかれた!こいつら、まとめてやっちまえ!!」


「死ねや、おらああ!!」

「全員、捕縛しろ!!」

「う、撃ち合いがはじまった?」


「このスキに逃げる!行くぞ、副長!

ついでだ。あんたもー緒に来るか?よくわかんねーが、わけありなんたろ?」

「……え?」


くったくなく手を差し出された。ゴツゴツして、皮のぶあつい海の男の手。

その所作か、あまりに自然で悪意も善意も見えなくて、私はただ反射的にその手をつかんでいた。


「行くぞ!」


この時、私は――

冒険と出会ったのだ。






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