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【白猫】Brave The Lion 4 Story2

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story8 欺瞞


<ダグラスは自分に起きたことをつまびらかに説明した。>

――というわけだ。オレはミーチャをもとに作られた。

それで、ルエルとは因縁があるってわけだ。

……不幸な出来事だと思うべきなのだろうな。だが、あいにく同情する術を持ち合わせていない。

同情なんかしなくていいさ。それで、あのルエルは何者なんだ?

森の奥で倒れていたのを保護しただけだ。それ以外は知らん。

思い当たる節もないのか?

無い。

やや問題の多い性格に思えたがなにも気にしないのか?

……アレでだいぶマシになった。言動について、お前さんらにとやかく言われることではない。

もしあの子がルエルと関わりがあって、それが危険なことにつながるとしたら?あなたはどうするの?

ガキをガキとして扱うだけだ。それが俺の職務で、それ以外はどうでもいい。

島民の暴走も朝になれば終わるだろう。泊めるのは今夜だけだ。朝になったら出ていけ。


取りつく島もねーな。

いくつか嘘はついていた。ルエルが何者か思い当たる節はあるようだ。

どうしてわかるんだよ!?

視線の動きや動作から読んだ。かなり訓練しているようで読みづらかったが……

なんだ、それ。読心術ってやつか?

そんなものだ。あの男がなにか隠していることは事実だ。懐に入り、探りを入れるしかない。

ダグラス、お前に任せる。やってくれ。

オッケー、わかったよ。やるだけやってみる。


(……人見知りのエージェントってやっぱりダメだよな)

ダメということはないだろ。

(……コテツも読心術ができるのか?)

できんが?

(そうか、そうだよな。……いや、待ってくれ。今できてないか?)

(できてる!?)

(俺もできてる!?)


…………

……


ルエルちゃん、ちょっといいかな?

別にいいけど……

えっと、今日のこと、その……迷惑かけてごめんなさい。

あんた、これで何度目だっけ?見ず知らずの他人助けたの。

ごめんなさい。でも、私には、これくらいしかできないから……

あんた、それよく言うけど、どういう意味なの?

私、先生に助けられる前のことなにも覚えてないし……なにもできないし……

いろいろ失敗ばかりだし得意なこともないし、取り柄といったらケガしてもすぐ治るくらいで……

自分がここにいていい理由がよくわかんなくて……なんか、できること、したくて……

……いろいろできてるわよ。

……ルエルちゃんとは違うよ。私、本当にダメだから……

でも、誰かを助けたりして感謝されたりすると、そういうこと考えないですむんだ。

あんたはダメなんかじゃない。少なくとも、私はそう思ってる。

そう言ってくれるのはルエルちゃんだけだよ……

<レイチェルは困ったように微笑む。ルエルはその笑顔が嫌いだった。

許容(きょよう)を模した壁のような微笑は、有無を言わさぬ断絶を突きつけてくる。

それを壊す勇気がルエルにはない。だから、偽りの笑顔を受け入れる。同じように壁を作りながら――>

……まあ、いいわ。好きにしなさいよ。私にできるのは、あんたに振り回されることくらいなんだから。

<>

クソ!最悪じゃない……

どうしたの?

街のイカれどもが森の結界、越えてきたわ。あの様子だと。ここ目指してるわね。


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story9 追憶



街の連中が!?

は、はい!その、ルエルちゃんが結界を越えてきてるって……

先生、どうしたら……

ガキどもを地下室に放り込め。ルエルはなにをしてる?

準備してたに決まってるでしょ!レイチェル、ガキどもの面倒は任せるから。

うん、わかった!

それで――

あんたたちはどうするの?まさか、逃げるとか言わないわよね?

……当然、戦うぜ。おまえと共闘ってのも変な気分だけどな。

あんたの知ってる奴と同じにしないでくれる。吐き気がするから。

カティア、お前は子供たちと一緒に地下室にいてくれ。

わかったわ。ダグラスの面倒は任せるわよ。



なにかおかしいわね……冒険家でもないのにトラップを解除した?いえ、なにかで壊された?

なにか起きたのか?

想定外のことが起きてるわ。ああ、ほんと、めんどくさい。そろそろ来るわよ。

俺が出る。数を削りながら後退、その後、寵城だ。ルエル、お前はここにいろ。

手を貸す。グレイヴ、ついてこい。ダグラスは後詰めだ。

おう!


みんな、こっちだよ!早く!

これで全員かしら?

はい。あの、私も外に出て戦ってもいいですか?

やめておいたほうがいいんじゃないの。

そうですよね……


<こういう気弱な性格が嫌いだ。

私には自分というものがない。私のなかで誇れるものはこのレイチェルという名前だけ。

一番古い記憶は森の中だ。はじめて出会った他人はフウ先生。

私はフウ先生に拾われ、孤児院で暮らすことになった。

孤児院は大変だ。みんなでできることをしながら力を合わせて生きていかねばならない。

そんななか、私はドジばかり。なにもできない。なにも知らない。なにもわからない。体が頑丈だということ以外、これといって取り柄はない。

そんな自分が本当に嫌だ。でも嫌いになれるほど私は私のことを知らない。

孤児院に後から来たルエルちゃんのほうが、なんでもできる。ルエルちゃんはかっこいい。

だから、嫌われたくない。力になりたい。友達になりたい。

それなのに――迷惑をかけるとわかっているのに、私は自分を知りたいのだ。

――私は誰ですか?――私はなんですか?

その答えがわかった時、もう少しだけ自分を好きになれるような気がする。

そしたら、きっと胸を張って、私はみんなの家族なんだって言えると思う。>


やっぱり……行きます。ルエルちゃんや先生の力になりたいから……

ちょっとレイチェル!


 ***


なあ、ルエル、おまえ、あのルエル……なんつーのかな?悪党のルエルって言えばいいのか?あいつのこと知ってるのか?

…………

なんか驚いちまってな。あいつと同じ顔した奴が誰かと暮らしてるなんて想像もしてなかったからさ。

……クソうっとうしいんだけど?

話せるうちに話しておきたくてな。チャンスなんて限られてるしよ。

ルエルちゃん、みんなの避難、終わったよ!

あんたも隠れてなさいよ!邪魔にしかならないんだから!



先生、大丈夫ですか!?

なにがあった!?

瘴気だ。

街の人間から瘴気が発生していた。


「「「――!!!」」」

本当に、こりゃあ……

ルエル、レイチェル……逃げろ。これは、まずい。


ぐるじい!あああああああ!ぐるじいいいいいい!!

ばげものめえ!ごろぜぇぇぇ!いだい、いだい、いだいぃぃぃ!!


クソ……コテツ……カティアから……瘴気用の……装備を……

わかってる!

しばらくここで……耐えるしか……ない。ダグラス、瘴気は吸うな。

お前たちも下がれ。

絶対嫌よ!ここで戦うわ。

私も戦います!

!(こいつら、瘴気の影響がないのか?

今は細かいこと考えてる余裕、ないな……)

おい、ルエル、レイチェル。やるぞ。

命令すんな!

が、がんばります!



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story10


ここくさーい!

おしっこ行きたい。

あー、もう!じっとしてなさいな!外は大変なんだから!

カティア、大変だ!島民が瘴気を撒き散らしている!

なんですって!?

ワンちゃんだー!

尻尾ひっぱれー!

こら!やめないか!!


こんなところにまで!?

まずいぞ!!瘴気用のルーンは!?

鞄の中よ!

効果がないっ!?どういうこと!?

なんだと!?

ぐぅ……

(瘴気が変異してるってこと?まずい……このまま……だと……みんな……死……)


 ***


おらぁっ!

ぐっ……

(あいつらも限界か……だってのに……

瘴気に釣られて魔物まで現れやがった……

ここらが潮時かね……)

バイパー!この辺りの瘴気を消す!!

やめろ!

安心しな。なんせくできちまう>からよ!!

<周囲に漂っていた瘴気がダグラスへと集まっていく。>

がっ!

それ以上はダメ……だ!ダグラス!!

まだ……まだぁぁぁぁっ!!

がはっ!

ダグラス!!

グレイヴ、ダグラスを連れて下がれ。フゥ、瘴気は消えた。敵の数を減らしながら後退する。

……ああ。了承した。


ダクラス!


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story11



(島民はほぼ無力化したがそれ以上魔物が厄介だ。これ以上の足止めは不可能か……)

地下室に下がるぞ。

バイパー、大変だ!!


ここまで瘴気が……

カティア!瘴気用のルーンは!?

効果が……ない……のよ。

なんだと?

先生!!魔物が!!ど、ど、どうしたら!?

……扉を閉めろ。

ここには瘴気ってのがあるんでしょ?

……なぶり殺されるか毒で死ぬか。後者のほうがまだマシだ。

なに言ってんのよ!!

どう……する?このまま……だと……俺たちも……

……ダグラスの意識は?

……ない。

<!!>

魔物か……

瘴気に釣られて来たんだろう……かなりの数だ……

扉も長くはもたんか……かまえろ、グレイヴ。あがくぞ。

了解。


みんな!みんなしっかりして!!

うぅ……おねえ……ちゃ……ん……苦しいよ……

どうしたらいいの!?みんな死んじゃうよ!

そんなの私にだってわからないわよ!!

嫌だよ、そんなの……絶対に嫌だよ!!

お姉ちゃん?痛いの……消えたよ。

本当!?よかった!!大丈夫だよ、きっと。みんな大丈夫……だ……か……ら……

お姉ちゃん?

な、に……これ……

体が……熱い……

来るぞ……

なんだ、この気配……


<振り返ると、膨大な瘴気を身にまとったレイチェルが立っていた。>

そこを――

どいてぇぇぇぇぇぇっ!!

<禍々しい熱波が地下室になだれ込んできた魔物を飲み込み、消し飛ばす。>

これ、なに……?

瘴気が消えた?

魔物はまだまだいるか……

レイチェル!

は、はい!

なにをしたか知らんが、同じ要領で瘴気を消せ!魔物は俺たちが倒す。

が、がんばります!


反撃

いっけぇぇっ!

排除する!



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story12



これで最後だ……

残りの魔物は逃げたか……

コテツ、お前の具合はどうだ?

眠いこと以外、問題はない。

それにしても――

すごかったな。

……倒れた島民の容体はどうだ?

瘴気が肉体を蝕んでる。このままだとまずいわね。

私がやってみます!

<レイチェルが倒れた男に手を添える。>

瘴気が消えたか……いったい、あれはなんだ?

きちんと調べてないからわからないけど微妙に違う気がするわね。

そろそろ限界です。あぶ……ないので……離れてくだ――

<レイチェルに集められた瘴気が熱を持ち、空気を焼いた。>

ふぅ……さっぱりしました……

今のはなんだ?

えっと……私にもわからなくて……なんか、できちゃったと言いますか……

化転融合臨説外法――

なんだ、それは?

雑に説明するとなにかをエネルギーに変える魔術のことね。ダグラスの場合は瘴気をソウルに似たエネルギーに変換してる。

レイチェルの場合は熱エネルギーに変換してるのかもしれない。

そこんところ、どうなのよ?アンタなら、なにか知ってるんじゃないの?

ふむ……

…………

…………(Zzz)

おい、コテツ。寝るな、コテツ。

むっきぃぃ!起きなさいよ!今、大事な話してんのよ!!

……私のヨーゼフとしての記憶にも化転融合臨説外法の情報はある。

だが、成功例はミーチャとダグラスだけだ。

他のアプローチ方法もあったが、少なくともヨーゼフは成功していない。

ふーん、あ、そう。あいつも知らないんなら、鍵は……

悪党のルエルがなにかしてたってことかしら?

そう考えるのが妥当だろう。あの女はあの女で独自の計画を進めていた。

その中に化転融合臨説外法に類するものがあったかもしれん。

いろいろ整理することが山積みね……

今は島民の治療が最優先だ。グレイヴ、レイチェルを手伝ってくれ。

了解した。

カティアはダグラスの容体を診てくれ。

最初からそのためにいるからね。こんな荒事に巻き込まれるなんて契約外よ。

お前はどうするのだ?

情報を集める。



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story13



なにか用か?

不干渉を通せる状況じゃない。知ってることを話せ。

…………

ルエルとレイチェルは何者だ?あの二人は瘴気への耐性があった。明らかに異常だ。

……話すことはなにもない。


話していいわよ。正体知るまで諦める気ないみたいだし。

いろいろ知りたいんですよねェ?たしか、アナタは白眼の狗の関係者でしたっけ?

ルエル・サクラリッジ……か?

ってわけでもないのよ。そのルエル・サクラリッジは知ってるけどさ。

クローンか?

そんなこと言ってたっけ?他に覚えてることと言ったら、同じ顔したクズにひたすら痛めつけられたことだけ。

ボロボロになるまで傷つけられて壊されて、思い出しただけでも頭がおかしくなりそう……

…………

お前のなかにルエル・サクラリッジはいるのか?

私は私だっ!ルエル・ウォーロックだ!!フウ・ウォーロックの娘だ!!

どうして俺のことを知っていた?

あいつの記憶と人格を転写されたからよ!でも、冗談じゃない!あんなクズになってたまるか!!

記憶と人格を有していながらあのルエルとは違うと証明できるのか?

証明なんてできない。でも、あんな奴と同じものになるくらいなら死んだほうがマシだ!

…………

お前は孤児院で保護される前、どこにいた?

変な研究所……街の連中は<忘れられたモノたちの家>なんて呼んでるわね。

レイチェルもそこにいたのか?

……知らない。

レイチェルは森でみつけた。ルエルと同じだ。

その<忘れられたモノたちの家>はどこにあるんだ?

知ったところで無駄だ。行けはしない。

探せば見つからず、探さなければ見つかる。そういう場所だ。

魔術かルーンによる結界か……

それで、お前さんはルエルとレイチェルをどうするつもりだ?

……敵対するつもりはない。

どうだか?私を信じてないって顔してるわよ?

お互いにな……



ダグラスの具合は?

昏睡状態。かなり危険ね。起きたところで激痛にうめくだけだから、寝てるほうがいいわ。

カティアさん、こちらの人の瘴気は消せました。

これでひととおり治療は終わったわね。

アンタは大丈夫なの?

は、はい。とりあえずは、まだ我慢できます。

仮説でしかないけど、アンタのそれ、仮説でしかないけど、アンタのそれ、我慢しないほうがいいわ。外で適当に解放してきなさい。

はい、わかりました。

あの力、なんなんだ?

細かくはわからないけど、ダグラスと似たような力ね。ただ、ダグラスより不安定よ。

ぐぅ……

あら、気づいたみたいね。気分はどう?

こ、ここは……?

ここは孤児院よ。

どうして?孤児院に?ま、まさか、俺を殺す気か!?

逆よ、逆。アンタらが私たちを殺そうとしたんでしょ?

……覚えてない。

最後に覚えてることは?

……月……紫の月だ。それが出たのを覚えてる。

ダグラスも同じようなこと言ってたわね……紫の月ってなんなの?

わからない……突然、見えるようになったんだ……

私たちはアンタを傷つける気、ないから。

しばらく休んでなさいな。

ああ……


(紫の月。ダグラスにも見えてたみたいね。私たちには見えなかったけど……

ダグラスと私たちの決定的な違い……瘴気を吸えるレイチェルも紫の月は見てないから、なにか別の……)

アレが一番あやしいわね……

なにかわかったのか?

簡単な仮説よ、仮説。あとは証明するだけね。



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story14 煩悩



ふぅ……さっぱりした……

ちょっとレイチェル、聞きたいことがあるんだけど?

なんですか?

孤児院の子供達のなかに紫の月を見る子はいる?

いえ、いません。

アンタたち、フソーの実って食べたことある?青い木の実なんだけど。

食べたことありません。先生がやめておけって……

フソーの実?

この島に来た時、島民から勧められたでしょ?あの青い実よ。

ダグラスのケガの治療に使ったやつだな。

私たちとダグラスの行動で唯一違うのは、あのフソーの実よ。

島民も食べてるとか言ってたし、みんなおかしくなるのは、あの実のせいかもしれない。

その実を食べると、瘴気を撒き散らす体になるとでもいうのか?

ヒストリアでルエルがどんな姿になってたか覚えてる?

大きな花……

これだけ要因があるなら無関係って考えるほうが無理な話ね。

ルエルちゃんと関係あるということですか?

……少なからずあると思うわ。

今は情報を集めるしかないわね。アンタ、フソーの実がどこになってるか知ってる?

いえ、でも、私は……市場で働いてる人なら……



――フソーの実か。たしかに、ありえるな。

それで、どこになっているんだ?

市場で売ってる商人は、ここにいなかったわ。話を聞くには街に出るしかないわね。

カティアはダグラスの看護を頼む。グレイヴは俺と街に来てくれ。

了解した。

俺も行こう。連中がおかしくなった元を断てるかもしれんしな。

わ、私もご一緒していいですか?

はあ!?なに考えてるの!?

ご、ごめんなさい。でも、街の人も倒れてるかもしれないし、治せるの私だけだから。

このバカ……

……わかった。私も行く。それならあんたたちが裏切っても三対二でこっちが有利でしょ?

こちらはかまわない。好きにしろ。


…………

……


ルエルちゃん、準備できたし、行こうよ。

……あんた、無理してるんじゃないの?

瘴気は人間にとって毒よ。でなきゃ、あのダグラスって奴も倒れたりしない。

ぜんぜん平気だよ。

ありえない!あんたと同じ奴らは、みんな死んだ!

ルエルちゃん、なんの話してるの?もしかして、私の過去……

……知らない。ただ、本で読んだのよ。あんたみたいなやつのこと……

…………

平気なはずないのよ。あんたは、いつもバカみたいに笑ってごまかす。ムカつくのよ、そういうの。

……ごめん。

その力を使うのは最小限にとどめなさい。

それは約束できないよ。

だって、困ってる人がいるなら助けるのが普通だと思うから。

それであんたが死んだら意味がない!

すぐに死んじゃうわけじゃないよ。それに、私が無理したらたくさんの人が助かるんだよ?

だったら、そっちのほうがいいと思うんだ。

他の奴らなんてどうだっていい!どいつもこいつもくたばればいい!でも!!

あんたたちは!この孤児院の連中だけは別!!だから、無理するなって言ってんの!!

……心配させちゃって、ごめんね、ルエルちゃん。

謝るな、バカ……

ごめん……それと、ルエルちゃん、私のこと、みんなには黙っててほしいんだ。

街の人を助けるまででいいから。お願い。

……どうして、そんなにバカなのよ。

バカでごめんね、ルエルちゃん……


街へ

行かなきゃ……

…………





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story再発




街にも瘴気が……

私がどうにかしますね!

ふぅ……

<辺りに漂っていた瘴気が消えた。>

瘴気に気をつけつつ島民を保護する。生存者を広場に集めるぞ。


…………

……


島民の搬送と治療は順調だ。

フソーの実について話せる人間はいたか?

市場で働く商人に話を聞いた。


「フソーの実をどこで手に入れてるか?秘密なんだがな……

「今回の事件と関わりがある。秘密にされても困る。

「金なら払おう。他の者に教える気もない。

「……忘れられたモノたちの家だ。



忘れられたモノたちの家か……

…………

それであんたたちはどうするの?

調査しに行く。

私も一緒に行っていいですか?

ダメよ!

ルエルちゃん……

絶対ダメ!あんな場所にあんたが戻る必要ない!

……やっぱり、なにか知ってるんだね。

……知らないっ!知らないけど!!

判断は任せる。ついてくるなら好きにしろ。

行きます。

こいつが行くのなら俺も行こう。ルエル、お前は……

二度と行きたくない場所よ。でも、このバカ、行くんでしょ?だったら、私も行くしかないじゃない。

その代わり、レイチェルに力を使わせるのはやめて。こいつ、無理して瘴気を処理してるから。

…………

わかった。



進撃

無理しないよ。

忘れられたモノたちの家……




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story16



ねぇ、ねぇ、このお兄ちゃん、起きないよ?

疲れてんのよ。うるさくするんじゃないわよ。

(起きないわね。鎮痛剤は切れてるから、痛みで目を覚ましてもおかしくないのに……)

アンタが死んだらヨシュアやミレイユが悲しむわ。だから、さっさと起きなさいよ、ダグラス……


…………

……


「――かぁッ!!」

<ルエルの放つ療気を吸って、ダグラスは強力な魔刃を放つ。

ルエルはそれを軽やかにかわし、ニヤリと悪らつに微笑んだ――>

「ふむ……やはり。アナタ、瘴気を吸わねば生きてはいけない身体のようですねェ。」

「……ミーチャ……、そんな――」

「化転融合臨説外法とは……いやはや、禁忌の術じゃないですか。おかわいそうに……♪

せめて、存分にごちそうして差し上げましょう!」

<ルエルの全身から、膨大な瘴気が放たれ――ダグラスの左目に吸い込まれていく……!>

「ぐ――ああああああああーっ!ああっ……ああーっ……!ああああああああああーッ!!」

「ギャハハハハハハ!いい、いい、美しいですよ、そのお顔!

人はやはり、散りざまこそ美しい!もっといいカオ、見せてください……♪

ギャハハハハハハハハ!」


 これは――オレの記憶……?


<クロエをハリツケにしていた闇も消え――ダグラスは、あわててクロエに駆け寄り、抱き止める。>

「姉ちゃんッ!!」

「ミーチャ……あなた――」

「黙ってて……ごめん。ホント、オレ……こんな――こんなになっちまって……でも――」

「虹――」

「え……」

「あなたの見せてくれた虹……とても、きれいだったわ――ミーチャ……」

<ダグラスの腕のなかで微笑んで――クロエは、青年の頬を、そっとやわらかくなでる。>

「昔から、何も変わらない。あなたはいつだって、きれいなものを見せてくれる……何よりも、きれいな光を……」

「姉ちゃん……

姉ちゃん――オレ……オレさ……!!」


 ああ、そうだな。そんなこともあったよな……


「アハハハハハハァ!よかったなあミーチャ!おにいちゃん喜んでるぞ!」

「おい、てめえ……!なぜそいつをミーチャと呼ぶ!

ミーチャはオレだ!!」


 今さら、こんなもん見せて、どうするつもりだ?


「ミーチャ――

さよならだ。」

「ああぁぁぁあぁぁぁぁぁぁああ!!もぉぉおぉおおおぉおぉぉぉお!!なんなんだよぉぉおぉおおおお!!!」

「…………」

<ダグラスが無言で振るった最後の一撃を受け、ミーチャは動きを止めた。>


「……ミーチャ……」

「すまねえ……姉ちゃん……これしか……」

「……いいえ。あの子に代わって、礼を言うわ、ダグラス。

――眠らせてくれて、ありがとう――」


「だから、なんだ!なにが言いたいんだ!?なにを見せたいんだ!?

言われなくてもわかってる!オレはミーチャのコピーだ。でも、オレはオレだ!」

「でも、あなたはミーチャを殺した。」

「!」

「私にとって大切な存在をあなたは殺した。」

「そうするしかなかった!そんなの、姉ちゃんだってわかってんだろ!」

「ええ、そうね。だから、あなたはミーチャの代わり。

しかたがないわよね?だって、あなたがミーチャを殺したんだから。」

「やめろ。」

「だから、あなたは私を避ける。姉のように慕っているのに怖くて近づけない。」

「黙れっ!」

「でも、それってひどい話よね?私のためにあなたは手を汚した。殺したくもないミーチャを殺した。

つらいわよね?苦しいわよね?自分で自分を許せないのは。愛する人から罰を受けるのは。」

「……ああ、そうだな。否定はできねぇよ。」

「だから、あなたは自分の死さえ受け入れている。死にたくない?嘘よ、嘘。

本当に死にたくなければ、こんなところにいないわ。」

「…………」

「生きたいと心の底から思うほど執着するなにかがあるの?仮初めの恋慕の情じゃあ、もう届せないでしょう?

人を傷つけて殺して、そこまでして生きる価値、あなたにあるの?」

「……さあね、そんなもん、オレにはわからねえよ。ただ、姉ちゃんに嫌われたくはなかったな。

この気持ちが借り物のもんでもな……」

「つらいでしょ?苦しいでしょ?なら、すべて忘れてしまえばいいの。」


 ああ……消えていく。

 痛みが消えていく。







 苦しみは消えた?


 ああ、楽になった……


 なら、どんどん消していきましょう。空っぽになりましょう。どうせ、あなたには最初からなにもないのだから。


 ああ、そうだな……

 オレにはなんもねぇ……なんもねぇじゃねぇかよ……


 おやすみなさい、ダグラス――




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