花嫁の輿
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
10
入手方法
ガチャ
物語
朝早くから、張家は賑やかだった。理由はただ一つ。張家の長女の結婚式だ。その賑やかさに反し、花嫁である張依依は、今は家で一番の暇人と化していた。朝から着飾り、今は置物のように部屋に座っている。彼女の視線は、花嫁が頭にかぶる赤い絹蓋に遮られ、その分、耳は利くようになっていた。外から僅かに笑い声が漏れ聞こえてきた。おそらく迎え人だろうと、もっと耳を澄ませようとしたところで、扉が小さく開けられた。かすかな足音に、誰かが近づいてきたことに気づいた張依依は、手を伸ばしてその人を掴んだ。「ふふ、姉さん離して、私よ!」妹は笑いながら、いつものように彼女の懐に潜り込んだ。張依依は彼女の背中を軽く叩きながら、「おふざけもほどほどにね、母さんにばれたら、追い出されちゃうわよ。」と甘やかすように言った。いつもなら言い返すところ、妹はそうせず、むしろ姉をもっと抱き締めた。「姉さん、本当に行っちゃうの?花嫁の輿がもう来てる、真っ赤な立派な輿よ。」\張依依はその言葉に胸をしめつけられ、しばらく返事も出来なかった。「行っちゃ嫌!面白い物語を、もっともっと聞かせてよ。母さんに怒られたら、いつもみたいにあたしを庇ってよ!ううう……」張依依は泣くことも笑うこともできず、「もう二、三日したら帰ってくるから、大丈夫よ。」と妹を慰めた。それを聞いた妹はやっと彼女の懐から顔を上げて、真剣な顔で「本当に?」と尋ねた。張依依はうなずき、胸の中の妹を強く抱きしめながら答えた。「姉さんに会いたくなったら、手紙を書くのよ。すぐに迎えにくるから。」「分かった!姉さんに手紙を書けるように、ちゃんと勉強する!」銅鑼や太鼓の音が突然鳴り始め、部屋での姉妹の内緒話は、音に消えた。