魚花灯
概要
レア度 | 画像 | マス |
---|---|---|
効果
1010
入手方法
ガチャ
物語
元宵節の日、香ちゃんは兄の肩に乗り、人波の中を歩いた。祠堂の行列が鉦と太鼓の音とともに村を回り始め、大小の魚提灯が兄妹の横を通り過ぎていった。香ちゃんは兄の背中で嬉しそうに手を叩きながら歓声を上げた。キラキラと輝く彼女の目の中には、たくさんの光る魚たちが泳いでいる。大きな魚の後に、小魚の群れがつづき、子供たちが小さな魚提灯を手にはしゃいでいるのだ。「いいなぁ、魚にもお母ちゃんがいるのね。」大きな魚提灯が香ちゃんの前で止まったかと思うと、その後ろから小さな魚提灯が現れて、彼女の前までやってきた。「受け取ってな、香ちゃん。魚のお母さんが生んだ小魚ちゃんだよ!」ぽかんとしたまま小さな魚提灯を受け取った香ちゃんは、手に持った魚提灯を見つめ、緊張して黙り込んだ。軼くんは背中に乗っている妹を軽く揺らし、「さあ!小魚ちゃんたちを連れて母さんに会いに行くぞ!」と声を上げて走り出した。香ちゃんも彼の背中で「行く!お母ちゃんに会いに行く!」と元気な声で答えた。小さな魚提灯は、小魚の群れの中にまぎれ込み、群れの動きに合わせて泳いでいった。そして最後に、すべての魚提灯は村の裏山に集まり、頭を西山降の火鏡石に向けて、一斉に尾を振り始めた。香ちゃんは笑いながら、手に持った小魚の提灯を一生懸命振った。幾千の魚が尾を振ると、まるで魚群が命を宿ったかのように見えた。その光景は、何億年も昔、暗闇の深海で光り輝く魚たちのようだった。大きな魚の明るさに比べ、小さな魚のぽつぽつと放つ光は、蛍火のようだった。明かりの下には汗まみれの少年の姿があったが、彼の目には、壮観な千の魚の姿など映っていなかった。群衆が空けてくれた小さな空間で顔を上げると、一生懸命尾を振って光を放つ小さな魚一匹だけが見えた。人混みに呑まれてしまうことは分かっていたが、それでも彼は声を張り上げた。「前に向かって泳いで行け、香ちゃん!」