春知らせの琴
画像
ステータス
材料 | 3500230 20 |
繁栄度・環境 | 30 |
紹介
泉は揚州の名高い琴師で、毎日多くの人が遠方からはるばる彼の琴を聴きに訪れる。
人々は彼の琴の音を聞くと、蓮の葉の間で泳ぐ魚、青空や落ち葉に覆われた大地、千山を飛び越える鳥たちが目に見えるようだった。
しかし、紅杏が芽生える春の景色だけはなかった。
泉は春の曲を弾かない。春は泉にとって言語に絶するものだった。
彼は春に生まれ、春に両親と離れ離れになった。春に新しい家に引っ越し、また春に流浪の独り身になり、半生をかけ、ついに揚州に辿り着いた。
それから、泉は二度と春に出かけることなく、家の中に春を入れることを拒んだ。人々は泉をどう慰めていいかわからず、新しい木を植え、芝生を張り、畳石師を呼び、庭を整えた。みんなは当番で世話をして、琴屋は一年中春のようであった。
その日、泉はいつものように琴の前に座っていた。少し暑くなったのか、琴童がそっと暖簾を持ち上げると、春の風が琴屋の中を吹き抜け、泉の頬を撫でた。眼窩の闇と虚しさが一掃され、揚州の色鮮やかに彩られた。
「春だな。」
泉は微笑み、指を弦の上で構え直すと、緩やかに琴を奏で始めた。音色には、ぐんぐん伸びる青草や空を飛び回る鶯、春の川で踊る魚が見えた。 画眉鳥まで鳴くのをやめ、枝にとまり、泉の奏でる春に耳を傾けた。