【リバリバ】共犯関係ブレイクダンスの性能

「ぷみぃ、これ、どうしたらいいんだろ？」

叢裂はちびりすの様子を窺った。
そんなはずではなかったという青ざめた様子のちびりすが「お願い一緒にいて。逃げないで」と強い眼で訴えている。

そもそもなんでこんなことになったんだっけ──

そう、たしかあれは数分前。
GARDENランヴィリズマに新しくオープンした遊戯施設、つまりはカジノの華やかな一角。
その煌びやかな空間の片隅で、ちびりすは息を吸い込み、大きく叫んだ。

「叢裂ちゃん！一緒に働きませんか！」

いやいや、そんな大声で言うことじゃない。
まず、落ち着いて話を聞こうよ、と誰もが思うだろうが、当の叢裂ちゃんはというと、目をぱちぱちさせながら「えっ、いいよ？」と首を縦に振っていた。

疑わない。たとえ騙されたとて防衛策を講じない。
それが千紫の JOKER にして我らがアイドル叢裂ちゃんなのだ。

「え！いいんですか！やったぁ！」

「うん、ちびりすちゃんのお願いだし」

「ありがとうございますぅーー！1人で行くの心細かったのでぇーー！」

ちびりすは涙ながらに叢裂の手を握ってぶんぶん振る。

「それで、叢裂は何をする人になるの？」

「えっと、カジノに居る人に飲み物を出したり、お掃除？をしたり
　色々とやるみたいです！」

時給がすっごくいいんですよ！と大興奮のちびりすは、叢裂の手を引いてカジノのスタッフルームへ突撃する。
そう、今日ここから2人のバニーガールの伝説がはじまる──…！

「あのー、アルバイトの面接に来たんですけどー！」

勢いよく開かれる扉。

どかっ！

なにかにぶつかる嫌な音。

ばりーん！

明らかに高級そうなお酒の瓶が砕け散る。

「ぷみ？」

「え？」

──伝説ははじまらなかった。
こんな高額そうなお酒の弁償となればちびりすの借金返済はさらに火の車になってしまう。
絶望で愕然とするちびりす……をよそ目に、叢裂は別のことを考えていた。

「もしかして、叢裂たち騙されたぁ？」

「ど、どういうことです？」

「んー、このお酒、次に扉を開けた人が割るようになってたから
誰かに仕組まれたのかなって」

「えっ！じゃあこれ、冤罪…！？」

やったのはちびりすなので冤罪ではない。
だが、明らかに事件性のある部屋。何者かが仕込んだ罠。

「とりあえず、割れたお酒は隠しちゃいましょう！
　そして、ちびりすたちだけで犯人を見つけるんですっ！」

そうすれば、冤罪だったことにできるかもしれない。
ちびりすはだんだんラビリスに似て豪胆になってきていたのだ。

「ちびりすちゃんが言うなら、叢裂は手伝うよ！」

さぁ、はたして2人の新人バニーたちは無事に真犯人を見つけて罪をなすりつけることができるのだろうか！
そして、割ったお酒を最後まで隠し通せるのか！

2匹の共犯バニーの伝説は、やっぱりはじまるのかもしれない。

──『共犯関係ブレイクダンス』より抜粋