【黒ウィズ】アルティメット七夕ガールズ Story
2016/07/07
story 旅のまにまに
笹もらってきたよー。
リルムが笹――という大きな枝を引きずって戻ってきた。
長い海の旅を終えて戻ってきた君たちは、アリエッタに連れられてこの街にやってきた。
イーニア先生日く、この街には、古の時代に伝わってきた昔話があるらしい。
願いを込めた紙切れを笹にかけると、その願いが叶うとかなんとか。
ぼんやりした情報だね、と君は言う。
私もよく知らないから!
知らないのならしょうがない。誰にだってそういうことはある。
うむ、しかし文献が残されていないのだ。いつどこから伝わってきたのか、それすらも曖昧なのだ。
ただ、ここの者たちは、この時期に休みをとり、街をあげてお祭り騒ぎをするそうだ。
それって遊びたいだけなんじゃ……と言ってみる。
まあ、そうだな。黒猫の魔道士、お前も羽を伸ばすといい。
そういって紙切れを受け取る。――どうやら短冊というらしい。
イーニアは何を書くにゃ?
ふむ……。
背が大きくなりたいとかかにゃ?
別に私はそんなことは願わない。だいたいなんだ、背が大きくなりたいって。子どもか。
イーニア先生は、昔、身長が高かったの?君は疑問に思い、そう問いかけた。
うむ、そうだな。だいたいアリエッタぐらいはあったな。
誤差……。
まさかの誤差!
君は驚きを隠せない。
イケイケだった時代だな。今や懐かしい。
アリエッタぐらいの大きさなら、今とそんなに変わらないにゃ!
む?そんなことはないぞ。200、300年ほど前の私は、連中にも劣らない魔法を使っていたからな。
イーニア先生が、笹を立てかけるアリエッタたちを見ながら、寂しそうに呟いた。
ついてこい、黒猫の魔道士。いいところに連れて行ってやる。
***
イーニア先生に連れてこられた場所は、星がよく見え、人もそんなにいないところだった。
星がいくつあるか、お前は知っているか?
わからない、と君は答える。数えようと思ったことすらない。
私にもわからん。
問いかけてきたのはイーニア先生なのに、どこか素っ気なく言われてしまった。
でもまあ、魔道士協会所属の魔道士よりは、きっと多いだろうな。
それは見ればわかるにゃ。あんなのより協会の人数が多かったら、とてつもなく恐ろしいにゃ。
私はな、魔法という神秘を、より多くの人に理解してもらい、さらに世界を発展させていきたいのだ。
誰でも使えるからといって、学ぶこと、進むことを怠れば、すぐに衰退してしまうだろう。
魔道士協会所属の魔道士を増やし、多くの人々にとって役立てるよう魔法を使い、学び、成長させていきたいのだ。
考えることは考えてるんだにゃ~。
私は魔道士協会理事だからな。最近、魔道士協会が古いといって、所属したがらない魔道士も多いのだ。
若いものに向けたキャッチー、かつトレンディな広告を作れればいいのだが。
それを書くんだ?と君は訊く。
まあ、そうだな。――あ、そういえばお前。
君は、イーニア先生に腕を掴まれる。
ふふ、お前、素知らぬ顔をしていたが、魔道士協会に名前がなかったぞ?
協会所属になれば、魔道新聞がタダで読める。加えてお前ほど優秀な魔道士なら、大魔道士にだってなれるはずだ。
大魔道士はいいぞ。まず多額の活動資金が与えられる。
望むのであれば協会所属の魔道士をふたりまで、自身につけることができる。どうだ?魅力的だろう?
君は曖昧に微笑んで、考えておくよ、と言った。
ふむ……やはりキャッチーさが足りないのか。歌って踊れる魔道士……とか。いや、そんなの誰が望むというのだ……。
難しいな……魔道は奥が深い……。
イーニア先生が肩を落としながら歩き出す。
なんだか申し訳ない気持ちになったけれど、今回ばかりは諦めてもらおう……。
キミもついていくにゃ。
君はもらった短冊に願いを書くべく、イーニア先生の後を追った。