【黒ウィズ】フェアリーコード2 Story
フェアリーコード2 Story0
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story
……ぜんぜんクエス=アリアスに帰れないにゃ。
そうだね、と君はバスの中でうなずいた。
ちょっと前。君は馬車に乗っていたはずなのに、気がつくと、異界の「バス」という乗り物の中にいた。
だから、またバスに乗っていれば、今度はクエス=アリアスに戻れるのではと思ったが……。
ぜんぜんそんなことはなかった。
窓の外の風景や中にいる乗客が移り変わるだけで、バスがバスであるという現実は不変だった。
そのうち、運転手まで交代した。これで、君が乗り始めてから変わらないものは、いよいよ、このバスだけになってしまった。
君は、ため息を吐いて、ペットボトルのお茶を飲んだ。最後のー口だった。
最初、この使い捨て水筒の軽さには感動さえ覚えたものだが、今はその軽さが、君をとても頼りない気分にさせた。
いったん降りるにゃ。そのへんの自販機でお茶でも買うにゃ。
ウィズが言った。いったん降りるということは、つまり、バスからクエス=アリアスに戻るのを諦めるということでもあった。
仕方ない。また別の方法を探した方がいいだろう。
ここがどこかは知らないが、エニグマデバイスがあれば、エニグマチェリーのところへ帰れるはずだ。
そう思い、バスを降りると。
あれ、魔法使いさんとウィズさん?
なに、あなたたち、また来たの?
別の知り合いに出くわした。
久しぶり、とあいさつしながら、君は納得する。なんとなく見覚えのある異界だなと思っていたが、彼女たちのいる異界だったのか、と。
でも、キミ、普通に魔法を使えていたにゃ。フェアリーコードのある異界だと、魔法が使えなかったはずにゃ。
確かに。どういうことなんだろう、と思いつつ、君は道端の自販機に寄って、お茶のボタンを押した。
金貨ポットのカードを押しつける。コンビニも、バスも、自販機も、これひとつで商品を買えるのだ。
が、自販機は反応しなかった。
カードを押しつける位置が悪いのかと思ったが、位置を変えても反応してくれない。
まさか――と、嫌な予感に襲われた君は、エニグマデバイスで現在地を確認する。
画面には、『どこ?』と表示されていた。
こっちが聞きたいよ、と君は思った。
どうやら、バスに乗っているうちに、異界を移動することはできたみたいにゃ。
ただし、よく似た別の異界にだけどにゃ。
ややこしい……と、君はうめいた。
あらすじ
ある日、タツマは謎めいた少年と遭遇する。
暴走妖精を一撃で倒したその少年は、ぼんやりとしていて、自分の意志を持っていないかのようだった。
一方、悪魔ラファールが東京に現れ、暗躍を始める。
新たな戦いが巻き起こるなか、タツマは龍としての記憶を取り戻していく――