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【黒ウィズ】大魔道杯 in アルティメットマナーガールズ Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

目次


Story1 おぼえてるよね?

Story2 マドーワーク音頭

Story3 「強さ」の基準



登場人物




story1 おぼえてるよね?



 皆さんは、この少女のことを覚えているだろうか!?

〝あの年の〟グリモワールグランプリの参加者のひとりである。

〝あの年の〟と言うだけで通じる伝説的な世代。ある者は〈新星の世代〉と讃え、ある者は〈妖星の世代〉と呪う究極の少女たち。

彼女たちは良くも悪くも歴史に名を刻み、その名を知らぬ者とていない有名人ばかりだ。

にもかかわらず、誰こいつ!?

魔道クオリティペーパーたる本紙「マ・ドゥ」が徹底調査しましたが、彼女に実績はなく、何の活躍も冒険もしていません!

だと言うのに、師匠のメリィ・ミツボシが筆頭理事に就任した際に、弟子の彼女も協会理事の座に!

こんなコネ人事が許されていいのでしょうか、皆さん!

こんな〝魔道士その1〟みたいなやつが魔道士協会の理事なんて!

こんな脇役みたいなのが!


あたしは脇役じゃなああああああい!

 レプスは魔道タブロイド紙「マ・ドゥ」を真っ二つに引き裂いた。

「何をしているの、レプス!今日は大事な聖なる政治資金パーティーですよ。早く支度をしなさい!

 ミツボシはいつでも誰にも敬語だが、弟子のレプスにだけは割と当たりがキツかった。良く言えば遠慮がなく、悪く言えば容赦がない。

「はっ、はい!師匠!

「もう、返事だけは一人前なんだから。変なことして私やイーニア先生に恥をかかせないでちょうだいよ。

「任せてください!あたしだって魔道士協会の理事なんですから!



(そうだ……あたしは偉くなったんだ!こんな立派なパーティーにだって招待されるようになったんだから!!)

 レプスは自分を元気づけるようにグラスを支える脚の部分――ステムを握り、魔道ノンアルコール高級ワインを飲み干した。

zふっ。なんだ、あのグラスの持ち方は。格式の高いパーティーと聞いたが、とんだ田舎者が混じっているようだな。

「えっ……グラスに正しい持ち方なんてあるの?

 ほんの些細なマナー違反を口実に、〝レプス新理事〟に対する辛辣な批評がパーティー会場に溢れかえる。

「所詮は成り上がり者。田舎育ちのサルか」「お友だち理事会のコネ人事だからなァ……」「筆頭理事の腰巾着が」「というか誰あいつ?」

「うぅ……。

mところでイーニア先生、ワイングラスの持ち方つてステムを握る持ち方でもいいんですよね?

Iうむ、それでもいいはずだぞ。グラスの本体――ボウルを持ってもよいがな。

zさすがミツボシ筆頭理事にイーニア名誉理事!お二方がおっしゃるとおり、本来は脚を持つ作法が正しいんですよ!

 ――諸説ある。ステム派の国々とボウル派の国々が不仲で、マナーではなく力関係の問題になっているのだ。

いずれにせよ、ミツボシがさりげなくパーティー会場の話題を変えたことで、レプスヘの批判は終息していった。

「師匠……!



「師匠!それに師匠の師匠!さっきはありがとうございます!おかげで恥をかかずにすみま――

m――そうですか。例の一件の残党が守旧派と合流して、現行の統治機構に反抗を……。

I畢竟、その行動は非対称な戦術に頼ることになるだろう。身辺には注意することだな。

m早急に対策を取る必要がありますね。魔道士評議会の機会主義者を警戒しつつ、魔道士機構の穏健派と連携を取りながら――

Lあの、ししょ……。

 ミツボシはイーニアと難しい政治の話をしながら、レプスには目もくれず足早に通り過ぎていった。

L(わざと無視されたんじゃない……。師匠は忙しい人だもん。魔道士協会の、筆頭理事なんだから。

あたしに話しかけなかったのは……あたしが師匠の助けになれないからだ。あたしは弱いし、政治の話もわかんない。

師匠はあたしを助けてくれるのに。さっきも助けてくれたばかりなのに。あたしは師匠を助けられない……!)

Lこのままじゃダメだ……!師匠にいつまでも甘えてちゃダメだ!!

せめて、理事として恥ずかしくないような品格を身に着けないといつまでたっても〝魔道士その1〟だ……!



……マナーはいりませんかー?……マナーはいりませんかー?

 寒さ厳しい冬の街角で、マナー売りの少女がマナーを売っていた。――見た目はゴツいヒヨコだが。

例の世界的陰謀事件の解決後、職業訓練魔境マドーワークは閉鎖され、鬼教官は職を失った。

彼女に残されたのは、〝あの〟マドーワークの元職員という悪評と魔道パワードスーツの着ぐるみだけだった。

今では魔道ボイスチェンジャーを切らないと、ろくに作動しないほどガタがきている。

彼女はため息をつきつつ、魔道パワードスーツを脱いだ。

O……いるわけねえか。マドーワークが潰れた今、社会性なんざザリガニの餌にもなりゃしねえ。

……魔道ターキー、食いてえなあ。

あ゛た゛し゛に゛マ゛ナー゛を゛お゛し゛え゛て゛く゛た゛さ゛い゛!!

Oえっ、なに?!だれ!?

Lつ゛よ゛く゛な゛り゛た゛い゛ん゛て゛す!
ま゛も゛ら゛れ゛る゛た゛け゛て゛は゛、イ゛ヤ゛な゛ん゛て゛す!

Oマナーの話だよな!?

 聖なるなんやらの日がくれた、奇跡のような巡り会いだった。



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story2 マドーワーク音頭



Oまずはドレスコードから叩き込むぞオラァ!

Lはい、教官!

 マナーを知らない〝成り上がりもの〟と職を失ったマナーの鬼、ふたりの需要と供給は一致した。

Oてめえは魔道士だからロング・イブニング・ドレスなんざいらねえ!!だがしかし!てめえの服の生地は何だ!?

Lえへへ、実は師匠と一緒に討伐したドラゴンの革で仕立ててあるんです。そんじょそこらの魔法なら傷ひとっつきません!

Oてめえの脳みそはシルクみてえに滑らかか!?ドレスの生地はシルク、サテン、ベルベット、ブロケードに限られるんだよ、たわけ!!

今すぐ別の生地で仕立て直してもらってこい!

Lは、はい!教官!


O次は肉の切り方だオラァ!

違う違う!ナイフに力を込めるんじゃねえ!大きく動かして、引き切るんだよ!

Lで、でも、これは練習用の魔道油揚げだから切れるけど、本物のお肉はもっと硬いですよ!

Oお前(協会理事)が出るようなパーティーに硬い肉が出るわけねえだろ!お口に入れた瞬間ふわっととろけるようなのしか出ねえ!


Oスープはすするな!口に注ぐように飲め!本番じゃスプーンは銀製だ!普段遣いのもんとは重さも大きさも違うから気をつけやがれ!

Lはい、教官!


Oサラダでもナイフを使うんだよ!フォークだけだとトマトが吹っ飛ぶだろうが!ナイフで押さえたり、上げたり、のけたりしろ!

Lはい、教官!


 レプスはスープの代わりに水を飲み、肉の代わりに魔道油揚げを食べ、魔道スーパーの半額サラダを口に入れ、連日マナー特訓に励む。

ある日の練習の終わりに、鬼教官はレプスを食事に誘った。


O毎日魔道油揚げじゃきついだろ。魔道ラーメン食べに行こうぜ。オレがおごってやるよ。給料も入ったしな!

Lいや、その給料って、あたしが払った講師料ですよね。おごってもらうのはなんだか悪いです。

Oこういうのは年功序列なんだよ。いいから黙っておごられとけ!こう見えてオレは前の職場じゃサバサバ系で通ってたんだ。

 この人、サバサバ系って言うよりオラオラ系だなあ――とレプスは思った。

L教官って、サバサバ系って言うよりオラオラ系ですよね。

 レプスは政治が苦手だった。

Oははは!前の職場でもよく言われたよ!ほらほら、さっさと飯にするぞ、おらおら~。


Wへいらっしゃい!――おお、ジーナさんじゃないっすか!

Lジーナさん?

Oオレの本名だよ。マドーワークに勤めていた頃はこんな感じだったけどな。

オレの名前は鬼教官。それ以外の名前は必要ねえ。それが組織に属するつてことだわかったかコラァ!

W魔道ボイスチェンジャーまだ持ってたんですね。その声は自分も好きでしたよ。張りと渋みと底力があってねえ。

L店主さんもマドーワークにいたんですか?

Wええ、教官としてね。マドーワークが閉鎖された時は途方に暮れましたよ。

けどジーナさんが全員の転職先を探してくれて、俺なんか店を出す手伝いまでしてもらって……。ジーナさんには足を向けて寝られないっすよ。

Oおまえらの転職先を世話してる間に、オレの魔道失業保険が切れちまってなレプスに拾われてなきゃ危なかったぜ!

Wジーナさんは変わらないっすね……。うちの店でよければ、いくらでもおごりますよ。ジーナさんなら、いつでもタダです!

O金は仕事と責任の対価だ。ちゃんと受け取れ。……あ、そのかわり、オマケでチャーシューつけてくれよな!

 豪快に笑いながら元部下の店主と話をするジーナを見て、レプスは思った。――なんだ、この聖人(いいひと)、と。

Lジーナさん、いい人ですね。

O恥ずかしいこと言うんじゃねえよ。下は上の言うことに黙って従う。そのかわり上は下の面倒を見る。当たり前だろ?

L……そ、そうですよね……。

 かの世界的陰謀事件は、ミツボシが関係者総勢83名を捕らえて解決した。……レプスもほんのちょっぴりだけ協力した。

陰謀に加担していたマドーワーク施設長、サネー・ウェストも逮捕され、マドーワークも閉鎖された。

マドーワークの一般職員は何も知らなかった。彼らは上の命令で自分の仕事をしただけだ。それなのに職を失い、路頭に迷い……。

L(……あたしは「上」の立場になった。「下」の面倒を見なくちゃいけないんだ。それなのに……あたし、自分のことばっかだ)

 魔道ラーメンは美味しかったが、レプスには少し塩っぱかった。

そんな迷いをかかえながら、数日後……。


Oよーし、仕上がってきたじゃねえか!順調だ。次のパーティーは年明けの新年会って話だったな。それまでには一人前のレディにしてやるよ!

Lありがとうございます!来年に間に合えば大丈夫です!今年はもう忘年会しかないので(・・・・・・・・・・・・・・)

Oなん、だと……!この一面のお花畑が!どうしてそれを先に言わなかった!

Lえ、でも、忘年会は〝無礼講〟って聞いてますし、マナーがなくても何とかなりますよ。

O呆れる以前におまえのことが本気で心配になってきた。社会という名のジャングルにネギしょって突っ込むカモかよ……仕方ねえ、何とかするか。


、皆様方、本日はご多忙のところお集まり下さり、有難う御座います。此度は無礼講ですので、気兼ねなく分け隔てなく親睦をお深めください。

 純白のクロスがかけられたテーブルに魔道三大珍味を始め、豪華な料理が並ぶ。メインディッシュは再捕獲された幻獣チンミだ。

O”聞こえてるか。レプス。魔道トランシーバーの調子はどうだ?”

Lはい!教官!ばっちり聞こえます!

O”大声を出すんじゃねえ!分からねえことがあったら小声でオレに聞けできるかぎりフォローする!”

Lもぐもぐ……。

O”言ったそばから口一杯に頬張ってんじゃねえよ!話しかけられた時すぐ答えられるように、一口サイズより気持ち小さめに食いやがれ!


L教官!イチゴつてフォークで食べていいんですよね?

O”待て!そのイチゴに葉はついているか?だったら、採れたて新鮮なヤツってアピールだ。直接、手で葉をちぎって食べる方が正しい。”

Wほう、新理事も多少は上流階級の嗜みを身に着けたようですな。

O”よしよし、いい調子だ。お偉方のお眼鏡にかなったってわけだ。”

Lでも教官。この人、ドラゴン革の服を着てます。ドレスコード守ってないですよ。

O……妙だな。もしかしたら無礼講ってのは建前だけじゃねえかもしれねえ。いいか、周りに合わせろ。場の空気に逆らうな。

 ジーナの予測通り、酒が進むにつれて、会場のお偉方はマナーの皮をかなぐり捨て、なれなれしい態度に変わっていく。

W新理事ぃ~!なんか余興やってくださいよ~!抱腹絶倒の一発芸を見てみたいな~!

Lえっ!?えっ!?あ、あたし、芸なんかできないよ!?

 レプスは理事は理事でも〝新入り〟である。パーティーを盛り上げる余興のひとつやふたつできて当然だ……そんな空気があった。

Wえぇー、今日は無・礼・講!じゃなかったんですかぁ~?このままだとシラケちゃうな~。

Lあ、あの、その、あたし、ごめんなさ……。

 レプスは、思わずミツボシに助けを求めるような視線を向けそうになり、――かたく目をつぶった。

L(また師匠に恥をかかせるわけにはいかない!でもあたし魔道一筋で芸なんかできないよ!どうしよう、どうしよう、どうしよう!)

Oオレ、マドーワーク音頭やりまぁーす!

L教官!?

O魔道ギターを引っさげて~♪はるばる国から出てきたが~♪鳴かず飛ばずの7年で~♪

気づけば魔道チンピラに~♪マドーワークで職に就き~♪1年経たずに潰れたよ~♪

Wははは!こいつは傑作だ!さすが新理事!いい芸人を雇っていますね!

O昨日は教官♪今日から無職ぅ~♪マナーもオレも役たたずぅ~♪ハー、ヨイヨイ!

 乱入した鬼教官の自虐ネタは大いに受けた。下々の生活を嘲笑うのは上流階級の娯楽である。――だがレプスはどうしても耐えられなかった。

L……やめて!やめてよ!そんなことまでしなくていいよ、ジーナさんこんなの間違ってるよ!

Oレプス……おまえ。

Lみんなもおかしいよ!ひとの人生を笑うなんて!

誰も見ていなくたって!誰も語ってくれなくたって!みんな自分の物語(じんせい)がある!笑われていい人生なんかない!

脇役なんていないんだああああああ!!

 パーティー会場は、しんと静まり返った。レプスの心からの訴えに対して、返ってきたのは、万雷の拍手――ではなく。

Wちっ、空気読めよ……。

 ――舌打ちだった。主催側が招待客を罵倒したのだ。当然である。会場は剣呑な空気に包まれた。

Wまあまあ、新理事のおっしゃることも理解できますわ。感動的ではありませんか。

そう、人生には脇役なんていない。誰だって主役になりたい。そのためには――

主役(メイン)には降りていただかねば。

 招待客が魔法の杖を一斉にミツボに向ける。本来ならパーティー会場には持ち込み禁止の〝凶器〟であった。


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story3 「強さ」の基準



m……これは、どういうことですか。

W鈍いお方ですね。この忘年会そのものが、メリイ・ミツボシ貴女に対する暗殺計画だったのですよ!

 敵対する魔道士達の魔力が急激に上昇した。

Oこいつはまさかマドーワークの!?

Wええ、そうですよ。この会場に〈反社会性=魔力〉の小規模な結界を密かに張っておいたのです!

W我々は、この無礼講の忘年会で、反社会性を密かに上げていたのですよ!ドレスコードを守らず、新入りをイビってね!

mフン、その割には自然にお下品でしたね。――いずれにせよ、想定内です。あまりにも想定通りで、少し拍子抜けですが。

 ミツボシが純白のクロスを一気に引き抜く。テーブルの上に刻まれた魔法陣があらわになり、膨大な魔力が爆発的に放出された。

m――あなた方の魔法陣を上書きしました。通常通り〈社会性=魔力〉の結界になるように。策が仇になりましたね。

Wそ、そんなバカな!最初から見抜かれていたのか!?

Wおのれ!正義は我らにあるのに!

なに?社会性が上がっただと?そうか!みんな綺麗事を言え!社会性を上げるんだ!

「絆と希望!」「人に優しい政治!」「自然に優しいクリーンな魔法!」「ナウでヤングでクールな改革!」

Oしまった!ポエムみてえな戯言だが、地位のある連中が言うと、社会性が桁違いに上がりやがる!

W策が仇になったのは、そちらのようですな!先に行っておきますが、〝あの年〟の世代は全員足止めしてあります。助けは来ませんよ!

 社会性で並ばれ、助けも期待できず、単純な戦力は多勢に無勢と絶望的だった…。しかしミツボシは――ほほ笑んだ。

mねえ、レプス。いつもみたいに力を貸してくれる?

Lもちろんです!

Wハッ!そんな小娘がひとり加わったところで――え?

 レプスは杖もないのに無詠唱で、極太の火柱を横向きにぶっ放した。……パーティー会場の壁に焼け焦げた円形の大穴が綺麗にくりぬかれる。

Lあ、あれ?なんでこの程度の魔法を無効化も防御もできないの?ただの準禁呪の最上級火焔呪文なんだけど。

Wできるかァ!!普通は食らったら一瞬で消し炭だ!

Wな、なんで、〝魔道士その1〟みたいな小娘がこんなに強いのよお!!

mレプスの強さは私が一番良く知っています!私だけが知っています!

あの事件の時!一番最初に、一番力になってくれたのは、彼女、レプス・クルゥよ!

Wま、まさか貴様か!?革命側が飼いならした魔道ドラゴンを瞬殺して「新しいドレスの生地にしょ~」とか言って、皮を剥いでいったヤツは!

Oえ?おまえ、強いのか?別にけなすわけじゃねえが、さっきの魔法もそれほどすごくねえだろ。

Lですよねえ……。あたしなんか弱いほうだと思うんだけど。

 ――このふたりの「強い」の基準は世間からズレていた。

Wこんな化け物がいるなんて、聞いてないわよ!

Wなんで、あんな凄腕がノーマークだったんだ!

 地味だからじゃねえかな、とジーナは思ったが、社会性が高いので口にはしなかった。

m私にとって最大の切り札は、暗殺計画を見抜いたことでも、〈社会性=魔力〉の結界でもない!レプス・クルゥという超大粒の隠し玉です!!

行きますよ、レプス!あわせなさい!

L……はいッ!師匠!

mL今後のご活躍をおおおおお!!

お祈り申し上げます!!!!

Wぎゃあああああああああああああ!!!!!

 ミツボシ&レプスの魔道お祈りビームが詐裂し、敵勢もろとも会場の半分が吹き飛んだ。

Wお、おい、そこのおまえ!マドーワークの元職員だろ!我々に加勢しろ!味方すればおまえを新マドーワークの施設長にしてやる!

Oへえ、そうかい。だったら――

誠に勝手ながらあああああああああ!

内定は辞退させていただきまあああああす!!

Wぎゃあああああああああああああ!!!!!

O競争しようぜェ……。誰がー番多くの魔道士をぶっ飛ばせるかよォ……!

m良い趣向ですね。プチ・グリモワールグランプリの開催といきましょう。

Lだったら、勝負です!あたしだって負けませんよ。師匠!教官!

「「さあ、魔道士達よ、今ここに社会性を示せ!」」


 ミツポシ、レプス、ジーナらと反協会派の魔道士達は真正面からぶつかりあった。

飼いならされた魔獣の群れやらカネで雇った魔道チンピラやらとかく手勢の数は豊富な反協会派に対して――

Oフゥン!

 ジーナは社会性の〝圧〟だけで有象無象を気絶させ――

L地には冥王、天には雷轟、我が求めしは鮮血の裁き!来たれ、惨苦無情の悪霊よ!

 「それ人に向けて撃っていいヤツ?」的な魔法をレプスは、ばかすか撃ちまくり――

W冗談じゃない!あんな化け物どもとまともに戦えるか。ここは一旦引いて、態勢を立て直して――

m――逃げられるとでも思ったのですか?

先ほどはよくも私の弟子をバカにしてくれましたね。

地には屍山血河、天には幽魂死霊。我が求めしは朱殷の裁き。来たれ、■餓ュ√■■ォ蟲擬&■ュー

 ミツボシは誰がどう聞いてもヤバそうな呪文を唱え始めた。

Lやっぱ……!師匠の脱法禁呪だ!レギュレーションぎりぎりをせめるヤツ全員、防御障壁を最低50層以上張って!

Wだからそういうの普通できないからァ!

Oしゃーねえなー。死にたくねえやつはオレの張る障壁の中に入りやがれ!

m破砕せよ、破壊せよ、破城せよ、名を唱うべからざる者、星闇の彼方に住まう者、災禍の君主、屠■ェ颶■ゥ&腐■■■!

 ミツボシの脱法禁呪によって地獄の業火をぶち撒けたかの如き大焦熱が宇宙の底知れぬ暗黒から降り注ぐ。

数秒後、パーティー会場どころか、建築物そのものが粉砕され残るは巨大なクレーターだけとなった。

Lジーナさん……。あたし、イヤなことに気づいちゃった。

Oオレも気づいたが、口に出さねえほうがいいぞ。

Lあたしがいなくても、師匠ひとりでなんとかなったんじゃ――

Oそれ以上言うな!おまえも充分強いって!よっ!最強!無双!大天才!Bランクだけど実はSランクマドーワーカー!

Lそれ逆に傷つくやつー!うあああ!あたしなんてどうせ脇役よぉ~!

mそうやってすぐにいじけるところがレプスの悪い癖ですよ。

私だって未熟です。自分で唱えておいてなんですが、ピンチだからといって脱法禁呪に頼るなんて、魔道士の恥ですからね。

あの程度の爆炎、レナさんやアリエッタさんなら、もっと簡単な呪文で鼻歌を歌うようにやってのけるでしょう。

O……上には上があるってことだな。オレも社会性5兆のアイツに届くため、マナーを磨き続けてきたが、今でも社会性1億が限界だ。

Lそっか……そうですよね。世界にはもっとすごい人たちがいる!あたしたちも頑張って強くなりましょう!

W………………………………自首、します。


 ――こうして、事件は無事解決された。きっとこれからも彼女たちは高みを目指し、高みにある者としての責務を果たすだろう。

……さて、私は去るとするか。彼女達が「こいつちょうど3人で割れる!」「ひとり1本な!」等と言い出さぬうちにな。


「「「かんぱーい!」」」

3人は、事件現場から一番近かったレプスの家で、勝利の祝賀パーティーを開いた。より高みを目指すプチ決起会を兼ねている。

師匠と教官とその弟子がともに笑い合う。今度のパーティーは、本当に無礼講だった。










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