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【黒ウィズ】ギルドマスター・セレモニーズ Story2

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 日頃からベルナデッタにお世話になっている君は、彼女に何かお礼ができないか聞いてみた。

「そんな……お礼なんて……あ!」

ベルナデッタは、何かをひらめいたかのように手を合わせる。

「あの、それでしたら、少しお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?」

もちろん喜んで、と君は快諾する。

それから数日後――。

君は白い衣服に身を包み、なんと魔道士ギルドの中央本部へと来ていた……。


まさかギルドの式典で給仕の手伝いをしてほしいなんて……ベルナデッタも意外と大胆にゃ。

 君は、服と同じ白の帽子を目深にかぶり、周囲の様子を窺う。

大丈夫にゃ。近くで見ないとキミだってわからないにゃ。

 そうだといいけど……と君が不安そうにしていると……。


お待たせしました~、魔法つ……あ、えっと……お手伝いさん!

 礼服に身を包んだベルナデッタが、君の前に現れる。

今日は本当にありがとうございます。なにぶん、魔道士の方がたくさん参加する式典なので……。

今回あなたには、お客様に料理を運んでいただく配膳係をしていただきます。

ー緒にがんばりましょうね、魔ほ……お手伝いさん!

 ー緒?ベルナデッタも配膳を?と君は聞き返す。

あ、私は料理を作る側ですよ。こう見えて、料理得意なんですよ、私。

 ……ギルドの式典で、ギルドマスターが料理を?さすがに君は疑問に思い、再び聞き返す。

あ、その……料理長の方にどうしてもと頼まれてしまって……。

(……お人好しなのは相変わらずにゃ)

も、もちろんギルドマスターとしての仕事もちゃんとしますよ!

でも、奉仕は修道女の本分ですから、疎かにすることはできません!違いますか!?

 熱弁するベルナデッタに気圧され、君は後ずさる。

ごめんなさい、私ったらつい……。

……あ!そろそろ会場に入らないと!急ぎましょう、魔……お手伝いさん!

 君はベルナデッタに急かされる形で、会場へと向かった――。


 ***


 上位の魔道士のみが入れる、きらびやかな会場。

君は、その会場と厨房を何度も行き来し、配膳係としてめまぐるしく働く。

ー方、ウィズは……

じゅるり……美味しそうにゃ~。

 君が手に持っている料理を見て、ウィズが呟く。

……ちょっとだけ味見させてにゃ。

 君は当然、ダメだよ、と言うが……。

だいじょぶ、だいじょぶ、バレない、バレない……にゃ!

 ウィズは、目にも止まらない早さで、料理をつまみ食いした!

ん~、デリシャスにゃ~、にゃはは~。

 こらこら、と君はウィズを咎める。

しかしそこに……


……何を、しているんですか?お手伝いさん。

にゃにゃ!?


 ウィズの犯行現場を、ベルナデッタが目撃してしまう。

……その目は、普段の穏やかなものではなく、剣呑な光を帯びていた……。

もてなす側の人が、そんなはしたないことをするなんて……奉仕の心が足りない証拠です!

 つまみ食いしたのはウィズ……と言いたい君だが、とてもそんな雰囲気ではなかった。

にゃ、にゃ~……。

 危険を察知したウィズが、そろりとその場から離れる。

しかし君は、鬼気迫る表情のベルナデッタに気圧され、その場から動くことができない……!

そこへなおってください!修道女の私が、あなたに奉仕とは何かを説教いたします!

 ちょっと、待って……!などと君が訴える間もなく、説教がはじまった!


 ***

 BOSS:ベルナデッタ

 ***


 ベルナデッタに奉仕の心を叩きこまれた君は、その後も配膳係として忙しなく働いた。

気付けば、式典は閉会を迎えようとしていた。

仕事が終わり、厨房のー角で休んでいる君に、ベルナデッタが声をかける。

おつかれさまです、お手伝いさん。

 さきほどの説教が効いているせいか、君は反射的に背筋を伸ばしてしまう。

あの、お腹空いていますよね?これ、よろしければ食べてください。

 ベルナデッタは、次々と美味しそうな料理を君の前に差し出した。

余った食材を使った賄い料理ですが、味は保証しますよ。

 空腹だった君は、いただきますとー言添えて、早速、ベルナデッタの料理を食べる。

……美味しいッ!君は舌鼓を打った。

ふふ、ありがとうございます。おかわりもたくさんありますからね。

あ、そんなに詰め込んでは……はい、お茶です。

 君の働きを労うように、献身的に尽くしてくれるベルナデッタ。

にゃはは、賄いとは思えない美味しさにゃ。これならまだまだいけるにゃ。

 ……そして、何食わぬ顔で戻ってきて、賄い料理を食べているウィズ。

君は、恨めしそうな視線をウィズに投げかける。

にゃは、これも美味しいにゃ!至れり尽せりにゃ、にゃはは。

 嬉しそうに料理を食べるウィズを見て、君はふと、式典に来た人々のことを思い出す。

彼らもこんな風に楽しんでもらえたのだろうか、と君は思う……これが奉仕の心?

あらあら、口元についてますよ、拭いてあげますね。

 ……君は奉仕の心を教えてくれたベルナデッタに、心のなかで深く感謝したのだった。



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ま、まず挨拶よね?その後は自己紹介して、それからえーと……。

 オルネはメモを片手に、ブツブツと呟きながらウロウロと歩きまわっている。

そんな彼女を見ながら、緊張しすぎだよ、と君は苦笑しながら言った。


だだだだって!中央に呼ばれたのなんてギルドマスター就任式以来だし!

それに今回は新人相手にお話しなきゃなんないのよ!?緊張しないほうが無理よ!

 ワタワタと身振りを交えて話すオルネ。

君はふと、オゥランディを離れても大丈夫なのかと聞いてみた。

うん、1日か2日なら大丈夫。ギルドのみんなが頑張ってくれてるし。

それに、この時期は瘴気も薄いの。だからオウランディは心配いらないわ!

うー……なんか喉乾いてきちやった、ちょっとお水飲んでくる……。

 そう言い、パタパタと足音を立てて立ち去るオルネを見送って、君はもうー度苦笑した。


君の所ヘオルネからの手紙が来たのは、つい数日前のこと。

どうやら今回の式典で、彼女は新人向けの魔法の講義を依頼されたらしい。

その際助手が必要だ、ということで、君に白羽の矢が立った、というわけだ。


 中央には色々な事情があって近寄りづらいのだが、オルネの頼みとあれば話は別だ。

しかしこんな変装で入り込めるなんて……中央も警備が適当だにゃ。

 君は今、髪型を変え、普段はかけない眼鏡をかけ、ちょっと服装を変えて底上げした靴を履いている。

普段とは雰囲気がまるで違うが、君もここまでうまくいくとは思っていなかった。

廊下の向こうから戻ってきたオルネは、パシパシ、と自分の頬を叩き気合を入れる。

大丈夫?と君が聞くと、彼女は顔を赤くして腕を組み、フン、と鼻から息を吐いた。

あ、あったりまえじゃない!ほら、時間だしそろそろ行くわよ!

 そう言うと、オルネはギクシャクとした動きで歩き出す。

その背中を追いながら、君はどうやって彼女の緊張をほぐせば良いのかを考えていた。


 ***


 君たちはいよいよ会場へとたどり着いた。

だが……。

…………。

 オルネはどうやら緊張のピークに達しているようだ。

顔から血の気が失せている上に、会場への扉に手をかけたまま微動だにしない。

開けようか?と君が言うと、オルネは小刻みに顔を横に振る。

まままままって、ー回深呼吸させて!今ちょっと無理だから!

 そう言うと、彼女は扉に背を向けて深呼吸をはじめた。

すううう……はあああ……すううう……。

 本当に大丈夫なのだろうか……と君が考えこんでいると、ふとウィズが君の耳元で囁く。

(……ここは私に任せておくにゃ)

 ウィズは抜き足差し足で扉へと近づき、前足でそっと扉を押し開けた。

(にゃはは♪)

 すると、会場の中から深呼吸をするオルネが見える状況になる。

もちろん、オルネはそのことに気づいていない。

すううう……はあああ……すううう……。

 今、新人魔道士たちの視線が会場の中からオルネに突き刺さっている。

ざわつき始める会場、にんまり笑うウィズ、そして頭を抱える君――!!

……ん?

 そして、ついに違和感を感じたオルネが振り返った。

なっ!?な、なんで扉が……!?

ちょ、ちょっと!どういうつもり!?

 顔を真っ赤にしながら、彼女は君に掴みかかる!

会場からは笑い声!それを聞いてオルネは涙目になり、さらに顔を赤くする!

もうなんというかグダグダになってきたぞ!さらに嫌な予感とともに強風が吹き荒れ始めた!

あーーーもーーー!!台無しじゃないのよ!!

バカーーーー!!

 爆発的な魔力が吹き上がり、新人魔道士たちの見守る中、君とオルネの戦いが始まった!


 ***

 BOSS:オルネ

 ***


というわけでね、風の魔法は広い視野が必要なわけ。大きな大きな流れを作って、それから――。

 君との魔法合戦が終わり、いつもの調子を取り戻したオルネは……。

新人の魔道士たち相手に、立派に講演を終えることが出来た。

ぶー、と頬を膨らせ唇を尖らせながら、オルネは君に向けて文句を言う。

君は真犯人のウィズを睨むが、彼女は彼女で自分のしっぽ追いかけに夢中だ。

まだ怒ってる?と君が聞くと、オルネは苦笑して肩をすくめた。

もう怒ってないわ、結果的に緊張せずに話ができたし……。

それにアンタも時間作って手伝いに来てくれたんでしょ?

だ、だからさ、まあ、なんというか……怒るのも良くないなーと……。

 そういえば、オルネの服は式典用のものなのに気付き、君は似合っていると感想を述べた。

ふふ、結構アタシもこれ気に入ってるの。かっこいいでしょ。

ね、式典もそろそろ終わるし、美昧しいもんでも食べに行こうか!中央は色々あるって聞いてるしね!

 そういえばオルネにつきっきりで、式典の食事をすっかり逃していた。

気づけば日も傾いて、いい具合にお腹もすいてきている。

今日は色々あったけれど、たまにはこういう日も悪くない。

君はそう思いながら、無邪気に笑うオルネの後を追った。




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 アユ・タラのギルドマスター、ティアからの手紙が君の元へ届いたのは、今から数日前のことだった。

手紙には、待ち合わせ場所の簡単な地図と、「問答無用で駆けつけろ」とだけ書かれていた。


いったいなんの用にゃ?私たちだってそんなに暇じゃないにゃ!

 ウィズの機嫌は悪い。

報酬として、幻の魚料理と呼ばれる異国の昧を堪能できる、そんな珍しい依頼を断ってやって来たのだ。

もうお腹ペコペコで歩けないにゃ!さあ、私を肩に乗せるにゃ!

 自分自身も歩き疲れていたのだが、君はしぶしぶウィズを抱き上げる。

お世話になったティアのお願いだし、断ることはできないよ。

そんな風になだめてみてもウィズの機嫌は直らなかった。

ご馳走を食べてからでも遅くなかったにゃ!それに君も君にゃ!私という師匠がありながら……。

 仕方なく、君は不機嫌な師匠を肩に乗せたまま、手紙で指定された場所までやって来た。


遅いぞ魔法使い!何をのろのろしてたんだ!?

 そこで待っていたもうー人の師匠、ティア・ソピアもまた、機嫌が悪そうだった。


そろそろ、別の師匠を探す時がきているのかもしれない。

ふとそんな思いがよぎり、君は慌てて頭を振る。


なんでも、今日は魔道士ギルドの大きな式典があるって聞いたけど。

君は気持ちを落ち着かせ、道すがら耳にしたことをティアに尋ねてみる。

まあ、そんなところだ。

なんにゃ?式典に用があるなら手紙にそう書いて欲しかったにゃ!

 式典に行ったことがあるの?君はウィズに尋ねる。

キミ、誰に向かって聞いてるにゃ?私は魔道士ギルドの四聖賢にゃ。

 ウィズの話によると、毎年この季節、新人魔道士を集めた式典が行われるらしい。

まったく、ギルドというのはどこまでヒマなんだか……。

にゃはは!でも、ここに来てるってことはティアだって同じ位ヒマってことにゃ!

相変わらずうるさい猫だな、お前は。弟子なら弟子らしく、黙ってついてくればいいんだ!

私は弟子になった覚えはないにゃ!

おっと、そろそろ時間だ急ぐぞ、お前たち!

 ウィズの言葉を無視して、ティアはどんどんと中へと入っていく。

相変わらず人の話を聞かない師匠にゃ!弟子からの指導が徹底していないからにゃ!

 ウィズからの八つ当たりを受け流しつつ、君はティアの後に続いた。


 ***


 ティアの後に続いてやって来たのは、ウィズの話にあった通り、新人らしい魔道士が大勢いる大きな式場の中だった。

どうやら、今からギルドマスターの講演が始まるらしい。

ティアは何の為に呼ばれたにゃ?

……呼ばれてなくて、来ちゃ悪いのか?

 君はティアの声にいつにない怒気が含まれているのを感じ取った。

新人魔道士に講演でもするにゃ?

バカか、お前は。なんでボクが新人魔道士相手に講釈を垂れなければいけないんだ?

 ティアはいつにも増して辛辣な言葉をウィズに投げる。

バ、バカとは何にゃ。私はこれでも四聖賢のひとりにゃ!

 全身の毛を逆立てるウィズを、君は必死になだめるが――。

ふっ。そんなに四聖賢がそんなに優秀なら、どうしてお前は猫なんぞになったんだ?

 どうやら今日のティアはとことん機嫌が悪いらしい。

そ、そこまで言うことないにゃ。私はただ、ティアは呼ばれてないのにどうして――。


呼ばれてないって言うなっ!


 ウィズの言葉が気に触ったのか、ティアは顔を真っ赤にして怒りだす。

何が彼をそうさせるのか……謎は深まるばかりだが、とにかく冷静になってもらわなければいけない。

君は考えうる限り、最大級に低姿勢な態度で彼に事情を聞くことにする。


 ***

 BOSS:ティア

 ***


まあ、お前がそこまで言うなら、話してやらないことでもない。

 君の必死のヨイショが実を結び、冷静になったティアが口を開いた。

今日の式典では、魔道研究の発表も行われることになっていてな……。

いつもはボクのところにも招待状が届くんだが、今年はなぜかそれがなかった。まったく、何をやっているんだ、ギルドの連中は……。

 なるほど、招待状が届かなかったことにティアは腹を立てていたのか。

今更ながら、君はティアの機嫌が悪かった原因を知る。

ティアの話では、魔道都市サイオーンを始め、各地の研究者による発表があるらしい。

それで、ティアはその発表を聞きにきたにゃ?

まあな。もしかしたら、お前を元に戻す糸口になるかもしれないぞ。

ティア、だから私たちを……。

 そう言って、ウィズが目をうるませていると、式場の舞台に学者風の男たちが集まり始めた。

――お、そろそろみたいだな!

 どうやら、研究発表が始まるらしい。

新人の魔道士たちも、前方へと集まっていき、またたく間に舞台の前に人垣ができてしまった。

うーん、全然前が見えないにゃ。

なにしろ、クエス=アリアス中の研究者が注目しているからな。

 でも、これでは重要な発表があっても見逃してしまうかもしれない。

君がそんなことを口にすると――。

ふんっ。何のためにお前を呼んだと思っているんだ?

とっととボクを担ぐなり肩車するなりしろ!ボクが重要な発表を聞き逃したらどうする!?

 師匠の口から飛び出した予想外の言葉に、君は目眩を覚える。

そんなことのために呼んだにゃ!

 言葉を失った君の代わりに、肩の上に陣取ったウィズが吠えた。

全く師匠という人種は、どうしてこうも弟子の上に乗りたがるのだろう?

君はティアを担ぎ上げたまま、数時間にわたる研究発表を聞くことになった。


ふんっ。どうやら今年は大した発表はなかったみたいだな……。

 結局、長時間師匠を担ぎ続けた君の苦労が報われることはなかったが――。

にゃにゃ!?なんだか美味しそうな匂いがしてきたにゃ!

ああ、発表会が終わった後は、研究者同士の親睦会があるからな。クエス=アリアス中の料理が食べられるぞ。

そう言えば、すっかり忘れてたにゃ!

 と、ウィズは目の前で並べられていく料理のひとつに目を留めた。

にゃ!あれは私が食べそびれた幻の魚料理にゃ!?早速いただくにゃ!

 どうやら、ウィズの苦労は報われたようだった。




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 君は式典があると聞き、久しぶりに中央本部にやって来た。

再建はけっこう進んでいるみたいにゃ。

 ウィズの言う通りだった。

激しい戦いの爪痕が残った、あの中央本部は見違えるような復興を遂げていた。

案内された塔のー室から見るその景色は、初めて訪れた時と変わらぬほどだった。

ひとつだけ違うのは、あの時の中央本部は謀略と暴力に支配されていた。

いまはそれがなかった。


bやあ、待たせたね。

 部屋の入り口に立つのはルベリ・クラクス。この中央本部を取り仕切る青年である。

この復興も彼が指揮している。

すごいにゃ。こんなに早く仕事が進むとは思わなかったにゃ。

 流石だね、と君はルベリに言った。

b魔法が使えないんだから、これくらいのことは出来ないとね。

さもないと、本当の役立たずだ。

 君から見れば、ルベリの成し遂げたことの方が充分魔法のように思える。

素直にそう伝えた。

b私が成し遂げたんじゃない。みんなが成し遂げたんだ。

そういう風に、この中央本部は変わったんだよ。

他のギルドマスターたちにはもうあったかい?

みんな、緊張したり、難題をふっかけてきたり大変だったにゃ。

b久しぶりに君に会えてうれしかったんだろう。許してやれ。

さてと。そろそろ行くか。ついてきてくれ。


 ***


bさて……。

 君はてっきり、このまま式典会場へ向かうのだと思っていた。

だがルベリに連れてこられたのは、まったく違う部屋だった。


ここは……。

 部屋を見て、ウィズは思わず呟いた。

bさすが四聖賢と言ったところかな?

 ルベリもその反応を見て、少し楽しそうである。

ここはどこ?と君はウィズとルベリに尋ねる。

bここは四聖賢の部屋さ。

ウィズやアナスタシアの代になってからは、あまり使われなかったけどね。

それは……申し訳ないにゃ。

bわざわざこの部屋を君に見せた意味、わかるかい?

 君は、さあ?と肩をすくめてみせる。

b私はまだ諦めていないんだよ。

君が四聖賢……いや、魔道士ギルドを率いることをね。

 と、ルベリは傍らに置かれた剣を君の方へ放り投げた。

床に落ちた剣は、君の前まで滑ってきて、ピタリと止まった。

bま、説得はできないだろうから、剣で語らうことにしよう。

 君は、彼が説得の通じない相手だ、と知っている。

それなら彼の条件を飲むしかない。

諦めて、目の前の剣を手に取る。そしてルベリを見据える。

b手加減してくれよ。私はただの人なんだからね。


 ***

 BOSS:ルベリ

 ***


bてえぁ!

 君は手首をくるりと回して、切っ先を操る。

小さな孤を描いた君の剣は、向かってくる刺突をいなし、相手の剣を下に叩き落す。

bむ……。

 やれやれと言った様子で、ルベリは地面の剣を見つめる。

bどうやら今回の計画は失敗のようだ。

 今回?と君は尋ねる。まるでまだ計画は続くかのような口ぶりだった。

b当然だろ。

いまここで私が諦めたら、全てが終わってしまうかもしれないだろ。

 冗談めかした口調だが、本音のようである。

うーん……喜んで良いのか悪いのか、わからないにゃ。

 自分の教えとはいえ、自分たちが厄介な目に合う口実になるのは、流石のウィズも参っているようだ。

b安心してくれ。とりあえず今日は終わりだよ。

 君は剣をルベリに返す。彼はその剣を受け取り、元の場所に戻した。

bそれにもう時間もない。


 ***


 向かったのは式典会場だった。




聞かれた扉の先に行くと、知った顔がずらりと並んでいる。

みんなの前を通り過ぎ、君は会場を進む。

自然と出来た道の奥には、壇上が見えた。君の肩にルベリの手が置かれる。

思わず振り返る君に、ルベリは微笑んだ。


b四聖賢はひとまず諦めるが、英雄として魔道士たちにー言頼む。

流石にこれは断らないでくれ。

 断らない、というよりも断れない。

期待に光る魔道士たちの目が君に向けられている。


覚悟を決めるしかないにゃ。

 ウィズも諦めたようだ。こっそりと耳打ちされた声は少し弱々しかった。

 君も師匠に倣い、おずおずとー歩踏み出す。

b健闘を祈る。

 君の胸が高鳴る。こういう経験は初めてだった。


後のことは緊張のせいで、何も覚えていない。

上手くいったことを祈るばかりである。





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