【黒ウィズ】ギルドマスター・セレモニーズ Story3
story
君は再びクルイサの街を訪れていた。
ある日、君が定食屋で食事をとっていると、見知らぬ男が話しかけてきたのだ。
彼ははじめにアヤナの名前を出すと、君を招待する旨を伝えた。
是非という声がとても強かったので、君はクルイサヘ向かうことにした。
お祭りらしいけど、ー体何があるにゃ?でも歓迎してくれるのは、うれしいにゃ。
街に到着したのは、日が暮れた頃だった。君たちを出迎えるようにアヤナが立っていた。
y久しぶりだねえ、あんたたち。今日はゆっくりしていってよ。
今日は何のお祭りにゃ?
yこのクルイサの街が出来た日だよ。国で言えば建国の日だね。
アヤナの説明を補足する言葉が、彼女の足元から聞こえた。
bと言っても、本当にこの日に街が出来たわけじゃないけどね。
正確に言えば、ボクらがこの場所に着地失敗した日さ。
そう聞くと、良い日なのか悪い日なのかわからないにゃ。
bたぶん良い日なんじゃないかな?ま、お祭りなんて盛り上がりたいだけだから、本当の意味なんて必要ないよ。
ビイは相変わらずにゃ。でも確かに理由なんていらないにゃ。楽しければそれでいいにゃ。
y街の祭りは初めてみるだろ?ちょっと見物してきなよ!
君とウィズはその言葉に従い、街を見て回ることにした。
***
いつも活気のある街だが、今日は祭りのせいで、それがいつも以上にふくれあがっていた。
様々な屋台や出店が居並び、ひっきりなしに君を呼び止める。
にゃにゃ?あれは何にゃ?
君は出店のひとつに目を止める。
奥に的がずらりと並んで、手前の台には玩具のような小さな弓矢が置いてあった。
これで的を狙えばいいのかにゃ?
そんなことをウィズと話し合っていると、声がかけられた。
y射的だよ。クエス=アリアスじゃ、あんまり見かけないでしょうね。
どうやってやるにゃ?
y簡単さ。矢を的に当てるだけだよ。こんな風にね。
言うと、アヤナは弓に矢をつがえ、奥に立った的を射た。
矢は的に当たり、地面に落ちてゆく。
yどう?やってみる?
君は弓と矢を受け取り、的を狙う。片目を瞑り狙いを定め、矢を放った。
だが、矢は的まで届かず地面に落ちた。少し目測を誤ったようである。
yアハハ。下手だねえ。魔法は使えても、弓は駄目なんだね。
君は少し見返してやりたい気分になり、懐からカードを取り出した。
指先で弾いたカードは的の中央に刺さった。君はアヤナの顔をうかがう。
yあら?それで勝ったつもり?
彼女は後ろ髪に差したかんざしを引き抜き、的を見もせず、投げる。
かんざしは的の中心に突き刺さっていた。
yどう?ひとつ勝負といこうかしら?
君は望むところだ、とぱかりに懐に手を伸ばした。
***
BOSS:アヤナ
***
Wもう勘弁してくださいよ……
店中の的という的に、カードとかんざしが刺さっていた。
君がカードを投げるたびに、アヤナはかんざしを的に投げた。
互いに的の中央を外すことはない。決着は容易にはつきそうもなかった。
君が再び、カードを投げつける。カードは的に突き刺さる。
yへえ、やるじゃない。
とは言っているが、アヤナの表情のどこにも君を称賛するような色はない。
いまだ余裕緯々といった様子だった。
彼女が再び、髪に手をやる。
アヤナの髪のどこにそれだけのかんざしが刺さっていたのか。
どれほど考えてもよくわからないが、ともかく、彼女はまた、的を射抜こうとした。
だが。
yん?あれ?……ないわね。
にゃは!どうやら私たちの勝ちのようにゃ!
今度はアヤナの方がムッとしたような顔をしていた。
にゃははは。なかなかいい勝負だったけど、まだまだにゃ。
うちの弟子の方がー枚上手だったようにゃ。
カード1枚分ね、と君はウィズに続いた。
にゃはは!君もうまいことを言うにゃ。
笑い合う君たちを見て、アヤナはさらにムッとしたようだ。
突然、帯に挟んだ短刀を抜き、的に投げつけた。
Wひぃぃぃ!
yまだ負けてないわ。
アヤナは君を見据えて、言った。
た、ただの遊びにゃ……そこまで本気にならなくてもいいにゃ。
y遊びでも負けるのは嫌いなのよ。遊びでも負けるのは嫌いなのよ。
かんざしも短刀もなくなった彼女が次にどんなものを投げつけるのか。
想像するのも恐ろしくなった君は、カードを投げずに負けを認めた。
yあら?だらしないわね。それじゃあ、祭りを楽しみなさい。
アヤナは君に背を向け、祭りの喧騒の中へ消えていった。
やっぱりこの街のボスになるだけはあるにゃ……とんでもなく気が強いにゃ。
君は黙って、その言葉に同意した。
story
Eなんだか今日は街の雰囲気がピリピリしてない?
店の窓から往来を覗き見て、エリエリが呟いた。
君もつられて、外を見る。言われた通り、いつもより兵士が多めに街角に立っていた。
何か起こっているのかにゃ?
lあるいは、これから起こるか、だな。
君はオムレツの残りをライ麦パンの上にのせて、強引に折りたたみ、ー口かじった。
バターと玉ねぎを含んだ半熟の卵が、ライ麦の酸味とー緒になって口の中に広がる。
カムシーナで幾日か朝を過ごすと、ギュゼル直伝の朝食作法にも自然と自分の流儀が生まれてくる。
それは自分の中に、カムシーナでの朝の過ごし方にあるべき姿があるということ。
ただし、今朝は少し違っていた。
E何があるんだろうね。
エリエリと同じタイミングで、エードのグラスに口をつけた時、店に誰か入って来た。
gおはよー。
kやはりここにいたか。
予想通り、入って来たのはギュゼル。予想外だったのはカルマンもいたことである。
それも、いつもとは違う服装だった。
ふたりが君の前の席に座る。
gああ、カルマンの服については変な突っ込みはいらないわよ。
似合わないとか、笑えるとかは、私がもう散々やったから。
Eそんなメチャメチャデリカシーのないこと、誰も言わないよ。言うのはギュゼルだけ。
gあら、カルマン言われてるわよ。私の育て方が悪いって。
k育ち方が悪いんだろう。俺は無関係だ。
どちらにしても、ギュゼルが悪いことには変わりないにゃ。
Eあははは。言えてる。
g笑うな、小娘。
君は、どうしてそんな服をきているのか、とカルマンに尋ねた。
k今日は隣国の皇太子がこのカムシーナに来るんだ。その式典に出席しなければいけないから、こんな服を着ている。
lなるほど。だから街に兵士がうろついているのか。
gああ、そうだ。特に今、カムシーナは不安定だ。
王不在となったことで、誰がこの国の王となるのか。それが諸国のー番の関心だ。
g大国カムシーナをタダでもらえるチャンスなんだから、そりゃ息巻くわよね。
誰々は前カムシーナ王の従妹の従妹の子どもで~とかうっすい血の繋がりをどうこう言ってるわ。
k王族が国を手に入れようとするのは奴らの勝手だ。それが戦争にならなけれぱな。
lよくある類いの話だな。
k今のところはその心配はない。ただし、別の問題はある。共和主義者だ。
l王権そのものを否定する者たちか。彼らにとってはいい機会だろうな。
kああ、そして絶対的な力を持っていない分、危険な行動に走る。
l暗殺か。
Eヤバヤバ!
やってくる皇太子を暗殺すれば、自分たちの主張を伝えることは出来るにゃ。
gそのあたりの動向は私がちゃんと目を光らせているから、問題ないわよ。
k本当なら、俺がその捜査を指揮したいんだがな。
gムリムリ。諦めて、その似合わない衣装で式典に参加しなさい。
kと、いうことになっている。
君は、仕方ないですね、とカルマンに同情するように言った。
gみんなも式典を見物でもしてなさい。それなりに華やかなでいいものよ。見て損はないわ。
***