【白猫】ミッドサマー・オペレーション! Story3
story
ボロボロ……ですね。
沈んだのはもう、五年前だしね……
……大丈夫ですか?
k……うん……平気……
私たちが、そばにいるからね……!
でっかい船ね……どっちに行ったらいいの?
……氷の国の貨物船だ。構造は把握している。
……ここが、貨物室ですか?
……でも。おかしいわ……
ここ、桜の樹どころか……何ーつ、貨物が残ってない……
どういうことなんでしょう……?
……どうした、主人公。
<――船底に、巨大な穴が。>
穴?それって、まさか……
魔物に襲われたとき、船に大穴を空けられて……
積まれていた荷物がぜんぶ、海の中に散らばっちゃった……
……そんな。それじゃあ……
この真っ暗で広い海の底を、すみからすみまで探さないとってコト……?
……っ!大丈夫だよ!諦めなければ、きっと見つかるって……!
……サテラちゃん。
だって……っ!
…………
k……そんな……
クルーピエさん……
kここまで……きて……っ!
…………
――しゅるるる……
気を付けろ――
しゅるるるるるるるるる……
――敵だ。
ぎにゃー!!でっかいー!!
魔物の棲家になってたのね……!
――触手の大海魔。ヴィクちゃん!!
ああ……おそらく五年前、この船を襲った魔物だ。
――貴様は、この場で斬り捨てる。いくぞ、エイス。
しゅるるるるるるるるる……!!
邪魔を……しないで!!
あなたの棲家に踏み入ったのは、私たちの方です。でも――
ええ。人を襲う魔物を、見過ごすわけにはいかない。
――いきます!!!
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しゅるるるるるる……!!
逃げられちゃった!けど……
とりあえず……ひとまずは安心ね。
船の周りを探してみない?案外、近くにあるかも……!
k……みんな、もうやめて。もう、本当にいいから……
ぜんぜんよくないよ!だって……!!
ね、よかったらさ、クルーピエの事情、アタシたちにも話してくれない?
……クルーピエのお父さんは、あなたとお母さんに、桜を見せたかったのね。
それじゃあなおさら、絶対に見つけないと!
でも……皆を……もう、危ない目にあわせたくない。
でも……!ここでアンタが諦めちゃったら……!
――ちょいまって。何か聞こえん?
本当です……オルゴールの音、でしょうか?
外から聞こえてくる……でもここ……海の底よ?
……!この曲は……
音は、たしかにこっちの方から……
kお母さんの……オルゴール……?
よかった……ここに沈んでたんですね。
でも、ここ水中です……どうしてオルゴールが勝手に……
きっと……お母さんが言ってるんだよ……
諦めないでって……!言ってるんだよ!絶対……!
k……お母さん……
お前の父親は、氷の国で長らく、貿易船の船長を務めていたな。
彼の実直な働きと、それを支えたお前の母親のおかげで……氷の国は、今も在る。
……せやね。物流は、国の繁栄と安寧の要や。
俺たちは、クルーピエ。お前の両親が残した願いに――
――氷の国の騎士として、報いる義務がある。
k…………っ。
ふふ、ヴィクトールさん、やっぱり優しいですね。
それで仏頂面じゃなかったらねえ。
……これでも笑っているつもりだ。
さてっ!気を取り直して、桜を探す方法を考えましょうか!
何よりもまず、光が必要ですね。
それも、周囲ー帯をー気に照らせるような強い光……
太陽の光が少しでも届けば、<晴天鏡>でとうにかなるかもしれないけど……
光が深海まで届かないのは……大量の海水に、光の侵入を阻まれるから……だったな。
……はい。水は光を吸収して、拡散させてしまいますから……
つまり、この深海にわずかでも陽の光を届けることができればいいんだな。
何か考えがあるって顔ね?
無茶なこと言うで……
でも、やったる!!ここが踏ん張りどころや!!
気張っていくわよー!!
お――ー!!!
がんばります……!
k……みんな、どうして……そこまでして……
そんなの、決まってるでしょ?
私たちは、冒険家で――
そして、あなたの……
友達だから……!
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なんか、お日様の光が懐かしく感じるわね……!
この光を……深い海の底まで届けないといけないんだね……
――相当の大仕事や。ウチとヴィクちゃんだけやと、ー瞬でガス欠になってまう。
はい。回復は任せてください……!
アタシたちの力だって、好きなだけ使いなさいな!!
――ああ。いくぞ!
海の底まで――超特急タイブや!!
うぉぉぉぉぉおおおお!
はあああああああああ!!
<――急降下するヴィクトールとエイスが、海中に際限なく生み出し続ける結晶は、氷で編まれた無数の透鏡だ。
幾千、幾万にも及ぶ透鏡は、さながら海に突き立つ氷の柱と化し――
海中で散る光を集め、繋ぎ――その輝きを減衰させながらも――>
いけいけぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!
もう……少しで……っ!!
<深き海の底へと、運んでゆく――!>
……きた!ほんの微かだけど――
あれは……太陽の光です!
晴天式ルーンコア、起動ッ!
お願い――みんなも、力を貸して!!!
はい!!
了解!!
k私も……!!
――うんっ!!
しゅるるるるるるう……!!
……っ!?嘘……さっきの魔物……!!
――私に任せてください!
(使うね――ルエルちゃん)
<ルエルのイヤリングに封じ込められた瘴気が噴き出し――
レイチェルの体内で、莫大なエネルギーヘと変換されていく――!>
クルーピエさんの、邪魔を――
ギュアアアアアアアー!!!!
――するなアアアアッッッ!!!
……今です、皆さん!!
光れええええええええええええええええええええええええーーー!!!
……ま、眩しい……!
どうにか成功……みたいやね。
つーかーれーたあ~……
ぎにゃー!なんにも見えないー!
うぅ……やっと目が慣れてきました……
……ねえ、みんな……見て……!!
……!陽の光を浴びて――
k桜のー花がー咲いて――
……これが……
<海に咲<桜>ー?
……こんな近くに、沈んでいたんですね……
……綺麗……
うん、すごい……すごい!
こんな景色、見たことない――!
花びらのー枚ー枚が、きらきら輝いて……
……言葉が、出てこないです……
……これは、圧巻やねぇ……
ああ。
ここに沈んで……そのまま根を張ったのね……
お日様の力は偉大だねえ……それに……!!
――クルーピエちゃんのお父さんとお母さんの……愛の力もっ!!
――
……せやね。きっと、サテラちゃんの言う通りや。
k――はい――
<クルーピエは、手にしたオルゴールを胸の中に強く抱いた――>
k……桜、一緒に見れたね…………お母さん……
……綺麗だね。
うん……
どしたの、主人公?
<――木の根本に、誰か倒れてる。>
本当だ!?えっと……あれ、クマ?
k……………………お父さん…………?
いや、そんなはず…………ってほんまや――ー!!
ど、どういうことですかー!?
kお父さん……!お父さん……!!
<*×〇■!&%$…………>
……大丈夫です。生きてます……!
<呼吸のルーン>を持ってる……それで溺れずに済んたのね……
……船乗りは、事故に備えて<呼吸のルーン>を肌見放さず持ち歩く人も多い。でも――
息ができるからって……五年もこんなとこいたら、どのみち死んじゃうでしょ!?
……ううん、キャトラちゃん。
昔、何かで読んだ憶えがあります。海に沈んだ遺跡から見つかった、不思議な桜の樹……
樹の中に埋め込まれた古代のルーンの働きで――
海中に届くわずかな陽光を蓄え、ソウルヘと変えて海に振り撒くことができた、って。
きっと、船で運ばれていたこの樹には、力が蓄えられてたんだよ。
k――その力が、お父さんを生かしてくれたってこと……?
……クルーピエさんのお父さんの想いに……桜が応えてくれたのかもしれませんね。
はい。これは――奇跡だと思います。
よかったね……クルーピエ。
kうん……お父さん……お父さん……!
――よしよし。がんばったね。
kちがう……ちがう……!みんなが……がんばってくれたから……!
君が諦めていたら、私たちはそもそも出会わなかったの。
だからこれは、君が起こした奇跡。
さっきオルゴールが鳴ったのは――
クルーピエさんのお母さんが、教えてくれたんだと思います。
お父さんがここにいるよって。見つけてあげて、って。
k……おかあ……さんっ……
「ねーねー、おかーさん!おうたうたってー!」
「いいわよ、クルーピエ。こっちきて。」
さくらちりまい なるしらべ らっかのほとり さざめきて
そのねをたどり ひたあゆむ いとしあなたと――
――あえますように――