【白猫】レザール・思い出
冥界の颶風 レザール・グランジュ cv.浪川大輔 邪龍を駆り、人々を震撼させた魔王。 だったが、劇団員へと転向した。 | ||
2015/12/24 |
メインストーリー
思い出1
!?
アンタ、だれっ!? いつからそこにいたの?
キャトラ! うかつに近寄らないで!
え!?
強い……力を感じる……! しかも……!
善なるものじゃない……!
……我が名はレザール。邪龍を駆り、災禍を運びし者。
人間たちから見れば、俺の所業は、闇と変わりない。
……憎悪を! 狐疑を! 戦火を! この黒翼で巻き上げ――
生ける者から、その先の未来を奪う――
敵だ! 敵が来た! やるわよ、主人公!
――が――
……?
それも、過去のことだ。
……どういうことですか?
娘よ、俺の気配に闇を見たのは、間違いではない。
俺も、この<シャグラン>も、永らくその身を闇の世界に置いてきた。
薄まるには、相応の時間がかかるだろう……
……ん? てことは……
アンタたち、ワルっぽいけど、足は洗ったってことなの?
そうだ。
そうだったんですね……!
一度生まれた疑念は、膨らみ続ける――
新たなる宿命と向き合うために、これまで歩んできた魔の道に――――背を向けたのだ――
ふむふむ! イーコトじゃないかしら!
事情の説明はおいおいでいーわよ!
キャトラったら……
しかし、ここで一つの問題が浮かび上がった。
これまで闇に生きていた俺たちが、急に光の下にはいけない。
そう……かなぁ?
それなら……?
冥界の颶風、このレザールは、次なる己の棲家として――
――<灰色の世界>――
<演劇界>に足を踏み入れたのだ!
思い出2
あー、るるるるるるる、とぅるるるるるるるる、
あー、あー、んー、んー。
よし。
ア、工、イ、ウ、工、オ、ア、オ!
ちょっと! レザール!
辛抱してくれ。発声練習なのだ。
アタシが言いたいのはそんなことじゃーないの!
ん?
アンタはこれまでなにをしてきたのかとか、
結構興味あったんだけど、もっとデカい疑問があるわ!
演劇界に足を踏み入れた、って、一体どういうことよ!?
先日言った通りだ。
演劇界こそ、この世の闇と光をつなぐ、灰色の世界――
アタシはそうは思わないけど!?
無論、現実にその色が目に映るわけではない。比喩表現だ。
それぐらいはわかってるし!
ならなんだ?
どうして、演劇界が灰色の世界だって思うんですか?
表現の曖昧さ故。
ひょーげんのあいまいさ???
人の気持ちを動かすために、こうすればいい、などという答えはない。
白なのか黒なのか、定かならぬ世界――
ならば、<灰色>ということになろう。
同意しかねるわ!
そういうこともあるだろう。
俺と君とでは、これまで歩んできた人生も違う。
見解に相違もあろうというもの。
……な~んか、コムズカシク言ってるけど、ヘリクツっぽいのよねえ……
端から理屈ではないのだ。些細なきっかけがあり、選択の瞬間がある。
そして、選んだからには、いかなる道であろうとも、全力を尽くさねばならん。
持って帰らねばならん。なにかしらをな。
演劇界に、アンタのためになるなにがあるって言うのよ?
それを見つけるためにも、稽古に励んでいるのではないか。
さあ、シャグランよ! 次は感情解放だ!
チョコレー―――――――ト!!!
なによ突然!?
これは『チョコレート』というメソッド、稽古の一つだ。
あらゆる言葉に、思い通りの感情を乗せる訓練だな。
次は『哀』でいくぞ。
チョコレー―――――――ト……
こ、コイツは……!
アホだわ!
思い出3
深淵なるは芸の道、か、
あ、アホのレザールだ。
ちょ、キャトラ……
お! 俺には喜劇役者の才能があるということか?
わかんないけど。あるんじゃない。アホだし。
喜ばしいことだ。手段は問うべきではない。
『笑わせるのではない。まず、笑われること』
それが芸の最初の一歩だと、不死者の帝王も言っていた。
演劇界に足を踏み入れた……
ということは、どこかの劇団員さんになったんですか?
そうだ。俺の所属する劇団は、『劇団びたーちょこれーと』という。
ダサ――!
キャトラ、ダメっ!
売出し中の劇団でな。知名度はないに等しい。
俺は、新入団員募集の黒いフライヤーに魅かれ、門を叩いたのだ。
黒……かったから……?
そう。黒かったから。
劇団員は六名。あとは、公演の度に客演を呼んだり、スタッフを外注したりしている。
まあ、よくあるプロデュースユニット形式だな。
よくある……のか、アタシにはわかんないけど……
劇団では俺は一番新入りだ。だから、稽古場の掃除など、雑務も多い。
プライベートを削って稽古や勉強に励まねば、先輩方に追いつけん。
なにしとんじゃアンタは……
郷に入っては郷に従え。慣習に異を唱える趣味はない。
先人たちも、皆同じ道を歩んでいったのだからな。
真面目、なんですね……
というかアホというか……
愚直にも、愚直なりの力というものがある。
さあ、筋トレを再開だ!
い、いまさら筋トレっ!?
そうだ。そして、それが終わったら『石』になる。
思い出4
ふう……
ため息なんてついて、どうしたのよレザール?
実は昨日、劇団の飲み会に行ったのだが。
ど、ドラゴンと一緒に!?
心配はいらない。演劇人は、皆変人だからな。この程度、誰も気にしないさ。
そういう問題かしら……!
それで、どうしてそんなにくたびれてるんですか?
……無駄だった。
座長はじめ、劇団員も皆、酒に酔い、夢を語っていたのだが。
ほうほう?
やれ、いつかは売れるぞ、有名になるぞ、最高の芝居をするぞ……などと……のたまうが……!
俺は知っている! その場にいた、誰一人売れていない!
全員、演劇で食えていない!
なのに……酒場に飲み代を払い、努力もせずに、展望を語る……
あの時間は……いったいなんだったんだ?
なんだったんだ、と聞かれても……
俺は悟った。<演劇界>は、灰色ではない。
闇社会よりもなお、黒く染まっている!
そ、それは……さすがに……
そんなにイヤなら、やめたら? 劇団。
……そうもいかない。
俺はまだ、辞められるほどの何も得ていない。
はあ……
だが……なんだろうなあ!
この、なんとも、罪悪感とも、敗北感ともつかぬ苦しみは?
わかんないけど……
同じ志を抱いた仲間なのに、いやそれだからこそ、なんとも、煩わしい。
劇団員の皆は好きだ。好きだが、酒の席での、あの態度はどうだ!?
しかも、店員に対しては妙に横柄だったりするんだ!
……よっぽどだったのね。
闇夜に身を溶かしていたときにも、これはどの苦悩はなかったぞ。
まあ、種類が違うわよね。
まったくもって……<演劇界>、恐るべし……!
ソーネ。
思い出5
あっ、レザールだ。
なんだか……深刻な様子ね……?
おーい! どったの~!?
お前たちか……実はな……
今度、ウチの劇団の本公演があるんだが……
ふむぅ?
本公演とはつまり、みんなで金を出し合い、小屋を借りて芝居を打つのだが。
え!? おかね払うの!? 稼ぐんじゃなくて?
チケットノルマを達成すれば多少のバックはある。
つ、辛い世界ですね……
……で?
おかねのことを悩んでたわけじゃないでしょ?
俺が主役に選ばれてしまったんだ。
お~♪ すごいじゃ~ん♪
いついつ~? いくいく~♪
来ないでくれっ!!
どうしてですか?
レザールさんの晴れ姿、是非見たいですけど……
……っ……!
どうしたのよ?
脚本が……
脚本が?
つっつつつつまらないんだ!!!
ほ……ほほう……
座長がスランプでな。俺の一つ上の先輩が初めて脚本を書いたんだ。
これがまあ、つまらない!
どこかで見たようなキャラクター! お決まりの展開! 浅い信念!
あんなものでお客様の時間を奪うかと思うと……!
しかも俺が主役だと思うと……!
れ、レザールさん……!?
さすがに堪えされる気がせん!
我が黒き鎌で死を呼び、客共の最後の見世物としてしまうかもしれん!
ちょ、ちょっと待ってよ!
レザールさん! まだ早いですよ!
まだ何も得てないのでしょう!?
……芝居というものが、ここまで人を追い詰めるとは思ってもいなかった……!
毎晩悪夢を見るんだ!一切セリフを覚えていないのに、本番の幕が上がる夢だ!
こりゃ……相当ねえ……
現実は、もっと悲惨なことになる……
俺のギャグで客は白け、決めのセリフで失笑するだろう……!
それはさすがに、かわいそうかも……
ええ……続けていく自信をまるごと失っちゃいそう……
おいお前!
!
お前は芸がわかっている! と、聞いたことがある!
どこでそんな噂が流れてんのよ……
なあ、何かないか? 頼む、アドバイスをくれ!
この絶望的な状況で、俺はいったい、どうしたらいいんだ!?
思い出6 (友情覚醒)
この光は……! ころがし……?
ちがうよ。
サス?
ちがうよ。
ムービング?
全部違うよ。舞台用語使わないでくれる?
そうか……しかし、いまのでわかったぞ……!
なんでよ。
『幕が上がれば、舞台は役者の物』……という、言葉がある。
へ? なにそれ?
つまり、それまで何をどう演出しようと、本番が始まれば誰も手が出せないということだ。
ふむう。
これを逆手に取り……俺は……インプロで勝負する!
いんぷろ……?
アドリブ、とも言うな。即興劇のことだ。
ダメ!!! それだけはダメな気がする!!!
考え直して、レザールさん!!!
な、ど、どうしたんだ!?
『本筋がツマンナイからアドリブでどうにかしよう――』
コレ危険 !コレが一番危険なの!
上手くいった試しなんか、聞いたことないわっ!
そ、そうなのか……?
そうですよ! そんなことするくらいなら、じっくり、じっくり!
脚本が寒くたってなんですか!大丈夫! 人を笑わせるには『ひと間』あればいいんです!
お、おお……
アドリブなんかやめましょう! きっちり、いきましょう!
脚本がヤバくてもさ! 真っ剣にやれば、なんとかなるから!
その方が、被害は最小限におさまるから!
問違っても、本番のアドリブに頼っちゃダメ!
一番傷つくのはアンタよっ!
……そうか。
ありがとう。俺が間違っていたようだ……
よかった……
もはや負けの確定した舞台ではあるが、それでも……
実直に稽古を重ね…………誠心誠意、演じてみよう……
うん……がんばってね……心を強くもってね……
――ありがとう。おかげで、覚悟が出来た――
もはや、決してウケないこの舞台――
逃げずにスベってこようではないか!
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