【白猫】オーバードライブ紅蓮4 Story3
オーバードライブ紅蓮4 Story3
目次
story16 レクトの正しさ
スキピオさんはウェルナーさんの同僚なんですね……
ああ、リネア・シルヴェストリの回収も任務に含まれている。君がよければ同道しよう。
(……この人はキアラを殺そうとした。本当に信じていいのかな?
でも、僕一人じゃあ、キアラを守りながら戦うのも難しい……)
……わかりました。お願いします。
排除する。
で、でも、あの人たち、島の人ですよ。
だが、敵だ。
やめてください!
これは骨が折れるな……
囲まれたか。
第参術式構築。ソウル装填。重複励起。第参展開――ステラ・インペラトーレ。
レクト、君には邪悪を滅ぼす素質がある。
っ!?
だが、まだ圧倒的に足りない。君はこの世界に希望を持ちすぎだ。
やめ……
君は弱い。それは、正しさにすがっているからだ。その正しさは君から力を奪う。
君の信じる正しさは無価値で無意味で無力だ。
……そんなことない!レクトくんは私を助けてくれた!
だが、それは貴様だけだ。他のクレイドルは?今もこうして魂なき兵士とされ、私に滅ぼされているぞ。
なぜ、彼らは救われない?なぜ悲劇は終わらない?なぜ邪悪は今もなお滅ぶことがない?
やめて……
それは貴様らの信じる正しさより、邪悪のほうが強いからだ。
女子供を殺せぬという者には、女子供を兵士として差し向ける。家族を大切にする者からは家族を奪う。
時に大義を掲げ、聖者に擬態し、無皐の民を邪悪の尖兵とする。奴らの選択肢は無限だ。
教えてほしい。手段を選ぶ君たちはどうやって邪悪に打ち勝っというのだ?
そんなに強いなら!殺さなくたって!!
ああ、殺さずに勝つのは可能だ。そして生き延びた悪党は、君の大切なものを殺す。
そんなのわからないじゃないですか!こんなこと、やめてください!!
……君には、正義に対する絶望が足りない。邪悪に対する憎しみが足りない。己に対する呪いが足りない。
それでも私は君に期待しよう。いつか、我々と同じモノになれると信じている。
行け。道は作った。ここは私が受けおおう。
…………
リネアを助けにきたのだろ?私に殺される悪は切り捨ててしかるべきだ。
……あなたは強くても……最低です。
でなければ、邪悪には勝てん。
story17 領主の娘
…………
気にすることない。スキピオあの人の言うこと、極論だと思う。
私たちはリネアを助ける。それだけ考えればいい。
うん、そうだね……
誰か来る!キアラ、隠れて!
カトレアさん!?
どうして、君がここに……
レクト……様……
君も……レヴナントなの……?
…………
……私はお母様を探しに来ただけです。
……どうしてこの場所を知ってるの?
それは……すみません。本当のことを言います。
お母様がよくないことをしていることは、なんとなくわかっていました。
ここのことを知っているのも、お母様に、よく連れてこられたからです。
なんのために?
……私はお母様の実の娘ではありません。
お母様にとって私は道具で……いろいろされて……
もう言わなくていいよ。だいたい察した……
この人は、私たちと同じ。ただの被害者。
でも、お母様は優しかったんです。なにも持たない私に多くのものをくれました。
だから、心配なんです。
「君の信じる正しさは無価値で無意味で無力だ。」
……カトレアさんは、お母さんのこと、信じてるの?
……わかりません。逃げたいと思っていたのも事実です。いつか、この島を出て、外の世界を見てみたいって……
でも、こんな騒ぎになって一番心配だったのが、お母様だったんです。
「時に大義を掲げ、聖者に擬態し、無皐の民を邪悪の尖兵とする。奴らの選択肢は無限だ。」
……僕は友達を探しに来たんだ。君のお母さんにさらわれた友達を……
…………
君のお母さんを許すことはできない。でも、そこで諦めたら、ダメだと思うから……
そのためにもリネアを助けたい。怒りや悲しみのまま、終わらせちゃダメだと思うんだ。
<傑作だな。敵を許すためにもリネアを助けるか……どこまで幸せな頭をしてるんだ?>
(なんとでも言えよ。僕はこれが正しいと思うだけだ)
カトレアさん、僕たちに力を貸してくれないかな?
はい……それがお母様と私の罪滅ほしになるのであれば。
僕の友達……リネアのいる場所に心当たりはないかな?
……おそらく、あの部屋だと思います。
ついてきてください。
story18 仇敵
とりゃりゃりゃりゃりゃ!
次から次に!数多くねーか!!
しかたがありませんよ。敵の本拠地ですし。
セーラ、体調はどうだ?
まだ大丈夫!
ペース配分、できるようになってきましたね。
親分、三日会わざれば、刮目して見ろ!!
島の連中か!?
撃て!!
操られてるって感じじゃなさそうですね。
ここがレヴナントの基地だってわかってるってことか?
自覚はしてるでしょうね。ウェルナーさん……
ああ、排除する。
……殺すのか?
……必要ならな。二号、セーラを連れて、離れろ。
第玖術式装填――
殺せ!!
其は忌むべき偽神にして奈落の王。汝に死と苦痛の慈愛を与えん。術式展開――
――オスクリタ・ヴェレーノ!
ぐ、くるし……
ぐっ……!
(これ以上はセーラたちも巻き込むか……)
ウェルナー、大丈夫か!?
ああ。問題ない。
皆さん、生きてますね……今の禁忌、なんですか?
周囲のソウルを腐らせ、瘴気を生み出す禁忌だ。
しばらく中毒で動けんだろう。運が良ければ死にはしない。
そっか……よくやったぞ、ウェルナー!あたしが褒めてやる!
行くぞ――
「ジャアアアアア!!」
!!
今の……
……ああ、そうだ。
ここにいたか……赤いヴァリアント!
レクトかもしれねーだろ!!
邪魔をするなっ!!
――っ!
追いかけるぞ、二号!
はい!
story19 夢から覚める時
一番初めの記憶は、痛みと苦しさと病院の天井――
あたしは、いつも死を身近に感じていた。
夜になって一人になると、胸が苦しくて、気持ち悪くて。どんな薬も効かなくて、やっと眠れても息苦しさで目を覚ます。
そんな時は元気になったらやりたいことを妄想するのだ。
ケーキをたくさん食べたい、とか。ジモートランドに学校とか、行くことのできない場所に行きたい、とか……
ただ走りたいとか笑いたいとか、そんな根拠のない妄想と希望だけが苦痛を少しだけ忘れさせてくれる。
君は必ず治るよ。先生が治してみせる。
その言葉を、あたしは嘘だと思った。
信じていなかった。どうせよくなるわけがないと。学校も行けずに病室の中で死ぬのだと思っていた。
でも、あたしは救われた。
それこそ、あっけなく、ある日、突然、救われてしまったのだ。
先天性ソウル欠乏症を克服してからは、死を身近に感じることは減っていった。
でも、嘘かのように手に入れた幸せは、ある日、突然、夢のように消えてしまうかもしれない。そんな思いがずっとある。
だから、あたしは、なんにでも全力で取り組むのだ。
後悔をしないために。いつか倒れた時に『もう充分がんばった』と胸を張れるように。
だから、とうとう――
――夢から醒める時が来ただけだ。
……夢……か……
(体が重い……ああ、こんな感じだったわよね、ずっと……
もう無くなってる……サリム先生がくれたものが……)
くやしいな……
(あきらめたくないな……でも、どうしたらいいんだろう……?
いろいろ考えたいのに……息苦しい……なにこれ……無理じゃない……こんなの……
ここから出られたって……もうもとには……)
…………
(……泣いてやるもんか。つらくたって……悲しくたって……)
リネア!!
レクト……?
リネア、大丈夫!?
…………
レクト……キアラぁ……
どこか痛いの!?
違うけど……ああ、ほんと、もう!卑怯よ、こんなタイミングで!
……ありがとう。助けにきてくれて。すごく嬉しい。さすがに今回はちょっと堪えたから……
よかった……リネアが無事で……本当によかった……
レクトくんも泣いてるの?
え!?ち、違うよ!ただ、ちょっとホッとしすぎて!
…………
あの、レクト様、このままここにいるのは……
そ、そうだよ!早く別の場所に移動しないと!
リネア、歩ける?
……ええ、大丈夫。
無理はしないでね。
うん。さあ、行きましょう。
story20 復讐者
赤いヴァリアント、やっとお前に!
ああ、そうか……
お前か!!
……正気か?
左手で受けたな……スキピオ、お前、左利きか?
それがなんだ?
ぐっ!
洗脳でもされたか?
……いや、違う。俺の判断だ。
…………
赤いヴァリアントの声を聞いた。この近くのはずだ。
私も聞いた。今回の件に守護者が出てきても、おかしくはない。
……ああ、そうだな。奴らはイングニウム・コードを守るために現れる。
だが、常に現れるわけじゃない。
例えば、精神共有の禁忌があったロアノク島、あの時はレヴナントが花園からコアを強奪した後に現れた。
奴らが真の守護者ならば、花園が研究を始めた時点で現れるべきだ。
なのに、現れたのは、レヴナント襲撃後だ。
他にも疑問がある。なぜ、花園に保管されていたコアは奴らの襲撃を逃がれられた?
……偶然だろう。花園の被害もゼロではない。ファビオラも守護者に殺された。
ああ、そうだ。花園の被害もゼロじゃない。だが、あまりに恣意的すぎる。
それに奴らの目的だ。イングニウム・コードの守護。それは……
封印・管理・統制……花園の理念と重なる。
我々が守護者と手を結んでいると言いたいのか?
いや、俺の考えはそうじゃない。
<クーリアの魔獣事件……スキエンティアの地下にあったヴァリアント化の禁忌によって生じたものだ。
作ろうと思えば、いくらでも作り出せた。>
――赤いヴァリアントは花園内部にいる。
それも、かなり上の人間だ。
それが私だと?
ああ、そう思っている。
私にとってもファビオラは知人の娘であり、同僚であり、良き友人でもあった。
そんな彼女を、私が手にかけたと言うのか、貴様は……
ああ、お前ならやる。他の人間ならともかく、お前ならやるよ。
……根拠のない妄言だ。
ああ、そうかもしれないな。でも、俺は納得しない。
スキピオ、お前を殺してでも、真実を喋らせる。
本当にできると思っているのか?
ああ、そのためだけに生きてきた。
第拾参術式装填――
――変身――
グルァァァァッ!!
愚かな弟子だ……
story21 混戦
はあ、はあ、はあ……
リネア、大丈夫?
ありがとう……でも、大丈夫だから……
<ここから逃げ出しても、奪われたコアがなければ二人は死ぬぞ。>
……カトレアさん、聞きたいことがあるんだ。
?
コアを取り戻さないといけない。どこにあるか、思い当たる場所はないかな……
コアとはどういうものでしょうか?
キューブ状の黒い物体だよ。たぶん厳重に保管されてると思う。
確証は持てませんが……あるとしたら保管庫か研究室だと思います。
こちらです。ついてきてください。
レクト、ごめんなさい。早く逃げなきゃいけないのに……
謝る必要なんてないよ、行こう、リネア。
リネア、無理しないで、肩貸すから。
ありがとう、キアラ……
キアラも無理しないでね。
……うん、ありがとう。でも、私はまだ大丈夫。
ここです。
カトレア様、勝手な行動は謹んでいただけないでしょうか?我々も困惑しております。
エルヴェ様が亡くなられました。
お母様が……そんな……
あなた様がレナトゥスを導かなければなりません。さあ、こちらへ。
この人たちは、どうするのですか?
……その者たちは敵です。
でも、レクト様は私の友人です!
……その戯れに我々はどこまでつきあえばよろしいのでしょうか?
…………
レクト様……
なに?
いつか外の世界に私を連れ出してくれますか?
……うん、約束するよ。
でしたら、ここは、私にかまわず、お逃げください。お母様がいない今、私が殺されることはないので。
なにをする気なの?
いつまでも、お待ちしております。レクト様……
わかりました!そちらへ行きます!でも、この人たちには手出し無用です!
…………
…………
奴らを殺せ。
やめて!術式展開!
カトレア様!どういうおつもりですか!?
レクト様!お逃げください!!
逃がすな!殺せ!!
リネア、キアラ、今は逃げよう……
わかった。リネア、行こう。
ええ……
story22 イモータルハウンド
グルァァァッ!!
第肆、第陸、第拾、第弐拾伍術式構築。第肆、第陸、第拾、第弐拾伍術式構築。ソウル装填、重複励起。
第拾展開――オスクリタ・アルティ。第肆展開ーディオ・カヴァリエーレ。第弐拾伍展開ーカーマ・トニータラ。
グッ!
グアアッ!!
遅い。
拘束したぞ。
グルァァッ!!
第拾の模を引さちぎるか……
だが、そこまでだ。
アグァッ!
拘束が不可能ならば、殴り殺す。
ガッ!グゥ……
貴様は強い、ウェルナー。だが、私の次にだ。
誰が貴様に戦い方を教えたのか忘れたか?
ウェルナーになにしてんだぁぁっ!
ウェルナーに教わらなかったか?体格差のある相手は、初撃で確実に仕留めろと……
うる……せえ……
次は頭蓋を砕く。そのつもりで来い。
ウェルナーを踏むんじゃねええ!!
マスター!落ち着いてください!あの人、本気です!
放せっ!!ウェルナーから足をどけろ!!
命令違反。仲間への攻撃。極刑に値する蛮行だ。それを許せと?
殺すからな!ウェルナーを殺したら!あたしがおまえを殺す!!絶対殺す!!
マスターっ!!ウェルナーさんを助けられるのはマスターだけです!!
――っ!!
スキピオさん、今の状況は、不幸なすれ違いで生じています。
そのすれ違いを助長させないためにも、ウェルナーさんを踏むのはやめていただけませんか?
ああ、いいだろう。
……そのバカ、なにしたんだ?
私を守護者と誤認して襲いかかってきた。違うと言ったが、理解されなくてな。結果、こうなった。
お前も知ってんだろ。そいつはバカなんだよ。だから、見逃せ。
見逃しはしない。だが、殺しもせん。
人工精霊の機転に感謝しろ。それがなければ、死んでいたぞ。
待……て……
まだ……だ……まだ……終わって……ない!
ウェルナー、落ち着けよ!
どけっ!!やっと……
やっとみつけた手がかりなんだ!やっと……
君がそう思いたいだけだ。私は君の仇ではない。
信じ……るか……じゃあ、あの声は……誰だったんだ!?
おそらく他の場所にいたのだろう。そう考えるのが妥当ではないか?
……お前じゃなければ……誰なんだ……!?
誰がファビオラを殺したんだ!?彼女がなにをやった!?どうして殺されなけれぱならなかったんだ!?
あんなにも優しかった彼女がどうしてっ!?
…………
君の悲しみは理解する。その怒りも尊重する。だが、あまりに妄執だ。
いい加減、前を向いて生きたらどうだ?
ファビオラなら、それを望むはずだ。
彼女はなにも望みはしない。笑うことも悲しむことも怒ることも彼女にはもうできない。
なら、俺が代わりに怒りを晴らすだけだ。
ならば、私は彼女の代わりに君を憐れむよ。
黙れ……
……その憐れみもここまでだ。次はない。
そのつもりでいろ。
……誰なんだ。誰がファビオラを……
…………
……生きて帰れれば、また次があるよ。
あたしがつきあう。お前が納得するまでつきあうからさ……
だから、顔あげよーぜ。ケガも治さねーといけねーし……
ああ……すまない……
気にすんな。あたしはおまえの親分だからな。
story23 エマージェンシー
レクト、大丈夫!?
ジャッ。
(どんどん数が増えてる。これじゃあ、コアを探してる余裕なんてない……)
死ねっ!
(このくらいの力なら!)
<なぜ、本気で殴らない?敵の数が減らないぞ。>
(本気で殴れば、死んじゃうだろ……)
<……あの男も言っていただろ。君が情けをかけた敵が、君の大切な人間を傷つける。>
(……でも、家族がいて、あの人たちにだって友達がいるんだ!)
<このままでは、君は目的を達成できない。二人を守りきれず、殺すことになる。>
(わかってるよ!)
<そこで提案だ。俺に代われ。俺ならば、魔術を使い、誰も殺さずに無力化できる。>
(……本当に誰も殺さないですむのか?)
<ああ、約束しよう。そもそも支配権は君にある。君の意思で俺を引き戻すことは、可能だ。>
(……わかった。お前に任せる)
<……期待には応えよう。>
ああ、いいな。やはり自由というのはすばらしい。
レクトくん?
さがっていろ。術式展開。
さて、こんなものだな。
今の……魔術?レクトがやったの……?
ロアノク島以来だな。会えて嬉しいよ、リネア。
あんた、まさか……
どうして、あんたが!レクトをどうしたの!?
彼は殺人を嫌うからね。とはいえ、殺意を抱く連中から殺さず君たちを守り抜く力はない。
だから、頼まれたんだよ。敵も含めて君たちを守れと……
…………
さあ、行こう、リネア。
レクトくん、すごい……
…………
どうして無視するの?
キアラ、気にする必要ないわ。こいつ、レクトと違って性格悪いから。
……散々な言われようだな。これでも俺は君に興味はある。
ロアノク島での出来事を俺は忘れたことがない。
君はあの短時間で禁忌の術式を解析、応用し、そのうえ精神世界で強固な封印術式を構築した。
君は天才だ。この俺が保証する。
褒められても、ぜんぜん嬉しくないわ。
そう邪険にするな。これでも俺は君に好意を抱いている。
は?
俺は君のことが好きだよ、リネア。
なっ!
違うから!今のあいつの悪ふざけだから!!
レクト?
そうだよ、僕だよ。あいつ、本当、性格悪くて……
レクトくん……無視はよくない。胸が痛くなる。
ご、ごめん。あいつ、本当に嫌な奴で……頼りたくなかったんだけど……
ウェルナーさん!?
レクト・ラロ……
やっぱここにいたのか、子分ども!
押忍、親分。二号の姉貴も押忍。
こんにちは。キアラさんまでいらっしゃったんですね。
これでサリムもいれば、子分大集合だな!
……レクト、お前はここでヴァリアント化の禁忌を使ったか?
はい、使いましたけど……
そうか……
ウェルナーさんたちは、コアをみつけたりしてませんか?探してるんですけど……
それはこちらも同じです。やはり、まだみつかってないんですね……
「緊急事態発生。緊急事態発生。基地の放棄が決定しました。研究員はすみやかに避難を開始してください。