【白猫】ラズィーヤ・思い出
夜の踊り子 ラズィーヤ・ナグム 妖しい雰囲気を持つ踊り子。 夜の酒場を巡り、ある男を探し続けている。 |
思い出1
あら……あなた。
<薄衣をまとった踊り子が、妖艶な微笑を向けてくる。>
さっきから私のことを見てるのね。ふふ……私が気になる?
<ひらりと細い指先が伸びて、こちらのアゴを怪しくなでる。>
いいわよ?知りたいなら、教えてあげる。たくさん……ね?
だめーっ!!
<雄叫びを上げて、キャトラが割り込んだ。>
アイリスの前で、そういうはしたないマネしないでくれる?
主人公!アンタもデレデレしてんじゃない!
あらあら……かわいらしい猫ちゃんね。
私はラズィーヤ。気になったなら、また訪ねておいでなさい……坊や。
ふんだ! なんなのよ、あの女~!
ずいぶん手馴れてたけど……アゴをなでるのが趣味の人かしら?
思い出2
あら、あなたたち。また来たのね。
こんにちは、アゴなで師のラズィーヤさん!
……?
ああ、そういうこと。ふふ―――あなたもかわいい子ね。
?
シャーッ! シャーッ!
心配しなくてもいいわ、猫ちゃん。私、これから仕事で忙しいから。
ラズィーヤさんのお仕事って、どんなお仕事なんですか?
うふふ……じっくり教えてあげましょうか?
フシャーッ!!
冗談よ、じゃあ、またね。
そうそう……私、アゴなで師じゃあないわ。酒場で踊り子をやっているのよ、
お嬢ちゃん。
そっか……踊り子さんだったのね。
ふんだ!へたっぴよ、どーせ!
思い出3
……危ないッ!
<突然、ラズィーヤがナイフを投じた。
その刃は、アイリスの頭上に落ちてきた木材を鋭く弾き飛ばす。>
う、うわぁーっ!?アイリス、大丈夫ぅ!?
う、うん……
ありがとう、ラズィーヤさん。おかげで助かりました。
建物の一部がはがれたみたいね。ふう……大事がなくてよかったわ。
すごいナイフさばきでした……踊りで使うんですか?
ううん、違うわ。これは……復讐のために磨いた技なのよ。
復讐……?
そう……
<ラズィーヤは、ほの暗い笑みを浮かべた。>
恋人を殺した男への復讐……酒場で踊っているのは、その情報を集めるため……
ラズィーヤさん……
怖がらせたのならごめんなさい。でも、これが真実よ。ラズィーヤという女のね……
思い出4
こんにちは、ラズィーヤさん。その……見つかりました?
それが、尻尾をつかめないの。どうも、仲間がかくまっているようなのよ。
そうなの~?
そいつは義賊を気取って、富豪の家からお金を盗んでは、人々に分け与えているから……
いい人……じゃ、ないんですか?
民衆はそう言うわ。彼こそ英雄であり、正義だと……
でも……ヤツは私の恋人を殺した!確かに見たのよ……あいつがその手で殺すのを!
彼が、弱者をしいたげる金持ちだったから殺されたんだ、って、みんなが言うわ……
みんな彼の優しさを知らないから……だからそんなことを言うのよ。あいつに騙されて……
ラズィーヤさん―――
許さない……私だけは。どこまでも追いかけて……殺す!あいつが彼にしたように……!!
思い出5
……
<ラズィーヤが、虚ろな目で座り込んでいる……寄る辺もない幼子のように。>
ラズィーヤさん……あの―――
……女の子がね。
まだ小さな女の子が……言うのよ。私の恋人が敷いた圧政のせいで、父が身体を壊し、亡くなったって。
……
その子だけじゃない。抗議した弟を処刑された人もいた。重税で薬が買えず、妻を亡くした人も……
みんなが言うのよ……死んでくれてよかった。あいつは死んで当然の悪人だった、って……
…………
でも……だとしても。掃きだめにいた私を救ってくれたのは、あの人だけだった……
あの人は、優しかった。私には優しかったのよ……
ねえ……主人公。私はどうしたらいいの……?
あの人の仇を討とうとする私も……みんなにとっては悪人なの……?
思い出6 (友情覚醒)
淡い……光―――
淡くて……だけど、決して消えない……心の光……
ラズィーヤさん、あのっ……!私……うまく言えないけど……
……大丈夫よ、アイリスちゃん。
<アイリスが伸ばした手を握り返して――ラズィーヤは淡く微笑んだ。>
真実はまだわからない。あの人が悪人だったのかどうか……
でも、どちらであれ……あの人が私に優しくしてくれたことだけは、決して変わらない事実……
私……やっぱり、あの人を殺した犯人を探すわ。
でも、復讐のためじゃない。なぜあの人を殺したか――それを聞くために!
それまで――もう少し、ここにいさせてもらってもいいかしら……?
はい、もちろんです!
しょーがないわねぇ~。
ふふ、ありがとう――ふたりとも。それに主人公……
きっと、見つけてみせるわ。犯人と――私にとっての真実を!
深き夜の舞い手