ハリム・思い出
月夜の盗賊 ハリム・モハマド 富豪のみを狙う盗賊。 奪った金は民衆にばらまいている |
思い出1
…………
<布で口元を隠した青年が、じっとこちらを見つめている。
ぞぐり―と。ナイフを突き立てられるような冷たい威圧感……>
あなたは……?
……ハリムだ。
ハリムさん? はじめまして――
馴れ合う気はない。
<ぴしゃりと言い捨て、ハリムはその場を去る。>
何よアレぇー!?失礼しちゃうわ~!
怖そうだけど……なんだか悲しそうな人……
思い出2
<―ぞぐり、と、またあの威圧感が襲った。
次の瞬間、頬をかすめて飛んだナイフが、近くの木の幹に突き刺さる。>
あ、あ、あ、あっぶなぁ~っ!?何よいきなりぃ~っ!?
……危ないところだったな。
あ、危ないどころじゃないわよ!主人公、大丈夫ぅ!?
危うく蚊に刺されるところだった。
は? 今のアンタが投げたわけ!?蚊をやっつけるためにぃ!?
そうだ。
し、信じらんな~い!
そうか。だが事実、俺のナイフは蚊を仕留めた。
そっちじゃなくて!そんなことでナイフを投げる神経が信じられないって言ってるの~!
<ハリムは答えず、ナイフを回収して去っていく。>
すごい腕ね……あの人、何者なのかしら。
ただの危険人物よ、もぉーっ!
思い出3
主人公……といったか。
<ぞぐり―威圧感と共に、ハリムの声がかかる。>
空を飛ぶ島……大したものだ。うまく使えば、一財産を稼げるだろう……
な、何よ!まさか奪う気じゃないでしょうね!
今のところ、そのつもりはない。だが……
主人公。おまえに聞いておきたい。
おまえたちは、なんのためにこの島を使う。
この島を使って何を得る―?富か……栄誉か―
<ハリムの瞳に冷たい光が輝く。
返答次第で、それは刃と変わるのだろう……>
ふんだ!主人公はそんなこと考えてないわよ~だ!
なら、純粋な冒険心、というところか……
<ふと、ハリムの放つ威圧感が緩む。
……笑ったのかもしれない。>
ならばいい。お前の欲望がそれだけで済んでいるうちは、まだ……な。
思い出4
あの、ハリムさん……
……なんだ。
ハリムさんは、どうしてこの島に……?
……正義のためだ。
せ、正義ぃ~っ!?
どうした。俺はおかしなことを言ったか?
アンタがそういうコト言うタイプだなんて、思ってもなかったわ……
あいにく、俺は常に正義のために戦ってきた。弱者をしいたげる、金持ちどもを相手にな。
金持ちと戦う、って……泥棒ってこと!?
まあな。民を苦しめ、私腹を肥やす連中から、金を奪って民に配る……犯罪者には違いない。
だが、それでもやらねばならない。泥に沈んだ正義を拾い上げるには、汚名をかぶるほかにない……
じゃあ、アンタがこの島に来たのって……
そこから先は自分で考えるんだな……
思い出5
<――ぞぐり、と、ナイフでえぐられるような威圧感が全身を襲う。>
主人公……?どうしたの……?
<ハリムだ。姿はない――だがいる。どこかに。隠れてこちらを見つめている――
この気配は、殺気だ。ハリムがこちらを狙っているのだ。冷たく凍える刃の瞳で……>
…………
<こちらを一撃で仕留められる瞬間を……探している……!>
思い出6 (友情覚醒)
<――飛び出たハリムが、こちらの首筋に伸ばした指先を、寸前で止めた。>
……気づいていたか。
それに、この光。穏やかで尊い……これが、お前のなかの光だというのか?
ハリム、アンタ……
……かつて俺は、ある男の命を奪った。
金の亡者だった。弱者を苦しめる最悪の存在だった。ヤツのせいで、多くの民が命を落とした……
警告はダメだった。命を奪うしか止める手立てがなかった。だから俺が手を下した……
だが……今でも疑っている。本当にそれしかなかったのかと……他に方法はなかったのかと……
ハリムさん――
……俺は見極めなければならない。おまえが、この島を使って、善を保つか、悪に堕するのか……
<ハリムは手を引き、口元の布を下した。
あらわになった素顔で―彼は、しっかりとこちらを見つめてくる。>
悪となるなら、俺はおまえを討つだろう。
だが……それまでは――
覚醒絵・覚醒画像
揺るぎ無き信念の義賊