【白猫】パルヴァネ・思い出
パルヴァネ・ファルナーズ cv.近藤唯 オアシスの島に生まれ、世界を旅する語り部。 優雅な舞いと共に、千夜一夜の物語を紡ぐ。 | ||
2015/07/29 |
思い出1
私は……探しているの。君は知らないかしら?
<パルヴァネは、キャトラの背中をなでた。>
でも女の子は、とっても食いしん坊さんだったの。
…………
……
おかげで女の子はおなかいっぱいになり、世界は救われました、って話。
…………
……
「空を飛ぶなんて面白い島ね。
こんな島があることを話したら、貴方はどんな顔をするのかしら。
陛下……貴方は今も……たった一人で、苦しんでらっしゃるの?」
思い出2
あの不思議な女の子……アイリスちゃんとキャトラちゃんと出会って、この空飛ぶ島に……
素敵な物語ね……
アイリスちゃん。よかったらあなたのお話も聞かせてほしいな。
……
…………
<パルヴァネは、一人、星空の下で踊っている。
「金色輝く砂の海。波間に漂う不夜城は、その名も高きオアシスの島。島を統べるは若き王。
千の裏切りと、千の悲劇。無数の刃と矢を退け、孤独なる王は玉座についた。王はいやしき語り部に問う。
『語るがよい、語り部よ。しばしの憩いとなれば良し。ならねばうぬら一族は、のこらず島を追放とする』
語り部は語る。霊鳥の血を引く射手と、未来を見る女王の悲しさ定め。
王はのたまう。『誇りなど、くだらぬものを。国を滅ぼした女王に忠義を尽くすとは、愚かなやつよ』
語り部は語る。黒き鎧の金髪の騎士。万人不敵のその武勲。されど絆は毒となる。騎士が受けた報いは裏切り。
王はのたまう。『我ならばもっとうまくやる。騎士が自ら死ねるように』
語り部は語る。人を愛した龍と、愛に応えた乙女。垣根を超えた愛と結末。秘められしその物語を。
王はのたまう。『くだらぬな。乙女は龍に食われたのだ。愛し合うなどあろうはずがない』
いやしき語り部はおのずと悟る。語り部の受難と、閉ざされし心。いかなる言葉も届きはしない。
悲しき王の心には。しかし定めは、さらに語り部をもてあそぶ。
王はのたまう『実にくだらぬ話であった。明日の夜は、もう少しましな話を語るがよい』
<パルヴァネは舞いを終え、夜空の星を見つめた――>
思い出3
<パルヴァネは、静かに舞い始めた。>
とある島に、お塩を使って悪魔を祓う女性がおりました。
……
…………
<昨晩に続き、パルヴァネは一人舞っている。>
「絢爛なるオアシスの国。輝きの都は人々を魅了する。されどかの国の夜陰には幾多の毒蛇が隙を伺う。
その少年は、幼いころより寺院に預けられ、神官となるべく育てられた。彼こそは王国に生まれし、第四の王子。
王位は継げぬ。されど王子は、勉学に励み、祈りを捧げる人生に、満ち足りていた。
されど、王子の父が没したころ、王位を継いだ第―王子は、己の兄弟をことごとく殺すと決めた。己の地位を脅かすものを、あらかじめ葬るべく。
王子は、友であり教師と思っていた神官たちに裏切られ、売り渡された――
あら、起きてたのね、主人公。
いいのよ。ふふふ。この物語は、まだ踊りとか曲が決まってなくてね。
練習をしながら、構想を練っていたの。
悲しい話なのかって?そうね、悲しくて辛くて、しかも誰も救われない話。
……誰がそんな話を聞きたいのかって?
そうよね。こんな話……誰も……聞きたくないかもね。
思い出4
あるところに、―人の盗賊がいました。盗賊だけど、悪い人じゃないのよ。
その人は、悪いお金持ちからお金を盗んで、貧乏な人に配っていたの。
盗賊は領主の館に忍び込み、領主を襲ったの。盗賊は領主にいいました。『いまこそ悪事の報いを受けろ』
盗賊は怒りを覚えます。『いかなる悪が来ようともこの俺はただ滅ぼすだけ。奴隷狩りを繰り返し、多くの民を苦しめたお前を、許すものか』
領主は答えます。『俺は確かに悪だろう。だが俺は、悪の道を行くことしかできなかったのだ』領主は、自分の肩にある刺青を見せました。
その刺青は、奴隷の人につけられるものでした。領主も、昔は奴隷だったのです。
盗賊は迷いました。領主が悪なのは間違いありません。でも彼を殺すのは正義でしょうか?
領主はその隙を見逃しません。隠し持った剣で盗賊を襲います。だが一瞬早く、盗賊は領主より剣を奪い、逆に領主の胸に剣をつきたてたのです。
盗賊は窓から飛び去り、夜の街に消えていさました。
倒れた領主は、己の悪事を思い出しながら、果てない眠りにつこうとしていました。
そんな領主を一人の女性が助け起こしました。彼女は、領主がたったー人本当に愛した恋人でした。
『しっかりして、あなた』領主は涙を流しながら笑い、こと切れました。
恋人は復讐を誓いました。『彼が殺されるのが正義なら、その正義を私は許さない』
一体誰が正義だったのでしょう。
―体誰が悪だったのでしょう。
誰が、正義と悪を決めることができるというのでしょう。
思い出5
私の故郷、昼間は熱いから、みんな夜更かしなの。そこで、夜を楽しく過ごすために、夜通し物語を語る、語り部というなりわいがあるの。
でもそんなとき、オアシスの島におかしな噂が流れたの。語り部たちが、王様を貶める話を広めたっていうのよ。
王様は語り部の長老たちに、真意を問いただした。
語り部たちは言ったわ。
『陛下が悪しき行いをすれば容赦なく誹りましょう。しかし、故なき讒言は語り部の矜持にかけていたしませぬ』
王様は言ったわ。『なるほどそちらの矜持は解った。だが我は王として、汝らの誠意を試さねばならぬ』
『汝らの中の一人を選び、我に物語を語るがよい。汝らの物語が我の心を打てば、汝らの誠意を信じよう』ってね。
でも王様は……私の想像とは全然違う人だった。
王様は、小さなころから人に裏切られ続けて、誰も信じられなくなっていたの。
私は王様に、幾晩も物語を語った。でも、どんな物語も、彼の心を開くことはできなかった。
でも私は、幾晩か物語を語るうち、こう思うようになった。
―度だけでも、王様に、心を開いて欲しいって。
ある晩……王様はいったわ。語り部たちの誠意はわかった。疑いを取り下げよう。もはや物語に用はない……って。
心に届かない物語を語る語り部なんて……意味が無いもの。
思い出6 (友情覚醒)
綺麗ね……どんなに言葉を尽くしても、語りきれないくらい。
そうね、ありがとう、みんな。
……私、いってくるわ。
…………
……
「なぜ戻った、パルヴァネ。……もはや我に、物語など……」
「お願い申し上げます。一度だけ、私に機会をください。」
「語り部一族の立場を、危うくするかもしれぬのだぞ。」
「皆には、私の意志を伝えております。全て覚悟の上のこと。」
「……よかろう、語るがいい。」
「ありがとうございます。」
「金色輝く砂の海。波間に漂う不夜城は……」
…………
……
(この……物語は……)
「凍てつく心の、頑ななる王。語り部は悲しみと共に問う。この世の何が、王の心を閉ざしたのか。
やがて語り部は知る。王のたどりし生涯を。
絢爛なるオアシスの国。輝きの都は、人々を魅了する。」
…………
……
「悲しき王子は、捕えられ、―人処刑を待っていた。
友達も、教師も、誰もかれもが信じられない。王子はー人終わりを求める。
だが、なんたる僥倖。王子は大臣の手によって助け出された。大臣が望みは王子を担ぎ上げ、第一王子に背き、退けること。
王子は、大臣と共に兄を倒した。激しい戦いの中、少年は大臣の娘を愛し、妻とした。王子はついに、王となった。
しかし大臣は、祝いの杯に毒を盛った。
毒は王の心を奪う。古の技は、王の心を押し流し、大臣の意のまま動く人形にした。
呪いの杯を手渡したのは、愛する妃。めでたき戴冠の日は、絶望の日々の始まりだった。
されど王は、絶望するほど愚かでも、後悔するほど弱くもなかった。
王は体から少しづつ毒を抜く。人形のふりをしつづけながら。そして大臣が油断したところ、―刀のもと首をはねた。
もはや王は人形にあらず。全てを悟り、妃は身を投げた。
信じた友に裏切られ、結んだ愛は偽りだった。王はのたまう。『我はもう、何も信じない。この世の何も信じはしない』」
「そうだ……この世の、何も……!!」
「お聞きいただきありがとうございます。これはオアシスの国の王たる方の物語。
陛下の物語にございます。
「……ははは。なんともつまらぬ物語よ……
ただ悲しく、つらく……誰ひとり救われぬ……誰がこのような物語を聞きたがるものか。」
「いいえ、この物語は、まだ終わってはおりません。」
「……何?」
「あまたの苦難を乗り越えた王は、民に平和を与え、幸せな生涯を送りました。
そんな物語の続きを、私は望みます。」
「……続き、か。
この物語に、続きがあるとはな。
願わくば、私も知りたい……そんな物語の続きを。」
「はい……。どうかこの私にも、教えてくださいませ。」