【白猫】パルヴァネ・思い出
パルヴァネ・ファルナーズ cv.近藤唯 オアシスの島に生まれ、世界を旅する語り部。 優雅な舞いと共に、千夜一夜の物語を紡ぐ。 | ||
2015/07/29 |
思い出1
ふふふ、こんにちは。
私は……探しているの。君は知らないかしら?
主人公が、きれいなお姉さんに迫られているわ!
どちらさまですか?
私はパルヴァネ。旅の語り部よ。
語り部ってなに?
お話を語って聞かせるのよ。歌ったり踊ったりしながらね。
そんなお仕事があるのね。
そうね。ふふふ。あまり聞かないお仕事かもしれないわね。
どんなお話をするの?
そうねえ。おかしなお話もあれば、楽しいお話や、怖いお話もあるわ。どんなお話がお好みかしら?
怖いお話はイヤよ。アタシは楽しい話が好き!
あらそうなの?じゃあ、ご挨拶がわりに楽しいお話をしましょうか。
なになに?聞かせて聞かせて!
<パルヴァネは、キャトラの背中をなでた。>
ふわああ!!な、撫でるのが上手なのね……どきどきしたわ!
昔々、あるところにとってもちいさな女の子がいました。
小さいってどれくらい?
子猫ちゃんよりも、小さかったかもね?
でも女の子は、とっても食いしん坊さんだったの。
元気な女の子だったんですね。
でもあんまりご飯を食べるものだから、ついに島のものをみんな食べちゃったのよ。
なんて奴なの!?
…………
……
ってことは、その小さな女の子、空から降ってきたたこ焼きをみんな食べちゃったの?
そうなの。すごい食欲よね?
おかげで女の子はおなかいっぱいになり、世界は救われました、って話。
スケールの大きなお話ですね。
でも、作り話でしょ?
さあ、それはどうかしら?ふふふふ。
…………
……
「空を飛ぶなんて面白い島ね。
こんな島があることを話したら、貴方はどんな顔をするのかしら。
陛下……貴方は今も……たった一人で、苦しんでらっしゃるの?」
思い出2
そうなの……主人公は冒険家なのね。
あの不思議な女の子……アイリスちゃんとキャトラちゃんと出会って、この空飛ぶ島に……
素敵な物語ね……
主人公、パルヴァネ、何の話してんの?
”カレ”から、”キミ”たちの物語をね。
物語を……?
私はね。物語を探しているの。心を躍らせる物語を。
なるほど、ネタを探しているのね。
そうなの。いろんなお話を聞いて、みんなに伝える。それが語り部なのよ。
アイリスちゃん。よかったらあなたのお話も聞かせてほしいな。
私の話……ですか……
どうしたの?
私には……お話しできることはありません……ごめんなさい。
じゃあ、嫌なことを聞いちゃった?ごめんね。
気にしないでください。パルヴァネさん。私は平気です。
この島に来てから、楽しいことがいっぱいだもんね!
じゃあ、みんなで聞かせてね。楽しい思い出の話を。
……
…………
<パルヴァネは、一人、星空の下で踊っている。
「金色輝く砂の海。波間に漂う不夜城は、その名も高きオアシスの島。島を統べるは若き王。
千の裏切りと、千の悲劇。無数の刃と矢を退け、孤独なる王は玉座についた。王はいやしき語り部に問う。
『語るがよい、語り部よ。しばしの憩いとなれば良し。ならねばうぬら一族は、のこらず島を追放とする』
語り部は語る。霊鳥の血を引く射手と、未来を見る女王の悲しさ定め。
王はのたまう。『誇りなど、くだらぬものを。国を滅ぼした女王に忠義を尽くすとは、愚かなやつよ』
語り部は語る。黒き鎧の金髪の騎士。万人不敵のその武勲。されど絆は毒となる。騎士が受けた報いは裏切り。
王はのたまう。『我ならばもっとうまくやる。騎士が自ら死ねるように』
語り部は語る。人を愛した龍と、愛に応えた乙女。垣根を超えた愛と結末。秘められしその物語を。
王はのたまう。『くだらぬな。乙女は龍に食われたのだ。愛し合うなどあろうはずがない』
いやしき語り部はおのずと悟る。語り部の受難と、閉ざされし心。いかなる言葉も届きはしない。
悲しき王の心には。しかし定めは、さらに語り部をもてあそぶ。
王はのたまう『実にくだらぬ話であった。明日の夜は、もう少しましな話を語るがよい』
<パルヴァネは舞いを終え、夜空の星を見つめた――>
思い出3
<パルヴァネは、静かに舞い始めた。>
すごい……優雅な踊りですね。
なんか色っぽいわ。パルヴァネって踊りもできたの?
ふふ、オアシスの島の語り部は、物語を語りながら、歌って踊るのよ。
結構いろいろやるのね~
そうなの。―度正式な語り部の興行も、見せてあげたいわ。
なんだか面白そうね。
私も、見てみたいです。
ふふふ、ありがとうね。えいっ。~よいこらさっさ~♪
いきなり、おめでたい踊りね。
これは私のお友達が得意な踊りなの。とってもおめでたい踊りなんだって。
なんだか元気になる踊りですね!
この踊りを教えてくれたお友達とは、薄着仲間なの。ふふふ。
なにそれ?
ところでみんな、最近仕入れた新しいお話、聞く?
聞かせて聞かせて!
ふふふ。じゃあ始めるわね。これは、とっても不思議なお話。
とある島に、お塩を使って悪魔を祓う女性がおりました。
お塩?
……
…………
<昨晩に続き、パルヴァネは一人舞っている。>
「絢爛なるオアシスの国。輝きの都は人々を魅了する。されどかの国の夜陰には幾多の毒蛇が隙を伺う。
その少年は、幼いころより寺院に預けられ、神官となるべく育てられた。彼こそは王国に生まれし、第四の王子。
王位は継げぬ。されど王子は、勉学に励み、祈りを捧げる人生に、満ち足りていた。
されど、王子の父が没したころ、王位を継いだ第―王子は、己の兄弟をことごとく殺すと決めた。己の地位を脅かすものを、あらかじめ葬るべく。
王子は、友であり教師と思っていた神官たちに裏切られ、売り渡された――
あら、起きてたのね、主人公。
いいのよ。ふふふ。この物語は、まだ踊りとか曲が決まってなくてね。
練習をしながら、構想を練っていたの。
悲しい話なのかって?そうね、悲しくて辛くて、しかも誰も救われない話。
……誰がそんな話を聞きたいのかって?
そうよね。こんな話……誰も……聞きたくないかもね。
思い出4
これは私の故郷近くで起こった、本当の話よ?
あるところに、―人の盗賊がいました。盗賊だけど、悪い人じゃないのよ。
その人は、悪いお金持ちからお金を盗んで、貧乏な人に配っていたの。
ふむふむ。いわゆる義賊ってやつね。
彼は、とある島を治める、領主の噂を耳にしたの。その人は、高い税金で民を苦しめながら、裏では奴隷商人の元締めとして、巨万の富を稼ぐ極悪人だった。
盗賊は領主の館に忍び込み、領主を襲ったの。盗賊は領主にいいました。『いまこそ悪事の報いを受けろ』
おお、かっこいいわ。
だけど領主はいいました。『たとえこの俺が倒れても、新たな悪がとってかわるだけだ』
盗賊は怒りを覚えます。『いかなる悪が来ようともこの俺はただ滅ぼすだけ。奴隷狩りを繰り返し、多くの民を苦しめたお前を、許すものか』
領主は答えます。『俺は確かに悪だろう。だが俺は、悪の道を行くことしかできなかったのだ』領主は、自分の肩にある刺青を見せました。
その刺青は、奴隷の人につけられるものでした。領主も、昔は奴隷だったのです。
盗賊は迷いました。領主が悪なのは間違いありません。でも彼を殺すのは正義でしょうか?
領主はその隙を見逃しません。隠し持った剣で盗賊を襲います。だが一瞬早く、盗賊は領主より剣を奪い、逆に領主の胸に剣をつきたてたのです。
盗賊は窓から飛び去り、夜の街に消えていさました。
倒れた領主は、己の悪事を思い出しながら、果てない眠りにつこうとしていました。
そんな領主を一人の女性が助け起こしました。彼女は、領主がたったー人本当に愛した恋人でした。
『しっかりして、あなた』領主は涙を流しながら笑い、こと切れました。
恋人は復讐を誓いました。『彼が殺されるのが正義なら、その正義を私は許さない』
一体誰が正義だったのでしょう。
―体誰が悪だったのでしょう。
誰が、正義と悪を決めることができるというのでしょう。
……領主の恋人さんは、その後どうなったの?
今もまだ、復讐の機会を狙っているのかもしれないわね。
そんな……
私も、彼女には幸せになってほしいわ。できたら、盗賊さんにも。
あれ、二人の知り合いなの?
ふふふ。どうかしらね?
ホントにいろんなお話を知っているのね。パルヴァネって。
それが語り部だからね。でも私、本当はもう語り部なんて名乗れないの。
どうして?
私はね……自分の物語を無くしてしまったの。
思い出5
ねえねえパルヴァネ、前にいってた話だけど……
なあに、キャトラちゃん?
パルヴァネさん、自分の物語を無くしちゃったって……
ああ、その話ね。あまり面白くないお話だけど、聞く?
聞かせてほしいです。
ふふふ、ありがとう。前にも言った通り私は語り部。
私の故郷、昼間は熱いから、みんな夜更かしなの。そこで、夜を楽しく過ごすために、夜通し物語を語る、語り部というなりわいがあるの。
なるほどねえ。
私は語り部のー族に生まれて、物心つく前から修行をしてきた。いつか世界を旅する日を夢見てね。
でもそんなとき、オアシスの島におかしな噂が流れたの。語り部たちが、王様を貶める話を広めたっていうのよ。
王様は語り部の長老たちに、真意を問いただした。
語り部たちは言ったわ。
『陛下が悪しき行いをすれば容赦なく誹りましょう。しかし、故なき讒言は語り部の矜持にかけていたしませぬ』
語り部さんって、度胸あるのね。
どんなお金持ちでも、権力者でも、語り部の口を閉ざすことはできないのよ。
王様は言ったわ。『なるほどそちらの矜持は解った。だが我は王として、汝らの誠意を試さねばならぬ』
『汝らの中の一人を選び、我に物語を語るがよい。汝らの物語が我の心を打てば、汝らの誠意を信じよう』ってね。
それで、アンタが選ばれたのね。
っていうか。私からやらせてくれっていったのよ。ちょっと王様の言い方が気に入らなかったし。語り部の話芸ってものを教えてあげたかったの。
でも王様は……私の想像とは全然違う人だった。
えーっと、その王様って悪い人なの?
違うの。変わってるけど、いい王様って評判だった。でも私は、王様のうわべしか知らなかった。
王様は、小さなころから人に裏切られ続けて、誰も信じられなくなっていたの。
でも……いい王様なんですよね?
……そうなの。でも王様は、どんなにみんなに慕われても、ご自分からは誰も愛そうとはしなかった。
私は王様に、幾晩も物語を語った。でも、どんな物語も、彼の心を開くことはできなかった。
どうして……
私は……語り部のみんなを助けたかったし、王様をあっといわせてやろうとしてた。
でも私は、幾晩か物語を語るうち、こう思うようになった。
―度だけでも、王様に、心を開いて欲しいって。
ある晩……王様はいったわ。語り部たちの誠意はわかった。疑いを取り下げよう。もはや物語に用はない……って。
じゃあ、語り部のみんなは助かったのね。
そうなの。それはとっても嬉しかった。でも私の物語は……一度も……彼の心に届かなかった。
パルヴァネさん……
それ以来……私は私の物語を無くしちゃったの。
心に届かない物語を語る語り部なんて……意味が無いもの。
思い出6 (友情覚醒)
光……これは……ルーンの……
綺麗ね……どんなに言葉を尽くしても、語りきれないくらい。
……パルヴァネ。アンタの物語、まだ終わってないんじゃない?
私の……物語……
はい。それに……パルヴァネさんの物語が、悲しいまま終わってしまうなんて、私は嫌です。
……悲しいまま……
そうね、ありがとう、みんな。
……私、いってくるわ。
……わかった。お土産話、期待しているからね!
…………
……
「なぜ戻った、パルヴァネ。……もはや我に、物語など……」
「お願い申し上げます。一度だけ、私に機会をください。」
「語り部一族の立場を、危うくするかもしれぬのだぞ。」
「皆には、私の意志を伝えております。全て覚悟の上のこと。」
「……よかろう、語るがいい。」
「ありがとうございます。」
「金色輝く砂の海。波間に漂う不夜城は……」
…………
……
(この……物語は……)
「凍てつく心の、頑ななる王。語り部は悲しみと共に問う。この世の何が、王の心を閉ざしたのか。
やがて語り部は知る。王のたどりし生涯を。
絢爛なるオアシスの国。輝きの都は、人々を魅了する。」
…………
……
「悲しき王子は、捕えられ、―人処刑を待っていた。
友達も、教師も、誰もかれもが信じられない。王子はー人終わりを求める。
だが、なんたる僥倖。王子は大臣の手によって助け出された。大臣が望みは王子を担ぎ上げ、第一王子に背き、退けること。
王子は、大臣と共に兄を倒した。激しい戦いの中、少年は大臣の娘を愛し、妻とした。王子はついに、王となった。
しかし大臣は、祝いの杯に毒を盛った。
毒は王の心を奪う。古の技は、王の心を押し流し、大臣の意のまま動く人形にした。
呪いの杯を手渡したのは、愛する妃。めでたき戴冠の日は、絶望の日々の始まりだった。
されど王は、絶望するほど愚かでも、後悔するほど弱くもなかった。
王は体から少しづつ毒を抜く。人形のふりをしつづけながら。そして大臣が油断したところ、―刀のもと首をはねた。
もはや王は人形にあらず。全てを悟り、妃は身を投げた。
信じた友に裏切られ、結んだ愛は偽りだった。王はのたまう。『我はもう、何も信じない。この世の何も信じはしない』」
「そうだ……この世の、何も……!!」
「お聞きいただきありがとうございます。これはオアシスの国の王たる方の物語。
陛下の物語にございます。
「……ははは。なんともつまらぬ物語よ……
ただ悲しく、つらく……誰ひとり救われぬ……誰がこのような物語を聞きたがるものか。」
「いいえ、この物語は、まだ終わってはおりません。」
「……何?」
「あまたの苦難を乗り越えた王は、民に平和を与え、幸せな生涯を送りました。
そんな物語の続きを、私は望みます。」
「……続き、か。
この物語に、続きがあるとはな。
願わくば、私も知りたい……そんな物語の続きを。」
「はい……。どうかこの私にも、教えてくださいませ。」