【白猫】タイキ・思い出
屈強なる農民 タイキ・グリーンファーム 農家を営む青年。 言葉少なだが、優しくていねいに野菜を育てる。 |
思い出1
俺、タイキっつうんだぁ。よろしくなぁ。
<クワを担いだ男が、なまりのある口調で言う。>
で、おめら、畑、どこだ?
え……? 畑?
んだ。畑耕すんが、俺の仕事だぁ。
畑なら、確かヘレナさんが趣味で作っていたのが、向こうの方に……
おお、そっかぁ、ありがとなぁ。
じゃ、ちょっくら行ってくるべさ。
<実直にうなずいて、タイキは歩き去っていく。>
はー……なんか、仕事一筋、って感じねぇ。
思い出2
おう、おめら、元気かぁ?
はい。タイキさんは?
おう、この通りだぁ。
すごい筋肉よねぇ~。
野菜と米と肉ぅ食って働きゃ、こうなるべさ。
アイリスは細すぎだね。野菜、食うか?
いいんですか? ありがとうございます!
……
だ、大丈夫よね、主人公。
タイキの野菜食べたら、アイリスがムキムキになったりしないよね!?ね!?
思い出3
よいしょ、っと……
<タイキが、手押し車にたくさんの野菜を載せて運んでいる。>
タイキさん、収穫ですか?
んだ。採れたもん、分けてもれぇてなぁ。ふるさとに送るんだぁ。
ふるさと?
俺の育った農村だぁ。
そういえばアンタ、どうして故郷を出てきたの?
出稼ぎだぁ。ここなら、戦って金もらえるし、農作業もできて、一石二鳥だべ。
出稼ぎ……お金が必要なんですか?
まあなぁ.……俺の村、ちっと貧乏でよぉ。税を払えねぇんだぁ。
このままじゃ、領主に何されっかわかったもんじゃねぇべ。
だから俺、出稼ぎに来てんだぁ。生まれた故郷、守りてぇからよぉ。
思い出4
む……
<タイキが、トウモロコシを手に、うなっている。>
なぁに~?
トウモロコシ、苦手なのぉ?
いんや、大好物だぁ。けんど――ちっと思い出しちまってよぉ。
ウチでよぉ……大事に育ててたんが家出しちまってなぁ。
今、どこさほっつき歩いてんだかなぁ……
ええっと……犬か何か?
いんや。トウモロコシの話だぁ。
元気かなぁ……
思い出5
……どういうことだべか。
<タイキが唖然と立ち尽くしている。>
タイキ? どうかした―――うっわぁーっ!?
<タイキの周囲に、野菜たちが――ずらりと並び立っている。
ピーマン、ダイコン、ニンジン、タマネギ、ゴボウ、レタス――
色とりどりの野菜たちが、タイキを取り囲んで、腕組みをしている。>
……って、なんで、野菜が腕組みしてるわけぇ!?
足も生えてる……
た、助けてくんろ! 主人公!
いきなり野菜たちが来てよぉ……俺を掴んだまま、なんも言ってくれねぇんだぁ!
無言で野菜に取り囲まれるって、ちょっとしたホラーよね……
いったいどうしたのかしら……
俺、なんか悪いことしたんだべか……?
思い出6
なんだぁ……? こりゃあ?
お天道さまみてぇに、あったけぇ光だぁ……
おまえのかぁ? 主人公……たまげたなぁ……
<その時――ルーンの光を受けて、野菜たちが輝きを放った!>
タイキ……タイキよ……
我は大地の女神……今、野菜たちを通じておまえに語りかけている……
大地の……女神……!?
……語りかけるだけなら、野菜に手足生やす必要なくない?
村と野菜を想うおまえの心意気、深く感じ入った……
我にとっても、あの村は居心地のよい場所だ……
重税をかける悪い領主は、野菜の兵隊たちに命じてこらしめておいた……
だからタイキ。金のことなら案ずるな。
おまえはおまえの望むようにたくましく、生きてゆくのだ……
<その声を最後に、野菜たちは動きを止めた。>
タイキさん……これでもう、出稼ぎをする必要はなくなったんですね。
……いや、もうちょっと、ここで働かせてもらうべ。
女神の声を聴けたのは、主人公のおかげだぁ。だから、恩返しがしてぇんだべ。
<言って、タイキは太い笑みを浮かべた。>
そういうわけでよぉ、主人公!
またうまい野菜食わせてやるべ!
ていうか……
そこに転がってる野菜たち、手足生えたままなんだけど……
優しき収穫者 タイキ・グリーンファーム