白猫ミステリーランド! N-Story5
story
カラクリ部屋に隠されていた物。 <ダンベル>と、そして―― |
<ロングコート>だ――
むむむ……!
ものすごい、キレイにたたまれて
いますね~!
大柄な男性にしては、
几帳面ですね……
……ええ、ハイ。
でも、私も服をたたむのは
得意なんですよ~♪
…………
……オバチャンの目撃した人物が
着ていたものにまず
間違いはないだろう。
クロードはロングコートを広げ、 まじまじと眺めた。 |
…………
わ! これ、かなり大きい
サイズですね!
これを着ていた人物は――
握力85kgから95kg、
身長180cmから190cm、
体重80kgから90kg、
体脂肪率6%から8%の人物だ。
ク、クロードさん……!
なぜ……!?
忘れたか?
俺は筋肉のプロだ。
コートに残った僅かな
<筋肉残滓>から、着ていた人物の
身体的特徴を割り出す。
それぐらいは出来るんだよ。
……さすがに正確な値を
導き出すまではいかないがな。
要研究、と言った所か。
…………ええ、ハイ?
クロードさん……あなた……
ちょっとスゴすぎません?
なんですか、<筋肉残滓>って……
(あのリリーさんが引いた……!)
クロードさん。
あなたの言っている事が正しければ、
犯人は――
ああ。犯人は男性、そしてかなり
<マッチョ>な人物という事になる。
それは、つまり……
やはり俺の勘は正しかった。
そう、犯人は……
ガイと一緒に舞台上に
いた四人の内の誰かだ。
……………………
――さて、諸君。
証拠品はもう一つある。
この<ダンベル>だ。
クロードはダンベルを持ち、筋トレを始めた。 |
はい!!
とっても重そうです!!
これも、重要な証拠だぞ。
色々と調べてみる必要が――
………………?
何だ、このダンベル……
どうかしましたか?
シュペーーール!!
うおおおお!
こりゃすげーな!
……何だ、騒がしい。
なんというカラクリでござる!
ヒヤヒヤもんだったな!
なんか、楽しそうですね!!
……行ってみますか?
クムチさん。
…………ええ、ハイ。
……仕方ないな……
jpg
なるほどー!
ここのスイヅチを二回押せば
よかったんでござるね!
さすがザック殿でござる!
いや、かなり
ギリだったな! 今のは!
フランさん、ザックさん!
オーララ!
アイリス殿にシショー!
奇遇でござるねー!
お前らも遊びにきてたのか?
いえ……
……お二人は、そうなんですか?
ウィ! 商店街のふくびきで
ジモートランドのペア招待券が
当たったのでござる!
里のみんなは仕事が
あってこられなくて。
仕方がないので一人で
きていたところ――
ザック殿がゲート前でうろうろ
しているのを見かけたのでござる!
いやさあ、革命軍の同僚が
あんまり勧めてくるもんだから
来てみたのはいいんだけどよー
まさか入るだけでカネがかかる
なんて思ってなかったぜ!
俺、カネなんかねえし!
だから、招待券を譲って一緒に入場
したのでござる! ザック殿の
しょんぼりした顔、とっても
カワイソウだったでござる!
カワイソウっていうなあ!!
ザック殿、お腹は
減ってないでござるか?
ここに入る前、洋ナシ味の
ソフトクリームの屋台が表に
出ていたのを見たでござる!
食べたいなら、
買ってあげるでござるよ~?
俺はコドモじゃねえって!
よ、洋ナシ昧の
ソフトクリーム……!
食べる!! 食べます!!
ああ、はいはい。
後で買ってやるから。
事件の事は聞いていますか?
……プルクワ? 事件とは?
俺ら、ずっとこのカラクリ屋敷に
こもってたからよ。
何かあったのか?
……説明しよう。
クロードとリリーは、 事のあらましを二人に語った。 |
マジかよ……
そんな事が起きてたなんて……
……クロード殿、リリー殿!
セッシャ達も協力するでござるよ!
何でもいってほしいでござる!
ああ! 犯人、絶対に
捕まえてやろうぜ!
すまん。恩に着る。
ありがとうございます!……では!!
ソフトクリームを買いに行きましょう!
後でな!!!
story
よし、ではこの<ダンベル>を――
おや、これは……
あっ!! えーっと……
マッチョさんだな!!
絶対そう言う!!
クリスさん。
……確か、背筋のスペシャリスト、
でしたね。
そうさ。僕のトラピズィアス、
つまり僧帽筋は誰よりもロジカルだ。
毎日秒単位の筋トレメニユーを
組み、背筋を中心として
各部位の筋肉を一分の隙もなく
<書き上げる>男。
会うのは初めてだが、俺の
『深層外旋六筋に対する外的要因が
引き起こすマッスル』という論文に
意見をくれた事があったな。
覚えていたんだね。
中々興味深い論文だったよ。
ああ、ありがとう。
握力83kg。
身長178Cm。
体重81kg。
体脂肪率-6%。
見事だ、筋肉探偵。
…………リリー。
クロードはリリーの 耳元に顔を近づけた。 |
(犯人が、わかった)
&size(18){ !!!}
(後は、どうやって
犯行に及んだか、だ)
(犯人って……!
クロードさん、一体……!?)
あのう……気になってたんですが、
クロードさんは、
<アサノ・マッスル研究所>の
所長さんなんですよね?
なんでござるか、それ?
読んで字の如く、マッスルの
研究機関だ。日夜、様々な
筋肉を様々な角度から
攻め立てている。
まあ、研究員は俺しかいないがな。
それでも、彼の研究所は業界では
有名だよ。学会では、毎回新鮮な
驚きをくれるしね。
よくわかんねー世界だな!
でも、クロード殿がすごい人
だって事はわかったでござる!
私と同じなんですね。
<コーネル探偵社>も、実は
まだ私しかいなくて……
(って、ちょっとクロードさん!
教えてくださいよ! 犯人!)
(……考えろ、リリー。考えろ。
ビリーさんのような探偵に
なりたければな。
お前なら、出来る)
…………
何、これからお前が探偵社を
デカくしていけばいいさ。
……さて、本題に戻ろうか。
クリス、話が聞きたい。
君達が<事件>と騒ぎ立てて
いるあの事についてだね。
これで最後にしますから。
……よろしいでしょうか?
……どうぞ。
休憩時間、お前がどのように
過ごしていたかを聞きたい。
楽屋で弁当を食べてから、
トイレに行って直前までダンベル
をしていたよ。
どうして、トイレで……?
僕のルーティーンなのさ。
ふむ…………
ガイさんについて
知っていることはありませんか?
そうだな……
僕はいくつかの大会で彼と
当たった事があるんだけどー
毎回、決勝審査前には必ず
髪を整えていたね。
身だしなみも、ボディビルの
一つと考えていたんだろう。
今回もそうだった。
審査が始まる直前に楽屋に戻ると、
ガイが髪をいじっていて――
………………ああっ!!
そうだ、思い出した!
……楽屋での<違和感>か?
えっと、クロードさん?
俺達が楽屋で荷物検査をした時だ。
こいつは、何か引っかかっている
ような素振りを見せていただろ?
……そうでしたっけ?
<整髪料>だよ、<整髪料>!
整髪料……?
……ええ、ハイ?
無かったんだ、整髪料が!
なるほどな。
…………ええと?
おかしいだろ。
クリスは決勝審査直前まで、
ガイが髪を整えているのを見た。
ああそうだ!
ガイが整髪料に手を伸ばしていた
光景も、ばっちりと憶えている!
……なのに、事件後には
その整髪料は……無くなっていた。
むむむむむ……
それは……おかしいですね!
ちなみに、どんな整髪料だった?
いや、そこまでは……
普通……の? 整髪料
だったかも……すまない、
これはちょっと自信がない。
そうか……
いや、貴重な情報に感謝する。
整髪料、ですかあ……
(……なにか、事件と関係
ありそうですかね……?)
(現時点ではまだわからん。
が、無くなっていたというのは
妙だな……)
それってさ、誰か貧乏なヤツが
パクっちまったんじゃねえか?
もしかしたらだけどよ。
ナント……!
人の物を盗むのは
よくないでござるな!
(パクった、か……)
……クムチさん、
あなたはおわかりになりますか?
………………ええ、ハイ。
えっ!?
……………………
………………ええ、ハイ。
(どっちだろう……)
story 7-3
ところでクリス。
……このダンベルに、
見覚えはないか?
……いや、ないね。
僕のでもないし、マイケルのは
もっと別の物だった。
わかった。
時間を取らせてすまなかったな。
じゃあ……頑張ってくれ、
クロード。
何だ?そのダンベル。
この屋敷の隠し部屋に
捨てられていたんです。
それは、とっても怪しいで
ござるなあ……
ああ。
……このダンベルは、変だ。
刑事さん。
……刑事さんは、このダンベルに
見覚えは?
いや…………
そんなバランスの悪いダンベル、
見た事もありませんな。
むむむむむ……
ここは、虫メガネの出番ですね!
…………
む、む、む……
……む?
ここ……
少しだけ、テカってます!
何?
…………あ!
本当でござる!
この、フチのあたり……
フランはダンベルの端の方を指差した。 |
……これは……
何かか付着しているな。
クロードは付着物を指ですくう。 |
…………ふむ。
これは……
そしておもむろに――舐めた。 |
ク、クロードさん!?
なにを――
………………オイルだ。
ボディビル用の、オイルだ!
オイル……ですと?
………………
しかも、かなりマズイ。
これは相当に質の悪いオイルだな。
(舐めただけでわかるなんて……)
なんでそんなものがダンベルに……?
……さて、何故だろうな。
悪い油か……
そういや昔、すっげー古い油で
揚げた鶏肉食って、酷い目に
あったっけなあ。
あまりにも唐揚げか食いたくてさ、
材科だけかき集めて知り合いに
作ってもらったんだよ。
味は良かったんだけど、それから
一週間、腹痛が治まらなくてなー。
あの痛みは、もはや呪いだよ呪い!
…………
そういえば……
ん?
何か、気になる事でもあったか?
ザック殿の話を聞いてて
思い出したのでござる。
以前、フルーツニンジャの里で
とっても古い本を読んだのでござる。
大昔の災厄や呪いなどについて
書かれた本なのでごさるが、
そこにはこんなことか
書いてあったのでごさる。
『悪い油と、えっと……
<何か>を使って、人を
呪うことができる』って。
<何か>……って……
なんですか?
わからないでござる。
なぜか、そこだけ記号で書いて
あったでござるからなー。
…………リリー。
これは、非常に重要な手がかりだ。
えっ!?
そ、そうなんですか……?
むむむむむむむ……
……………………
……………………
…………
フラン!!
思い出せ!思い出すんだ!
……………………!!
ノーーーーーン!
無理でござる~!!
フラン。その記号を、何としても
思い出して欲しい。
……出来るか?
くそっ……!!
あと少しのはずなんだ……!
呪い……メリドさんなら、
何かわかるかもしれません。
彼は呪術師ですから。
ダゴール!!
では、ニンジャであるセッシャか
バビュンと呼んでくるでござる!
***
jpg
呪術、こわくないよ。
たびたびすいません!
でも、とっても大事な事なんです!
ここに来るあいだに、
フランちゃんから話は聞いたよ。
……結論からいえば、僕もその
呪いについてはわからない。
そんな……
――けど、大丈夫!
僕に任せて。
その人が思い出したい
記憶を取り出す事が
できる呪術があるんだ。
メルヴェイユ!!
さすがはメリド殿でござ・る!!
呪術、こわくないでござる!
ああ、フランちゃん……!
わかってくれるんだね……!
さっそくお願いするでござる!
わかった!
メリドが呪文を唱えると、 指先から一筋のどす黒いオーラが 流れ出し、フランのおでこに 吸い込まれていった…… |
エフレユーー!!
…………フランちゃん。
もしかしていま、怖がったかい?
……気のせいでござる。
どうだ!?
思い出したか!?
……オーララ!
ばっちり頭に浮かんでいるで
ござる!
ほら、紙とペンだ!
フランは渡された紙に、 頭に浮かんだ記号を記した。 |
うん。さっぱりわかんねえ。
クムチさん、わかります?
……………………
……あれ?
この記号、どこかで……
(繋がったようで、
まだ繋がっていない……
まだ、足りない……)
……だが、着実に一歩ずつ
前進している事は確かだ。
フラン、ザック、メリド。
助かった。恩に着る。
……行くぞ、お前達。
え……行くって、どこへ?
この<記号>がある場所だ。
<記号>が、ある……?
ああ、そうだ。俺達は、一度
この<記号>を見ている。
……よく考えろ、そして思い出せ。
よ、よくわからないでござるが……
頑張るでござ・るよ!
助けが必要になったら、
遠慮なくいってくれよな!
お役に立ててうれしいよ!
またいつでも呼んで!
行きましょう、主人公!
序章 探偵、始動
ノーマル2 ミゼリコルデ&メリド
ノーマル3 ツキミ&ポン
ノーマル4 ネモ&ライフォード
ノーマル5 ザック&フラン
ノーマル7 解答