【白猫】ケンゾウ・思い出
建築の人 ケンゾウ・ビルディング cv.竹田雅則 未完成の建物を完成へと導く人。 ルーンプルドーザーで現場に向かう。 |
思い出1
巨大な鉄の塊か近づいてくる。
それは禍々しくどこか不気味で、きわめて派手だ。
やあ、僕はケンゾウっていうんだ。
なにふつうにあいさつしてんのよ! アンタが乗ってるそれなに!
ああ、これかい? これは<ルーンブルドーザー>っていってね。僕の仕事には欠かせない相棒なんだ。
いったいどんなお仕事を?
世界中に放置された未完成の建築物を完成させることさ。
なんでそんなことを?
少し長くなるけど、いいかい?
***
数十年前……祖父の夢だったルーンダム計画が魔獣の妨害によって中止になっちゃったんだ。
以来、祖父は荒れてね。仕事もせず酒場をほっつき歩いては毎日酔っ払って帰ってきたよ。
そのせいで持病が悪化してしまってね……夢を果たせぬまま息をひきとった……
僕は祖父の無念を晴らすために、こいつをがむしゃらに乗りこなし……
ルーンダム計画を……成功へと導いた。
そのとき僕は思ったんだ。
僕がやったことは未来をつなぐ架け橋になったんだって。
それから僕は未完成建築を探して旅をしている……
果たせなかった建築家の夢のためにね。
そういうことだったのね……
おや? あそこの家は?
ああ、あれは材料が足りなくて建てるのをあきらめた……
なるほど。未完成ってことだね。
そういうことなら僕にまかせて。完成させてみせるから。
おお、頼もしいわね。
それじゃ、いくよ!
ケンゾウはゆっくりとルーンブルドーザーを動かし、
未完成の家を跡形もなく踏み潰した。
ななな、なにやっとんじゃああ!?
…………
ケンゾウは<ジャッキベース>を真っ平らな地面に突き立てた。
その変な形をした鉄の棒はなに?
祖父は言った。『雑草は踏まれて強くなるものだ』と……じゃあね。
っておい!? どこいくのよ!
なんだったのかしら……
そういえば……あいつの顔ってどこかで見た気がするのよね……
キャトラも? う~ん……どこでたろう……
大工星たぬきたちがソワソワしてるわね……なんでかしら?
あ!? <看板の人>!
***
家が完成してるわね。
なんでじゃーい。
思い出2
<ブリリアント大橋>。
標高3000メートルの峨々たる山々の中心に、それはあった。
アーチ状に設計されたその橋は、虹のような輝きを放ち、人々に希望の光を与えるはずだった……
しかし、冬場を迎えると作業は困難を極め、半分を過ぎたところで計画はやむなく中止となった。
もし完成していれば、橋の常識を根底から覆す革命的なものになっていただろう。
うおおおおお!!!
ケンゾウ待って! どこにいく気よ!
ケンゾウが橋の上をルーンブルドーサーで
激走している!
ニュートラルがなんだ! 僕にはアクセルしかないんだ!
ケンゾウさん!その先は橋が途切れて……
うわあああああ!!!
ケンゾウはルーンブルドーザーのアクセルを踏み込み、橋を飛び越えた!
向こう側に渡っちゃったわ!
街のほうに向かっているみたいね。遠回りして追いかけましょう!
***
う~ん、仕事終わりのコーヒーは最高だね。
はあはあ……なにが仕事終わりよ……
やあ、君たち。追いかけてきたのかい?
どうしてあんなことを?
橋を完成させるためさ。
祖父は言った。『離れれば離れるほど、心の距離は近づくものだ』と……
戻ってみればわかることさ。
はあ?
***
橋が完成してるわ。
アイツ……さては人間じゃないわね。
思い出3
二つの島を繋ぐ<ゴゴガゴ海峡トンネル>。
広大な海の下に、それは続いていた。
この前代未聞のプロジェクトは、小さな港町から始まった……
男たちは寝る間も惜しみ、ただひたすら岩を掘り続けた。夢の景色を目指して……
しかし、海は荒れ狂い、壁の亀裂からは容赦なく海水が吹き出し……男たちの行く手を何度も阻んだ……
やがてそれは心の防波堤をも崩壊させ……信念を失った男たちは時代の波にのまれ、姿を消した。
うぉぉぉぉぉ!!!
って、またこのノリかい!
でも、今度は私たちも一緒よ。
主人公たちはケンゾウとトロッコに乗り、線路の上を疾走していた!
かなりの速さね……振り落とされないようにしないと……
むっ! もうすぐで分岐点だ。キャトラくん、予定通りレバーを頼む。
アンタからもらったこのスパナをぶつければいいのね。
ああ。合図と同時に投げてくれ。
今だ!!!
えっ? もうなの!? まだ準備が……あっ。
レバー……通りすぎちゃったわね……
ははは、ドンマイドンマイ。
むむむ……反応が遅くてわるかったわね!
見て! 出口よ!
すーはー……
大自然って感じだね。心が洗われる。
じゃないわよ!
本来は行き止まりのトンネルを掘って、港町を眺めるはずだったんでしよ!
失敗したアタシがいうのもなんだけどさ!
まあまあ。落ち着いて。
祖父は言った。『敷かれたレールの上を外れるのも勇気なんだ』ってね……
もいっかい、なんなのよそれ!
それじゃあ戻ろうか。
……もう好きにして。
***
あの……行き止まりなんですけど……
あれ? 今度はアタシ、ちゃんとレバーを切り替えたわよね?
トンネルは未完成のままみたいだね。
なんで完成してないのよ。
ははは。体調不良のせいかな。
知るかー!
思い出4
<ノッピングタワー>は今年で120歳を迎えた。
塔の頂上から見渡す遠景は、閑散とした大地さえ名画に変える何かがあった。
しかし、建築期間が短かったため、設計ミスが相次いだ。
塔は大きく傾き、地盤に負荷を未だかけ続けている。
プロジェクトリーダーは安全を考慮し、塔の周辺を
立ち入り禁止区域とした。
はっけよーい……
ブルドーザー相手になにやってんのよアイツ……
あの掛け声に、あの構え……もしかして相撲?
のこったー!
主人公は驚いた拍子に、ポケットの中のビー玉を落としてしまった。
のこった! のこった!
くっ……やるな……
アタシにはケンゾウが一方的に押されているようにしか見えないけど。
ぬああああああ!!!
どんどん隅に追いやられていくわ!
げげっ!? あのままじゃ塔のてっぺんから落っこちるわよ!
ぐぬうう……足場がタイルじゃなくてコンクリートだったら……
ぐあああああっ!
ぎにゃー! ケンゾウがー!
ブルドーサーに乗り込んだわ。
ズコッ。
はあはあ……さすがだ……
君を古代遺跡で見つけたときから、どこか運命的なものを感じていたよ。よくここまで……成長したね。
感動? なところわるいけど、塔は完成したの?
ああ。もちろんさ。
祖父は言った。『子は親を越えていくものなんだ』と……だから……
またそれかい。
あ、でも、さっきまで地面を転がってたビー玉がとまって……
ははは、ほらね。
これってブルドーザーの重みのおかげなんじゃないの?
思い出5
13年前――ここは焼け野原だった。
そこに夢をもった一人の建築デザイナーが訪れ、歴史は動いた。
彼の名前はジョニシア・ピップガルデ。
城のデザインをいくつも手がける期待の若手だ。
斬新な作品を作りたい、その熱意だけが彼を突き動かした。
あっという間に時は過ぎ、紺碧の城<ガルデガルデ>は――
これはどう見てもあれだね。未完成だ。
よし。雑草だな。
ケンゾウはゆっくりとルーンブルドーザーを動かし。
<ガルデガルデ>を跡形もなく踏み潰した。
ふう……これですっきりしたぞ。
さ、<ジャッキ>を土に埋めないと……
???
おいあんた! なんてことしてくれたんだ!
ん? 君は誰だい?
ジョニシア
俺はこの城をデザインしたものだよ!
そうだったのか……でも、あとのことは僕にまかせてくれ。
必ず完成させてみせるから。
なにいってんだ! こいつは完成品なんだよ!
えっ?
そういうデザインなんだよ!
なんだってええええ!?!?!?
そんな……僕は自らの手で未来への架け橋を……
いまさら反省しても遅いんだよ!
いいか! 2週間後にこの城の完成披露会を開く予定たったんだぞ!
もしも間に合わなかったら俺は……いや、建築業界は……
あ、あの……僕はいったいどうすれば……
もどせ。
は?
あと2週間以内にもどせ!
そうでなきゃお前を牢屋にぶち込んでやる!
ええーーーーっ!?
ということがあったんだ……
いつものあれでなんとかならないの?
無理さ……過ちを犯したこの僕に……祖父の言葉は……
主人公……ここは。
思い出6 (友情覚醒)
こ、この光はまるで……
廃墟ビルの鉄くずを拾っているときに見た朝焼け……
なつかしいな……あのとき祖父は僕にこう言った。
『誰にでも間違いはある』ってね……
ありがとう。おかけで目が覚めたよ。
今すぐ現場に戻って、城を完成させてくる!
その意気よ!
といいたいとこだけど、心配だからアタシたちもついていくわ。
ああ、そうしてくれ!
***
こ、これは……基礎ができあかっている……!
あれはルーンブルドーザー?
ケンゾウがいなくても勝手に動くのね……
ルーンブルドーサーは巨大なアームを伸ばし、鉄骨を並べている。
…………そうか……今までのことはぜんぶ君が……
僕はなんて愚かなんだ……祖父の教えを口にするだけでなにもやっていなかった……
いまさらかい!
くっ……
うわああああ!!!
ど、どこにいくんですかケンゾウさん!?
待って! そっちはブルドーザーが作業しているわ! 今いくと危険よ!
やめろ! もういいんだ!
あとは僕にまかせてくれ。
アンタまさか、ひとりでお城を?
ああ……ここでやらなきゃ、死んだ祖父に顔向けできない。
だからって気合いでなんとかなるようなものでもないでしょ!
祖父は言った。『お前はやれば出来る子なんだ』って!
あっそ……好きにしなさい。
ああ! 好きにするさ!
えっと……ここに<6ヌノ>を8本。<ブレス>を2本。<アンチ>2枚に<タコヤキ>4つ!
サブロク平台を片手で1枚持てば、階段なしでもよじ登れる……
…………
ああ違う! 城を建てるってこういうことじゃない!
大丈夫かしらね……
あらアンタたち、そういえばいつもアイツの近くにいたわね。
キュキュキュー♪
ふむふむ。そうなんだ。
なんていったの?
まあ……アイツを信じていいってことよ。
――2週間後。
そこには過酷な現場に挑んだ一人の男の足跡があった。
<ガルデガルデ>は
民衆の拍手を受けなから、堂々とたたずんでいた。
その光景を目の当たりにした大工星たぬきたちは、ケンゾウの描かれた看板を空に掲げた。
看板の人
その他