【白猫】チヨ・思い出
折り鶴少女 チヨ・ミドウ cv.伊瀬菜莉也 折り紙が大好きな少女。 願いを届ける鶴を日々折り続けている。 |
思い出1
君も折り鶴にしてあげようか?
はい、いきなりこわい!
<どこからともなく一羽の折り鶴がひらひらと飛んでくると、女の子の手のひらにとまった。>
わあ、すごくきれいな折り鶴ね。
ちっちゃい頃からずっと折ってきたからね。目をつむったままでも作れちゃうよ。
あたし、チヨっていうの。これからよろしくね。スキあらば折りたたんであげるからね。
ぎにゃー!!
チヨちゃんは折り紙が大好きなのね。
うん。なんでも折れるよ。例えば――
<チヨは白い折り紙を取り出すと、慣れた手つきで折り始めた。すると――!
あっという間に、一匹の子猫が出来上がった!>
す、すごー!手品みたい!
そう、そうなの。折り紙はすごいの。
一枚の紙だったものが、別のなにかに変わる。願いを込めて折っていけば、さらに特別なものになる。
折り鶴は、もっともっと特別。誰かを支えたい、救いたい、寄り添いたい――
そんな、あたたかい祈りそのものなの。
だからね、あたしは島を出てきたの、大切な人を想う気持ちを応援したくって。
優しいのねえ……たまにドクゼツになるのはナゾだけど。
さっき折り鶴を飛ばしてたけど、あれは……?
あれはね、あたしの生まれつきの能力。
願いを込めたものを動かすことができるの。
<チヨは手のひらに乗っている子猫をトコトコと歩かせた。>
そんなわけで、これからお世話になるね。
折って折って折りまくるからね。――色々と。
だからコワーイ!
思い出2
ねえねえ、チヨ。お願いがあるんだけど。
折りたたまれたいの?
ちがわい!
チヨちゃんに、折り紙を教えてほしいなと思って。
アンタが折り鶴を飛ばすのを見てたら、キョーミがわいてきちゃってさ。
もちろんいいよ。そのためにここに来たわけでもあるし。
<チヨは色とりどりの折り紙を取り出した。>
キレイな折り紙ね~。さ、なにをつくる?
折り鶴は、たぶん作ったことあるよね。
そうね……じゃあ、わりと簡単なもので――
いまを必死に生きてはきたが、ふと足を止めて振り返ると
その残酷な時の速さが己を思いもよらぬ場所へと連れてきたのだ
――ということを悟った星たぬき。
重いわ!ていうかカンタンなのそれ!?
――のお母さん星たぬき。
おかあさんかーい!
さ、はじめるよ。――覚悟はいい?
か、覚悟……?
***
違う。そこは折りすじをつけない。……そう、そこで外側に……違う!
立体感が足りない!もう一度折りなおして。
は、はい!
……主人公。耳がない星たぬきになってるよ!
!!
ぎにゃ……ぎにゃ……
キャトラ、折り紙がくちゃくちゃだよ!
君はなにを作っているの?人間のおばあちゃん?
違うよね? 星たぬきだよね?『いまを必死に生きてはきたが――
だ、だってえ! アタシの手じゃムズすぎるんだもん!もっとカンタンだと思ってた!
折り紙をなめちゃだめだよ。とっても奥が深いんだから。
あきらめたら君を折り鶴にしちゃうからね?
ワーー!!
***
チヨのスパルタ指導の甲斐があり――
いまを必死に生きてはきたが、ふと足を止めて振り返ると
その残酷な時の速さが己を思いもよらぬ場所へと連れてきたのだ
ということを悟った星たぬき――
の母親が完成した!
おつかれさま。みんな、よくがんばったよ。
ほんとうにつかれた!!
厳しくしたのは、みんながついてこれると思ったからだよ。
……厳しすぎたかな?……ごめんね。
ううん。とっても楽しかったよ、チヨちゃん。
そーね。手先のきよーさのナニカが目覚めそうだわ。
……そう?ふふっ、よかったあ。
思い出3
今日は、みんなで折り鶴を作りましょう。
わからないところがあったら何度でも教えるから、遠慮なく聞いてね。
子供たち
「「「はーい!!」」」
チヨは街の子どもたちのために、折り紙教室を開いていた。
ここを、こんな風に折るの。そうしたら、フクロを開いて……
うーん……むずかしいよお……
大丈夫。あせらず、ゆっくりやろう?
おねえちゃん、ここはどーやるの?
あたしがやるのをよく見ててね。……こうして……こう……
子供たちにはこんせつてーねいに教えるのね。
***
じゃあ、今日はこれでおしまい。今度は星たぬきを作ろうね。
ありがとーございましたー!
…………
……?どうしたの? 元気がないね。
……おかあさん、病気なの。
……病気?
ずっと、病院でねているの……
だから、折り鶴を?
うん……はやく、元気になってほしくて……
…………じゃあ、千羽鶴、作ってみよっか?
……せんばづる?
1000羽の折り鶴を作るの。
すごく大変だけど……その分、願いがたくさん込められるんだよ。
お母さんも、きっと元気になる。
……できるかな……
アタシたちも手伝うわよ!
それに、なんてったってチヨがいるんだしね。
でもね、大事なのは、君が一番頑張ること。
願いを込めながら、一羽一羽ていねいに折っていくの。……できる?
……うん!がんばってみる!
こうして、主人公たちの千羽鶴づくりがはじまった。
思い出4
おかあさんが、元気に、なりますよう……に
できた~!!これで、はちこめ~!
うん、上出来。飲み込みが早いよ。
……それにしても、やっぱりチヨちゃんはすごいね。
あっちゅーまに、折り鶴の山ができてるもんね……
その間にもまた一羽、チヨの手により鶴が折られる。……魔法のような手際だ。
チヨはさ、なんでそんなに折り紙が好きになったの?
両親がね、ちっちゃい時からよく折り紙を買ってくれたの。
お金があんまりない家でね。あたしが退屈しないように、って。そのおかげたね。
両親っていっても、血はつながってないんだけど。
あたしはね。<ミドウ>の家の人間なの。
ミドウ?
クジョウっていう島で、古くから続いている家柄なの。不思議な力を持つ一族でね。
前にいってた、願いを込めたものを動かすことができるって能力ね?
うん。……私はね。<ミドウ>の本家で生まれてすぐに、縁を切られたの。
理由はわかんない。……それでね、アオイの島っていう所にいる分家の夫婦に引き取られて育ったの。
……本当の子どもじゃないのに、二人はあたしをすごく可愛がってくれてね。
だから血はつなかっていなくても、あたしにとっては二人が本当の両親だし、生まれかどうとか全然気にならないし、気にしないの。
前を向いて生きなきゃね。
……強いのね、チヨちゃん。
…………
女の子は、やたら新しい折り紙を取り出すと、鶴を折り始めた。
できた!……はいこれ、お姉ちゃんに。
……あたしに?
よくわかんないんだけど……お姉ちゃんに、願いをこめて、おりたくなったの。
……ありがとう。
さ、もう暗くなるから。今日はこれでおしまいにしましょう。
はーい!!また明日ねー!!
さて、それじゃ……
私たちはもうひと頑張りしましょうか。
みんな、無理はしないでね。
疲れたら、折りたたんであげるから。
ぎにゃー!!
思い出5
千羽鶴づくりは、佳境を迎えていた。
うふふ、もうすぐかんせーだね!
アンタ、折るのがすっかりうまくなったわねえ。
折るスピードも、すごく早くなったね。
でもね、ちゃんと一羽ずつ、願いをこめながらおってるよ!
えらい、えらい。
あ、いたいた!ちょっと、大変なのよ!お母さんの具合が……
えっ……
いますぐ病院に来てちょうだい!
おかあさん……!
千羽鶴はあたしたちにまかせて、はやく……!
う、うん……!
…………そんな……
チヨちゃん、きっと大丈夫だから。
……やだよ……あたしとおなじ思いなんか……させたくないよ……
チヨ?
……5歳の時にね……仲がよかった年上の男の子が、病気になったの……
あたしはその時に、鶴の折り方を覚えたの。そして、男の子が元気になるように、千羽鶴を作った……
一人で作るのはとても大変だった。
でも、男の子のためを思うと、いくらでも頑張れたの。いくらでも、願いを込めて折ることができた。
でもね……男の子は、死んじゃった。
そんな……
あたしは思った。死んじゃったのは、きっと自分の折り方がヘタだったからだって。
――願いが、足りなかったからだって。
チヨ、わるいほうにかんがえちゃダメ。
アタシたちや、アンタ、そしてなによりあの子が、たくさんの<願い>をこめて千羽鶴を作ったでしょ?
わかってるよ、キャトラ。わかってる……けどね……
……それからしばらくして……
……かんせいしたわね、千羽鶴。
…………
思い出6 (友情覚醒)
ルーンの光が、千羽鶴を優しく包み込んだ……
これは……主人公の<願い>……?
チヨは千羽鶴に手を当て、そっと目を閉じた。
アイリスとキャトラ、主人公もそれにならう。
みんなの想いが……そしてあの子の想いが、あたしに流れこんできたよ。
あったかかった。とっても、あったかかった……
みんなー!!
あのね、おかあさん、たいじょうぶだって!
ちょっと、かぜをひいただけだって……!
あしたになれば、ねつもさがるって!
よかった……!
でも……またしばらくは、病院にいなくちゃいけないんだって……
……そうなの……
……ねえ、顔をあげて?君に渡さなくちゃいけないものがあるんだから。
チヨは、出来上がった千羽鶴を女の子へと差し出した。
あ……せんばづる……
無事に……できたよ。
あたしと、みんなと、そしてなによりも、君の祈りが詰まった千羽鶴。
きっと、お母さんは元気になる。
女の子は、千羽鶴を受け取る。
……あたたかい……これが……みんなの想い……
わたしの、想い……
ありがとう……!ありがとね……!
行きましょう、病院に。私たちも、ごあいさつしなきゃ。
***
「…………」
「……なあ、チヨ。」
「……なあに?」
「オレはさ、チヨに、そんな暗い顔をしてほしくないんだ。」
「……うん……ごめんね……」
「……チヨには、明るくいてほしい。」
「……あかるく?」
「うん。だってその方が、絶対に楽しい。」
『早く元気になれよ。じゃないとお前も折り鶴にするぞ』ぐらい言ってくれた方がいいって。」
「…………お……
……き、きみも、おりづるにしてあげようか?」
「ふふ、……その調子……」
「……チヨ。
強く、生きるんだぞ。」
***
「……チヨちゃん。あの子がね、机の引き出しにこれをしまっていたの。
チヨちゃんへの、贈り物。あなたに隠れて折っていたんでしょうね。
……あの子はもう、戻ってはこないけれど……
あたしの心の中で、チヨちゃんの心の中で、あの子はずっと生き続けるわ。」
母親はいびつな形をした一羽の折り鶴をチヨに手渡す。
一羽に、言葉が添えられていた。
『オレがいなくなっても、チヨが元気に、明るく生きていけますように』
女の子は、千羽鶴を受け取る。
「…………う、うぅ…………い、いきるよ……
あかるく、つよく、いきるよ……!ずっと……! ずっと!!」
***
チヨは、一羽の折り鶴を夕暮れの空へと飛ばす。
願いは、届くよね。
鶴は昇ってゆく。
高く、高く、空の向こうへと。切なる祈りを乗せて。
切なる祈りを乗せて
その他
・フォースター☆プロジェクト MUGEN Story