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【黒ウィズ】お願い!お星さま! Story

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん
Legend with 願いのトリロジー
2016/04/28 20:00 ~ 5/13 15:59



story1



名もない小さな村に、ひとりの少女がやって来ました。


「ふう……。なんとか……はあ……間に合ったみたいですね……。」


おやおや? どうやらとっても慌てているみたいですね。すっかり息を切らしています。


彼女の名前は、ハローラ・タクト

たしか、ここよりずーっと南の方にある、ラポリの里の出身です。


「おいおい……。大丈夫かい君?」

「はい、わたしは大丈夫です。お気遣い頂きまして本当に――。」

彼女はそう言うと、男に向かって深々と頭を下げました。


…………。


「…………。」

「………………えーっと。」

「……………………。」


それはそれは長い長いお辞儀の後で、ハローラはようやく頭を上げました。


「それであの……もしご迷惑でなければ、ひとつお尋ねしたいことがあるのですが。」

「なんだい? 何でも聞いてくれよ。」

「はい。今晩、この村で流星群を見ることができるという噂を耳にしたものですが……。」

「流星群? ああ、確かそろそろ見えるはずだけど。君、流れ星を見るためにこの村へ来たのかい?」

「はい。と言っても「見る」ためじゃなくて、「聞いてもらう」ためなんですが……。」

「聞いてもらう?」

「お願いごとです。流れ星に願いごとを聞いてもらえると、それが叶うんです。」

「まさかそんなこと……。」

「ご存じない!? わかりました! 親切にして頂いたお礼です。是非ご説明させて下さい!」

ハローラはふんっと鼻から息を吐いて、話し始めました。


「では、まずは基本ルールの説明からさせてもらいます――。」

「あ、でも君、そろそろ流星群が――。」

男の言葉を遮って、ハローラは話し続けます。

「空から降ってくる流れ星が地上に落ちるまでに、叶えたい願いを3回唱えると、あら不思議!

お星様がその願いを叶えてくれるのです。」

「願いを3回唱えるだけで、叶ってしまうのかい?」

「はい。でもそれは口で言うほど簡単なことではありません。

想像してみてください。流れ星がどれだけ速く落ちていくか。

―瞬ともいえる僅かな間に、3回も願いごとを唱えるんです。

ですから、前もって心の準備をしておくことが、とっても大切なんです。ちなみにわたしはー―」

そんな風にハローラが夢中になって話していると――。


「……あ!」

夜空が突然明るくなって、……沢山の星々が降ってきたのです。

「きゃ、わたしまだ心の準備が……。」

突然の流れ星を前に、ハローラはあたふたするばかり……。

「わ、わたしラボリの里のハローラ・タクトともうします……じゃなかった。えーっと……。」

「この村で流星群が見られるのは、ほんの短い間だけなんだ。さあ、早く願いごとを――。」

「はい! ですからわたしの願いというのは……。あ! 待ってくださいお星さま!」

そうこうしているうちに、流星は全て地上へ落ちてしまいました。


「……はあ。また失敗してしまいました。」

「残念だったね。」

「いいんです……。どうせいつものことですから。」

ハローラはがっくりと肩を落とし、降ってきたばかりの星々を拾い始めました。

「その星くずをどうするんだい?」

「きれいに磨いて、お守りにして、旅先でお会いした人に配るんです。こんな風に――。」

そう言って、ハローラはガラスの瓶から、ピカピカに光った星くずをひとつ取り出し、男に手渡しました。

「ありがとう。君は流れ星を探して旅をしているの?」

「はい、叶えたい願いがありますので。いつも失敗してしまうんですけどね。」

「そうだ! ポポラの里には、星を降らせる魔法使いがいるって聞いたことがあるよ。」

「星を降らせる? そんなことができれば、願いを叶え放題ではないですか!」

「願いが叶うかはわからないけど、去年の終わりにものすごい数の星が降ったのは見たことがあるよ。」

「どこですか? そのポポラの里というのは?」

「ここからずっと北の方だよ。」

「ありがとうございます。」

深々と頭を下げてから、ハロ-ラは一路、ポポラの里へと向かうことにしました。


 ***



「ここがポポラの里……。

星を降らせることができる魔法使い……。そんな夢みたいな人がこの里に住んでいる……。

故郷の町を飛び出してから幾星霜……。ここがわたしの旅の、終着地……。

いい、ハローラ? いつ流れ星がきても、慌てず、素早く、3回よ。しっかり願いを唱えるの……。」

そう自分に言い聞かせて、ハローラが足を踏み出した時でした――。

大きな星がひとつ、彼女に向かってまっすぐ落ちてきたのです。

「来たっ!わたしの願い、唱えさせて頂きます!」

そしてハローラは、慌てず、素早く、願いごとを唱えはじめました。

するとどうでしょう?

ハローラの願いに応えるように、星は少女の姿に形を変えて、声を上げながら落ちてきました。

「きゃー!」

おや? あれはポポラの里の魔法使い、キシャラのようですね。

「ちょっとどいてどいてー!」

「え? ええええええええ!」



 ***



「アイタタタ……。」

「空から……女のコ……?」

「大丈夫? 怪我はない? ごめんね、「星けんけん」をしてたら足滑らせちゃったの。」

「はい。わたしは大丈夫です。お気遣い頂きありがとうございます。」

そう言って、ハローラは深々と頭を下げました。

「いえいえこちらこそ……。」

キシャラも慌てて頭を下げます。


「……(チラッ)。(まだ頭下げてる)」

「……。」

「…………(チラッ)。(なんて長いお辞儀なの!?!)」


「あの……。」

長い長いお辞儀の後で、ハローラはようやく口を開きました。

「はい。」

「もしや、あなたは星を降らせることのできる高名な魔法使い様では?」

キシヤラは照れくさそうに、はにかみながら、コクリとうなずきました。

「確かに『天の川☆フォール』で星を降らせたことはあるけど………。

「やっぱり! お願いします。わたしのためにどうか星を降らせてもらえないでしょうか?

と、ハローラは再び深々と頭を下げようとしますが……。

「あ、ちょっと待って。ちょっと待って!

『天の川☆フォール』は、あたしひとりで成功させるには難しい魔法なの。

「それに、星だってやっばりお空に浮かんでいたいだろうし。」

「そうですよね……。」

ハローラはがっくりと肩を落とします。

「どうして星を降らせたいの?」

「叶えたい願いがあって、それで流れ星を探して旅をしているんですけどいつも失敗ばっかりて………。」

そう言って、ハローラはキシャラに星くずの詰まった瓶を見せます。

「これ、全部、わたしが願いを唱え終わる前に落ちちゃった星なんです。」

「こんなにたくさん……。」

「それで、星を降らせる高名な魔法使いがいるとお聞きして……。」

「そっか。それで、どんな願いを叶えたいの?」

「わたし、子どもの頃から両親に甘えてばかりで、ひとりじゃ何もできないんです。

それにすごい人見知りですし、内気ですし、口ベ夕ですし、そんな自分が嫌いでした。

そんな自分を変えたくて……。

ひとりでなんでもできて、明るくて、お喋りで、友だちがいっぱいいて……。

そんな女の子になりたくて、流れ星に願いを叶えてもらおうとしたんです。

でもやっぱりダメでした。

はじめはお家で流れ星を待っていたんですけど、だんだん待ちきれなくなって、旅に出たんです。」

「流れ星を探すために?」

ハロ-ラはコクリと頷くと、そのまま俯いてしまいました。

「……でもダメですね。これだけ旅を続けて、―度も願いを唱えきることができないんですから……。」


「叶ってるよ!」

「え?」

「だってハローラ、ひとりで旅してるんでしょ?

今だって、あたしとこんなにたくさんおしゃべりしてるしさ。」

「……本当だ。」

キシヤラの言葉で、ハローラはようやく今の自分に気が付いたみたいです。

「流れ星に向かって、慌てず、素早く、3回、願いごとを唱えることに必死で、全然気が付きませんでした……。

故郷を出てからずっと、わたしはひとりで生きてきました。

瓶に詰まった星の数だけ、わたしはいろんな場所に行って、いろんな人と出会いました。

「知らず知らずのうちに、成長してたってことだよね? すごいね、ハローラ。

キシャラはそんな風に彼女を讃えますが、ハローラは瓶に詰まった星くずをじっと見つめ、

「お星さま、本当にありがとうございました。」

と、深々と頭を下げました。

それはそれは長い長いお辞儀でした。


「どうして星にお礼をいうの?自分の頑張りでなりたい自分になったのに……。」

「でもやっぱり、お星さまがなかったら、今のわたしはありませんから。」

「たしかにそうかも知れないね。」

「はい。やっぱりお星さまのおかげです。」


「ねえ、これから空に昇ってみない?星のすぐ近くまで、連れて行ってあげる。」

「え?そんなことができるんですか?」

「うん。さあ、あたしに掴まって!」

キシャラはハローラの手を掴むと、オーロラに乗って空へ登って行きました。

そうして、ハローラは大好きな星々に囲まれて、それはそれは楽しい時間を遇ごしたのでした。




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