【黒ウィズ】アイ&アイ(謹賀新年2018)Story
2018/01/01 |
目次
主な登場人物
story1
アイとアイは、そろって首をかしげました。
海に面する、広い広い町――のようなどこか。
ふたりは、その片隅に立っています。
町、のようではありますが、人気はなく、代わりに変わった乗り物や奇妙なオブジェがあちこちに置かれています。
そこから先の言葉を、アイは、そっと呑み込みました。
それもまるで、飽きられて捨てられたみたい、――とは、□にしたくなかったのです。
きっと誰かに見てもらうために作られたに違いない、どこか愉快な町並みは、誰もいない世界では、ただの廃墟よりさびしく見えました。
アイが、ぽつりとつぶやいて、白く細い手を、乗り物の柱に当てました。
アイの身体から、淡い服力の光が巻き起こり、乗り物へと流れ込んでいきます。
ごぅん、と重い音を立てて、乗り物が動き出しました。
そして、さらに、その乗り物から何かが跳び下りてきました。
子供が描いた落書きが、壁からはがれて動き出したような、とても変わった生き物? です。
アイは、にっこりと微笑んでしゃがみ込み、機械の指先を伸ばしました。
〝それ〟は、ものすごい勢いで突っ込んできます。
アイは、自分の後ろをきょろきょろと見回し、不思議そうに眉を寄せました。
ふたりは気づきませんでしたが、〝それ〟は、ばっちり見ていました。
アイの後ろに忍び寄った幽霊が、魔道ビームの1発で消し飛んだのを。
おきゃくさま、よーこそおいでくださいました。ここは、ろあこーすたーです。
〝それ〟は空気を読みました。
さらに、キャストに徹しようとしてか、雑な語尾までつけ始めました。
ふたりのアイは、うなずき合って、それぞれ別々の道に向かいました。
story1-2
金色のアイが道を辿って行くと、なんだか金ぴかなものがそこらじゅうに置かれた場所に着きました。
アイは、金で塗り固められた女の子の像に触れて(土台にインゴットソフィと書いてありました)、魔力を流し込みました。
すると、ギギギ、とインゴットソフィの首が回り、アイの方を見ました。
アイは、さらに多くの魔力を流し込みました。
インゴットソフィは、にっこりしました。
インゴットソフィは、話を聞かず、ぺらりと金色の紙を差し出しました。
インゴットソフィは、困ったような顔をしました。
アイは優しく笑って、次のアトラクションに向かいます。
その背中を見つめながら、インゴットソフィは、ギギギと首をかしげました。
あっ、ひょっとして、あの子が金色だから?金を見慣れ過ぎていて、相対価値が低いのかな?
だったら、ソフィが見せてあげる。金には無限の可能性があるんだってこと。
story1-3
長い。
私の昔の名前みたい。長いから、マスターは略称で呼んでたけど。
…………。マスター……。
アトラクションに魔力を注ぎ込みながら、アイは、しょんぼりとうつむきました。
すると。
アイの膝ほどの背丈もない、ちっちゃな女の子たちが、物陰からジッと見つめてきました。
アイが手を伸ばすと、女の子の1人が、とことこ近づいてきました。
小さいが握力はある。それだけだが、なにか?
ちっちゃイーニアは、アイの手を取り、ギュッと力を込めて握りました。
アイの手に、万力のような圧力がかかります。
でも、アイはちっとも痛くありません。笑って、握り合った手を軽く振りました。
攻撃がぜんぜん効いていないとわかったちっちゃイーニアは、仲間を呼びました。
ちっちゃイーニアたちが、わーっ、とアイに群がります。
ちっちゃイーニアたちは、寄ってたかってアイのあちこちをつねりますが、アイには、やっぱり効きません。
アイは、子猫の群れにたかられているような顔で、幸せそうにしています。
ちっちゃイーニアたちは、アイから離れてスクラムを組みました。
ちっちゃイーニアたちは、わーっ、とアイに跳びかかりました。
無抵抗で受け入れるアイのあちこちに、みんなで、ひしっ、と抱き着きます。
ちっちゃイーニアたちにしがみつかれたまま、アイは、るんるん気分で歩き出すのでした。
story2
大きなものから、小さなものまで。いろんな箱が、その場を埋め尽くしています。
アイが、箱の中身を確かめようと近づくと――
どこからともなく、不気味な声が聞こえました。
箱のひとつが、ずるりと開きます。
その中から、長い髪を垂らした女性が、液体の流れ出るように、どろり(・・・)とこぼれ落ちました。
女性は、ゆっくりと近づいてきます。
ココココココココココ……!
ヒャハハハハハハハハハハッ!!
目の前まで来て奇声を上げる女性に、アイは、ていねいに挨拶しました。
アイは、手近な箱に触れました。
女性は、がばっとアイに抱き着いて、箱の中へと引きずり込んでしまいました。
しばらくしてから、アイはパカッと箱を開け、外に出ました。
アイを同好の士とみなしたのか、女性は、小さくてかわいい箱を、たくさんくれたのでした。
story2-2
ちっちゃイーニアたちにたかられたまま、アイは、次のアトラクションに到着しました。
アイは、中央にある大差に触れて、そっと魔力を流し込みます。
すると突然、大釜の周囲で、どーん、という大きな音とともに爆発が起こりました。
どーん、どーん、と爆発が続くのは、大釜の脇から現れた人形が、ぽいぽい爆弾を投げているせいでした。
人形は、アイとちっちゃイーニアたちを見て、ぎゃーぎゃーわめきます。
言うが早いか、爆弾を投げつけてきました。
アイは、ひしっとしがみついてくるちっちゃイーニアをかばい、手から魔力の光を放ちました。
アイの光を受けた爆弾は、空中で、どーん、と爆発しました。
それにしても、さっきの爆弾、綺麗に爆発するんだね。だったら、こういうのはどう?
アイは、そのへんに置かれている爆弾を手に取り、空高く放り投げました。
そこへ、魔力の光を放ちます。
爆弾が空で爆発し、大きくて綺麗な花を咲かせました。
人形は、こくこくうなずき、抱えた爆弾をぽいぽい上に放り投げます。
おちゃめにばくはつ!
コツをつかんできたのでしょうか。爆発――花火は、どんどん大きく、綺麗なものになっていきます。
アイは、にこにこと拍手しました。
すっかり花火にハマってしまった人形を微笑ましく見つめてから、アイは次のアトラクションに向かいました。
story2-3
施設の中央にある、大きな農園の前で、ふたりはばったり合流しました。
ふたりはしゃがみ込み、農場の土に手を触れて、魔力を送り込みました。
すると、ぼこっ、と土が盛り上がり、中から何かが現れました。
ソンビエッタでした。
1体ではありません。ぼこっ、ぼこっ、と、農場のあちこちから、次々とソンビエッタが生えてきます。
群れをなしたソンビエッタたちが、ドドドドド、と迫ってきます。
でも、足が腐っていたので、コケました。
ソンビエッタたちは、バラバラになりました。
アイたちは、ちっちゃイーニアたちと手分けして、ほつれたソンビエッタの傷を縫合していきます。
ソンビエッタたちは、動きません。
恩は……忘れぬ……。
かぼちゃ食え。
story3
農場の外に出ると、施設全体が、キンキラキンに飾りつけられていました。
飾りつけをしていたインゴットソフィが、満足げに言いました。
そんな話をしていると、他のキャストたちも、呼んでもいないのに続々と集まってきました。
出会うなり威嚇しあうキャストたちを、アイとアイが優しく引き離していると――
突然、ごーん、という鐘の音がして、らくがきリルムが飛び上がりました。
キャストたちがそろって叫ぶと、空に大きな花火が打ち上がります。
アイたちは、きょとんと顔を見台わせ――
お互いに、小さく笑いました。
待ってましたとばかり、ソンビエッタたちが食べ物を運んできます。
キャストたちは、わいわい騒ぎながら、野菜に群がっていきます。
その光景を見て、ふたりのアイは、どちらも優しく微笑むのでした。
あきれながらキャストたちの間に入るアイを見て、もうひとりのアイは、うれしそうに笑いました。
story3-2
夜が明けました。
初日の出のぬくもりに触れた潮風が、人気のない路地を吹き抜けていきます。
騒がしくしていたキャストたちの姿は、もうどこにもありません。飾りつけも、すべて消えてしまっています。
アイたちの注いだ魔力が尽きたのです。
アイとアイは、誰もいなくなった朝の農場を、じっと見つめ続けていました。
朝焼けに淡く照らし出された農場の空気に、まだどこか、キャストたちの騒がしさの余韻が含まれているような気がして。
誰が、なんのために、この場所を、そして、あのキャストたちを作ったのか。それは、アイたちにはわかりません。
だけど、同じ魔道で生み出されたものとして、感じ取られたことがありました。
私、うれしいんだ。そういう子たちに出会えて。胸が、あったかくなった気がする。
これも、綺麗なもの、美しいもの……だよね? アイ。
ふたりのアイは、互いが抱いたぬくもりを確かめるように、機械の手を重ね合いました。
そして、農場の方を振り返り、優しいささやきをこぼしました。
潮風が、尻尾を振る犬のように渦巻いて、美しい金と銀の髪をなでていきました。
アイ&アイ(謹賀新年2018)Story -END-
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