【黒ウィズ】桃娘伝Ⅱ Story0
2017/00/00 |
目次
story0 プロローグ
気がつくと、変な街にいた。
wなんにゃここは!!
本当に、いったいなんなのだろうか。
変わった格好をした人々が、謎めいた機械を使いこなしている。
一言で言うなら、そんな場所だった。
wあの格好、見覚えがあるにゃ。ここ、スモモたちのいる異界にゃ?
ウィズが小首をかしげたとき、そのものずばりの声がした。
sあ、キャットにウィザード! 久しぶりだね!
道の先で、少女が大きく手を振っている。
スモモ・ブルーム。気高い義侠心を胸に、人々を助けて戦う、討伐者の少女だ。
わけのわからない状況で、知り合いに会えたのは、まったく幸運だった。君はホッとして、スモモのもとまで歩いていく。
スモモは、大きな機械の前に立っていた。機械の表面には絵が貼りつけてある。
sふたりも、一緒にゲームする?
wゲーム?
sこれこれ。コインを入れて遊ぶんだ! 面白いよ!
スモモが、ちゃりーん、と機械にコインを入れる。
すると、騒々しい音楽が奏でられ、機械に貼りつけられた絵が動き始めた。
sよっ。てやつ。
スモモが機械についているレバーを動かしたり、ボタンを押したりすると、絵の中の登場人物が自在な動きを見せる。
w楽しそうだけど、私たちはこの異界のお金を持ってないにゃ。
だったら、これをお使いなさい。
スモモのグランマがひょっこり現れ、君に布袋を渡してくれた。
ずっしりとした重みが手に伝わってきて、君は思わず目を瞬かせた。
wこんなにもらっていいのかにゃ?
いいんですよ。いっぱい遊びなさい。
おばあさんは、にこにこと笑いながら、手にした服を別の機械に放り込む。
wそっちの機械はなんにゃ?
これは、洗濯機ですよ。
機械の中で、水と服が渦巻いていた。どうやら自動で洗濯しているらしい。
川に行かなくても洗濯ができるなんてねえ。まったく、家電サマサマですよ。
s本当に家電ってゴッドだよね!
ウィザードたちも家電教に入ろう! ゲームの世界で無限に鬼退治できるよ! ゴーグルをかけると、さらに没入感アップ!
やべえな、と君は思った。
何かがおかしい。
前にサキモリの里に来たときには機械など影も形もなかった。スモモも、家電教には入っていなかったはずだ。
wというか家電教ってなんにゃ。
君とウィズが頭を抱えていると――
y魔法使い! おい! こっちこっち!
近くの家の陰で、見覚えのある神が手招きをしていた。
yこっち! こっちだって! 来いよ! はーやーく!
あんまり関わり合いになりたくないタイプの神ではあったが、放っておくと、それはそれでウザいことになるタイプの神でもある。
君はしぶしぶ、そちらに向かい、神が隠れている家の裏手に回る。
神の他に、見知らぬ少女と、見知らぬ人型の機械が待っていた。
nあなたが、黒猫の魔法使い殿ですね。
私は討伐者のナユタ。このたび、あなたをお招きした者です。
yいや、実際に呼んだの、俺だけどね。
討伐者といえば、スモモやヤエのように、悪い鬼や妖怪と戦う人々のことのはずだ。
何かどうなっているのか、君は尋ねる。サキモリの里は、そしてスモモは、いったいどうしてしまったのかと。
n実は、ここは現実の世界ではありません。とある絵巻物の中なのです。
wにゃにゃ!? 絵の中にゃ!?
絵の中に入ってしまった……という状況には驚いたものの、あれが現実ではないと知って、君はむしろホッとした。
nですが、ここで描かれたことは、遠からず現実となってしまいます。
どうしてそんなことに? という君の質問に答えたのは、人型の機械の方だった。
?ハクライティスの家電たちが、人の世を支配しようとしているのよ。
お願い、魔法使い。力を貸して。家電の野望を止めるために!!
story1
君はカードを構え、前に出た。
wそんな修羅場に勝手に呼ばないでほしいにゃ!
死ねば死にます。気をつけてください。
nあ、そうそう、そうでした。絵の中とはいえ、我々にとっては現実です。
ーーーーーーーーーーー
命は惜しーい。
争いたくないとか言ってなかったかにゃ!?
tよかろう、ならば死あるのみ!!
wだめにゃ、説得が通じそうな相手じゃないにゃ!
Dウォォオオオオ!!
tやめて! 私たち、同じ家電じゃない争いたくなんてない!
wなんか襲いかかってきたにゃ!
C家電を使わぬ者は死ね!!
B家電を信じよ……家電を使え……。
Aおまえたち……なぜ家電を使わぬ……。
すると、そこかしこから、ひとりでに動く機械たちが寄ってくる。
スモモたちのピンチなら、放ってはおけない。君はうなずいて、ナユタとともに歩き出した。
nついてきてください。この絵の奥に、絵を現実化させるための゛要、、があります。それを破壊すれば、ことなきを得るはずです。
神を呼んでくることができるなんて、このナユタという人は、かなりとんでもない人物のようだ。
俺俺。俺が”絵の中に入った”って書いたわけ。弟のやらかした不始末だからって、ナユタさんに連れて来られてよお。
w絵の中にいるなんて、まだ信じられないにゃ。どうやったにゃ?
ですから、こうして絵の中に入り、助っ人として、あなたがたをお呼びしたというわけです。
なぜエソラゴトが家電の桃源郷を描いたのかはわかりませんが、放っておくことはできません。
この神が”雑”というからには相当なんだろうな……と君は思った。
yあんまりにも雑な生き方してるもんで、上界を追い出された不肖の弟よ。
nおそらくは、ヨミビトシラズの兄弟神、エソラゴトのしわざです。彼は、描いた絵を現実にする力を持っています。
wそもそも、誰がこんな絵を描いたにゃ?
意昧はわからなかったが、大変そうだね、と君は答えた。
見て。この絵の中は、家電にあふれている。これはもはや、家電のユートピア……サイバー桃源郷よ!
t私はティマ。ハクライティスから来た家電よ。
「変な機械がいっぱいにゃ。」
「雑に呼ばないでほしいにゃ。」
story1-2
文明の利器が何か言っていた。
t誰や、人類に火ぃなんちゅう危険なもん教えよったんは。
灰になるまで。
まるっと焼いてしまいましょう。
n大丈夫です。あくまでも、絵の中のスモモなので。
えっ。
n焼きましょう。
sこの*****女! すっこんでろ!
n本物ではありません。あくまで、絵の中のスモモです。
「「ゴーホーム!!
sクエス=アリアス人、ゴーホーム!
nあくまでも、絵の中のスモモです。何を言われても気にしないでください。
割とショックだった。
それにしても、スモモたちに面と向かって罵られるなんて……。
wいらん気の遣い方すんなにゃ!
tここ、そういうのいるとこかなって。私、気いー遣うタイプなの。家電だから~。
wんじゃなんにゃ今のは!!
tんーにゃ、ぜんぜん。初対MEN。
w知り合いだったにゃ?
tやめてスモモ、目を覚まして!
「「クズどもめ!
sクズどもめ!
「「許さない!!
家電教に帰依しないばかりか、家電さまの鳥居を破壊しようなんて……そんな悪行、私たちが許さない!
討伐者スモモ。そして鬼の姉妹フウカとミライ。かつて共に冒険した仲間たちが、キツと君を睨みつけている。
高らかな叫びとともに、立ちふさがる影があった。
「「させない!!」」
sそうはさせない!
nあれが、この絵の゛要、、になっているようです。破壊しましょう!
妙なオブジェが立っている。確か、鳥居というものだったはずだ。
ナユタが道の先を指差した。
みなさん、あれを見てください。
家電は、その極致にして象徴なの! かくいう私も――
太古の時代、人類は「火」を手に入れたことをきっかけに、創意工夫を凝らし、どんどん暮らしを豊かにしていった。
t人の生活を便利にする、文明の利器よ。
wところで、そもそも家電ってなんにゃ?
襲い来る家電を蹴散らしながら、絵の中を先へ先へと進む。
story1-3
sありがとう。大事に使わせてもらうよ!
hハクライティスで使われる特殊金属、王璃遥坤(オリハルコン)で造った武器だよ。からくりと戦うなら、これがいちばん効く。
sハツセ、これは?
さらに、近くの茂みから見たこともない武器を取り出してきて、スモモたちに渡していく。
文句を言いながら、ハツセは、前にも使った大きくなるお椀を取り出し、川に浮かべた。
hハツセ使い荒いなあ。
yコイツもいるなら百人力だけど、急ぐは急がないとな。ほら、ハツセ。アレ出せ、アレ。
人生のハードルが死ぬほど上げられていた。
y人を助けるためなら喜んで死ぬから。
l世のため人のため、修羅となることをもいとわぬ精神……勉強になります。
yそうそう。コイツ、ほんとヤバいよ。人助けの鬼だから。もはや修羅の域だから。
えっ。
お噂は聞いてますよ。世界に愛と平和をもたらすため、日夜人助けに奔走されてるんですよね。
l初めまして、魔法使いさん。ヒサメと申します。
君が自己紹介をすると、少女は、穏やかに微笑み返してくれた。
?他の絵巻物も、妖怪仲間が探してくれています。まずは、近いものから対処しましょう。
yさっそくだけど、川を下ったところの町に、でかい絵巻物があるらしい。連日、見物人で人だかりができてるってハナシ。
hおや、君たち。久しぶりだね。
ヤエと、ハツセ。もうひとり、知らない少女が同行している。
いくらか歩いて森に入ると、ナユタに指定された地点で、数人が待っていた。
君たちはナユタの言に従い、里を出た。
n私とヨミビトシラズは、エソラゴトを探します。あなたがたは、ヤエたちと合流し、次の絵巻物のもとに向かってください。
sもちろんだよ、マスター・ナユタ!
家電たちの野望を止めねばなりません。協力してくれますね、スモモ。
n絵巻物はこれですべてではありません。どうやら他にも2巻ほどあるようなのです。
彼らは、家電が人を支配する世界を作るつもりよ。私、それが見過ごせなくって、助けを求めにきたの。
tでも、私たち家電は無事だった。そしてー部の家電が、「現実化する絵」を使って、サイバー桃源郷を作ろうとしてるの。
mあ、そう……。
tんにゃんにゃ。軍事マシーンはだいたい相打ちで吹つ飛んでるから。
mということは……その反逆したまし一んとやらが、次は和ノ国を狙って……!?
fすげーことをさらっと言つたな……。
tあ、それね。実は先日、ハクライティスは、軍事マシーンの反逆で海の中に沈んじゃったんだけどー―
sそれで、どうしてハクライティスのからくりが、絵の中に描かれていたの?
間に合って本当に良かった……と、君は身震いしながら思った。
nあともう少し遅かったら、あの光景が現実のものとなっていたでしょうね。
sそうだね、グランマ。すごく爽快だったような気がする。ぜんぜん覚えてないけど。
gなんだか、いい夢を見ていたような気がしますねえ。
いや。すでに白紙となっているので、ただの大きな巻物でしかなかった。
と、スモモの見やった先。里の広場に、大きな絵巻物が飾られている。
sそうだったんだ。そういえば、里に不思議な絵巻物が届けられて……。
n実は、かくかくしかじか、こうこうこうでして。
君はドキリとしたが、表情を見る限り、どうやら君の知っているスモモのようだ。もちろん家電も持っていない。
突然、スモモが話しかけてきた。
sあれ、キャットにウィザード、マスター・ナユタにヨミビトシラズも!いったいどうしたの?
気づくと、見慣れたサキモリの里に立っていた。
絵の中のスモモたちを吹き飛ばし、謎の鳥居を破壊すると、目の前の風景がぐちゃぐちゃに歪んだ。
story2 中級:ニューヒーロー見参!
gグシュウシュウシュウ小童が! 喰らえミサイル雨あられ!
k行くぜ、からくり大好きオバケ野郎正義の鉄槌を食らわしてやる!
f人間が小せえ……。
洗濯代、払ってもらうぜ!!
kそこの川岸で寝てたら、てめえの爆発のせいで服の裾んところが煤けちまってなア!
ハルヒコと名乗った少年は、勇ましくも高らかに、笑いながら口上を述べた。
kいいや。
gハ! 正義感のなせる業とでもいうのか?
k見過ごせないからに決まってるだろ。
gなんだ貴様は! なぜ邪魔をする!
kハルヒコ・ホリカワ、ここに参上!
手にしているのは、針のような剣である。柄の部分が木槌のようになっていた。
その上に、少年がひとり、乗っている。
川を駆け抜けていったのは、君たちが乗っているのと同じ、お椀型の船だった。
gぐわあっ!な、何奴!
何かがすごい勢いで水面を走り、空中のガムシヤに斬りつけていったのだ。
不意に、白刃が閃いた。
?ていやあっ!
t卑劣KAAAAAAAN ! !
とにもかくにも亀にも毛にも! その娘はここで破壊させてもらう!
ガムシヤは、ビシツとティマを指差した。
gあーやかましい!そういうとこ突っ込むな! もう!
hえつ? 生まれつき死んでたんですか?
gいや……そう言われても……それがし、生まれつきがしゃどくろで、そういうもんだって言われて育つたし……。
h死んでたら、妖怪つていうより、死霊とか、そういうのじやないですか?
gえ。
h死んでても、妖怪つて言うんですか?
gグシュウシュウシュウ!それがしは妖怪がしゃどくろ!もとより死んでおる身だからなあ
m奴はガムシヤ。前に戦った敵よ。まさか生きていたなんて……。
y変なの来たぞ!
不気味な笑い声がしたかと思うと、爆発の煙を突き破るようにして、空飛ぶ武者が現れた。
?グシュウシュウシュウ!そのとおり!
sこのミサイルは、ガムシヤの!?
筒が互いにぶつかり合い、空中で派手に爆発する。
フウカが風を起こし、筒に叩きつけた。
fげっ、ありゃまさか――ええいっ。
尖った金属の筒が4つほど、ひゅるるるるー―と音を立てながら、お椀めがけて飛んできていた。
m姉さん、アレ!
そのとき、ミライがハツと顔を上げ、横合いを指差した。
fおまえが言うの?
yウザいなこいつ。
tいいよいいよー。もっと褒めていいよー。ほらほらー。いま褒め待ちだよー。どんと来いやー!!
h高度な人工知能に、あえて雑なことを言わせる。ある意味、すごいことをやってますね。
f高度なわりに、だいぶ雑だけどな、コイツ……。
これほどのレベルで会話ができるのは、きわめて高度な人工知能を搭戯している証さ。
h付喪神は、長く使われた道具が自我を得たもの。人工知能は、純粋に科学の力によって、道具に自律思考を行わせるものだね。
h人工……知脳? 付喪神とは、違うんですか?
tパネえっしょ。
それにしても、君たち、変わったからくりを連れているね。人工知能を搭載しているのか。
h私も、ちょっと研究がてら出張していてね。おかげで絵巻物の影響に巻き込まれずにすんだよ。
yああ。今は妖怪との協力体制を作るために、妖怪の森で暮らしてる。
wヤエたちは、サキモリの里にはいなかったにや?
前回とは違い、追われる身ではない。流れゆく景色を堪能する余裕もあれば、積もる話をする余裕もあった。
お椀に乗り込み、川を下っていく。
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