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【白猫】ゼロ・クロニクル Story2

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作成者: にゃん
最終更新者: にゃん

開催日:2017/07/14



目次


Story8 白の巫女の祈り

Story9 黒の使い

Story10 珍しい者

Story11 光の謁見

Story12 <均衡>を破壊する者

Story13 未来への捕縛

Story14 感謝の意



登場人物




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story8 白の巫女の祈り


白の王宮、始祖のルーンの間――


……始祖のルーンよ……我らに、ご加護を……


――始祖のルーン――それは、大いなる力を秘めし、白の王国の象徴――

この世界が天と地、白と黒に分けられたときより存在し、白の民に恩恵を与えてきたという――

――代々の<光の王>に、守護されながら――


……弱気になっちゃダメ……

……今は、私が王なんだから……私がなんとかしなくちゃ……

そうしていると、<光の王>より<白の巫女>の名の方がしっくりきますね。

あまりご自分を責めませぬよう。無理なこととは存じていますが。

シーマさん……

さん、なんかよしてください。あなたが王ではないですか、アイリス様。

そうですけど……いいじゃないですか。

シーマさんは、私にとって、大切な姉のような方です。共に、修練に励んで……

そしてあなたが勝ったわ。

それは……

恨んでいるわけじゃないのよ。仕方のないことだもの。客観視すればあなたの方が通任だわ。

…………

ねえ、覚えてる?

え?

先代の<光の王>のこと。

……いいえ。

不思議よね……あなたが王位に就く前に、いらっしゃったことだけは覚えているのだけど……

はっきりとしたことは思い出せないの。姿は?声は?会っていたはずなのに。

私、なんとなくわかるんです。

へえ?

蓄積は必要ないんです。<均衡>を保つためには。

常に同じ状態であればいいのですから。

始祖のルーンが教えてくれるの?

そう……ですね。

そ。なら、私には知りようもないけど、そう言うのならそうなのでしょうね。

ただ、少し哀れだわ。

哀れ?

ええ。<王>という存在が。役目を終えれば、後継者にすら忘れられるなんて。

私は平気です。とうに、覚悟しています。

でも、哀れよ。私のような一般市民の目からすればね。

……かもしれませんね。

あら、こんなことを言いに来たわけじゃないの。あなたを探して呼びに来たんだったわ。

アイリス様。黒の王国より、使者が。

わかりました。

宣戦布告をしておいて、どの面下げて、と思いますけどね。

いいえ、それは違います。黒の王国も、民は同じ……

ただ……<王>が暴走し、破滅へと連れ回しているだけ……

そうかしら。

<闇の王>が次の代となれば、再び<均衡>は守られるでしょう。

そのときあなたは忘れ去られているかもしれないわよ?

幾度も<闇の王>を退けた、その功績も、誰の記憶にも残っていないかも。

構いません。平和な未来が来るのならば。

そう……

いい子ね。

そんな……

じゃあ、そろそろ向かってくれるかしら?

あ、はい。


 ――


……?

どうしたの?ほら、早く。

あ、はい……

(……何かしら……?)




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story9 黒の使い


――黒の使いか。

入国の通達は届いているかと。王の書状もここに。

…………

敵意はない。剣を降ろされよ。

どの口がほざくか。

貴公の感情は理解出来る。しかし私も、ただ、使いの身。

また、ここで追い返す権限も、貴公にはないはずだ。

急に暴れた。だから斬った。それを疑う者はいない。

<光の王>もか。

王に危険が迫らぬよう、お守りするのが騎士の務め。

そんなに目を吊り上げないでくれ。……そうそう。俺は独り言が趣味でな。

家でやれ。土壁は音も吸うだろう。

戦争になんの意味がある。やめちまえばいいんだ。

貴様らから仕掛けたのだろうが。

ウチはトップが狂ってやがる。なのに、誰一人逆らえやしねぇ。それもそのはずだ。

<始祖のルーン>……地にはそれがない代わりに、王がソレソノモノなんだからな。

…………

大半の国民は、気にしちゃいねえかもしれねえ。

自分たちの未来が、トップの意思で勝手に決まる。それはそういうもんかもしれねぇ。

何が言いたい。

だが、俺たち軍属は違う。戦争なんざ、したくねぇ。

ここで愚痴るより、国に戻って進言したらどうだ。

そうすりゃ……コレよ。

<男は親指で、自分の首を掻っ切るポーズをした。>

命惜しさに愚行に手を貸すか。これだから黒の民は……

まったくもって同感だぜ。早く代替わりしてもらいたいもんだ。

……ほう。

知っての通り、これまでの<闇の王>は違った。

内心どう思ってたか知らねえが……大人しく、地上だけに留まってたって話だろ?

俺もそう聞いてはいる。

俺もそうさ。なら、きっと事実だ。まあ、詳しいことは、なんでか覚えちゃいねえんだが……

…………

ともかく、辛抱してりゃあ、いずれ別人が王になる。

そのときのために……俺たちが仲良くすることは、無駄じゃないと思うがね?

知らん。俺はただの騎士だ。

えーっ。

なんだよ?

あんた、さっきの言葉、言葉!主を正しい方向に導くのも、臣下の務めだろ?

貴様は出来ないことを、俺にはやれというのか。

あんたにゃ出来そうだからさ。

……ふん。

お前、名は?

アデル。

アデル。斬り捨てるのは保留にしてやる。

黒の民には珍しく、お前は物がわかりそうだ。

珍しくはねぇんだけどな。

ここで待て。しかるべき手続きをしてやる。

へっ……

思った通りだ。誰だっておんなじさ。

どこで生まれたかなんて……



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story10 珍しい者


……言葉を返してやりたいね。てめぇの方が、よっぽど珍しいじゃねえか。

あー、悪魔だー!

しっ、見ちゃいけません。

おやおや……偏見だねぇ。

国民の意識改革は、どちらにとっても重要課題…………ってトコだな。


何をぶつぶつ言っている。特使サマだろ、行儀良くしろ。

言ったろ、趣味なのさ、独り言がよ。

いまのもそうか?

はっ。騎士団長ファイオス殿、ご同行、感謝いたします。

……我らの先尋は王城の入り口まで。

そこで待て。迎えの者を寄越す。

それでよいのですか?

<光の王>が、騎士より弱いとでも?

愚問でした。

その言葉づかいも、正式ではないからな。

帰りはいつだ?

交渉に滞りなくば今日にでも。

と、言いたいところですが、いずれにしろ細部の折衝に、数日はかかるでしょう。

色よい返事がもらえぬのなら、説得させて頂きたく思いますし。

迷惑な話だ。

重々承知ではございますが。

騎士の宿舎も近い。様子を見に来るぞ。

騎士団長殿に、自由に特使サマと会う権限が?

許可を得ればいいのだろうが。いつまでしゃべっている。

ここで待て、と。

……着いていたか。いいか、妙な気を起こすなよ。生きて帰りたくばな。

はい。

ふん。

…………



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story11 光の謁見



こちらでお待ちください。

はっ。

…………

(おうおう、目が物語ってやがる。

『汚らわしい黒の民は、さっさと地べたに帰れ』、か。

それが窓口の態度かよ)

……特使など……わざわざ王が会うほどの……

…………

……ごほん。

(おめぇらが無能だから、王が引っ張り出されてんだろうが)

…………

……!

お待たせしました。



…………

特使殿?


……黒の王国より参りました、アデル・バダンデールと申します。

王に代わり参上した無礼、どうかご容赦ください。

書状、読みました。

はっ。

現在、白の王国と黒の王国は、決して良好な関係ではありません。

それどころか、いずれかを滅ぼすところまで、進んでしまいかねないでしょう。

おっしゃる通りです。

なのに……盟約を?

古来より、敵の敵は味方とは言わぬまでも、共闘は可能とされております。

……確かに、<あれ>は、きまぐれのようにこの国へ赴き、いたずらに害を為します。

ですが――破壊の化身、バールを討ち取ったのち――

<闇の王>の矛先が向くのは、ここを置いてありません。

当代のままであれば。

…………

黒の王国としては、白の王国との、末永くの<均衡>を望んでいます。

お言葉ですが。それは<闇の王>のご意向か?

はい。

矛盾しておられるように思うが?

私に計れるようなお方ではありませぬゆえ。ただ、そうと。

俄かには信じがたい話だ……

いかがでしょう?<光の王>アイリス様?

…………

また……私が把握している限り、王の在位は、相当の年数に達しております。

ですので……

…………

信用しましょう。

アイリス様!?

国の代表としての、その言葉を。

……はっ……

……ぬぅ……!


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story12 <均衡>を破壊する者


――我が剣よ――虚空よりいでよ!

くらぇえッ!!

<――ほの暗く燃ゆるようなその刀身が伸びゆく先には――>


――ハハハハハハハハ……!

どうした、小僧?儂と遊んで欲しいのか?

くっ……!?

<在るだけで他の生命を否定するかのような、絶対的な、圧……!

暗黒騎士の剣が、中空にはりつけと――

いや……その肉体ごと完全に停止させられている!>

なっ……!?

そう焦るなよ。すぐに小僧の番は来る。

くくくく……!お気遣い、ありがたく頂戴しよう……!

よくぞ儂のために、これだけの玩具をそろえてくれた……さて――


――撫でてやらんとなぁ!!





<よんだ空を埋め尽くしていた幾万の魔物の軍勢が……

指の一振り、翼のはためき、吐息の一つで、霞のように消えていく――>


ハハハハハ……!いい子いい子……!

馬鹿な……!あれだけの数を、易々と……!

そんな芸当、<光の王>にも……!

おのれぇええ……!

悪いが、次の玩具を頂けるかな?

ふざけるなっ!

なんなら、小僧――

――貴様でも構わんぞ!?

ぉぉぉぉおおおおお――!


――


……ん?

部下を逃がすとは、随分お優しいことだな?

いっそ白に染まればどうだ?儂の暴れる手間も省ける。

…………

世界の<我儘>よ――

ああ?なんだそれは?

<均衡>を拒む貴様に、これ以上の名はなかろう。

ま、好きに呼べ。竜だ神だと言われるのも、気に入ってはおらん。

ただ、貴様に名づけてもらうというのも――

――気に入らんがなぁ!?

それは良かった。貴様の気分が良くなることなど――

一つとしてやるつもりはない!


<<闇>が膨張する!

如何なる物をも通さぬ黒が、周囲の空間全てを埋め尽くす!>


笑わせる!下等な本能めがっ!






story13 未来への捕縛



大言吐いた割にはだなぁ!?

貴様ぁ……!

<均衡>の片割れ、<闇>よ――

消えてなくなれ――!?

なんだぁ!?これはぁ!?



<*×○■!&%$…………>

この、一度きり……





うぬぬぬぬぬ……!

惜しかったな、バールよ!

小瘤な、雑魚ども……!

うぉおおおおおおお――!

……くくくくくく……!嘆かわしい限りだなぁ……?

<闇>よ!下賤な本能よ!一握りの誇りすら捨てたか!

都合のいいときだけ、<光>と手を結び……

無意味な<均衡>に縋るか!

喚いていろ。貴様はこれで終わりだ。

我が焦熱の監獄……<タルタロス>の底で、永劫、苦しむがいい。

永劫、だと?なぜ消さぬ?

…………

……あぁ、いい、いい。答えなぞわかりきっている。

では――また、な。


惜しかったな……<我儘>よ……

この僅かな<傾き>こそ――

――我の道――



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story14 感謝の意



――この度は、盟約を果たしてくださり、感謝の言葉もありません。

私が貸したのは剣の一振り。

……黒の民には、多くの被害が……

黒の王国にいるのは、大きく分けて、二つの民。すなわち、人か、魔か。

魔の者はより渡く、<闇>に依存します。アイリス様が心を痛めることでは。

それでも、全ての者が<闇の王>に従っているわけではないと、あなたは言いました。

清きソウルと生まれ変わることを祈ります。

何も、そこまで……

もったいなきお言葉……黒の民にありながら、これほどの誉れはありません。

あなたも言ったではありませんか。

同じ<<均衡>を願うのであれば……白も黒も同じ。

……アイリス様……

お暇を告げなければなりません。

このような盟約であれば、以降も願います。

いいえ、これきりでございます。

……?

<均衡>は、この世の<理>……確かに、全ての生命が守るべきものでございます。

しかし余力で良い。余裕なき者からは、頭上を飛び交う関わりのないルールです。

アデル殿?

白の民は結構でしょう。潤沢なソウルに<始祖のルーン>の恩恵、豊かな暮らしが約束されています。

しかし地を這う我らは違う。頭上には天空大陸。なぜ永遠に影の中なのか。

それが天と地、白と黒の<均衡>を保つ、世のはじめよりの<理>なのです。

ハハッ。

――!

ですから同じではないのですよ。<理>などというものは所詮―――

――強者に都合の良い呪縛!

<瞬間!魔性を発現させたアデルが、玉座のアイリスに迫る!>

……くっ……!

同情ありがとう――――だが、いらん!

地に堕ちてから物を言え!

――!!


――


……!?

…………


……っ……

……?

…………

……黒はっ……


王を守れ!

!!

蛮族めっ……!貴様らは人ではないっ!

待って――

ファイス!その者を捕えよ!

――!

黒のやり口はよくわかった……!わずかでも心を許した、……俺が馬鹿だった!!!

そっちがそのつもりならば!地上ごと消し去ってくれる!

……っ……!

……待って……!

……その人は……






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